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Ⅹ 一
Ⅹ +
へ 一
ラグビ一指導の手引き
2002
J. R. F. U.
親日本ラグビーフットボール協会
上;
ミ ニ ・ ラグビ一指導の手引き
2 0 0 2
今この手引きを読もうとしているあなたは、子どもたちにラグビーを
指導している人か、あるいはこれから指導をしようとする人のはずです。
その理由がどうあれ、あなたは子どもたちにラグビーを指導することを引
き受け、子どもたちはあなたをコーチあるいは先生とさえ呼ぶことでしょ
う。子どもたちを指導するということは、好むと好まざるとに関わらず子
どもたちの心身の発育・発達に関わることであり、指導者の責任は極めて
重大です。あなたはその責任を引き受けたのです。
この手引きは、あなたが子どもたちに子どもたちのラグビー、ミニ・ラ
グビーを指導する際に、その手助けとなるよう善かれたものです。
平成14年3円
日本ラグビーフットボール協会
普及育成委員会
ミニ・ラグビー小委員会
Ⅰ
ハイ
ヰ ・
へ一ラグビ一指導の手引 き 作成委員
平成4年に出版された「ミニ・ラグビ一指導の手引き」は、実際に毎週末ミニ・ラグビーを子どもたちに
指導されている指導者を中心に、多くの皆様の協力を得て作成されたものです。そして今回10年の時を経
て、競技規則の大改訂を機に「ミニ・ラグビ一指導の手引き 2002」として改訂版を作成することになりま
した。
以下に編集・出版の中核を担われた方々への感謝の意を込め、それぞれの作成委員会のメンバーを記させ
ていただきます。
日本ラグビーフットボール協会普及育成委員会 委員長 前田 嘉昭
委員長
副委員長
委 員、
江田
辻野
内田
J1鳴
田内
安松
竹本
森田
山道
と川1
使
伊野
英田
砂田
落合
鳥居
墳崎
百日
昌佑
H刃口
雄二
淳夫
正昭
寿
譲治
邦昭
信之
幹夫
一彦
行弘
昌宏
英夫
文平
哲夫
俊治
「ミニ・ラグビ一指導の手引き」作成委員会
日本ラグビーフットボール協会コーチソサエティ委員長
日本ラグビーフットボール協会コーチソサエティ副委員長
日本ラグビーフットボール協会コーチソサエティ委員
関東ラグビーフットボール協会ミニ・ラグビーインストラクタ一
関西ラグビーフットボール協会ミニ・ラグビーインストラクタ一
九州ラグビーフットボール協会ミニ・ラグビーインストラクター
ク
ク
ク
(肩書きは平成4年9円当時)
委員長
副委員長
川島
寺尾
飯原
井上
無住
英田
北畑
桑野
鈴木
竹本
神村
松岡
山道
吉田
武田
梶岡
笠松
徳田
淳夫
寛
雅称
哲夫
俊治
行弘
幸二
裕文
博之
譲治
清弘
敏男
信之
純司
守人
晴美
冥見
謙介
「ミニ・ラグビ一指導の手引き 2002」作成委員会
日本ラグビーフットボール協会普及育成委員会委員
関東ラグビーフットボール協会ミニ・ラグビーインストラクタ一
関西ラグビーフットボール協会ミニ・ラグビーインストラクタ一
九州ラグビーフットボール協会ミニ・ラグビーインストラクター
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
ク
2
(肩書きは平成14年3戸現在)
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目 次
はじめに
第I章 子どもがスポーツをする意義
第2章 なぜミニ・ラグビーなのか
第3章 指導者に求められるもの
第4 章 指導方法上の課題
第5章 ウォーミングアップとウォーミングダウン
第6章 段階別の指導目標と指導内容
第7章 段階別練習の具体例
第8章 少年ラグビークラブにおけるマネジメント(management) の工夫
おわりに
ィ寸余暴1 ミニ・ラグビープレーヤーのためのコード
付録2 関東協会ラグビースクール・メディカル・アンケート報告
付録3 「ラグビー精神とは」
付録4 ラグビー憲葦
付録5 段階別 (学年別)の練習内容例
付録6 スキルアフード
付録7 通 達
参考文献
編集後記
4
5
6
8
4
0
4
9
7
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Ⅰ
2
2
2
5
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は じ め に
日本ラグビーフットボール協会が小学生期のラグビーとしてミニ・ラグビーの導入を決定したのは
l987年のことです。当時は、l965年の東京ラグビースクールを皮切りに、ラグビーのすばらしさを子
どもたちに伝えたいという思いを強くもった指導者達によって、主に「ラグビースクール」という名
称で全国各地に少年ラグビーの団体が生まれ育っていった時期でした。それぞれの団体はそれぞれの
創設者の熱い恩、いで指導されていましたが、その結果、少年ラグビー用に統一されたルールもなく、
試合でのチームの人数もI5人から5人までまちまちでした。ラグビー協会とラグビースクール等の少
年ラグビ一団体との関係が希薄であったのも事実です。そのような状況での日本協会主導によるミニ・
ラグビーの導入には、多くの障害がありました。しかし日本協会はミニ・ラグビー普及の担い手とし
てインストラクターを任命したのを皮切りに、全国ミニ・ラグビ一指導者連経協議会を頂点とした指
導者講習会・研修会の開催等、ミニ・ラグビーに関わる各種専業を展開し、指導者への啓発活動を行
いました。その結果、ミニ・ラグビーは急速に普及し、現在では小学生ラグビーの代名詞として確固
たる地位を築くに至りました。1987年には全国で250に満たなかった少年ラグビーの団体も、今では
370を超える数となりました。また少子化という大きな逆風を受け、競技人口の減少が進行する中で、
小学生プレーヤーの数はわずかながらも増え続けています。
ミニ・ラグビーを導入するにあたって、ウェールズ、イングランドのものをそのまま導入すること
