「mruby/c」「mruby」で
実現される効率的なIoT開発
九州工業大学 情報工学部
田中和明
自己紹介
• 九州工業大学
田中 和明(たなか かずあき)
• 教育研究
– プログラミング,アルゴリズム,
データベース、Robot Sensor Processing
– 組込みシステム(mruby、リアルタイムOS)、
デジタルサイネージ、三次元測量(土木)
• Rubyコミュニティ活動
目次
• Ruby, mruby
• IoT, mruby/c
• 事例紹介
Ruby, mruby
プログラム言語Ruby
• オブジェクト指向型スクリプト言語
• 可読性が高い
• Webアプリケーション開発で広く使われて
いる
• ISO/IEC 30170, JIS X 3017
• 日本発のプログラム言語
Rubyを使うメリット
• Rubyを使うと、、、
– 開発しやすい
– プログラムを再利用しやすい
– 可読性が高い(メンテナンスしやすい)
ソフトウェアの
開発効率が高い
#include <stdio.h>
int main(void)
{
int i, s;
int ary[5] = {2,3,5,7,11};
s = 0;
for( i=0 ; i<5 ; i++ ){
s = s + ary[i];
}
printf("%d¥n", s);
return 0;
}
ary = [2,3,5,7,11]
s = 0
ary.each do |x|
s = s + x
end
puts s
プログラムが
読みやすい
書きやすい
C言語
Ruby
Rubyプログラムの実行
• インタープリタ方式
– 実行時にコードを解析する
– 「プログラムを書いて、すぐ実行できる」
• 動的な実行
– 動的なメモリ管理(GC)
– 「開発者はメモリを管理しなくて良い」
組込みシステム
• 組込みシステム
– 機械や装置内に組込まれるシステム
– 例:
自動車,産業機器(ロボットなど)
家電製品,通信装置、ウェアラブル機器
• 開発に伴う困難
– 多くの制限がある
(CPU・メモリ・時間・電力)
– ハードとソフト両方の技術を使う
IPA SEC 組込みソフトウェア産業の動向把握等に関する調査(2017年)
組込みソフトウェア開発
• 組込みソフトウェア開発に
Rubyの良さを取り入れたい
• 何が課題だろうか?
Rubyプログラムの実行
• インタープリタ方式
– 実行時にコードを解析する
– 「実行時に多くの資源を必要とする」
• 動的な実行
– 動的なメモリ管理(GC)
– 「実行時間の予測ができない」
– 「リアルタイム性が保証できない」
mruby = 軽量Ruby
• Rubyを軽量化した実装
– 実行時の消費メモリが少ない
– ある程度のリアルタイム性を持つ
• 文法はRubyと同じ
• 他のシステムに組込んで使える
– Cプログラムからmrubyプログラムを呼び出す
– mrubyプログラムからCの関数を呼び出す
mrubyの開発
• 2010年~2012年
– 経済産業省 地域イノベーション創出研究開発
事業でmrubyを開発(ネットワーク応用通信
研究所,福岡CSK,九州工業大学)
• 2016年
– NEDO 次世代スマートデバイス開発プロジェ
クトでmruby用IDEを開発(九州工業大学,
SCSK九州,有明高専) IoTフレームワーク
mruby
mrubyの動作
• mrubyVMによりプログラムを実行する
def fib(n)
return 1 if n<2
return fib(n-1)+fib(n-2)
end
puts fib(10)
mruby VM
コンパイル
実行
00000000 52 49 54 45 30 30 30 34 f3 be 00 00 00 f5 4d 41 |RITE0004......MA|
00000010 54 5a 30 30 30 30 49 52 45 50 00 00 00 c0 30 30 |TZ0000IREP....00|
00000020 30 30 00 00 00 4b 00 01 00 05 00 01 00 00 00 09 |00...K..........|
00000030 00 80 00 48 01 00 00 c0 00 80 00 46 00 80 00 06 |...H.......F....|
00000040 01 00 00 06 01 c0 04 83 01 00 00 a0 00 80 40 a0 |..............@.|
