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L-system による樹木ラーメン構造の形態創生
に関する研究
指導 佐々木睦朗 教授
法政大学 デザイン工学部 建築学科
佐々木研究室
09N1144 横山 大城
2012 年度 卒業論文
目次
第 1 章 序論 1
1.1 研究の背景 ..................................................................................................................... 1
1.2 研究の目的と既往の研究................................................................................................ 2
1.3 論文の構成 ..................................................................................................................... 3
第 2 章 理論 4
2.1 概説 ................................................................................................................................ 4
2.2 L-system ...................................................................................................................... 4
2.3 GA.................................................................................................................................. 9
2.4 結語 ...............................................................................................................................11
第 3 章 等分布荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生 12
3.1 概説 .............................................................................................................................. 12
3.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例 ............................................. 13
3.3 3.2 節の結果と考察 ...................................................................................................... 26
3.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例 ............................................. 27
3.5 3.4 節の結果と考察 ...................................................................................................... 41
. 3.6 結語 ........................................................................................................................42
第 4 章 水平荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生 43
4.1 概説 .............................................................................................................................. 43
4.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例 ............................................. 44
4.3 4.2 節の結果と考察 ...................................................................................................... 57
4.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例 ............................................. 58
4.5 4.3 節の結果と考察 ...................................................................................................... 71
4.6 結語.........................................................................................................................72
第 5 章 結論 73
参考文献 75
謝辞 76
1
第 1 章 序論
1.1 研究の背景
自然界の生物は、様々な困難な状況に晒されている。しかし、それらは力学情報を感知
し、自ら形状や材料特性を調整することが可能であり、その環境に適合するため、何百万
年という時間を経過する間に突然変異や淘汰を繰り返し、進化してきた。この場合の進化
は、常に複雑な方向を目指すという意味ではない。その状況に適した最も原始的な形態を
目指している。その結果、構造上の出来栄えが素晴らしく、人々を魅了し、しばしば模倣
の対象となるのである。
建築において、天井や屋根にかかる面荷重を柱及び柱脚へどのように導くかが常に課題
となる。その有効的な解決策の1つとして樹木構造があげられる。形状の特徴は、一本の
柱から部材が枝分かれし、樹木のように上に向かって大きく広がっているという点である。
シュツットガルト空港(図 1.1.1)がその一例であり、魅力的な空間を創造することができ
る構造形態である。形態の特徴としては、天井や屋根を均等に支えることができ、力を迂
回させずに直接導くという点である。また、多くの節点から個々の節点において力が束ね
られ、伝達材料の節約にもなる。
図 1.1.1 シュツットガルト空港
2
これまでの樹木構造をモデルとした吊り下げ実験による研究では、水平力の考察が不可
能であった。また、数値解析による研究も設計変数が多く、モデル化が困難であった。
そこで L-System に着目する。L-System は、主に情報工学の分野で仮想環境内における樹
木モデルを生成するためや道路網の生成等に用いられているアルゴリズムである。この
L-System を用いることで、少ない情報量で自己相似図形やフラクタル図形のような形状を
簡単に生成することができる。
1.2 研究の目的と既往の研究
L-system を用いれば角度を統一させ経済性を高めた上で、部材の長さを自由に変えるこ
とができる。そこで、本研究では L-system を用い、部材の長さを自由に変え、力学的合理
性、経済性を兼ね備えた建築を模索していく。
L-system は元々、複雑である生物の形態生成に用いるため考案された。細胞の種類、出
発点の細胞、細胞の書き換え規則を与えることで、簡単に自己相似図形のような規則的な
形態を創生できる。そのため、これまでに機械や情報の分野で研究に用いられてきた。例
えば、樹木等の生物の形態生成の他、仮想都市における道路網 2)の生成や GA を組み合わせ
最適形状を求める 3)等である。
これまでに樹木構造をモデルとした研究として斎藤公男氏らによる「樹木構造の「構造
形態」に関する基礎的研究」がある。この研究では角度と接合部の高さを統一した形状の
最適化問題を扱っている。それは、「鉛直・水平荷重時にモーメントの発生を極力抑える
ため」、「梁の曲げ応力度の低減」あるいは「分岐部における鋳鋼ジョイントの利用に伴
うコスト削減」等が目的である 4)。しかし、それでは接合部の高さ、つまり部材の長さが統
一され建築物として制約がかなりかかっている。また、形態の創生に際して、作図を行い、
手計算により形態を決定している。そこで、本研究ではパラメータの決定に GA を導入し
た L-system を用いることで、自動的に最適な形態を決定する。また、GA で部材の長さを
決定し、接合部の高さを変化させる。そして、角度、長さを変化させることにより美観性、
力学的合理性、経済性を兼ね備えた建築を模索していく。
3
1.3 論文の構成
第 1 章 -序論-
本研究を行うに至った背景とそれを受けて本研究の目的を述べる。
第 2 章 -理論-
本論文で必要となる基礎理論の説明を述べる。
第 3 章 -等分布荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生-
ライズスパン比を変えたモデルに等分布荷重をかけ、力学的合理性、経済性
を兼ね備えた形状を求める。
第 4 章 -水平荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生-
ライズスパン比を変えたモデルに分布荷重に加え水平荷重をかけ、力学的合
理性、経済性を兼ね備えた形状を求める。
第 5 章 -結語-
本研究について総括を述べ今後の課題を述べる。
4
第2章 理論
2.1 概説
本章では、L-system についての説明を例を挙げて行う。また、本研究では L-system と
GA(遺伝的アルゴリズム)を組み合わせることにより、最適構造を生成するため GA の説明
もあわせて行う。
5
2.2 L-system(Lindenmayer System)
L-system とは、1968 年に生物学者 Aristid.Lindenmayer により導入された個体発生の
際の細胞間の相互作用を記述する形式文法であり、細胞内の状態変化にとらわれずに細胞
の分裂増殖を、書き換え規則を適用することにより示すものである 3)5)。元々は生物の形態
の発生を記述する概念を中心とした形態発生システムである。具体的には、細胞のタイプ、
細胞の書き換え規則、出発点の細胞を与えることにより形態を生成することができる。そ
のため、自己相似図形から複雑な生物の形態まで L-system を用いれば簡単に表現できてし