が適切であるかについては、日本協会内でも議論がありました。しかし、最終的にはあるがままを全
面的に取り入れ、その上で不都合があれば逐次修正し、日本のミニ・ラグビーを築くという方針をと
りました。結果的にルールは毎年加筆・修正がなされ、日本独自のルールも生まれてきました。中学
生ラグビーとして日本独自のジュニア・ラグビーが誕生したことも、日本のミニ・ラグビーに少なか
らず影響を与えました。一方、本家本元のウェールズ、イングランドでもミニ・ラグビーは徐々に変
化してきました。特にパスウェイ、つまり「年少者の少人数・簡易ゲームからは人制のフル・ラグ
ビーに至る流れ(ゲーム体系)」という考え方が世界的に一般的になる中で、小学生期のラグビーを何
段階かに区切って、段階的にラグビーを発展させていくという指導方法がとられる23になってきま
した。実はこの考え方は1992年に日本独自のミニ・ラグビ一指導書として出版された「ミニ・ラグ
ビ一指導の手引き」の中にも含まれています。今年度、このパスウェイの考え方を明確に打ち出し、
ミニ・ラグビーをより体系化して提示することを主眼として、ミニ・ラグビーの競技規則を大改訂し
ました。そしてこれを期に「ミニ・ラグビ一指導の手引き」を改訂出版することになりました。本来
なら競技規則の改訂と同時に出版すべきところでしたが、半年遅れとなってしまったためタイトルを
「ミニ・ラグビ一指導の手引き 2002」としました。
改訂されたミニ・ラグビーの競技規則とこの「ミニ・ラグビ一指導の手引き 2002」とはお互いに
補完しあって、年少の初心者がラグビーボールにはじめて触れるところから、最終的には小学生の完
成段階である9人制のミニ・ラグビーへどのように発展していくのかを示すことになります。ミニ・
ラグビ一指導者の皆様には、是非この手引きを精読頂き、前述しましたパスウェイという考え方を念
頭に置き、明確な見通しを待って子どもたちの指導に当たっていただけることを期待しています。
「ミニ・ラグビ一指導の手引き 2002J 作成委員会
委員長 川島 淳夫
4
■
l
第1章 子どもがスポーツをする意義
人は歩くことはもちろん這うこともできない、運
動能力的にはまったく未熟な状態で生まれます。
しかし、月日が経つにつれて特別な運動をしなく
ても、また特に習わなくとも自然に遣い、立ち、歩
き、走ることさえ出来るようになります。この運動
能力の自然な発達に対して、その年齢に応じた適切
な運動刺激を与えることで、人はさらに巧みな動
き、粘り強い動き、あるいは力強く崖しい動きを習
得することが出来ます。発達は身体面だけではあり
ません。知的能力も社会生活を営む上で必要とされ
る種々の精神的な態度もそれなりに発達してきま
す
しかしこれらの発達も運動能力や体カと同様に、
適切な働きかけがあるとさらに促されます。小学生
期にスポーツを行うことによってどの様な好ましい
変化が期待されるのかを、もう少し具体的に述べる
と次のようなことです。
I・体の発達
小学生期にスポーツを通していろいろな運動を行
うことは、身体の健全な発育・発達を促進する上で
たいへんよい刺激となり、また適度な運動によっ
て、健康・体力の維持・増進を図ることができます。
更にこの蒔期にいろいろなスポーツを通して多様
な運動を行うことで、生涯忘@Lることのない、そし
て将来どのようなスポーツを行うのにも応用可能な
多様な基礎白の軍動技能を獲得することができます。
敬う気待ち、更には礼儀や挨拶といったものも身に
ついてきます。
ところが、最近は運動をする子どもとしない子と。
もとの二極分化が進み、それぞれに身体的にも精神
的にもいくつかの問題が指摘されてきています。
運動しない子の問題としては、身体面では体力の
低下、肥満に代表される運動不足痛といわれるもの
の増加、ギ爵小面では兄弟,姉妹が少なくなり、集団
遊びも減少している中での協調性や社会性の欠如が
上げられます。
一方運動する子どもの問題としては、身体面では
体の一部を使い過ぎることによって生じる「使い過
ぎ症候群」、ギ話中面では追い速まれることによって
「スポーツはもういやだ」と言わせるような「,燃え
つき症候群」や、勝ち負けにこだわり過ぎるあまり
の過度の優越感や劣等感が上げられます。まさに
「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということです。
この小冊子はミニ・ラグビーを指導する指導者の
ための手引きですが、子どもの健全な発育・発達を
促す上でスポーツが有意義に機能するためには、主
体である子どもとともに子どもを取り巻くすべての
者がそれぞれの責任を果たす必要があります。それ
を示すために、巻末に「ミニ・ラグビープレーヤ一
のためのコード」を掲載しました。「コード」とい
う言葉をあえて訳せば「行動規範」に当たると思わ
れますが、ここでは訳さずにおきました。熟読いた
だければ、その趣旨は理解いただけるものと思われ
ます。
(川島淳夫)
2・心の発達
期待される好ましい変化は身体面だけではありま
せん。スポーツを通して精神的な成長を助け、社会
性を身につけることができます。例えば、自己との
闘いを通して忍耐力や向上心を身につけることにな
ります。友人との協力を通して友情や思いやりを持
つようになり、協調性や責任感が身についてきま
す。また、ルール道守の精神だとか正義感、相手を
LO
I
1
第2章 なぜミニ・ラグビーなのか
それではなぜ和達は数あるスポーツの中からラグ
ビーを選び、子どもたちに指導しようとするので
しょうか。
一つには第1章で述べた子どもの心身の健全な発
育・発達にとって、ラグビーが大変適したスポーツ
だからです。各人数のボールゲーム、しかも身体接
触 (格闘技的要素)を含み、単に投げるとか、走る
とかだけではない多種多様な運動が要求されるラグ
ビーは、まさに子どもにとって最適な運動束U;弁k、ス
