脳画像解析とUbuntu
筑波大学医学医療系精神医学
根本 清貴
http://www.nemotos.net
https://github.com/kytk
Ubuntu 16.10 リリース記念オフラインミーティング 16.12  17/Dec/2016
目的
● 1ユーザーの立場から、脳画像研究領域において、
Ubuntuはかなり役立っているということを伝えたい
● Ubuntuユーザーの方々と知り合いたい
– 将来的に、共同研究・開発ができたら…
脳画像解析
● 主に脳のMRI画像を材料に、いろいろな観点から、
脳を調べていく
● 大きくわけて、3つの側面からの研究が進んでいる
– 構造画像:脳の容積がいろんな状況でどう変化するか?
– 機能画像:脳のネットワークはどうなっているのか?
– 拡散テンソル画像:脳の神経線維はどうやって走ってい
るのか?
構造画像から脳のCPUだけ取り出す
● 脳におけるCPU→神経細胞:脳の表面(灰白質)
●
信号を伝える経路→神経線維:脳の深部(白質)
● MRI画像を元に、灰白質と白質に分割するアルゴリ
ズムが確立している
元画像 灰白質像 白質像 脳脊髄液像
機能画像から脳のネットワークを
求める
● 安静時脳機能MRI
● 約10分間、MRIを160−200回撮影
●
各領域の信号値の時系列データを解析
Fox MD, et al. PNAS 2005
時系列
解析
拡散テンソル画像から
脳の神経線維を描出
● 拡散テンソルMRI
● MRIを磁場の角度を変えて撮影
●
水の移動の仕方から、神経線維の走行がわかる
図:Chris Rorden
脳画像解析ソフトウェア
● 世界で広く使われているものは以下の3つ
● SPM(イギリス・ロンドン大学)
– Matlab上で動作(クロスプラットフォーム)
● FSL(イギリス・オックスフォード大学)
– UNIX系OSのみで動作
● AFNI (アメリカ・国立衛生研究所)
– UNIX系OSのみで動作
脳画像解析をする者にとってのLinux
●
「必要に迫られて」使うしかない
●
システムの設定などには興味ない人が多い
●
大半にとっては、「解析ソフトが使えればいい」
●
エンドユーザー的な発想が多い
●
そのニーズに応えられるものはあまりなかった
私とLinux
● 2003年にある研究所で脳画像解析に触れる
● 上司から、「N3というソフトを使いたいんだけど、Linuxでし
か動かないみたいだから、動かしてみて」
● ソフトをインストールするだけで約6ヶ月
– 周囲にLinuxについて詳しい人がいない
– Debian → Fedora → OpenSUSE
– まず、Linuxについての勉強が必要
– 研究に特化したソフトのため、日本語の情報はゼロ、英語でも
情報が少ない
– 依存パッケージが多い
●
「なぜ、インストールだけでこんなに消耗しないといけない
んだ!」
「教えてくん」がたくさん
● Linuxで画像解析をして、学会発表などをすると、
「どうやったのか教えて」という質問を受けるように
● 様々な研究室を訪問しては、Linuxのインストール
→画像解析ソフトのインストール→ソフトの設定の
繰り返し
●
口コミで依頼が指数関数的に増加
●
「もっとこの作業を簡単にできないか?」
NeuroDebianとの出会い
● 2008年頃、NeuroDebianというリポジトリを知る
● Debian/Ubuntu用の脳科学関連のソフトウェアに
特化したリポジトリ
●
様々な脳科学関連ソフトウェアが簡単にインストー
ルできる
http://neuro.debian.net
KNOPPIX & Remastersys
● ほぼ同時期に、KNOPPIXと
Remastersysも知る
– Live CDとして配布できる
– 自分でリマスタリングできる
● Ubuntu × Neurodebian ×
Remastersys = ?
●
脳画像解析に特化したディストリ
ビューションを作ってしまおう!
● 2011年にLin4Neuroとして発表
Lin4Neuroのコンセプト
● Linux for Neuroimaging (脳画像のためのLinux)
● Ubuntu LTSのmini.isoをベース
– デスクトップ環境は、開発当初はGNOME/現在はXFCE
●
電源を入れたらすぐに必要な解析ができる
– Live USB/ VM
●
インターフェースが直感的
– Linuxユーザーでなくても簡単に使える
●
オープンソース
– 再配布可能、改造大歓迎
現行Lin4Neuroのスクリーンショット
nemotos.net/lin4neuro
Remastersysが開発停止
● 2013年初頭、Remastersysが開発停止
– 14.04は少しいじるだけで動作可能
● ソースコードを原作者から50ドルで購入
– 自分でisoを作り上げるだけの能力はない
– 開発ができなくなるよりまし
● 様々なつてを頼って、2015年〜株式会社ディアイティ
社(http://www.dit.co.jp/)にご協力いただき、Ubuntu
14.10以降でも動作するRemastersysを開発
脳画像解析チュートリアル
● 2009年より年1回、東大で主催
● 当初は、Live USBを利用(当
日配布)→BIOSの設定など、
トラブル多発
● その後、VMに移行。受講者は
事前にLin4Neuro-VMをダウン
ロードし、Virtualboxにインス
トールして参加
●
全員が同一の環境なので、対
応が容易に
●
教育コンテンツとして有用
● 研究者はLinuxを勉強する機
会を欲している!
2016年チュートリアル「UNIX系OSの
基礎と応用」のアンケートより
● UNIX系OSの基礎と応用に初めて参加しました。
受講前は内容についていけるのか不安がありまし
たが、事前に予習できたので当日は精神的に余
裕を持って参加できました。実際に手を動かせる
内容であったので、理解につながりやすかったと
思います。また、Lin4Neuroにより簡単に解析環境
をセットアップできたことも「とっつきにくさ」を回避
できたと思います。 www.nemotos.net/?page_id=1336
実際に使ったテキストやLin4Neuro-VMは以下から入手可能
www.lin4neuro.net/cbsn/
Lin4NeuroはGitHubで公開
● Ubuntu-mini.isoをインストールしてから、Lin4Neuroを構築するまで
の一連の流れをスクリプト化(ここでもディアイティ社から協力)
● Part 1: XFCE環境の構築
● Part 2: Lin4Neuroのユーザーインターフェースの構築
● Part 3: 脳画像解析ソフトウェアのインストール(これは手作業もあ
り)
● Part 4: リマスタリング
脳画像解析では、プログラマが必要
● MRIを多数例処理
● 解析はかなり時間を要し、なかにはCore-i7のCPU
でも、1例あたり8時間以上かかるものも
●
シェルスクリプトはほぼ必須
● 世界的には、Pythonで解析のパイプラインを作る流
れがある
まとめ
● Ubuntuをはじめ、Linuxは脳画像解析ではメインス
トリーム
● Lin4Neuroは解析プラットフォームや教育用OSとし
て用いられている
●
脳科学領域は、多方面の方々が関わっており、今後
も様々な方々とコラボレーションしていきたい
謝辞
● Ubuntu Japanese Teamの皆様、ネット上に有意
義な情報を発信していらっしゃる皆様に感謝します
● Ubuntu Weekly Recipe
● Ubuntu 日本語フォーラム

20161217 脳画像解析とubuntu