まう。またその種類として、1つの記号に対して1つの書き換え規則が与えられる決定論
的 L-system の他、条件や確立によって与えられる書き換え規則が違うテーブル L-system、
確立 L-system、GA で最適化をする進化的 L-system 等がある。以下に L-system を用いた
成長モデルの例を示す。
例:藻類(algae)6)
細胞タイプ: A B
シンボル:なし
出発点細胞:A
細胞の書き換え規則:(A→AB), (B→A)
ただし、n は細胞の進化回数。
n=0 : A
n=1 : AB
n=2 : ABA
n=3 : ABAAB
n=4 : ABAABABA
n=5 : ABAABABAABAAB
n=6 : ABAABABAABAABABAABABA
n=7 : ABAABABAABAABABAABABAABAABABAABAAB
6
説明
n=0 :A :初めの細胞
↓↘
n=1 :(A B) :最初の細胞 A から AB が生まれ、rule(A→AB)は適用
されているが、rule(B→A)はまだ適用できない。
↓↘ ↘
n=2 :(A B) A :A は再び AB となり、B は A へ変化し、すべてのル
ールが適用されている。
↓↘ ↘ ↘↘
n=3 :(A B) A (A B)
例:コッホ曲線(Koch curve)6)
細胞タイプ: F
シンボル:+、-
出発点細胞:F
細胞の書き換え規則:F→F+F-F-F+F
ただし、F は直線の描画、+は左へ 90°回転、-は右へ 90°回転することを意味する。
nは細胞の進化回数。
n=0 _ :初めの細胞
F
n=1 :初めの直線から左へ 90°回転し F が生まれ、次に右へ
90°回転し F が生まれ、もう一度右に 90°回転し、最後
に左へ 90°回転する。
n=2 :n=1 と同様にして F が F+F-F-F+F となり上記のよう
に一筆書きのように図形が生成される、
F+F-F-
F+F
7
F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-F+F-F-F+F+F+F-F-F+F
n=3
F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-F+F-F-F+F-F+F-F-F+F+F+F-F-F+F+
F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-F+F-F-F+F-F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-
F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-F+F-F-F+F-F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-
F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-F+F-F-F+F-F+F-F-F+F+F+F-F-F+F+
F+F-F-F+F+F+F-F-F+F-F+F-F-F+F-F+F-F-F+F+F+F-F-F+F
8
例:樹木 7)
細胞タイプ: F
シンボル:+、-、[ 、]
出発点細胞:F
細胞の書き換え規則:F→F[+F]F[-F]
ただし、n は細胞の進化回数。+は左に、-は右向きに生成することを表す。[ は新しい枝
が始まることを、] は枝が終わることを表す。
n=0
:初めの枝。
F
n=1
:[+F]は枝が左方向に生成され、その後、
すぐに枝が終わることを表している。
F[+F]F[-F]
n=2
:同様にして、枝の始まりと終わりを表現
し、樹木のような形状が生成される。
F[+F]F[-F] [F[+F]F[-F]] F[+F]F[-F][ F[+F]F[-F]]
9
2.3 遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithm)
組合せ最適化理論
離散構造物の形態創生における問題の多くは,組合せ最適化問題として定式化できる。
例えば,トラスのトポロジー最適化問題は,部材の配置候補位置から実際に部材を配置さ
せる位置の最適な組合せを求める問題である。また,部材断面を設計変数とする場合にも,
それらは与えられた製品リストの中から選択される場合が一般的であるため,部材の種類
の組合せ最適化問題となる。このような組合せ最適化問題は,部材の存在を 0 と 1 の整数
値を用いて表すことにより,0-1 計画問題として定式化できる。また,選択できる部材の種
類が複数個ある場合には,一般の整数計画問題となる。
一般的な組合せ最適化問題における定式化として,目的関数F と制約条件が非負変数 jX
),...,( Ni 1 の線形関数であるとした場合,係数行列の成分を ijA , ijD , 定数ベクトルの成分及
びコスト係数を iB , iE ,及び jC とし,等式及び不等式制約条件を有する整数計画問題[29]が以
下で表現される。


N
j
jj XCF
1


N
j
ijij BXA
1
, ),...,1( B
Ni 


N
j
ijij EXD
1
, ),...,1( E
Ni 
jX :非負の整数 ),...,1( Ni 
整数計画問題は,その形式によっていくつかの典型的な問題に分類され,それぞれに対
して有効な手法が提案されている。現在最も多く研究されている探索アルゴリズムの一つ
が遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)である。遺伝的アルゴリズムは,適用範囲の非
常に広い,生物の進化過程を模倣した学習的アルゴリズムである。以下,遺伝的アルゴリ
ズムを必要に応じて GA と略記する。
Minimize
toSubject 
10
□遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)
GA は,生物の進化のメカニズムにならった探索アルゴリズムである。
本研究で用いる単純遺伝的アルゴリズム(Simple Genetic Algorithm)を以下に示す。
[1] 問題を,遺伝子に対応する文字列(string)に変換する。
[2] 文字列の集団(population)を発生させる。
[3] この文字列を評価し,適合度 fitness を計算する。
[4] 評価値の高い集団を選んで残す淘汰を行う。
[5] 選ばれた集団に対して,以下に示すオペレーターを施すことにより新しい文字列を
生成する。
i)文字列を複製する機能をもつ自己再生(copy)
ii)二つの文字列に対して部分的な交換を行うことによって新しい文字列を生み出す交
叉(crossover)
iii)文字列を複製する時に確率的に誤りを生じさせる突然変異(mutation)
[6] 指定条件を満たすまで[2]~[5]を繰り返す。
GA におけるフローを図 2 に示す。
問題を文字列にコード化
文字列の集団 population を作る
文字列を評価する(適合度計算)
評価値に応じて淘汰を受ける
遺伝的操作により新しい population を生成
図 2 遺伝的アルゴリズム
Start
Generation=Stepend End
YesNo
11
2.4 結語
2.2 節では、L-system について例を用いて説明した。
2.3 節では、組み合わせ最適化理論と遺伝的アルゴリズムについて説明した
12
第 3 章 等分布荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生
3.1 概説
本章では、パラメータの決定に、GA を導入した L-system 用いて樹木構造の最適化を行
う。条件として、ライズとスパンの比、始点の位置、分岐角度を与え、最適な構造を求め
る。
3.2 節ではライズスパン比が 1:2 であるものを扱い、3.3 節ではライズスパン比が 1:4 で
あるものを扱う。それぞれ長期荷重を与えたときの解析例である。
モデルの決定方法としては、最大分岐可能回数をあらかじめ設定し、始点位置、ライズ
とスパンの比、分岐角度、部材の長さを GA により決定する方法である。
13
3.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例
梁 柱
材料 SS400 SS400
断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2
支持条件 下部固定
等分布荷重 4.94kN/m
図 3.2.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:2 であるモデルの解析例である。ひず
みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可
能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。
その後、求められた各モデルに等分布荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力を算出し、
断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。
図 3.2.1 樹木ラーメン構造モデル(スパン比 1:2)の解析例
表 3.2.1
等分布荷重
14
変位による比較
ただし、上向きを正とし、赤いほど上部にはらみ出し、青いほど下部に垂れ下がっている
ことを示す。
Model-1 最大分岐可能回数 :4
Model-2 最大分岐可能回数:5
15
Model-3 最大分岐可能:6
Model-4 最大分岐可能回数:7
16
Model-5 最大分岐可能回数:8
Model-6 最大分岐可能回数 :9
17
Model-7 最大分岐可能回数:10
18
モーメント図による比較
Model-1 最大分岐可能回数:4
Model-2 最大分岐可能回数:5
19
Model-3 最大分岐可能回数:6
Model-4 最大分岐可能回数:7
20
Model-5 最大分岐可能回数:8
Model-6 最大分岐可能回数:9
21
Model-7 最大分岐可能回数:10
22
軸力図による比較
Model-1 最大分岐可能回数:4
Model-2 最大分岐可能回数:5
23
Model-3 最大分岐可能回数:6
Model-4 最大分岐可能回数:7
24
Model-5 最大分岐可能回数:8
Model-6 最大分岐可能回数:9
25
Model-7 最大分岐可能回数:10
26
3.3 3.2 節の結果と考察
最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間
Model-1 25.06 120.13 0h59m30s
Model-2 24.78 93.81 1h15m32s
Model-3 24.78 90.72 1h13m35s
Model-4 24.78 114.96 1h18m56s
Model-5 24.78 102.26 2h3m23s
Model-6 25.05 97.58 3h6m56s
Model-7 24.78 98.52 5h5m7s
以上の Model-1~Model-7 はそれぞれ最大で 4 回、5 回、6 回、7 回、8 回、9 回、10 回分