ポーツと言えるのではないでしょうか。
ラグビーは子どもには危険なのではないかと疑問
を持つ人がいるかも知れません。とかく「ラグビー
は危険なスポーツ」というイメージが持たれがち
で、それが子どものラグビーの普及を阻害している
一因とも考えられます。しかし本当にそうなので
しょうか。1996年に関東協会が実施したラグビース
クール・メディカル・アンケートの結果が日本ラグ
ビーフットボール協会機関誌「ラグビーフットボー
ル」第46巻6号に掲載されています(付録参照)。こ
れを見て頂ければ容易に理解頂けることですが、一
般的なイメージとは裏腹に、ミニ・ラグビーでの外
傷・障害発生率は非常に低く、特に子どもの将来に
悪影響を及ぼす恐れのあるスポーツ障害は極めて少
ないのです。
もう一つ重要なことを忘れてはいけません。それ
は、和達が子どもたちにラグビーを指導するのは、
なによりもラグビーが素晴らしいスポーツだからで
す。
ラグビーの素晴らしさを表現する先人達の多くの
言葉があります。ある人はその自由さを讃え、ある
人は激しさの中での自律の尊さを語り、またある人
はラグビーを人生になぞらえさえします。そして何
よりもラグビー精神があります。ラグビー精神を明
確に定義することは決して容易なことではありませ
ん。例えば、明治大学OBで元九州ラグビーフット
ボール協会副会長の故新島清氏は、自己犠牲の精
神、ノーサイドの精神、レフェリ一絶対の精神、ア
マチュア精神の四つを総称してラグビー精神である
と述べています。日本ラグビーフットボール協会機
関誌の300芳記念の特別企画として、約50年前の
機関誌の第1号に掲載された慶応大学OBの橋本毒
三郎氏による「ラグビー精神とは」という文章が再
掲載されています (付録参照)。ここでは橋本氏は
「敢闘の精神」という言葉でラグビー精神を表現さ
れています。いずれにせよ、ラグビーにたずさわっ
てきた者がその素晴らしさを語るとき、そこにはラ
グビー精神という言葉で交わされる魔法とも思われ
る共通理解があるように思われます。そしてラグ
ビーを指導する者は、この精神を次世代に伝えてい
く義務と責任を持っているのではないでしょうか。
「なぜい人制のフル・ラグビーではなく、ミニ・
ラグビーなのか」とは、ミニ・ラグビーを導入し始
めた頃にはよく受けた質問です。最近ではそのよう
な質問もまずなくなりましたが、ここで蛇足ながら
なぜ小学生期のラグビーはミニ・ラグビーなのかを
述べておきましょう。
ラグビーの発祥は、l823年にイングランドのパ
ブリックスクールの一つラグビ一校で、フットボー
ル(今のサッカーのことではない)の試合中にエリ
スという少年が興奮のあまりボールを持って走り出
したことに由来すると言われています。その真偽は
ともかくとして、今日のラグビーという競技の原型
がプレーされ始めたのは、年齢的には17、18オ0
日本でいえば高等学校くらいの年齢の少年において
でした。しかし、その後のラグビーの競技としての
組織化そして発展は、ラグビ一校を中心としたパブ
リックスクールの卒業生で、オックスフォード大学
やケンブリッジ大学に進学した宇土、そして卒業後
口ンドン近郊に居住し、クラブチームを組織して
いった大人達によってなされました。つまりラグ
ビーは大人のゲームとして発達していったのであ
り、その過程で少年達を顧みることはほとんどあり
ませんでした。
1960年代後半から70年代前半は、いろいろな意
CO
■
I
味でラグビーの変革期でしたが、その中、1970年に
ウェールズラグビー協会は少年ラグビーの研究を行
いました。その結果、「多くの中学校でラグビーは
プレーされているが、いくつかの注目すべき例外を
除いては、Ⅱ、学校ではラグビーはほとんどプレーさ
れておらず、何か新しいアプローチが求められてい
る」という結論を得ました。そこで大人のラグビー
への導入としての子どもたちに適した単純なゲーム
を作り出そうとし、ミニ,ラグビーを考案しまし
た。その後ミニ・ラグビーは、英国のみならず世界
に広がり、少年期に適したラグビーとして高い評価
を受けました。
つまり、ミニ・ラグビーは大人と子どものⅠ童いを
言ほ;哉した上で、子どもの立場に立って考え出された
ゲームなのです。ミニ・ラグビーによって子どもた
ちはより楽しく、より安全にラグビーをプレーで
き、しかもラグビーに必要とされるスキルの習得を
促される多くの機会に恵まれます。
その後、世界においても日本においてもミニ・ラ
グビーは変化してきたことはすでに述べた通りで
す。しかし子どもを中心に捕えたラグビーとしての
ミニ・ラグビーの価値には何ら変化はありません。
もちろんミニ・ラグビーが少年期のラグビーとして
その真価を発揮するためには適切な指導が不可欠で
あり、これを次に考えます。
(J1層淳夫)
7
1
甘
|
第3章 指導者に求められるもの
I,指導者の心得
指導者が何をおいても心がけなくてはいけないの
は、安全への配慮です。もちろん世の中にioo% 安
全と言うことはあり得ませんし、ラグビーという競
技の特質を考えれば、いろいろな危険が予測される
でしょう。それだからこそ指導者は常に安全を心が
け、最大限の注意を払って指導する必要がありま
す。日本ラグビーフットボール協会から出版されて
いる「安全対策マニュアル」には安全対策に関わる
有益な情報がたくさん記載されています。是非参考
にしてください。
ミニ・ラグビーの指導者は、指導する対象が発育
途上の子どもであるということを十分に認識する必
要があります。子どもというものをしっかりと理解
し、ラグビーを理解し、ミニ・ラグビーを理解する
こと、あるいは理解しようと努力することが大切で
す。子どもを指導することと大人を指導することに
は、大きな違いがあります。
指導者の中にはラグビーのプレー経験を持たない
方もたくさんいます。上記のことを理解していれ
ば、ミニ・ラグビーを指導する上でそれが障害にな