00000050 00 00 00 4a 00 00 00 00 00 00 00 02 00 03 66 69 |...J..........fi|
00000060 62 00 00 04 70 75 74 73 00 00 00 00 70 00 03 00 |b...puts....p...|
00000070 08 00 00 00 00 00 11 00 02 00 00 26 01 80 40 01 |...........&..@.|
00000080 02 40 00 83 01 80 00 b3 01 c0 01 19 01 c0 00 03 |.@..............|
00000090 01 80 00 29 01 80 00 06 02 00 40 01 02 00 80 af |...)......@.....|
000000a0 01 80 40 a0 02 00 00 06 02 80 40 01 02 80 81 2f |..@.......@..../|
000000b0 02 00 40 a0 01 80 c0 ac 01 80 00 29 00 00 00 00 |..@........)....|
000000c0 00 00 00 04 00 01 3c 00 00 03 66 69 62 00 00 01 |......<...fib...|
000000d0 2d 00 00 01 2b 00 4c 56 41 52 00 00 00 17 00 00 |-...+.LVAR......|
000000e0 00 01 00 01 6e 00 00 00 01 ff ff 00 00 45 4e 44 |....n........END|
000000f0 00 00 00 00 08 |.....|
mrubyプログラム バイトコード
組込みシステム開発
• 従来の組込みソフトのイメージ
ソフトウェア
デバイス
ユーザ
インターフェース
デバイスドライバ
アプリケーション
ロジック
リアルタイム処理
(割り込み)
このプログラムを作りたい
mrubyを使った組込み開発
• mrubyの部分が開発しやすくなる
ソフトウェア
ハードウェア
(ターゲットデバイス)
ユーザ
インターフェース
デバイスドライバ
アプリケーション
ロジック
リアルタイム処理
(割り込み)
mruby
プログラム
VMとして提供し、
mrubyからは
抽象化される
mrubyの利用事例
ネットワークルータ(IIJ社) Apacheモジュール(OSS)
mrubyマイコンボード
(Manycolors社)
ETロボコン(アフレル社,JASA) 組込みシステム向け
ライブラリ(ILC社)
IoT, mruby/c
IoT
• 組込みシステムの応用
• デバイスをネットに接続して活用する
• 必要な技術
– ハードウェア(センサ)
– ソフトウェア(データ処理)
– ネットワーク
IoTで必要な処理
• センサの値を取得
• データ処理
• センサデータの送信
• データ蓄積、解析
• データの利用
デバイスで行う
mrubyの領域
IoTの開発
• 組込みシステムでも、より厳しい制約
• IoTデバイス
– 小型
– コスト
– 電力
– セキュリティ
実証実験・試作は成功するが、
実運用できていない多くの事例
IoTデバイス
• 小型デバイスが不可欠
– ソフトが開発できる
– ワンチップマイコン
• 試作~実運用まで考えると、
– ソフト開発しやすい
– 開発したソフトがデバイスに依存しない
IoTデバイスの例
BLEモジュール
(Nordic nRF52)
アナログを扱えるワンチップマイコン
(Cypress PSoC5LP)
さらにmrubyを小型化する
• nRF52モジュール
• ARM Cortex M4F
• 64KB SRAM
• 512KB Flash
• BLE 4.2
• NFC mrubyは厳しい
↓
mrubyの小型化
mruby/c
• mrubyバイトコードと互換性を持つVM
• 相違点
– 少ないメモリで動作する(40KB程度)
– 複数のmrubyプログラムを動かせる
(シングルコア)
– オブジェクト実装の簡素化
– 例外処理の簡素化
– 処理速度よりも省メモリ
mruby/cの方針
• GCは消極的
– 基本的にGCはしない
– プログラム終了時に全メモリを開放する
– (リファレンスカウントを計画中)
• 最小のクラスライブラリ
– 多くのクラスはオプショナル
• Cインターフェースが簡単に記述できる
mruby/cの特徴
