3月1日　鶴岡報告会　

1. 卒業研究発表 庄内平野南部における 水文地質構造と 地下水流動解析 福島大学 柴崎研究室 ４年 210710202 間澤 慎太郎

2. 研究背景 鶴岡市を中心とする庄内平野南部では古くから地下水が利用されてきた 市街地の再開発・工業団地の増設・消雪用水の急増 井戸枯れや地盤沈下の兆候 1977~80年 鶴岡市水道水源井拡張計画の検討 持続性補給量 日量25万m3 2001年 上水道水源を月山ダムへ転換 地下水の調査や管理があまり行われておらず、現在の地下水の状態がわかっていない。

3. 研究目的 今後、地下水の適切な管理について考えていくうえで、既存の資料を参考とし鶴岡市を中心とした庄内平野南部の地下水流動を再現し、地下水盆の実態を把握することを目的とする。

4. 最上川 調査地 山形県西部に位置する庄内平野南部 調査範囲 鶴岡市・三川町・酒田市 河川 赤川・大山川・京田川

5. 調査地の標高分布 南部から北部へ向かって標高が低くなっている。 平野部の大部分は標高20m以下。 海岸部には南北に標高30～50m程度の庄内砂丘が発達している。

6. 調査地の表層地質 庄内平野の大部分は沖積層（粘土・砂・礫・腐植土）で覆われている。 調査地の一部では段丘堆積物や火山岩類が分布している。 庄内平野の海岸部には砂丘堆積物が分布している。 (産業技術総合研究所地質調査総合センター 発行の20万分の1数値地質図より作成)

7. 研究方法 涵養量 地下水位データ 地質構造 揚水量 観測+収集 推定+収集 ３次元地下水流動シミュレーションモデルの作成 地下水流動の再現 検討

8. 研究方法 ①地下水位観測 Ⅰ.絶対圧式自記水位計S&DL mini（応用地質 株式会社製）による30分間隔の連続観測 Ⅱ.既存の観測データの利用 鶴岡市・山形県・全国鑿井協会により観測され たもの ②水質調査 Ⅰ.水温・ｐH・ORP・EC 東亜DKK株式会社製ポータブル水質計 Ⅱ.Fe・Ca・PO4・NO2・NO3・Mn・Zn・NH4・HCO3 株式会社共立理化学研究所製パックテスト aquamind laboratory炭酸塩高度測定キット （水質調査を行う前に観測孔内のたまり水をバケツ10杯・ 約130Lを取り除いた）

9. 地下水位観測地点 井戸深度 5.2m 井戸深度 300m ｽﾄﾚｰﾅｰ:272.75~300.00m 井戸深度 28.5m

10. 地下水位観測地点

11. 浅井戸観測結果 和光幼稚園地下水位・水温観測結果

12. 浅井戸観測結果 桑原さん宅地下水位・水温観測結果 サンプリング時の揚水によるもの

13. 深井戸観測結果 竹の露地下水位観測結果 消雪揚水による水位降下

14. 浅井戸長期地下水位観測 (全国鑿井協会発行，地下水位年表より作成)

15. 深井戸長期地下水位観測 (全国鑿井協会発行，地下水位年表より)

16. 長期地下水位観測 ・経年的な水位の低下 ・2001～2002年に地下水位が回復 ・2003年以降の経年的な水位の低下 ・鶴岡市街地に近い観測井ほど水位低下量が大きく、水道水源移行後も同様の傾向がみられる。 ・水道水源移行後に文下、千河原では水位が上昇する傾向がみられる。 ・鶴岡市街地に近い観測井ほど消雪用水の利用による水位降下量が大きい。