ることはないでしょう。
ラグビーを理解する上での資料として、巻末に付
録としてラグビー憲章を掲載しました。これは
1997年にI RB (インターナショナル・ラグビー・
ボード)が示したPlaying Charterの翻訳であり、平
成13年度競技規則の冒頭にも掲げられています。
ラグビーという競技を理解する上で、大変参考にな
るはずです。
2・指導の基本原貝Ⅰ
(1)楽しくなくてはいけない
楽しさを感じさせる指導が最高の指導ですO架し
ければ子どもは自ら進んで練習に参加し、さほど辛
さを感じることもありません。もつとも、何を楽し
1
いと感じるかは人によって異なります。従って「こ
うすればよい」という絶対的なものを示すことは困
難ですが、楽しさを与えるための手段として、十分
な活動と成功体験を与えてやることは重要です。成
功を通して喜びが生まれ、楽しさが得られるので
す。また「きつかった」「疲れた」という感慨も大
事です。子どもの指導において、運動量と楽しさが
かなり上ヒ伊Ⅱすることも覚えておく必要があります。
子どもは飽きやすいことから、いろいろな練習を提
供する工夫も必要です。
(2)練習のための練習にならないように
「何のために練習を行うのか」と子どもに尋メaた
らどのような答えが返ってくるでしょうか。一般的
な答えとしては「上手になるため」「うまくなるた
め」「強くなるため」「試合に勝つため」といったも
のでしょうか。それらはいずれも正しい答えです
が、オ旨導者として必ず理解しておかなくてはいけな
いポイントがあります。そナLは、「練習は試合のた
めにやる」ということです。従って、どのような練
習を行うにしろ、それを指導する指導者の心に中に
は、その練習が試合のどの部分につながるのかの見
通しがしっかりなくてはいけません。それさえあれ
ば、どんな単純な練習もいい練習になり得ますが、
それがなければどんな高度な練習も「練習のための
練習」になってしまいます。子どもたちの練習、と
りわけ低学年では、行う練習の意味をいちいち説明
する必要はないでしょうが、オ旨導者自身は明確な見
通しを持っている必要があります。
(3)すべてのプレーヤーにすべてのスキルを
すでにⅠ並べたように、刀、学生期は多様な運動技能
が獲得される時期です。従って、すべての子どもに
すべてのスキルを練習・経験させることが重要で
す。多様な動きを幼いときに習得することで、;呼未
ネ夏雑な動きに対応できるようになるのです。
最近のトップクラスのラグビーでは、すべてのプ
レーヤーに高度な個人スキルが求められるように
なってきました。その礎を作るのは、まさに子ども
の時のいろいろなスキルの練習・経験です。当然の
00
ことながら、早期のポジションの固定、専門化は避
けるべきであり、子どもの時にはいろいろなポジ
、ンョンを経験させたいものです。
(4)子どもには子どもにあった感動を
いくつかの競技では、小学生の全国大会を行って
います。子どもの励みになるという考え方はあるで
しょうが、子どものうちに大きな大会に参加し、大
きな感動を得たなら、その後はどうなるのでしょう
か。成長に伴って感動も大きくなればよいのであっ
て、幼いうちに過大な感動を経験すると、結局早く
に燃えつきてしまうのではないでしょうか。
(5)勝利主上主義に陥らない
勝利を目指して努カすることは重要なことであ
り、当たり前のことでもあります。しかし「何を犠
牲にしても勝つ」という態度は間違っています。ま
た、あまりに勝敗に固執すると、すでに述べた「す
べてのプレーヤーにすべてのスキルを」という指導
がおざなりになり、早期のポジションの固定、専門
化に走りがちになります。劣っているプレーヤーを
試合から排際するようなことすら起こりかねませ
ん。
勝ちたいと思っているのは子どもではなく、指導
者ではないのかと思われる場面を目にすることが少
なからずあります。子どもが最初にあり、その後に
ラグビーがあり、勝利とはさらにそのずっと後に位
置するものであること、そして勝ち負けといった結
果より、なされた努力を評価することを忘れてはな
りません。
過度の競争的な大きな大会と勝利車上主義の行き
着くところは、燃え尽きであったり使い過ぎによる
障害であったりします。
(6)自分の指導する子どもにあったラグビーを
子どものラグビーを指導する場合、プレーヤーを
ゲームに合わさせるという考えではなく、ゲームを
プレーヤーに合わさせるという考えが大切です。今
回パスウェイという考え方を元に、ミニ・ラグビ一
の競技規則を三段階に分けて示しましたOこれが一
つの指標になるとは思いますが、最終的には現場の
指導者の裁量いかんです。つまりは、子どものレベ
ルに合わせて競技規則は適宜変更されるべきであ
り、試合ではレベルに合わせた競技規則の適用を考
慮するべきです。
3・指導のヒント
(1)練習前の準備
①安全への配慮を怠らない
安全への最善の注意を払い、未見の事故を未然に
防ぐための最大限の努力をしなくてはなりません。
練習の前には、子どもたちをよく観察し、コンディ
、ンョンを確認することが大切です。もちろんこれは
試合の時も同様です。
②計画を持つ
計画的な練習が成功の秘訣です。年間計画、月間
計画といった中・長期的な練習・指導計画ととも
に、練習日短にその日の計画を必ず練り、メモを
待ってグラウンドに立つことを薦めます。書くこと
は考えを明確にします。また、そのメモを蓄積し、
ちょっと整理するだけでも将来の指導に大いに役立
つはずです。
③笛を持つ
笛を持たない指導者が多いのには驚かされます。
メリハリの和いた笛は練習に適度な緊張感を生み、
効率を上げるのに役立ちます。笛でコントロールす
る指導を身につけて下さい。
④服装に注点する
、ンューズを含めた服装に気を配りましょう。だら
しない格好は禁物です。ごくまれに指導の最中に子
どもと交錯して、子どもの足を踏んでしまうような
ことがあります。そのような場合のこともよく考え