• OS無しで複数プログラムを実行する
– 複数のセンサを利用する
– 優先度が違うプログラムを実行する
– (排他制御機能も持つ)
• メモリ管理
– 静的に割り当てたメモリを利用する
– ほとんどの場合に O(1) でメモリ割り当て
消費メモリの比較
実行時に必要なメモリ量
Ruby
mruby
mruby/c
数MB
400KB
< 40KB
mruby/cが想定するデバイス
• 小型デバイス、ワンチップマイコン
– 40KB程度のROM、20KB程度のRAM
– OS無し
• 省電力デバイス
– すぐに起動する
• イベント・ドリブンな処理
– プログラムは短時間の動作
(起動~実行~終了が短時間)
その他
• コンカレント処理
– CPUやOSの支援なしにコンカレント処理
– 割り込みが利用できるなら利用する
(パフォーマンス向上)
• メモリは静的に確保する
– 高速な動的メモリ割り当てアルゴリズム
#define ALLOC_TOTAL_MEMORY_SIZE 0x2800
static uint8_t memory_pool[ALLOC_TOTAL_MEMORY_SIZE];
allocもfreeも O(1)
mruby/cのクラス
• Object, True, False, Nil
• Fixnum
• Float
• String
• Symbol
• Array
• Hash
• Range
赤字はオプショナル
#define MRBC_USE_FLOAT 1
#define MRBC_USE_STRING 1
mruby/cの独自拡張
• コンカレント実行するプログラムは
独立したメモリ空間を持つ
• ただし、以下は共有する
– クラス
– メソッド
– グローバル変数($で始まる変数)
mruby/cの事例紹介(1)
・概要
- mruby/cを組込んだ水位・雨量センサーを河川等に設置
- ゲートウェイを介して計測データを観測
・目的
- mruby/cのフィールドでのユースケースの創出
- 河川防災・減災に向けた新たな観測システムの構築
・実施主体
- しまねソフト研究開発センター(島根県松江市)
- 株式会社藤井基礎設計事務所 (島根県松江市)
実証実験
mruby/cを組込んだ水位・雨量センサー観測実証実験
・実施体制
- しまねソフト研究開発センター
- 株式会社藤井基礎設計事務所
・実証期間
- H29.6.21~H29.10.31
・実験場所
- 島根県出雲市斐川町 新建川、間樋川
実証実験
・mruby/c水位・雨量センサープログラムの開発
・ゲートウェイの通信環境の構築 etc
・センサー等関連機器の現地設置
・データの可視化/新たな観測システムの構築検討 etc
mruby/cを組込んだ基盤・送信機
実証実験
インターネット
水位データ送信
水位データ送信
水位データ送信
水位計 W-3
水位計 W-2
水位計 W-1
アンテナ
受信機(ゲートウェイ)
LTE/
3G
送信機・気圧センサー搭載
雨量データ送信
気圧データ送信
雨量計 R‐1
(株)藤井基礎設計事務所 サーバー
データグラフ配信
(警報メール配信)
スマートフォン
(携帯電話)
PC
実証実験システム構成図
実証実験
赤色:河川水位、青色:日雨量
水位センサー設置箇所mruby/c基盤・送信機 実験地
R‐1地点における日雨量とW‐2地点における河川水位
mruby/cの事例紹介(2)
SenStick
• 小型センサデバイス(重さ 3.5g)
奈良先端科学技術大学院大学、Rubyビジネス推進協議会と共同開発
SenStick
• 通信モジュール
+
センサ
• 搭載するセンサ
– 9軸
– 温度
– 湿度
– 気圧
– 照度(可視光、UV)
nRF52モジュール
mruby, mruby/cの入手
https://github.com/mrubyc/mrubyc
http://www.s-itoc.jp
GitHubで公開中
mruby/cの情報: しまねソフト研究開発センター
https://github.com/mruby/mruby
http://forum.mruby.org
mrubyの情報: 軽量Rubyフォーラム
ありがとうございました
• 今後も mruby、mruby/c をよろしくお願いします。
• しまねソフト研究開発センター(A-02)
– mruby/cの紹介
• 一般社団法人Rubyビジネス推進協議会(JA-06)
– SenStickの紹介

ET West 2017資料:mruby/c、mrubyで実現される効率的なIoT開発