BSDカーネルの設計と実装 読書会 (11) で使用した資料 一部修正

1. 5.13.4
マッピングのアクセス
および対応属性の変更
NAKAMURA Tsunemi
Twitter: kagamiwari
2013-05 BSDカーネルの設計と実装 読書会 (11)

2. 第5章 メモリ管理
13節 移植性
●
本節は，仮想記憶システムの機種依存の部分につい
ての話
●
5.13.1 pmap (物理マッピング) モジュールの話
– pmapとは「アドレス変換」と
「アクセス権限の管理」を担うモジュール
– pmapモジュールの主な関数の一覧
●
5.13.2 システム起動時のpmapの関数の働きの説明
●
5.13.3 仮想メモリの割り当てと開放の詳細説明

3. 5.13.4 マッピングのアクセス
および対応属性の変更 (p.247～248)
●
本項は，
pmapモジュールの2つの主要な役割
(アドレス変換とアクセス権限管理)のうちの2番め，
アクセス権限の管理についての話
●
具体的には，
以下の3つの関数についての詳細な説明を行う
– pmap_protect()
– pmap_page_protect()
– pmap_change_wiring()

4. pmap_protect()
pmap_page_protect()
●
この2つは，アクセス保護を制御する関数
●
2つの使い分けについては後述

5. pmap_protect()
pmap_page_protect()
●
2関数の共通の特徴を2つ述べる
– 保護属性値として
「VM_PROT_NONE」が指定されると，
仮想メモリのマッピングを削除する

6. pmap_protect()
pmap_page_protect()
●
2関数の共通の特徴を2つ述べる
– 保護属性値として
「VM_PROT_WRITE」が指定されても，
Copy-On-Write機能の実現の都合のために
何もしない
(ページへの書き込み時にはまずページフォルトを
発生させ，呼び出されたハンドラはvm_map_entry
構造体を参照し，もしCopy-On-Writeのページなら
ばページをコピーし，その後，5.13.3で説明され
たpmap_enter()を使用して書き込みを許可する)

7. pmap_protect()
●
ある1つのpmap管理下の仮想アドレス内の
すべてのマッピングに対して
アクセス制御を行う際に使用される
●
pmap_protect() は，主に mprotect システムコー
ルによって使われるらしい

8. pmap_protect()
●
PCアーキテクチャにおいては，
要求された権限設定が……
– VM_PROT_NONEの場合
pmap_remove() を使用してアクセス権限
を無効にする
– VM_PROT_WRITEの場合
何もせずに終了する

9. pmap_protect()
●
PCアーキテクチャにおいては，
要求された権限設定が……
– その他の場合
与えられたアドレス範囲をループして，
まずマッピングが有効か否かを判定する．
無効ならば無視．
有効ならばページテーブルエントリを調べ
現在の保護属性値と新しい保護属性値とが
異なる場合のみ修正する．
この修正の終了後に，TLBとキャッシュを
書き換える．
(TLBとキャッシュの書き換えはリソースを消費する
ので，エントリ変更の必要性の確認後に行う)

10. pmap_protect()
●
読書会で，以下のテキストへの疑問を話しあった．
『BSDカーネルの設計と実装』
初版
247ページ 23行目 (下から10cmの辺りの行頭)
「pmap_remove() は与えられたアドレス範囲をループして、」
は正しくは
「pmap_protect() は与えられたアドレス範囲をループして、」
ではないだろうか？と．
原書を確認したところ，「pmap_remove()」との
表記で正しかった．

11. pmap_page_protect()
●
複数のpmapにまたがって管理されるている
特定の物理ページのすべてのマッピングに対して
アクセス制御を行う際に使用される
●
pmap_page_protect() は，
仮想記憶システムによって内部的に使われる関数

12. pmap_page_protect()
●
本関数には2つの用途がある
– Copy-On-Writeを設定する際に，
読み込みのみの権限を設定する
– ページ置換を行う際に，
処理が終了するまでの間，
ページヘの参照を全部ブロックするために
すべてのアクセス権限を消去する

13. pmap_page_protect()
●
PCアーキテクチャにおいては，
要求された権限設定が……
– VM_PROT_WRITEの場合
何もせずに終了する
●
書き込み許可を追加するためには……，
まずページフォルトを発生させ，
呼び出されたハンドラがページ単位で行う．
こうしないと，pv_entry構造体のリストを走査して
云々と面倒なことをしなければならなくなる．

14. pmap_page_protect()
●
TLBとキャッシュの書き換えについては……，
pmap_protect() の場合と同様に……，
[抜粋再掲]
まずマッピングが有効か否かを判定する．
無効ならば無視．
有効ならばページテーブルエントリを調べ
現在の保護属性値と新しい保護属性値とが
異なる場合のみ修正する．
この修正の終了後に，TLBとキャッシュを書き換え
る．
(TLBとキャッシュの書き換えはリソースを消費する
ので，エントリ変更の必要性の確認後に行う)
ただし，pmap_protect() は単一プロセス下であったが
pmap_page_protect() は複数プロセス下であり，処理は異
なる

15. pmap_change_wiring()
●
仮想ページのページアウトに対して
ロックをしたりアンロックをしたりする際に呼ぶ関
数
●
pmapモジュールは状態を破棄しないので，ロック
の状態をpmapが管理する必要はない
●
PCアーキテクチャでは
ロックの状態をpmapは管理している
●
この管理されているロック状態の値が変更されて
も，TLBやキャッシュを修正する必要はない