て、シューズを選択してください。
⑤ボールに気を配る
指導する対象にあわせて適切なサイズのボール
を、出来る限り多く確保したいものです。一人に一
個が理想です。空気の入りすぎた固いボールは、初
心者や子どもには痛いという恐怖感を与えることが
あることから、ボールの空気圧は規定値より低め
9
I
1
(0.5kg ノー程度)の方がよいようです。
⑥時間を厳守する
子どもたちに時間厳守を言っておきながら、オ旨導
者が遅列する訳にはいきません。オ旨導者の中には遠
距離をドライブして練習に参加する方も少なからず
見受けられますが、時間ぎりぎりではなく、余裕を
持ってグラウンドに立ちたいものです。
⑦プレーヤーの名前を覚える
自分が担当する子どもの名前を覚えておくのは、
指導者の当然の義務であると共に、子どもたちとの
円滑なコミュニケーションの上でも、そして指導を
効率よく行う上でも重要です。
⑧グラウンドの準備をおこたらない
許されるのであれば、必ずラインを引き、補助具
としてグラウンドマーカー、フラッグ等を使うよう
にします。大人と違い、子どもには明確に地域を限く
定することが重要です。グリッド、チャンネルをい
つでも使えるように準備するとともに、グリッドの
大きさにも気を配ります。4一6 人程度で行う各種
グリッド練習では、高学年には7一8m、中字年に
は6 一7m、低学年には5一6mぐらいのグリッド
が適正な広さのようです。
(2)練習中の注意
①安全への配慮を怠らない
へッドキャップのひもが結ばれていなかったり、
、ンューズのひもがほどけていたりすることがよくあ
ります。ささいなことですが、安全の上で重要な
チェックポイントです。その他に、グリッド練習で
ぶつかり合わないように攻撃方向を決めたり、グラ
ウンドに近接した障害物に注意を払ったりと、注意
すべきことはたくさんあります。特に夏場の練習や
試合、合宿では、水分摂取に十分気を配り、熱中症
を起こすことなど決してないようにしなくていけま
せん。
②コントロールする
コントロールが練習でのキーワードです。コント
ロールによって適切な練習が遂付され、成果が上が
るのです。
8口ヒるより褒める
わかってはいてもなかなかできないことです。褒
めること、励ますこと、勇気づけることを常に心が
け、我慢強く子どもに接しましょう。
④立つ位置を考える
行う練習によって、そして一つの練習の中でも、
常に立つ位置を考え、コントロールの上でも指導の
上でもべストポジションを占めるように気を付けま
し 、
ょっ。
⑤キーファクターを示す
だらだらと長く話すのでもなく、また難しい専門
用語を使う必要もありません。子どもにとって理解
できる簡潔な言葉で、ポイントを指摘しましょう。
第4章にキーファクターチャートが掲載されていま
す。参考にしてください。
⑥手本を示す
「百聞は一見にしかず」です。指導者が自ら、あ
るいは子どもを使ってのデモンストレーションを有
効に使いましょう。子どもを使う場合、悪い何とし
て使ってはいけません。指導者が行う場合は、ゆっ
くりと多少誇張するような動作で行う方が、子ども
には理解しやすいかもしれません。
のオーバーコーだノグを控える
熱心さがなせる技ですが、労力に反して実は少な
いものです。一度に一つか二つのポイントを指摘す
るだけにとどめましょう。子どもに考えたり工夫し
たりする余地を残しておくのも大切なことです。
⑧フィードバックを与える
指導者が「子どもは理解している」と思っていて
も、実際には子どもは理解していないかもしれませ
ん。よかった場合でも、悪かった場合でも、具体的
に何がよく、何が悪かったのかを、子どもが明確に
理解できるように伝えましょう。
⑨しゃべるときの環境に注点し、声をうまく使う
何か指示を与えるときは、子どもたちがその声に
耳を傾けることが出来る状況であることを確認し、
そうでなければ状況を整えなくてはいけません,
lo
暗
さもないと、言葉は子どもたちに届きません。注意
を与える場合は、断固として、しかし決して高圧的
になったり感情的になったりせずに、心の底に愛情
と思いやりを待って話しかけなさい。声にメリハリ
を利かせることも大切です,いつも怒鳴るばかりで
は芸がありません。
練習を中断して話し始める前に、必ず話すべきこ
とを頭の中で整理しておきましょう。
⑩正確さを優先する
どんなレベルでも指導の最初は、スピードを犠牲
にして正確さを優先させるべきです。ゆっくりとし
たスピードで正確に出来るようになったら、少しス
ピードを上げ、最終的に試合スピードで出来るよう
に導いていくのが指導者の役割です,
⑪左右両方を練習させる
パスにせよ、キックにせよ、コンタクトにせよ、
得意な側、やりやすい側というものがどうしてもあ
ります。子どもは放っておけば、得意な側の練習し
か行いません。そこで指導者は常に左右両方の練習
がなされるよう配慮する必要があります。
⑫親子・ゲーム形式の練習を工夫する
基本的に子どもは競い合うことが好きです。可能
な限。り競争・ゲーム形式の練習を工夫して、子ども
たちに「プレー」させましょう。
哀子どものレベルに合わせる
練習のレベルが高すぎると子どもはやる気をなく
し、低すぎると飽きてしまいます。指導する対象を
よく把握しましょう。「なんとかできそうだ」とい
う課題に子どもは最も熱中します,
(3)練習後の反省
①自分自身で謙虚に反省する
練習は予定どおりできたか、何がうまくいき、何
がいかなかったか、その理由はなにかを謙虚に考え
反省しましょう,
②他の指導者とのコミュニケーションを大切にする
同じグループ(学年)を一緒に指導している他の
指導者、あるいは他のグループの指導者とのコミュ
ニケーションを大切にし、お互いの指導について意
見を述べ合いたいものです。j哀慮し合って言いたい
ことを言えないような指導者同士の関係は、クラブ
(ラグビースクール)にとってもチームにとっても、
当然のことながら一人ひとりのプレーヤーにとって