岐が可能なモデルとなっている。
全体を通してみると柱にかかるモーメントを極力抑えることができた。その結果、座屈
に対する考慮をして、部材断面が大きくなり、突出して総鉄骨量が多くなるモデルはなか
った。
これらのモデルの中では、Model-3 が一番安定している。このモデルは分岐回数が 2 回
で部材の長さが他のモデルと比べると均一であるので応力がうまく分散している。そのた
め、総鉄骨量が一番少ない。また、ひずみエネルギーも小さく、力学的合理性、経済性を
最大分岐可能回数
[回]
最大分岐回数
[回]
ひずみエネルギ
ー[kNm]
最大曲げモーメン
ト[kNm]
Model-1 4 3 0.015855 1.64
Model-2 5 3 0.009808 0.96
Model-3 6 2 0.010353 0.82
Model-4 7 2 0.009711 1.35
Model-5 8 6 0.006374 0.8
Model-6 9 4 0.007664 0.78
Model-7 10 2 0.009652 0.89
表 3.3.1
表 3.3.2
27
兼ね備えた理想的なモデルであるといえる。
一方、一番分岐回数が多い Model-5 は、ひずみエネルギーが一番小さい。しかし、部材
数が多いため、安定はしているが長さが一様でない。その結果、長い部材に関しては座屈
が起こらないように断面 2 次半径を大きくとらなければならなく、総鉄骨量が多くなって
いる。このように、分岐回数を増やせば構造体としての安定性は高まるが、経済性には乏
しくなってしまう。
各モデルの分岐回数を見ると、Model-1 は最大分岐可能回数が 4 回であるが、実際には 3
回だけ分岐している。基本的に最大分岐可能回数が多くなれば、実際の分岐回数も多くな
っているが、Model-7 は最大分岐可能回数が 10 回にもかかわらず 2 回の分岐で最小対とな
っている。当然、最大分岐可能回数を増やせば増やすほど解析時間が長くなる。上記で述
べたように、分岐回数が増えれば優れたモデルができるわけではないということを踏まえ
ると、最大分岐可能回数が短いものに着目し、さらに部材長が短くなるように制約をする
ことで、より効率よく経済性を兼ね備えた理想的モデルを求めることができる。
28
3.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例
梁 柱
材料 SS400 SS400
断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2
支持条件 下部固定
等分布荷重 4.94kN/m
図 3.4.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:4 であるモデルの解析例である。ひず
みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可
能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。
その後、求められた各モデルに等分布荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力を算出し、
断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。
図 3.4.1 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)解析例
表 3.4.1
等分布荷重
29
変位による比較
ただし、上向きを正とし、赤いほど上部にはらみ出し、青いほど下部に垂れ下がっている
ことを示す。
Model-8 最大分岐可能回数:4
Model-9 最大分岐可能回数:5
30
Model-10 最大分岐可能回数:6
Model-11 最大分岐可能回数:7
31
Model-12 最大分岐可能回数:8
Model-13 最大分岐可能回数:9
32
Model-14 最大分岐可能回数:10
33
モーメント図による比較
Model-8 最大分岐可能回数:4
Model-9 最大分岐可能回数:5
34
Model-10 最大分岐可能回数:6
Model-11 最大分岐可能回数:7
35
Model-12 最大分岐可能回数:8
Model-13 最大分岐可能回数:9
36
Model-14 最大分岐可能回数:10
37
軸力図による比較
Model-8 最大分岐可能回数:4
Model-9 最大分岐可能回数:5
38
Model-10 最大分岐可能回数:6
Model-11 最大分岐可能回数:7
39
Model-12 最大分岐可能回数:8
Model-13 最大分岐可能回数:9
40
Model-14 最大分岐可能回数:10
41
3.5 3.4 節の結果と考察
最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間
Model-8 51.66 556.3 1h10m21s
Model-9 120.51 1640.25 1h34m32s
Model-10 62.97 1538.63 1h57m48s
Model-11 49.20 794.89 1h55m14s
Model-12 50.03 307.2 2h0m1s
Model-13 49.30 216.13 4h8m21s
Model-14 63.43 1505.44 7h0m45s
Model-9、10、14 の総鉄骨量は最小の Model-12 と比べると、約 5 倍となっている。こ
の 3 つのモデルの共通点は、始点が外側に向いていてアーチ形状となっている点である。
それにより、始めの部材がかなり内側に向き、分岐後内側にある部材が大きな負担を受け
ている。そして、分岐後外側にある部材は、内側の部材と比べるとあまり応力を受けてい
ないことがわかる。つまり、アーチ形状になることで、その部材に力が流れてしまう。そ
の結果、内側の部材断面が大きくなり、総鉄骨量が多くなる。
その他のモデルに関しては、始点が比較的中央にあり、力が上手く分散している。特に
Model-12、13 は、最大応力を見ると力が上手く分散していることがわかる。Model-12 は
上記の 3 つのモデルと同じアーチ形状であるが、さらにその内側にもう1つアーチに似た
最大分岐可能回数
[回]
最大分岐回数
[回]
ひずみエネルギ
ー [kNm]
最大曲げモーメン
ト[kNm]
Model-8 4 3 0.198781 4.35
Model-9 5 3 0.156797 24.51
Model-10 6 6 0.884585 18.10
Model-11 7 4 0.165571 7.53
Model-12 8 3 0.227981 3.13
Model-13 9 6 0.172318 6.35
Model-14 10 4 0.681691 15.47
表 3.5.1
表 3.5.2
42
形状が生成されているため力が分散している。Model-13 は分岐数こそ多いが、総鉄骨量は
一番少ない。分岐が多い分要素数は多いが、始点が中央付近にあり、ほとんど負荷を受け
ていない部材がないため力が上手く分散し、総鉄骨量が少なくなったと考えられる。総合
的に見てもこれらは、力学的合理性、経済性を兼ね備えた理想的なモデルであると言える。
3.6 結語
本章では、等分布荷重を受ける場合の樹木ラーメン構造の最適形態の生成を行ったが、1:2
のモデルでは、要素数と分岐回数が少ないほど力学的合理性、経済性を兼ね備えたものが
求められた。それに対して、1:4 のモデルでは、力を上手く分散させ要素数と分岐回数が多
くとも、鉄骨量が少なくなるモデルを求めることができた。
これらの解析モデルでは、柱にかかるモーメントを極力抑えることができた。これは、
角度を統一したことにより、力を分散させることができたからだと考えられる。それ故、
今後は最大分岐可能回数と部材長さを制限することで、より短時間で効率的に最適形態を
求めることができると考えられる。
1:4 のモデルでは、アーチ形状となることで良い結果も悪い結果も得られた。アーチの形
状が内側に生成されると、アーチにほとんどの力が集中してしまう。このことから、初期
の分岐位置と分岐角度をある程度制約することで力学的合理性、経済性を兼ね備えた理想
的なモデルが、より高確率で求められると考える。
本章では、分岐角度を統一させ、部材の長さを自由に変えることにより、力学的合理性、
経済性を兼ね備えたモデルを自動的に創生できる可能性を示した。
43
第 4 章 水平荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生
4.1 概説
本章では、パラメータの決定に、GA を導入した L-system を用いて樹木構造の最適化を
行う。4.2 節ではライズスパン比が 1:2 であるものを扱い、4.3 節ではライズスパン比が 1:4
であるものを扱う。それぞれ水平荷重を与えたときの解析例である。
モデルの決定方法としては、あらかじめ最大分岐可能回数を設定し、始点位置、ライズ
とスパンの比、分岐角度、部材の長さを GA により決定する方法である。
44
4.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例
梁 柱
材料 SS400 SS400
断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2
支持条件 下部固定
等分布荷重 4.95kN/m
水平荷重 5.9kN
図 4.2.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:2 であるモデルの解析例である。ひず
みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可
能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。
その後、求められた各モデルに等分布荷重と水平荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力
を算出し、断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。
図 4.2.1 樹木ラーメン構造解析例
表 4.2.1
等分布荷重
水平荷重
45
変位による比較
ただし、上向きを正とし、赤いほど上部にはらみ出し、青いほど下部に垂れ下がっている
ことを示す。
Model-1 最大分岐可能回数 :4
Model-2 最大分岐可能回数 :5
46
Model-3 最大分岐可能回数 :6
Model-4 最大分岐可能回数 :7
47
Model-5 最大分岐可能回数 :8
Model-6 最大分岐可能回数 :9
48
Model-7 最大分岐可能回数 :10
49
モーメント図による比較
Model-1 最大分岐可能回数 :4
Model-2 最大分岐可能回数 :5
50
Model-3 最大分岐可能回数 :6
Model-4 最大分岐可能回数 :7
51
Model-5 最大分岐可能回数 :8
Model-6 最大分岐可能回数 :9
52
Model-7 最大分岐可能回数 :10
53
軸力図による比較
Model-1 最大分岐可能回数 :4