17. 水位等高線図 (1)灌漑期・非灌漑期 2005年5月 2005年11月

18. 水位等高線図 (1)灌漑期・非灌漑期 大きな水位差は見られないが、非灌漑期の水位の方が数十cm程度高い。 非灌漑期と灌漑期の水位差

19. 水位等高線図 (2)灌漑期・消雪期 2005年5月 2005年1月

20. 水位等高線図 (2)灌漑期・消雪期 消雪期の水位の方が灌漑期水位より全体的に低く、特に中心市街地付近では3m以上水位差がみられ、消雪期に水位が低下していることがわかる。 灌漑期と消雪期の水位差

21. 水位等高線図 (3)非灌漑期・消雪期 2005年11月 2005年1月

22. 水位等高線図 (3)非灌漑期・消雪期 灌漑期と消雪期の比較と同様に、中心市街地付近では水位差が3.5m以上みられ、消雪期に大きく水位が低下していることがわかる。 非灌漑期と消雪期の水位差

23. 水質観測結果

24. 水質観測結果

25. 断面図の作成 柱状図と過去の資料を基に断面図を作成。（東西、南北各１断面） 東西：A-A’ 南北：B-B’ A-A’断面 B-B’断面

26. A-A’断面

27. B-B’断面

28. 地下水流動シミュレーションモデルとは・・・ ・地下水流動を再現するためのもの（概念モデル、図解モデル、物理モデル、アナログモデル、デジタルモデルへと発展） ・パソコンで使用できるソフトが販売されるようになったのは1990年代中ごろである。 モデルに必要な入力データ ・透水係数 ・有効間隙率 ・比浸出量 ・比貯留量 ・涵養量 ・揚水量 ・初期水位 ３次元地下水流動 シミュレーションモデルの作成

29. ３次元地下水流動 シミュレーションモデルの作成 使用ソフト Processing Mdflow ８ 計算期間 2001～2010年（月別計算） ->120ストレスピリオド モデル範囲 25km×30km×900m 基盤 「東北地方の地質」の第四紀基底面標高を参考に、モデルの下面標高を-700mとした。 200m 200m 10m or 50m

30. フレームワーク モデルセル数 150行×125列×50層 ＝937,500セル

31. 層相区分 層相区分 鑿井柱状図 ->204本 ボーリング柱状図->126本 合計330本 深度70m以下を 深層柱状図とした 白：岩、黄色:粗粒砂、紫:中粒砂、オレンジ:細粒砂 緑:極細粒砂、水色:シルト、青:粘土、茶:礫

32. (1)透水係数 層相ごとの透水係数設定値 (2)有効間隙率 層相ごとの有効間隙率設定値 (Bair and Lahm,2006)

33. (3)境界条件 固定水位境界(水) ->海、河川 一般水頭境界(緑) ->帯水層の連続性 ドレインパッケージ(黄) ->水田からの排水

34. (4)その他のパラメータ ・縦方向透水係数 横方向の透水係数の1/2の値を初期値として入力し、モデルの応答性をみて修正 ・比浸出量 有効間隙率と同様の値を入力 ・比貯留量 初期値として一般的な値（1×10-4）を入力し、モデルの応答性をみて修正 ・初期水位 平均的な地下水涵養量と揚水量を与えて50年間の準定常計算を行い、この最終水位を非定常計算の初期水位とした。

35. a2 1段目 (5)涵養量 h2 a1 h3 h1 a3 タンクモデルの作成 ↓ 土地利用に応じて涵養量の比率を変化 ↓ 涵養量の推定 a5 2段目 h5 a4 h4 桑原さん宅における計算水位と実測水位の比較

36. (5)涵養量 鶴岡No.3における計算水位と実測水位の比較

37. (5)涵養量 桑原さん宅、鶴岡No.3について作成した、タンクモデルをもとに算出した涵養量を土地利用ごとに比率を変化させて与えた。 (国土交通省 国土計画局参事官室 GIS ホームページ 土地利用細分メッシュデータより作成)