もマイナスです。
S反省を次回の練習に生かす
反省が反省のまま終わってしまっては意味があり
ません。改善する余地は必ずあるはずです。子ども
たちと一緒に指導者も成長して行きたいものです。
(4)試合での態度
G相手側の指導者、レフリーと車前に話し合う
子どもたちが最も楽しめる状況を作り出すのが、
指導者とレフリーの役割です。見栄を張らずに、素
直に話し合いましょう。
②レフリーへの尊敬と感謝を忘れない
しフリーの判定は絶対であり、たとえ判定が間
違っていると感じたとしてもそれを受け入れるのが
ラグビーであることを、子どもたちに理解させなく
てはいけません。シフリーはべストを尽くしている
のであり、レフリーがいなければ試合ができないと
いうことを子どもたちに教え、レフリーへの尊敬と
感謝の気持ちを忘れないよう、子どもたちに指導し
なくてはなりません。
③相手に対する尊敬を忘れない
しフリーとともにパ目手がいなくても試合ができ
ないことを、子どもたちに指導しなくてはなりませ
ん。試合相手は「柑子」であり、決して「敵」では
ありません。
④すべての子どもを出場させる
ケガと自信を喪失する恐れがないのであれば、た
とえ能力的に劣った子どもでも必ず試合に出場させ
るべきです。プレーヤーは試合のために練習をして
いるのです。しかし、勝つチームをコーチすること
に個人的な喜びを見いだしているコーチが少なから
ずいることも事実でしょう。そのようなコーチが、
子どもたちの可能性を伸ばすことに喜びを見いだ
11
1
1
し、集まった子どもたちの喜びを自分の喜びと感じ
られるようなコーチに育つように、先輩や仲間の
コーチ達が自らの体験を伝えることで導いていくこ
とも大切なことです。いずれにせよ、決して勝つこ
とを否定するわけではありませんが、みんなでラグ
ビーを楽しむことが重要なのであり、個々のプレー
ヤーの立場から言えば、試合に参加しない限り楽し
めるはずはありません。
⑤タッチラインウォーカーにならない
心のこもった励ましに満ちた応援は大歓迎です。
しかし動物園の柑の中にいる熊のように、タッチラ
イン際を右往左住して、試合の状況に一喜一憂し、
大声を張り上げるようなことはないようにしたいも
のです。
⑥謙虚な勝利者、威厳のある敗者たれ
試合である限り全力を尽くして勝利を目指すのは
当然のことです。もちろんフェアプレーの精神に則
り正々堂々とプレーしてのことです。しかし、試合
が終われば、勝者と敗者が生まれるのが常です。
騰って著り高ぶる必要もなければ、負けて卑屈に
なったり悲嘆にくれたりする必要もありません。
負けたときにプレーヤーを迎える指導者の態度は
特に重要です。負ければ誰でも悲しいし、悔しい
し、それなりに落ち込むものです。指導者がそれに
追い打ちをかけるようなことがあってはいけませ
ん。暖かく迎え、労をねぎらうことを忘れないで下
さい。
4・シフリーとして
ミニ・ラグビーのレフリーは、まず間違いなく、普
段子どもたちにミニ・ラグビーを指導している指導
者が行つていることから、ミニ・ラグビーノブリ一
の資格認定がなされるようになって以来、その養
成・認定はシフリーソサエティではなく、ミニ・ラ
グビーを管轄する委員会 (当何はコーチソサエ
テイ、その後小学生・ラグビースクール委員会を経
て、現在は普及育成委員、会)が行うことになつてい
ます。将来的にはレフリーソサエティがイニシア
ティブを取ることが予想、されますが、当分は付録に
示す通達に進じて、都道府県協会のミニ・ラグビー
を管轄する委員会にて養成・言ゑ定して頂ければと恩、
います。
レフリーにはいろいろなことが求められますが、
もし最も重要な役割を述べるとしたら、それは安全
に対して十分に留意しながら、競技規則の範囲内で
プレーヤーが最大限に楽しめるようにすることでは
ないでしょうか。そして、これはミニ・ラグビーで
も同じでしょう。ただ違うのは、ミニ・ラグビーで
はプレーヤーのレベルに合わせて競技規則の適用を
考える必要があることです。
平成12年度までミニ・ラグビーの競技規則は、ミ
ニ・ラグビーの完成段階としての9人制のルールを
規定するのみでしたが、平成け年度からはパス
ウェイの考え方を採用して、学年(年代)別に三段
階に分けて定められるようになりました。これらの
学年 (年代)別競技規則に准じて試合が行われれ
ば、さほど大きな混乱はないと思いますが、子ども
たちのレベルが未軌な場合や経験に乏しいような場
合には、競技規則のより一層柔軟な適用が考えられ
てしかるべきです。そして、子どもたちが理解しで
いないルールやスキル不足によって、楽しみをスボ
イルされないで済むような配慮が必要です。この意
味で、ミニ・ラグビーのレフリーは極めて重要な役・
割を担っています。
以下に示すのは、ミニ・ラグビーのレフリーのた
めの簡単なガイドラインです。
①子どもたちがゲームを楽しむための援助者である
という意識を持って、思いやりを持ってゲームに臨・
みなさい。
②子どもたちにシフリーと思われる格好をしなさ
③しっかりとした笛を持ち、明確に吹きなさい"
①子どもたちの理解できている規則とそうでない
則を、あらかじめ知っておく努力をしなさい。そ
ためには、ゲーム前に双方の指導者と話し合う時
12
旧
を持つことです。
⑤反則を予防するための声かけを最大限行いなさ
しO
⑥必要に応じて子どもたちに話しかけることで、子
どもたちを勇気づけ、正しいプレーに導く努力をし
なさい。ミニ・ラグビーのレフリーは、教育的・指
導的であるべきです。
のコーチあるいはタッチラインウォーカーがゲーム
をスポイルしていると感じたら、彼らに黙るか、立
ちまるかの選択を与えなさい。彼らをコントロール
するのも、ミニ・ラグビーのレフリーの重要な役割
です。
⑧子どもたちに好ましくない言葉や、感情、プレー
(フェアプレーにもとる行為)を見いだしたら、素
早く対応しなさい。充分時間をとってもかまいませ
ん。しっかりと話し、理解させなくてはなりませ