Model-2 最大分岐可能回数 :5
54
Model-3 最大分岐可能回数 :6
Model-4 最大分岐可能回数 :7
55
Model-5 最大分岐可能回数 :8
Model-6 最大分岐可能回数 :9
56
Model-7 最大分岐可能回数 :10
57
4.3 4.2 節の結果と考察
本節の解析例では、全体的に分岐数が少なく、安定したモデルが多く見られた。Model-6
は分岐回数が一番多く、ひずみエネルギー、最大曲げモーメントは共に小さい。
総合して見ると、Model-1 が比較的安定している。総分岐回数が 14 回と最も分岐回数が
少ない Model-2、3、4 の 6 回と比べると倍以上となっている。しかし、分岐回数が多くと
も無駄な部材がないため力が上手く流れている。3 章で扱った鉛直荷重時には見られなかっ
た、柱が受けるモーメントが Model-1 以外は大きくなっているが、Model-1 ではかなり抑
えることができている。それにより、部材断面をそれほど大きくしなくとも座屈に対して
強く、総鉄骨量が一番少なくなっていると考えられる。
鉛直荷重時とは異なり柱要素のモーメントを抑えることができなかった。水平荷重時に
は、柱に発生するモーメントを完全になくすことが難しいため、座屈に対する考慮から、
必ずしも分岐回数と柱の要素が少ないものが、経済性が高いとはいえないということがわ
かる。
最大分岐可能回数
[回]
最大分岐回数
[回]
ひずみエネルギ
ー[kNm]
最大曲げモーメン
ト[kNm]
Model-1 4 3 0.008983 3.41
Model-2 5 2 0.009253 5.70
Model-3 6 2 0.009231 5.65
Model-4 7 2 0.009714 5.54
Model-5 8 3 0.010224 5.18
Model-6 9 4 0.007024 2.41
Model-7 10 3 0.000386 10.71
最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間
Model-1 24.68 155.67 0h51m48s
Model-2 24.32 267.74 0h57m17s
Model-3 24.35 267.03 1h3m32s
Model-4 24.37 264.93 1h12m45s
Model-5 24.27 264.89 1h36m41s
Model-6 25.11 136.40 3h14m10s
Model-7 30.83 407.31 4h53m39s
58
4.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例
図 4.4.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:4 であるモデルの解析例である。ひず
みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可
能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。
その後、求められた各モデルに等分布荷重と水平荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力
を算出し、断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。
梁 柱
材料 SS400 SS400
断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2
支持条件 下部固定
等分布荷重 4.95kN/m
水平荷重 11.8kN
図 4.4.1 樹木ラーメン構造の解析例(ライズスパン比 1:4)
等分布荷重
水平荷重
表 4.4.1
59
変位による比較
ただし、上向きを正とし、赤いほど上部にはらみ出し、青いほど下部に垂れ下がっている
ことを示す。
Model-8 最大分岐数 :4
Model-9 最大分岐数 :5
60
Model-10 最大分岐数 :6
Model-11 最大分岐数 :7
61
Model-12 最大分岐数 :8
Model-13 最大分岐数 :9
62
Model-14 最大分岐数 :10
63
モーメント図による比較
Model-8 最大分岐数 :4
Model-9 最大分岐数 :5
64
Model-10 最大分岐数 :6
Model-11 最大分岐数 :7
65
Model-12 最大分岐数 :8
Model-13 最大分岐数 :9
66
Model-14 最大分岐数 :10
67
軸力図による比較
Model-8 最大分岐数 :4
Model-9 最大分岐数 :5
68
Model-10 最大分岐数 :6
Model-11 最大分岐数 :7
69
Model-12 最大分岐数 :8
Model-13 最大分岐数 :9
70
Model-14 最大分岐数 :10
71
4.5 4.4 節の結果と考察
Model-13 は総鉄骨量、最大曲げモーメント共に数値が高い。最初の分岐後、すぐに同じ
角度で分岐し部材が一点に集中している。そのため、ほとんどの力を一本の部材が受けて
しまっている。また、一番外側の部材には力が流れておらず、まったく意味のない部材と
なっている。
Model-11、12 は比較的総鉄骨量が多い。この 2 つのモデルは全ての数値がほぼ同じであ
る。これらの特徴として、内側にアーチ形状ができている。左右のアーチ部分に力が流れ
てしまい、外側にある部材は半分以下の力しか受けていない。また、始点に注目すると、
最大分岐可能回数
[回]
最大分岐回数
[回]
ひずみエネルギ
ー [kNm]
最大曲げモーメン
ト[kNm]
Model-8 4 3 0.171601 8.46
Model-9 5 4 0.134741 7.71
Model-10 6 3 0.258723 13.34
Model-11 7 3 0.536000 15.15
Model-12 8 4 0.496930 17.57
Model-13 9 2 0.226418 94.28
Model-14 10 6 0.193958 9.93
最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間
Model-8 50.31 416.18 1h0m49s
Model-9 58.93 383.07 1h38m59s
Model-10 48.35 634.49 1h39m22s
Model-11 59.04 913.62 1h28m41s
Model-12 46.69 900.12 1h45m19s
Model-13 69.74 3618.18 4h0m31s
Model-14 49.70 333.54 5h26m52s
表 4.5.1
表 4.5.2
72
応力がかなり集中している。その結果、アーチ部分の部材断面が大きくなる。
Model-8、9、14 もアーチ形状であるが、Model-10、11、12 モデルと異なり、力学的に
見ても、経済的に見ても理想的なモデルであると言える。Model-8 は外側に、Model-9 は内
側のアーチ部分にのみ力が集中しないように補剛されている。そして、柱要素におけるモ
ーメントをほぼなくすことができている。また、他のモデルには見られる始点におけるモ
ーメントも 0 に近い数値となっている。そのため、座屈をあまり考慮する必要が無くなり、
部材断面が小さくなると考えられる。
4.6 結語
本章では、短期荷重を受ける場合の樹木ラーメン構造の最適形態の生成を行ったが、水
平荷重を受けるため第3章で扱ったモデルと異なり、柱(特に始点付近)にモーメントか
発生してしまった。そのため、力が集中することで部材断面が大きくなり、経済性を兼ね
備えたモデルが少なかった。
1:2 のモデルでは、水平荷重時には、柱に発生するモーメントを完全に無くすことが難し
いため、座屈に対する考慮から、部材断面が大きくなることで総鉄骨量も増え、必ずしも
分岐回数と柱の要素が少ないものが、経済性が高いとはいえないということがわかった。
1:4 のモデルは、第 3 章と同様アーチ形状のものが散見された。やはり、アーチ形状を構
成している部材の途中から分岐していてもアーチに力が集中してしまうことが多く、部材
断面が大きくなってしまった。しかし、アーチの外側あるいは内側を補剛し、同じような
アーチ形状ができることで、左右のアーチに力が集中しないようなモデルも求めることが
できた。
水平荷重をかけているため力がある程度集中してしまうことは予想できたが、外向きに
分岐し、まったく意味を成さない部材が散見された。つまり、アーチができるときは、外
側に向き過ぎないように分岐させる必要がある。
本章では、分岐角度を統一させ、部材の長さを自由に変えることにより、力学的合理性、
経済性を兼ね備えたモデルを自動的に創生できる可能性を示した。
73
第 5 章 結論
研究の総括と今後の課題
本研究では、真に美しい建築は美観性、力学的合理性、経済性を兼ね備えたものだと考
え、経済性に着目した。その上で樹木構造をモデルとし、分岐角度を統一することで経済
性の高いものを求めた。また、ライズスパン比と荷重条件を変え、解析を行った。
等分布荷重をかけた場合、ライズスパン比が 1:2 のモデルでは、全体を通してみると柱
にかかるモーメントを極力抑えることができた。その結果、座屈に対する考慮をして、部
材断面が大きくなり、突出して総鉄骨量が多くなることはなかった。しかし、最大分岐可
能回数が少なく、部材長さが短いモデルのほうが力学的合理性、経済性を兼ね備えた場合
が多かった。
一方、ライズスパン比が 1:4 のモデルでは、始点付近にモーメントが発生してしまうモ
デルが散見された。始点の位置が外側になりすぎ、初期の分岐角度が急になることで、力
が集中したことが原因だと考えられる。また、アーチ形状が有効的であることが予想され
た。そのため、部材数が少ないものよりも、アーチをさらにアーチで補剛している部材数
が多いもののほうが力学的合理性、経済性を兼ね備えた場合が多かった。
短期荷重をかけた場合、ライズスパン比が 1:2 のモデルでは、柱に発生するモーメント
を完全に無くすことが難しく、座屈に対する考慮をする必要があるが、それでも等分布荷
重時と同様に、最大分岐可能回数が少なく、部材長さが短いモデルにも良い結果が見られ
た。また、ライズスパン比が 1:4 のモデルでは、水平荷重をかけているため力がある程度
集中してしまうことは予想できたが、外向きに分岐し、まったく意味を成さない部材が散
見された。
1:2 のモデルでは、総じて最大分岐可能回数が少なく、部材長さが短いモデルのほうが
力学的合理性、経済性を兼ね備えた場合が多かった。そのため、今後は、最大分岐可能回
数が短いものに着目し、さらに部材長が短くなるように制約をすることで、より効率よく、
経済性を兼ね備えた理想的モデルを求めることができる。
1:4 のモデルではやはり、短期荷重をかけた場合等分布荷重のときと異なり、柱におけ
るモーメントが発生してしまった。また、部材間の角度が開きすぎ、水平荷重をかけたと
きに意味をなさない部材が見られた。今後は、部材間の角度が開きすぎずに、アーチをア
ーチで補剛するようなモデルも生成できるようにする必要がある。
本研究では、樹木構造において L-system を用いて、分岐角度を統一させ、部材長さを自