38. (6)揚水量 ・水道用水 ->鶴岡市水道事業概要より推定 ・消雪用井戸 ->市で管理している消雪用井戸の電気使用量を基に気温、降水、降雪との関係から推定 ・工業用水 ->「鶴岡市の工業」から工業団地ごとの揚水量を推定（季節変化なし）

39. (6)揚水量 揚水井位置図 水道水源井：33本 消雪用井戸：27本 工業用井戸：4本

40. (6)揚水量

41. 揚水量 既存資料と比較すると揚水量が小さいため、消雪用と建物・商業用の揚水量の追加 庄内平野地下水調査（1988）を基にセルごとに揚水量を入力 消雪用 建物・商業用 2100m3/日 100m3/日 市街地へ入力

42. シミュレーション結果 実測値と計算値の比較から、シミュレーション結果を3つのグループに分類。

43. シミュレーション結果(1) 鶴岡No.1 比較的計算値と実測値の合致度の良い観測地点 計算水位 実測水位 鶴岡No.2 鶴岡No.3

44. シミュレーション結果(2) 三本木 変動パターンは類似しているが、水位差がある観測地点。 初期水位の検討が必要。 計算水位 実測水位 豊田 桑原さん宅

45. シミュレーション結果(3) 文下 変動パターンが異なり、水文地質パラメータや揚水量の精査が必要。 計算水位 実測水位 和光幼稚園 竹の露

46. 計算水位の平面分布 モデル層20層目における水位等高線図 1月における計算水位 11月における計算水位

47. 砂利採取について 本年度から観測を開始した和光幼稚園の周辺では盛んに砂利採取が行われている。この地域は旧水源井のすぐ上流に位置しているため、もし埋め戻しに使用する土砂の性質によっては緊急用として確保されている旧水源での地下水を汚染する可能性が十分に考えられる。水位や水質の観測結果から砂利採取による影響ではないかと思われる変化がみられたが、必ずしも砂利採取によるものであるという確証はないため、今後も継続的な観測が必要であると考えられる。

48. 考察 ・庄内平野南部では経年的な水位の低下がみられ、これは消雪用水として短期間に大量の地下水を使用していることによるものではないかと考えられる。 ・３次元地下水流動シミュレーションモデルを作成し、地下水流動を再現することができた。しかし、全ての観測地点において、現況を再現できてはいないため、モデルの精度を向上させるためには入力データの精査とより多くのデータの収集が必要である。

49. 考察 ・地下水流動シミュレーションモデルで地下水の流動を再現するために、1日に1km2当たり約50000m3の揚水量を与えることにより現況の水位低下に近づけることができた。50000m3の揚水量は平成21年における鶴岡市の1日平均給水量と同程度であるため、消雪用水量をしっかりと管理していくことにより、地下水を持続的に利用していくとこは十分に可能なのではないかと考えられる。

50. まとめ 庄内平野南部では水道水源移行後も地下水位の経年的な低下がみられる。今後、味や価格の観点から新たに井戸が掘削される可能性もある。 しかし、鶴岡市では地下水利用に関する条例がなく、地下水揚水量が把握されていないままでは、過剰揚水による地下水障害を引き起こす可能性もある。 持続的に地下水を利用していくためには、地下水盆の状態を把握することが重要であり、そのためには正確な地下水利用実態を把握することが必要である。

51. 今後の課題 ・より多くの揚水量の把握 ・観測孔の増設 ・水質の面的な広がりの把握 ・砂礫採取のよる地下水への影響 ・消雪用井戸の稼働条件の詳細な設定

52. 謝辞 卒業研究を進める上で、草島進一様をはじめ、桑原英夫様、眞坂恭助様、渡辺ひろい様、和光幼稚園の皆様、竹の露の皆様、酒田河川事務所、山形県庁、鶴岡市役所、鶴岡消防署の皆様にご協力をいただいた。 この場を借りて厚く御礼申し上げる。

53. ご清聴 ありがとう ございました

54. ３次元地下水流動 シミュレーションモデルの作成