BSDカーネルの設計と実装 メモリ管理 共有メモリのまとめ

1. BSD カーネルの設計と実装 読書会
第 5 章 メモリ管理編
5.5 共有メモリ

2. 5.5 共有メモリ
システムコール
によるプロセス間通信
プロセス
カーネル
プロセス
共有できるのは、テキストセグメントのみ

3. 5.5 共有メモリ
プロセス間通信のデメリット
送受信に２つのシステムコールが必要、
通信量が多いとコストが高い

4. 5.5 共有メモリ
システムコール
によるプロセス間通信
プロセス オーバヘッド
カーネル 大きい
プロセス
共有できるのは、テキストセグメントのみ

5. 5.5 共有メモリ
5.5 共有メモリ
複数プロセス間で共有するアドレス空間
システムコール不要
プロセス
アドレス空間
（共有）
プロセス

6. 5.5 共有メモリ
メモリデータの競合をアプリ開発者が管理
↓
POSIX の pthread は共有メモリにセマフォを導入して
ユーザプロセスで管理できるよ！

7. 5.5.1 mmap モデル
●複数プロセスが共有メモリ領域を作成
●アドレス範囲に名前をつける
●サイズと初期内容を指定

8. 5.5.1 mmap モデル
ファイルがインタフェー
ス！
/tmp

9. 5.5.1 mmap モデル
基準アドレス
リージョンの長さ
保護モード
フラグ
ファイル識別子
オフセット

10. 5.5.1 mmap モデル
フラグ：共有かプライベートか
アドレス 長さ
保護モード：アクセス権限
プロセスの
メモリ空間
ファイル識別子 オフセット
ファイル
※ プロセスが起動しなおしても、ファイルだから長期的に保存されてる

11. 5.5.1 mmap モデル
mmap
マップ確保
munmap
マップを取り除く、 mmap の一部でも複数を内包しても OK
mprotect
保護モードを変更
mlock
ページアウトを防ぎたかったら、
一般では、ロックできるのは物理メモリの 1/3
munlock
ロックの開放

12. 5.5.1 mmap モデル
msync
一部マップだけ書き出す。
特定のアドレス範囲のページがファイルシステムに書き出す
（ fsync システムコールではすべてのダーティページを
強制書き出しできるよ）

13. 5.5.2 共有マッピング
 ファイルは、オブジェクトで表される
 プロセスとファイルのマッピング
は、 vm_map_entry 構造体で表される
プロセス A
vm_map_entry
ファイル ファイル
オブジェクト
プロセス B
vm_map_entry

14. 5.5.3 プライベートマッピング
プライベートマッピングとは？
ファイルをマップしたメモリに対する変更を
 ファイルに反映しない
 他プロセスからファイルは参照不可

15. 5.5.3 プライベートマッピング
プライベートマッピングとシャドウオブジェクト
ファイルへの変更伝播
他プロセスからの参照
を阻止します！
プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
ファイル
オブジェクト
プロセス B
vm_map_entry

16. 5.5.3 プライベートマッピング
シャドウオブジェクトの動作
プロセス プライベートマップ要求
プロセス アドレス空間にファイルオブジェクトをマップ 書き込み時コピー属性
プロセス ファイルオブジェクトの Page0 に書き込み -> ページフォルト
カーネル ファイルオブジェクトの Page0 複製
カーネル シャドウオブジェクトに Page0' 連結
プロセス A シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト
Page0' Page0

17. 5.5.3 プライベートマッピング
デメリット
ページがつねに複製され、メモリを使用する。
入出力が行われる。
★FreeBSD では複製せず移動することはない。

18. 5.5.3 プライベートマッピング
プライベートマップのページフォールト動作
プロセス ページフォールト発生
カーネル vm_map_entry から始まるオブジェクトリストを走査、原因ページを探す。
走査順番
プロセス A シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト
Page0' Page0
つねに変更は、最初のオブジェクトが優先される

19. 5.5.3 プライベートマッピング
プロセスのアドレス空間からマップ削除
プロセス munmap , プロセス終了の暗黙処理
カーネル シャドウオブジェクトは、ファイルオブジェクトに書かずにメモリのフリー
リストに置かれる

20. 5.5.3 プライベートマッピング
fork 時プライベートマッピング
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

21. 5.5.3 プライベートマッピング
fork 時プライベートマッピング
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Fork 前にプロセス A
が行った変更
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

22. 5.5.3 プライベートマッピング
fork 時プライベートマッピング
Fork 後に親プロセス A
親プロセス A シャドウ
が行った変更
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

23. 5.5.3 プライベートマッピング
fork 時プライベートマッピング
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Fork 後に子プロセス A
が行った変更
Page0'' Page0' Page0
Page1