由に変えることで、力学的合理性、経済性を兼ね備えたモデルを創生することができる可
能性を示した。
今後の課題として、分岐回数を増やしても、必ずしも優れたモデルを得られるわけでは
ないため、分岐回数が少ないものに着目し、より効率よく良いモデルを求める必要がある。
74
また、本研究では、ひずみエネルギーを目的関数とし、最適形状を創生後、断面を算定
したが、今後は設計変数に断面形状を導入し、許容応力度を満たした上で最適解を求めら
れるようにする必要がある。
さらに、今回は 2 次元の樹木ラーメン構造の解析を行ったが、今後は 3 次元についても
解析を行い、樹木構造だけではなく、ラチスシェルのような連続体ではない構造の経済性
を高められるように研究を進めていく。
75
参考文献
[1]川口衛、阿部優、松谷宥彦、川崎一雄:建築構造のしくみ 力の流れとかたち.章国社、
1990
[2] 加藤伸子、奥野智江、岡野紋、狩野均、西原清一:仮想都市のための L-system による
道路網生成手法の検討
[3] 尾田十八、Sourav Kundu、斎藤誠:進化的 L システムによる最適形態創生手法に関る
研究
[4] 森永伸行、宮里直也、斎藤公男、坂井初、岡田章:樹木構造の「構造形態」に関する研
究 (その1)示力図を用いた部材配置決定方法の提案
[5]渡邊朋也:仮想植物の作成 2.形態と成長のモデル化 L-studio の利用
[6]Frederic P. Miller, Agnes F. Vandome, John McBrewster:L-system
[7] 大西克彦、蓮池祥一、北村喜文、岸野文郎:インタラクティブな成長シミュレーション
による仮想樹木モデルの生成
[8]Catherine Slessor:エコテック|21 世紀の建築.鹿島出版会.1999
76
謝辞
本論文を進めるにあたり、ご指導をいただきました全ての方々に感謝の意を表し、ここ
に謝辞といたします。
はじめに、法 政 大 学 教 授 の 佐 々 木 睦 朗 教 授 には、時には厳しくも時には優しいご指
導を賜りましたことを感謝いたします。また、日ごろよりご指導なさっている姿から世界
で活躍する建築家を肌で感じさせていただきました。それが、私にとっての活力となり、
非常に充実した日々を過ごすことができました。ここに改めて御礼を申し上げます。
佐々木研究室の諸先輩方には私に、数多くのご指導をいただきました。特に、同じ研究
班の先輩である、今澤先輩には、未熟な私に excel や MIDAS 等のソフトの基礎の基礎から
ご指導いただきました。また、本論文の内容に関しても、多くのご指導をいただきました。
本当にありがとうございました。また、同輩である當摩君、桜井君、足立君、石黒君、篠
原さん、高橋君、御園君、花川君、小西君、岡田さん、小柴さんとは、日々切磋琢磨して
いけたことを感謝します。
2012 年 10 月
横山 大城

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2012 09 n1144_kenkyu_横山大城

  • 1. L-system による樹木ラーメン構造の形態創生 に関する研究 指導 佐々木睦朗 教授 法政大学 デザイン工学部 建築学科 佐々木研究室 09N1144 横山 大城 2012 年度 卒業論文
  • 2. 目次 第 1 章 序論 1 1.1 研究の背景 ..................................................................................................................... 1 1.2 研究の目的と既往の研究................................................................................................ 2 1.3 論文の構成 ..................................................................................................................... 3 第 2 章 理論 4 2.1 概説 ................................................................................................................................ 4 2.2 L-system ...................................................................................................................... 4 2.3 GA.................................................................................................................................. 9 2.4 結語 ...............................................................................................................................11 第 3 章 等分布荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生 12 3.1 概説 .............................................................................................................................. 12 3.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例 ............................................. 13 3.3 3.2 節の結果と考察 ...................................................................................................... 26 3.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例 ............................................. 27 3.5 3.4 節の結果と考察 ...................................................................................................... 41 . 3.6 結語 ........................................................................................................................42 第 4 章 水平荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生 43 4.1 概説 .............................................................................................................................. 43 4.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例 ............................................. 44
  • 3. 4.3 4.2 節の結果と考察 ...................................................................................................... 57 4.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例 ............................................. 58 4.5 4.3 節の結果と考察 ...................................................................................................... 71 4.6 結語.........................................................................................................................72 第 5 章 結論 73 参考文献 75 謝辞 76
  • 4. 1 第 1 章 序論 1.1 研究の背景 自然界の生物は、様々な困難な状況に晒されている。しかし、それらは力学情報を感知 し、自ら形状や材料特性を調整することが可能であり、その環境に適合するため、何百万 年という時間を経過する間に突然変異や淘汰を繰り返し、進化してきた。この場合の進化 は、常に複雑な方向を目指すという意味ではない。その状況に適した最も原始的な形態を 目指している。その結果、構造上の出来栄えが素晴らしく、人々を魅了し、しばしば模倣 の対象となるのである。 建築において、天井や屋根にかかる面荷重を柱及び柱脚へどのように導くかが常に課題 となる。その有効的な解決策の1つとして樹木構造があげられる。形状の特徴は、一本の 柱から部材が枝分かれし、樹木のように上に向かって大きく広がっているという点である。 シュツットガルト空港(図 1.1.1)がその一例であり、魅力的な空間を創造することができ る構造形態である。形態の特徴としては、天井や屋根を均等に支えることができ、力を迂 回させずに直接導くという点である。また、多くの節点から個々の節点において力が束ね られ、伝達材料の節約にもなる。 図 1.1.1 シュツットガルト空港