ん。
⑨プレーのスタートをしっかりとコントロールしな
さい。スクラムはしっかりと組ませ、ラインアウト
はまっすぐ並ばさなければなりません。特にスクラ
ムに関しては、必ず試合前に両チームのスクラムを
組むプレーヤー及びプソターを集め、どのようにし
てスクラムを組みボールを投入するのかを、実際に
行わせることで、試合での混乱や時間のロスを回避
します。
⑩ボールの出るモールか出ないモールかを早く見極
め、出ないと判断したら素早く笛を吹きなさい。
ボールの出ないモールで、子どもたちが必要以上に
もみ合ったり、崩れて倒れたりすることがないよう
にします。
ソサエティやより上級の資格を持つしフリーにも、
積極的に援助を求めましょう。喜んで協力してくれ
るはずです。
レフリーに関して最後にもう一言。是非レフリー
も子どもたちと一緒に、ミニ・ラグビーを楽しんで
下さい。
(Ⅱ1島淳夫) 1
もちろんこれ以外にも、一般のレフリーに求めら
れるのと同様な多くのポイントがあります。巻末の
「ミニ・ラグビープレーヤーためのコード」の中に
含まれているの「レフリーのコード」もよく読んで
ください。いずれにせよ、レフリーとして子どもた
ちに十分な楽しみを提供するためには、大いに研
ィ1笏・研さんに励む泌、要があります。地元のしフリー
Ⅰ3
1
第4章 指導方法上の課題
日本ラグビーフットボール協会より翻訳出版され
ている「MiniRugby ミニ・ラグビーで楽しもう」
の「第4章 指導方法」には、日本のラグビ一指導
者にとって実に示唆に富んだ内容が述べられていま
す。特に、34一め頁の「指導方法を学ぼうとする
者への注意」は重要なまとめですので、これらを中
心に指導方法についてその該当頁を示しながら解説
しておきましょう。
I・「体力ではなくスキルがこの段階の学習
課程の中心でなければならない」(21頁)」
このスキルとは運動技術が上手になることを意味
しています。ここでスキルを生理学的に少しさぐっ
てみましょう。
運動には、大脳皮質の運動野からの命令によって
行われる随意運動と、大脳皮質が関与せずに無意識
のうちに行われる不随意運動(反射運動)がありま
す。いずれも神経系によって調整されています。
運動技術を上手に行うためには、反射による調節
を必要としますが、反射の多くは紋切型であって融
通がきかない一面を持ち、ときには反射が邪魔にな
ることもあります。したがって、動作を起こした
り、切り換えたりするには、どうしても大脳皮質の
意識的な調節が必要なのです。
この辺の事情をプレースキックを例にとって、図
4-1から説明しましょう。初めてキックする場合、
意識的にボ ルをけろうとすると、大脳皮質の運動
野から雑体路を経て脊髄のアルファ運動ニューロン
(神経単位)ヘインパルス (刺激、衝動)が下降し
ます。そのときインパルスの写しが小脳へ還られま
す。
アルファ運動ニューロンの興奮は筋線維に伝えら
れ、筋紡錘によって察知された情報は小脳へ送られ
ます。小脳では運動野から法られてきた写しと、筋
紡錘からの情報を照今してその結果を大脳皮質に送
ります。その結果、大脳皮質は筋へ補正信号を送る
ことになります。
このようにして、新しい技術が獲得されると、次
からはその動作の命令の発進比は前運動野に移り、
そこから鈍体外路を通して発せられるようになり、
一連の動作は無意識のうちに円滑に、かつ正確に行
われるようになるのです。
だんだんキックを練習していくと、小脳に運動モ
デルが形成されるようになり、例えば目をつぶって
いても、正確な運動ができるようになります。同じ
環境条件では、何回キックしても同じ箇所にあた
り、ほぼ同じ目標ヘボールが行くように反射化、定
型化されるわけです。自転車に乗れるようになった
り、スキーの技術が上達する26になったりするの
も、すべてこのように初めは大脳皮質が関与した随
意運動が、Ⅱ、脳の働きを中心とした不随意運動と背
離レベルの反射が一体となった運動へ移行するので
す。
図4-1 スキルの神経回路 (Mathews&
Fox,1976 をもとに青木,1981)
[注コ陣意運動は、運動野のインバルスが、鈍体路、脊髄、アッ
ファ系を経て筋繊維へ伝えて起こる。その結果としての運動"
報は、筋紡錘(ガンマ一系によって賦活)から小脳へ伝えらお
る。小脳は前もって大脳から伝えられていたインバルスの写"
と、この情報を照合して大脳へ伝える。
トレーニングの進行に伴い、インバルスの発信施が前運動出
に移り、錐体外路を通して発せられるようになり、動作が自
化し、定型化する,
14
ぬ
卸
一
一
一
一
一
・
一
-
鰯
網
鰯
網
鰯
鰯
鱒
鰯
鰯
驚
欝
翻
鰯
鞄
1
し
大脳
前運動野
皮質
運動野
筋紡錘
筋
筋繊維
肉
練習とは同じ動作を繰り返すことです。祝日は難
しいが2日目は少しやりやすくなり、3日、4日と
日を重ねるにしたがってだんだん楽になって、終わ
りには一向気にもとめなくなります。動作が反射化
された結果、大脳皮質の負担が取り去られたか、軽
減されて気が楽になってきたからです。これはいち
いち大脳に相談せずに、神経系20下部の組織で事
が進行するので、それだけの時間の浪費が少ないこ
と、つまり動作の反射化が進んだためであると理解
できます。
練習によって反射化や定型化が進行しただけで動
作は上達するものではありません。プログラミング
の組みかえにょって新型へ移行することも必要で
す。これには大脳皮質の運動野が関与します。脳
幹、脊髄、小脳による反射化と大脳皮質による新企
画の繰り返しによって動作が一層高いレベルのもの
になるのです。つまり「考える」ことと、「身体で
覚える」ことの両方がなければ、高度な技術のぢ隻そき
は望めないといえましょう。
子どもの頃はどちらかというと、直観的に「身体
で覚える」ことが多く、それの発達が顕著です。大
脳を「思考的知識の倉庫」というならば、小脳は「す
べての動作に関する知識の倉庫」といってもよいで