24. 5.5.3 プライベートマッピング
メモリ回収
メモリが少なくなるとシャドウオブジェクトを回収
する。
1 ．カーネルがスワップページャを割り当て
２．スワップページャがシャドウオブジェクトの内
容全体 を保存できるデータ構造用意 【参照 5.10
節】
３．スワップページャがスワップ空間確保
４．スワップページャがスワップ空間に書き出し

25. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
シャドウオブジェクト連鎖圧縮

26. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
親プロセス A 終了時
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

27. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
親プロセス A 終了時の圧縮
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
終わり
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

28. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
親プロセス A 終了時
シャドウ
参照なし
オブジェクト
削除
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

29. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
親プロセス A 終了時
シャドウオブジェクト
のデータ重複なので
削除
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

30. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
親プロセス A 終了時
圧縮完成！
子プロセス A シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0
Page1

31. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
子プロセス A 終了時の圧縮
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
子プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
終わり
Page1

32. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
子プロセス A 終了時の圧縮
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
参照なし シャドウ シャドウ ファイル
削除 オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page0'' Page0' Page0
Page1

33. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
子プロセス A 終了時の圧縮
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
Page1'
シャドウ ファイル
上位シャドウオブジェクト オブジェクト オブジェクト
に Page0 がないので
移行する。
Page0' Page0
Page1

34. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
子プロセス A 終了時の圧縮
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト シャドウオブジェクト
のデータ重複なので
削除
Page1'
Page0'
シャドウ ファイル
オブジェクト オブジェクト
Page0
Page1

35. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
子プロセス A 終了時の圧縮
親プロセス A シャドウ
vm_map_entry オブジェクト
圧縮完成！
Page1'
Page0'
ファイル
オブジェクト
Page0
Page1

36. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
スワップ領域も同じロジックで移行する

37. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
シャドウオブジェクトの増えすぎを
なんとかしたい

38. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
どんどん増えるシャドウ
親プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page1' Page0' Page0
Page1

39. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
親プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page1' Page0' Page0
Page0' Page1
Page0 のページフォールト時に
他のシャドウオブジェクトの page を内包するかチェック
内包していれば、参照を飛ばす

40. 5.5.4 シャドウオブジェクト連鎖圧縮
ファイルオブジェクトを直接参照
親プロセス A シャドウ シャドウ ファイル
vm_map_entry オブジェクト オブジェクト オブジェクト
Page1' Page0' Page0
Page0' Page1
激しく fork を繰り返してもシャドウの連鎖は 3 、 4 回程度に抑えられる

41. 5.5.5 プライベートスナップショット
プライベートスナップショット

42. 5.5.5 プライベートスナップショット
仮定
プロセス A とプロセス B の共有マッピング
プロセス B のプライベートマッピング
プロセス A
vm_map_entry
ファイル
オブジェクト
Page0
プロセス B シャドウ
vm_map_entry オブジェクト Page1

43. 5.5.5 プライベートスナップショット
プロセス B が Page0 に変更
プロセス A
vm_map_entry
ファイル
オブジェクト
Page0
プロセス B シャドウ
vm_map_entry オブジェクト Page1
Page0' Page0 をスナップショット

44. 5.5.5 プライベートスナップショット
概念的に正しく動作するか検証
正：プロセス A から Page ０の変更は見えない
プロセス A
vm_map_entry
ファイル
正：プロセス B から Page ０の変更は見える オブジェクト
Page0
プロセス B シャドウ
vm_map_entry オブジェクト Page1
Page0'

45. 5.5.5 プライベートスナップショット
プロセス A が Page0 に変更
プロセス A
vm_map_entry
ファイル
オブジェクト
Page0''
プロセス B シャドウ
vm_map_entry オブジェクト Page1
Page0' プロセス A が Page0 を変更

46. 5.5.5 プライベートスナップショット
概念的に正しく動作するか検証
正：プロセス A から Page ０ '' の変更が見える。
プロセス A
vm_map_entry
ファイル
誤：プロセス B から Page ０ '' の変更は見えない オブジェクト
Page0''
プロセス B シャドウ
vm_map_entry オブジェクト Page1
Page0'

47. 5.5.5 プライベートスナップショット
コピーオブジェクト

48. 5.5.5 プライベートスナップショット
元ファイルのスナップショットをとったコピーオブジェクトで改善できる。
Mach と 4.4BSD では実装されたが、パフォーマンス的な問題で現在は削除
されている。
プロセス A
vm_map_entry
コピー
オブジェクト？
プロセス B シャドウ
vm_map_entry オブジェクト