  • 5. 2 これまでの樹木構造をモデルとした吊り下げ実験による研究では、水平力の考察が不可 能であった。また、数値解析による研究も設計変数が多く、モデル化が困難であった。 そこで L-System に着目する。L-System は、主に情報工学の分野で仮想環境内における樹 木モデルを生成するためや道路網の生成等に用いられているアルゴリズムである。この L-System を用いることで、少ない情報量で自己相似図形やフラクタル図形のような形状を 簡単に生成することができる。 1.2 研究の目的と既往の研究 L-system を用いれば角度を統一させ経済性を高めた上で、部材の長さを自由に変えるこ とができる。そこで、本研究では L-system を用い、部材の長さを自由に変え、力学的合理 性、経済性を兼ね備えた建築を模索していく。 L-system は元々、複雑である生物の形態生成に用いるため考案された。細胞の種類、出 発点の細胞、細胞の書き換え規則を与えることで、簡単に自己相似図形のような規則的な 形態を創生できる。そのため、これまでに機械や情報の分野で研究に用いられてきた。例 えば、樹木等の生物の形態生成の他、仮想都市における道路網 2)の生成や GA を組み合わせ 最適形状を求める 3)等である。 これまでに樹木構造をモデルとした研究として斎藤公男氏らによる「樹木構造の「構造 形態」に関する基礎的研究」がある。この研究では角度と接合部の高さを統一した形状の 最適化問題を扱っている。それは、「鉛直・水平荷重時にモーメントの発生を極力抑える ため」、「梁の曲げ応力度の低減」あるいは「分岐部における鋳鋼ジョイントの利用に伴 うコスト削減」等が目的である 4)。しかし、それでは接合部の高さ、つまり部材の長さが統 一され建築物として制約がかなりかかっている。また、形態の創生に際して、作図を行い、 手計算により形態を決定している。そこで、本研究ではパラメータの決定に GA を導入し た L-system を用いることで、自動的に最適な形態を決定する。また、GA で部材の長さを 決定し、接合部の高さを変化させる。そして、角度、長さを変化させることにより美観性、 力学的合理性、経済性を兼ね備えた建築を模索していく。
  • 6. 3 1.3 論文の構成 第 1 章 -序論- 本研究を行うに至った背景とそれを受けて本研究の目的を述べる。 第 2 章 -理論- 本論文で必要となる基礎理論の説明を述べる。 第 3 章 -等分布荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生- ライズスパン比を変えたモデルに等分布荷重をかけ、力学的合理性、経済性 を兼ね備えた形状を求める。 第 4 章 -水平荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生- ライズスパン比を変えたモデルに分布荷重に加え水平荷重をかけ、力学的合 理性、経済性を兼ね備えた形状を求める。 第 5 章 -結語- 本研究について総括を述べ今後の課題を述べる。
  • 7. 4 第2章 理論 2.1 概説 本章では、L-system についての説明を例を挙げて行う。また、本研究では L-system と GA(遺伝的アルゴリズム)を組み合わせることにより、最適構造を生成するため GA の説明 もあわせて行う。
  • 8. 5 2.2 L-system(Lindenmayer System) L-system とは、1968 年に生物学者 Aristid.Lindenmayer により導入された個体発生の 際の細胞間の相互作用を記述する形式文法であり、細胞内の状態変化にとらわれずに細胞 の分裂増殖を、書き換え規則を適用することにより示すものである 3)5)。元々は生物の形態 の発生を記述する概念を中心とした形態発生システムである。具体的には、細胞のタイプ、 細胞の書き換え規則、出発点の細胞を与えることにより形態を生成することができる。そ のため、自己相似図形から複雑な生物の形態まで L-system を用いれば簡単に表現できてし まう。またその種類として、1つの記号に対して1つの書き換え規則が与えられる決定論 的 L-system の他、条件や確立によって与えられる書き換え規則が違うテーブル L-system、 確立 L-system、GA で最適化をする進化的 L-system 等がある。以下に L-system を用いた 成長モデルの例を示す。 例:藻類(algae)6) 細胞タイプ: A B シンボル:なし 出発点細胞:A 細胞の書き換え規則:(A→AB), (B→A) ただし、n は細胞の進化回数。 n=0 : A n=1 : AB n=2 : ABA n=3 : ABAAB n=4 : ABAABABA n=5 : ABAABABAABAAB n=6 : ABAABABAABAABABAABABA n=7 : ABAABABAABAABABAABABAABAABABAABAAB
  • 9. 6 説明 n=0 :A :初めの細胞 ↓↘ n=1 :(A B) :最初の細胞 A から AB が生まれ、rule(A→AB)は適用 されているが、rule(B→A)はまだ適用できない。 ↓↘ ↘ n=2 :(A B) A :A は再び AB となり、B は A へ変化し、すべてのル ールが適用されている。 ↓↘ ↘ ↘↘ n=3 :(A B) A (A B) 例:コッホ曲線(Koch curve)6) 細胞タイプ: F シンボル:+、- 出発点細胞:F 細胞の書き換え規則:F→F+F-F-F+F ただし、F は直線の描画、+は左へ 90°回転、-は右へ 90°回転することを意味する。 nは細胞の進化回数。 n=0 _ :初めの細胞 F n=1 :初めの直線から左へ 90°回転し F が生まれ、次に右へ 90°回転し F が生まれ、もう一度右に 90°回転し、最後 に左へ 90°回転する。 n=2 :n=1 と同様にして F が F+F-F-F+F となり上記のよう に一筆書きのように図形が生成される、 F+F-F- F+F
  • 11. 8 例:樹木 7) 細胞タイプ: F シンボル:+、-、[ 、] 出発点細胞:F 細胞の書き換え規則:F→F[+F]F[-F] ただし、n は細胞の進化回数。+は左に、-は右向きに生成することを表す。[ は新しい枝 が始まることを、] は枝が終わることを表す。 n=0 :初めの枝。 F n=1 :[+F]は枝が左方向に生成され、その後、 すぐに枝が終わることを表している。 F[+F]F[-F] n=2 :同様にして、枝の始まりと終わりを表現 し、樹木のような形状が生成される。 F[+F]F[-F] [F[+F]F[-F]] F[+F]F[-F][ F[+F]F[-F]]
  • 12. 9 2.3 遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithm) 組合せ最適化理論 離散構造物の形態創生における問題の多くは,組合せ最適化問題として定式化できる。 例えば,トラスのトポロジー最適化問題は,部材の配置候補位置から実際に部材を配置さ せる位置の最適な組合せを求める問題である。また,部材断面を設計変数とする場合にも, それらは与えられた製品リストの中から選択される場合が一般的であるため,部材の種類 の組合せ最適化問題となる。このような組合せ最適化問題は,部材の存在を 0 と 1 の整数 値を用いて表すことにより,0-1 計画問題として定式化できる。また,選択できる部材の種 類が複数個ある場合には,一般の整数計画問題となる。 一般的な組合せ最適化問題における定式化として,目的関数F と制約条件が非負変数 jX ),...,( Ni 1 の線形関数であるとした場合,係数行列の成分を ijA , ijD , 定数ベクトルの成分及 びコスト係数を iB , iE ,及び jC とし,等式及び不等式制約条件を有する整数計画問題[29]が以 下で表現される。   N j jj XCF 1   N j ijij BXA 1 , ),...,1( B Ni    N j ijij EXD 1 , ),...,1( E Ni  jX :非負の整数 ),...,1( Ni  整数計画問題は,その形式によっていくつかの典型的な問題に分類され,それぞれに対 して有効な手法が提案されている。現在最も多く研究されている探索アルゴリズムの一つ が遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)である。遺伝的アルゴリズムは,適用範囲の非 常に広い,生物の進化過程を模倣した学習的アルゴリズムである。以下,遺伝的アルゴリ ズムを必要に応じて GA と略記する。 Minimize toSubject 
  • 13. 10 □遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm) GA は,生物の進化のメカニズムにならった探索アルゴリズムである。 本研究で用いる単純遺伝的アルゴリズム(Simple Genetic Algorithm)を以下に示す。 [1] 問題を,遺伝子に対応する文字列(string)に変換する。 [2] 文字列の集団(population)を発生させる。 [3] この文字列を評価し,適合度 fitness を計算する。 [4] 評価値の高い集団を選んで残す淘汰を行う。 [5] 選ばれた集団に対して,以下に示すオペレーターを施すことにより新しい文字列を 生成する。 i)文字列を複製する機能をもつ自己再生(copy) ii)二つの文字列に対して部分的な交換を行うことによって新しい文字列を生み出す交 叉(crossover) iii)文字列を複製する時に確率的に誤りを生じさせる突然変異(mutation) [6] 指定条件を満たすまで[2]~[5]を繰り返す。 GA におけるフローを図 2 に示す。 問題を文字列にコード化 文字列の集団 population を作る 文字列を評価する(適合度計算) 評価値に応じて淘汰を受ける 遺伝的操作により新しい population を生成 図 2 遺伝的アルゴリズム Start Generation=Stepend End YesNo
  • 14. 11 2.4 結語 2.2 節では、L-system について例を用いて説明した。 2.3 節では、組み合わせ最適化理論と遺伝的アルゴリズムについて説明した
  • 15. 12 第 3 章 等分布荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生 3.1 概説 本章では、パラメータの決定に、GA を導入した L-system 用いて樹木構造の最適化を行 う。条件として、ライズとスパンの比、始点の位置、分岐角度を与え、最適な構造を求め る。 3.2 節ではライズスパン比が 1:2 であるものを扱い、3.3 節ではライズスパン比が 1:4 で あるものを扱う。それぞれ長期荷重を与えたときの解析例である。 モデルの決定方法としては、最大分岐可能回数をあらかじめ設定し、始点位置、ライズ とスパンの比、分岐角度、部材の長さを GA により決定する方法である。
  • 16. 13 3.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例 梁 柱 材料 SS400 SS400 断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2 支持条件 下部固定 等分布荷重 4.94kN/m 図 3.2.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:2 であるモデルの解析例である。ひず みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可 能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。 その後、求められた各モデルに等分布荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力を算出し、 断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。 図 3.2.1 樹木ラーメン構造モデル(スパン比 1:2)の解析例 表 3.2.1 等分布荷重
  • 29. 26 3.3 3.2 節の結果と考察 最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間 Model-1 25.06 120.13 0h59m30s Model-2 24.78 93.81 1h15m32s Model-3 24.78 90.72 1h13m35s Model-4 24.78 114.96 1h18m56s Model-5 24.78 102.26 2h3m23s Model-6 25.05 97.58 3h6m56s Model-7 24.78 98.52 5h5m7s 以上の Model-1~Model-7 はそれぞれ最大で 4 回、5 回、6 回、7 回、8 回、9 回、10 回分 岐が可能なモデルとなっている。 全体を通してみると柱にかかるモーメントを極力抑えることができた。その結果、座屈 に対する考慮をして、部材断面が大きくなり、突出して総鉄骨量が多くなるモデルはなか った。 これらのモデルの中では、Model-3 が一番安定している。このモデルは分岐回数が 2 回 で部材の長さが他のモデルと比べると均一であるので応力がうまく分散している。そのた め、総鉄骨量が一番少ない。また、ひずみエネルギーも小さく、力学的合理性、経済性を 最大分岐可能回数 [回] 最大分岐回数 [回] ひずみエネルギ ー[kNm] 最大曲げモーメン ト[kNm] Model-1 4 3 0.015855 1.64 Model-2 5 3 0.009808 0.96 Model-3 6 2 0.010353 0.82 Model-4 7 2 0.009711 1.35 Model-5 8 6 0.006374 0.8 Model-6 9 4 0.007664 0.78 Model-7 10 2 0.009652 0.89 表 3.3.1 表 3.3.2
  • 30. 27 兼ね備えた理想的なモデルであるといえる。 一方、一番分岐回数が多い Model-5 は、ひずみエネルギーが一番小さい。しかし、部材 数が多いため、安定はしているが長さが一様でない。その結果、長い部材に関しては座屈 が起こらないように断面 2 次半径を大きくとらなければならなく、総鉄骨量が多くなって いる。このように、分岐回数を増やせば構造体としての安定性は高まるが、経済性には乏 しくなってしまう。 各モデルの分岐回数を見ると、Model-1 は最大分岐可能回数が 4 回であるが、実際には 3 回だけ分岐している。基本的に最大分岐可能回数が多くなれば、実際の分岐回数も多くな っているが、Model-7 は最大分岐可能回数が 10 回にもかかわらず 2 回の分岐で最小対とな っている。当然、最大分岐可能回数を増やせば増やすほど解析時間が長くなる。上記で述 べたように、分岐回数が増えれば優れたモデルができるわけではないということを踏まえ ると、最大分岐可能回数が短いものに着目し、さらに部材長が短くなるように制約をする ことで、より効率よく経済性を兼ね備えた理想的モデルを求めることができる。
  • 31. 28 3.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例 梁 柱 材料 SS400 SS400 断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2 支持条件 下部固定 等分布荷重 4.94kN/m 図 3.4.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:4 であるモデルの解析例である。ひず みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可 能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。 その後、求められた各モデルに等分布荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力を算出し、 断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。 図 3.4.1 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)解析例 表 3.4.1 等分布荷重
  • 44. 41 3.5 3.4 節の結果と考察 最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間 Model-8 51.66 556.3 1h10m21s Model-9 120.51 1640.25 1h34m32s Model-10 62.97 1538.63 1h57m48s Model-11 49.20 794.89 1h55m14s Model-12 50.03 307.2 2h0m1s Model-13 49.30 216.13 4h8m21s Model-14 63.43 1505.44 7h0m45s Model-9、10、14 の総鉄骨量は最小の Model-12 と比べると、約 5 倍となっている。こ の 3 つのモデルの共通点は、始点が外側に向いていてアーチ形状となっている点である。 それにより、始めの部材がかなり内側に向き、分岐後内側にある部材が大きな負担を受け ている。そして、分岐後外側にある部材は、内側の部材と比べるとあまり応力を受けてい ないことがわかる。つまり、アーチ形状になることで、その部材に力が流れてしまう。そ の結果、内側の部材断面が大きくなり、総鉄骨量が多くなる。 その他のモデルに関しては、始点が比較的中央にあり、力が上手く分散している。特に Model-12、13 は、最大応力を見ると力が上手く分散していることがわかる。Model-12 は 上記の 3 つのモデルと同じアーチ形状であるが、さらにその内側にもう1つアーチに似た 最大分岐可能回数 [回] 最大分岐回数 [回] ひずみエネルギ ー [kNm] 最大曲げモーメン ト[kNm] Model-8 4 3 0.198781 4.35 Model-9 5 3 0.156797 24.51 Model-10 6 6 0.884585 18.10 Model-11 7 4 0.165571 7.53 Model-12 8 3 0.227981 3.13 Model-13 9 6 0.172318 6.35 Model-14 10 4 0.681691 15.47 表 3.5.1 表 3.5.2
  • 45. 42 形状が生成されているため力が分散している。Model-13 は分岐数こそ多いが、総鉄骨量は 一番少ない。分岐が多い分要素数は多いが、始点が中央付近にあり、ほとんど負荷を受け ていない部材がないため力が上手く分散し、総鉄骨量が少なくなったと考えられる。総合 的に見てもこれらは、力学的合理性、経済性を兼ね備えた理想的なモデルであると言える。 3.6 結語 本章では、等分布荷重を受ける場合の樹木ラーメン構造の最適形態の生成を行ったが、1:2 のモデルでは、要素数と分岐回数が少ないほど力学的合理性、経済性を兼ね備えたものが 求められた。それに対して、1:4 のモデルでは、力を上手く分散させ要素数と分岐回数が多 くとも、鉄骨量が少なくなるモデルを求めることができた。 これらの解析モデルでは、柱にかかるモーメントを極力抑えることができた。これは、 角度を統一したことにより、力を分散させることができたからだと考えられる。それ故、 今後は最大分岐可能回数と部材長さを制限することで、より短時間で効率的に最適形態を 求めることができると考えられる。 1:4 のモデルでは、アーチ形状となることで良い結果も悪い結果も得られた。アーチの形 状が内側に生成されると、アーチにほとんどの力が集中してしまう。このことから、初期 の分岐位置と分岐角度をある程度制約することで力学的合理性、経済性を兼ね備えた理想 的なモデルが、より高確率で求められると考える。 本章では、分岐角度を統一させ、部材の長さを自由に変えることにより、力学的合理性、 経済性を兼ね備えたモデルを自動的に創生できる可能性を示した。
  • 46. 43 第 4 章 水平荷重を受ける樹木ラーメン構造の形態創生 4.1 概説 本章では、パラメータの決定に、GA を導入した L-system を用いて樹木構造の最適化を 行う。4.2 節ではライズスパン比が 1:2 であるものを扱い、4.3 節ではライズスパン比が 1:4 であるものを扱う。それぞれ水平荷重を与えたときの解析例である。 モデルの決定方法としては、あらかじめ最大分岐可能回数を設定し、始点位置、ライズ とスパンの比、分岐角度、部材の長さを GA により決定する方法である。
  • 47. 44 4.2 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:2)の解析例 梁 柱 材料 SS400 SS400 断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2 支持条件 下部固定 等分布荷重 4.95kN/m 水平荷重 5.9kN 図 4.2.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:2 であるモデルの解析例である。ひず みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可 能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。 その後、求められた各モデルに等分布荷重と水平荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力 を算出し、断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。 図 4.2.1 樹木ラーメン構造解析例 表 4.2.1 等分布荷重 水平荷重
  • 49. 46 Model-3 最大分岐可能回数 :6 Model-4 最大分岐可能回数 :7
  • 50. 47 Model-5 最大分岐可能回数 :8 Model-6 最大分岐可能回数 :9
  • 53. 50 Model-3 最大分岐可能回数 :6 Model-4 最大分岐可能回数 :7
  • 54. 51 Model-5 最大分岐可能回数 :8 Model-6 最大分岐可能回数 :9
  • 57. 54 Model-3 最大分岐可能回数 :6 Model-4 最大分岐可能回数 :7
  • 58. 55 Model-5 最大分岐可能回数 :8 Model-6 最大分岐可能回数 :9
  • 60. 57 4.3 4.2 節の結果と考察 本節の解析例では、全体的に分岐数が少なく、安定したモデルが多く見られた。Model-6 は分岐回数が一番多く、ひずみエネルギー、最大曲げモーメントは共に小さい。 総合して見ると、Model-1 が比較的安定している。総分岐回数が 14 回と最も分岐回数が 少ない Model-2、3、4 の 6 回と比べると倍以上となっている。しかし、分岐回数が多くと も無駄な部材がないため力が上手く流れている。3 章で扱った鉛直荷重時には見られなかっ た、柱が受けるモーメントが Model-1 以外は大きくなっているが、Model-1 ではかなり抑 えることができている。それにより、部材断面をそれほど大きくしなくとも座屈に対して 強く、総鉄骨量が一番少なくなっていると考えられる。 鉛直荷重時とは異なり柱要素のモーメントを抑えることができなかった。水平荷重時に は、柱に発生するモーメントを完全になくすことが難しいため、座屈に対する考慮から、 必ずしも分岐回数と柱の要素が少ないものが、経済性が高いとはいえないということがわ かる。 最大分岐可能回数 [回] 最大分岐回数 [回] ひずみエネルギ ー[kNm] 最大曲げモーメン ト[kNm] Model-1 4 3 0.008983 3.41 Model-2 5 2 0.009253 5.70 Model-3 6 2 0.009231 5.65 Model-4 7 2 0.009714 5.54 Model-5 8 3 0.010224 5.18 Model-6 9 4 0.007024 2.41 Model-7 10 3 0.000386 10.71 最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間 Model-1 24.68 155.67 0h51m48s Model-2 24.32 267.74 0h57m17s Model-3 24.35 267.03 1h3m32s Model-4 24.37 264.93 1h12m45s Model-5 24.27 264.89 1h36m41s Model-6 25.11 136.40 3h14m10s Model-7 30.83 407.31 4h53m39s
  • 61. 58 4.4 樹木ラーメン構造モデル(ライズスパン比 1:4)の解析例 図 4.4.1 は樹木ラーメン構造のライズスパン比が 1:4 であるモデルの解析例である。ひず みエネルギーを目的関数とし、以上の初期条件のもと最適な形状を求める。また、分岐可 能回数を 4~10 回に設定し、始点位置、分岐角度、部材の長さを GA を用いて決定する。 その後、求められた各モデルに等分布荷重と水平荷重をかけ、MIDAS でモーメント、軸力 を算出し、断面の修正を行い、総鉄骨量を求める。 梁 柱 材料 SS400 SS400 断面 H 150×75×5×7 pg 21.7×2 支持条件 下部固定 等分布荷重 4.95kN/m 水平荷重 11.8kN 図 4.4.1 樹木ラーメン構造の解析例(ライズスパン比 1:4) 等分布荷重 水平荷重 表 4.4.1
  • 74. 71 4.5 4.4 節の結果と考察 Model-13 は総鉄骨量、最大曲げモーメント共に数値が高い。最初の分岐後、すぐに同じ 角度で分岐し部材が一点に集中している。そのため、ほとんどの力を一本の部材が受けて しまっている。また、一番外側の部材には力が流れておらず、まったく意味のない部材と なっている。 Model-11、12 は比較的総鉄骨量が多い。この 2 つのモデルは全ての数値がほぼ同じであ る。これらの特徴として、内側にアーチ形状ができている。左右のアーチ部分に力が流れ てしまい、外側にある部材は半分以下の力しか受けていない。また、始点に注目すると、 最大分岐可能回数 [回] 最大分岐回数 [回] ひずみエネルギ ー [kNm] 最大曲げモーメン ト[kNm] Model-8 4 3 0.171601 8.46 Model-9 5 4 0.134741 7.71 Model-10 6 3 0.258723 13.34 Model-11 7 3 0.536000 15.15 Model-12 8 4 0.496930 17.57 Model-13 9 2 0.226418 94.28 Model-14 10 6 0.193958 9.93 最大軸力[kN] 総鉄骨量[kg] 解析時間 Model-8 50.31 416.18 1h0m49s Model-9 58.93 383.07 1h38m59s Model-10 48.35 634.49 1h39m22s Model-11 59.04 913.62 1h28m41s Model-12 46.69 900.12 1h45m19s Model-13 69.74 3618.18 4h0m31s Model-14 49.70 333.54 5h26m52s 表 4.5.1 表 4.5.2
  • 75. 72 応力がかなり集中している。その結果、アーチ部分の部材断面が大きくなる。 Model-8、9、14 もアーチ形状であるが、Model-10、11、12 モデルと異なり、力学的に 見ても、経済的に見ても理想的なモデルであると言える。Model-8 は外側に、Model-9 は内 側のアーチ部分にのみ力が集中しないように補剛されている。そして、柱要素におけるモ ーメントをほぼなくすことができている。また、他のモデルには見られる始点におけるモ ーメントも 0 に近い数値となっている。そのため、座屈をあまり考慮する必要が無くなり、 部材断面が小さくなると考えられる。 4.6 結語 本章では、短期荷重を受ける場合の樹木ラーメン構造の最適形態の生成を行ったが、水 平荷重を受けるため第3章で扱ったモデルと異なり、柱(特に始点付近)にモーメントか 発生してしまった。そのため、力が集中することで部材断面が大きくなり、経済性を兼ね 備えたモデルが少なかった。 1:2 のモデルでは、水平荷重時には、柱に発生するモーメントを完全に無くすことが難し いため、座屈に対する考慮から、部材断面が大きくなることで総鉄骨量も増え、必ずしも 分岐回数と柱の要素が少ないものが、経済性が高いとはいえないということがわかった。 1:4 のモデルは、第 3 章と同様アーチ形状のものが散見された。やはり、アーチ形状を構 成している部材の途中から分岐していてもアーチに力が集中してしまうことが多く、部材 断面が大きくなってしまった。しかし、アーチの外側あるいは内側を補剛し、同じような アーチ形状ができることで、左右のアーチに力が集中しないようなモデルも求めることが できた。 水平荷重をかけているため力がある程度集中してしまうことは予想できたが、外向きに 分岐し、まったく意味を成さない部材が散見された。つまり、アーチができるときは、外 側に向き過ぎないように分岐させる必要がある。 本章では、分岐角度を統一させ、部材の長さを自由に変えることにより、力学的合理性、 経済性を兼ね備えたモデルを自動的に創生できる可能性を示した。
  • 76. 73 第 5 章 結論 研究の総括と今後の課題 本研究では、真に美しい建築は美観性、力学的合理性、経済性を兼ね備えたものだと考 え、経済性に着目した。その上で樹木構造をモデルとし、分岐角度を統一することで経済 性の高いものを求めた。また、ライズスパン比と荷重条件を変え、解析を行った。 等分布荷重をかけた場合、ライズスパン比が 1:2 のモデルでは、全体を通してみると柱 にかかるモーメントを極力抑えることができた。その結果、座屈に対する考慮をして、部 材断面が大きくなり、突出して総鉄骨量が多くなることはなかった。しかし、最大分岐可 能回数が少なく、部材長さが短いモデルのほうが力学的合理性、経済性を兼ね備えた場合 が多かった。 一方、ライズスパン比が 1:4 のモデルでは、始点付近にモーメントが発生してしまうモ デルが散見された。始点の位置が外側になりすぎ、初期の分岐角度が急になることで、力 が集中したことが原因だと考えられる。また、アーチ形状が有効的であることが予想され た。そのため、部材数が少ないものよりも、アーチをさらにアーチで補剛している部材数 が多いもののほうが力学的合理性、経済性を兼ね備えた場合が多かった。 短期荷重をかけた場合、ライズスパン比が 1:2 のモデルでは、柱に発生するモーメント を完全に無くすことが難しく、座屈に対する考慮をする必要があるが、それでも等分布荷 重時と同様に、最大分岐可能回数が少なく、部材長さが短いモデルにも良い結果が見られ た。また、ライズスパン比が 1:4 のモデルでは、水平荷重をかけているため力がある程度 集中してしまうことは予想できたが、外向きに分岐し、まったく意味を成さない部材が散 見された。 1:2 のモデルでは、総じて最大分岐可能回数が少なく、部材長さが短いモデルのほうが 力学的合理性、経済性を兼ね備えた場合が多かった。そのため、今後は、最大分岐可能回 数が短いものに着目し、さらに部材長が短くなるように制約をすることで、より効率よく、 経済性を兼ね備えた理想的モデルを求めることができる。 1:4 のモデルではやはり、短期荷重をかけた場合等分布荷重のときと異なり、柱におけ るモーメントが発生してしまった。また、部材間の角度が開きすぎ、水平荷重をかけたと きに意味をなさない部材が見られた。今後は、部材間の角度が開きすぎずに、アーチをア ーチで補剛するようなモデルも生成できるようにする必要がある。 本研究では、樹木構造において L-system を用いて、分岐角度を統一させ、部材長さを自 由に変えることで、力学的合理性、経済性を兼ね備えたモデルを創生することができる可 能性を示した。 今後の課題として、分岐回数を増やしても、必ずしも優れたモデルを得られるわけでは ないため、分岐回数が少ないものに着目し、より効率よく良いモデルを求める必要がある。
  • 78. 75 参考文献 [1]川口衛、阿部優、松谷宥彦、川崎一雄:建築構造のしくみ 力の流れとかたち.章国社、 1990 [2] 加藤伸子、奥野智江、岡野紋、狩野均、西原清一:仮想都市のための L-system による 道路網生成手法の検討 [3] 尾田十八、Sourav Kundu、斎藤誠:進化的 L システムによる最適形態創生手法に関る 研究 [4] 森永伸行、宮里直也、斎藤公男、坂井初、岡田章:樹木構造の「構造形態」に関する研 究 (その1)示力図を用いた部材配置決定方法の提案 [5]渡邊朋也:仮想植物の作成 2.形態と成長のモデル化 L-studio の利用 [6]Frederic P. Miller, Agnes F. Vandome, John McBrewster:L-system [7] 大西克彦、蓮池祥一、北村喜文、岸野文郎:インタラクティブな成長シミュレーション による仮想樹木モデルの生成 [8]Catherine Slessor:エコテック|21 世紀の建築.鹿島出版会.1999
  • 79. 76 謝辞 本論文を進めるにあたり、ご指導をいただきました全ての方々に感謝の意を表し、ここ に謝辞といたします。 はじめに、法 政 大 学 教 授 の 佐 々 木 睦 朗 教 授 には、時には厳しくも時には優しいご指 導を賜りましたことを感謝いたします。また、日ごろよりご指導なさっている姿から世界 で活躍する建築家を肌で感じさせていただきました。それが、私にとっての活力となり、 非常に充実した日々を過ごすことができました。ここに改めて御礼を申し上げます。 佐々木研究室の諸先輩方には私に、数多くのご指導をいただきました。特に、同じ研究 班の先輩である、今澤先輩には、未熟な私に excel や MIDAS 等のソフトの基礎の基礎から ご指導いただきました。また、本論文の内容に関しても、多くのご指導をいただきました。 本当にありがとうございました。また、同輩である當摩君、桜井君、足立君、石黒君、篠 原さん、高橋君、御園君、花川君、小西君、岡田さん、小柴さんとは、日々切磋琢磨して いけたことを感謝します。 2012 年 10 月 横山 大城