しょう。成人してからラグビーのプレーを上手に行
うには、子どもの頃に無意識のうちにラグビーに関
連する多くの経験を小脳にしまい込んでおく必要が
あります。小脳の記憶は意識にのぼらないが、一度
覚えたら生涯忘れないものになります。
一方の体力はエネルギーを発揮する様式や能力か
らみるのが一般でしょう。
エネルギ一発揮の様式は、力強さ(筋力)、粘り
強さ(持久力)、スピードに区分できます。これら
1
年
間
発
達
量
図4-2 運動能力・体力の年間発達量の年齢別変化 (男子)
一
3 4 5 6 7 8 9 lo 11 12 は 14 15 16 17 18
幼稚園期 小学校期 中学校期 再 校 朋
佳i) スピード;so m疾定速度
粘り強さ:1分間に取 入れられる酸素の量・最大酸素摂取量(VO2 max)
力強 さ;背筋力
動作の修得:歩・モ・跳,投・キックの動作・パターンの練習・習熟過程から評価
注2)スピードについて6一7歳にみられるピークは主として、走動作のスキルが成人レベルに近づいてきた
ことによる速度の向上を示し、l3一l4歳にみられるピークは持久力や筋力が養われてきたことによる
速度の向上を示す。
Ⅰ5
■
|
|
j二Ⅰグヒ名士ぎⅠ労くⅠⅠ;
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叩Ⅹ
叩く
寸
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一一一ヰヰヰ
/イり強さ,ハ
ノ(持久力) /
)フ@プ力強さ(筋力)
』」¥ ¥
I
目憶
の年間発達量をみると、図4-2の年齢兄変化に示
すように、スピードが最も早く発達し、次に持久
力、最後に筋カとなります。ただし小学校時代のス
ピードは、走る動作に関連するスキル(動作の習
得)が、成人レベルに近づいてきたためです。
持久力や筋力に関係する体カトレーニングはⅡ、
学校時代よりも中学校期以降に行うのが適切であ
り、月、学校時代は動作の習得のトレーニングに適し
ていることがわかります。
ェネルギーを制御する能力から体力をみると、調
整力の発達は小学校期に著しく、スキルを習得させ
る基底となる神経系の発達は小学校期に著しいこと
になります。
これで、ミニ・ラグビーを行う小学校段階での学
習課題の中心が体力でなくてスキルであることを十
分に理解していただけたものと思います。
2・グ@Jツド方式をなぜ使うのか(22頁)
グリッド方式とはグラウンドを格子犬(正方形ま
たは長方形)にいくつかに区画する方式を言い、
チャンネル方式とはいくつかの区画を細長くつづけ
て走る通路をづくる方式を言います(図4-3参
照)
・日、0
これらの方式を用いることによって、
(l)多くのプレーヤーに最大限の活動を保障し、そ
れによって満足感と技能習得の成就感を味合わせる
ことができます。
(2) ゲームの基本的な理念ともいうべきGo-forward
(前進)、Support(交接)、Continuity (継続)、Pressure
(圧力) の要素を充足させることができます。つま
り、身近なゴールライン、タッチラインが認識で
き、前に進む攻め方が理解できます。限られた区
内であるので、サポートの機会が多く、支援の基
が学べます。流動的な動きの中で前進をはかり、
援をはかれば、継続が容易になり、すばやい動き;
身につきます。区画の周囲のラインが最大の庄力に
なり、さらに相手の圧力に耐えてこれを跳ね返す、
生きた技能(スキル) を身につけることができる
です。
(3)中央の区画を利用して共通の問題点を話し合
たり、上手なグループのデモンストレーションを
合ったりすることができます。
(4)グリッドの外から指示を与えることによって
指導者はすべての子どもを見ることができ、子ど
たちも指導者を見ることができ、コントロールが
能になります。指導する子どもをコントロールす
ことがミニ・ラグビーのコーチとしての役割の一
であるとさえ言われています。
図4-3 グリッド・システムとチヤンネル・システム
ゴール,イ、 22 ,インハーアルィラィン22 m ラィンゴールラィン
小グリッドは2対2、中グリッドは4対4、大グリッドは7対7、全体の1/4よ9対9
16
1
2
R
4
ー
Ⅱ
Ⅰ
6
7
/hグリノド
C一,神
<
m
Ⅰ、クリノ@
B
c
D
一
3・「指導方法を学ぼうとする者への注意」
は4頁)
、準 備
(1)「プレーヤーの年齢、能力、経験をよく考えな
さいロ
レイ・ウイリアムズはイギリスの教育界にある格
言「もしジョンという子どもにラテン語を教えたい
のなら、ラテン語を知っているだけでなく、ジョン
という人間について知っていなければならない」を
引用して、これはそのままラグビー界にもあてはま
ると述べています。
これをいいかえれば、一方ではラグビーの技術構
造にそくしながら、その学習に影響する字習者の条
件、即ち年齢、能力、経験にそくした指導をしてい
く必要があるということです。
(2)「利用できる時間内で達成できる現実的目標を
決めなさい口
あまりたくさんのことを一度に教え込もうとする
と、プレーヤーは頭の中で混乱を起こしてしまう
し、何も身につかないでしょう。
(3)必要となる施設や用具を考慮して、指導課程全
体について概略を作りなさい口
施設用具を考慮して教えようとする内容の指導計
画をたてなさい。
(4)「I回1回の練習を慎重に用意しなさい。一考え
うる内容を選び、それをどのように提示していくか
をよく考えなさいⅡ
教える内容を選び、示範で示すか、フィルムやビ
デオテープを見せるか、グループで話し合わせるか
など、どの指導方法がよいかを決めなさい。
(5)「練習内容と強調すべきキーファクターを記憶
しなさい,クリップ板を使って注意書きのメモを用
意しておきなさい月
指す商したいキーポイントをメンタルリハーサル
し、それらのキーボイントを書き留めたメモをもっ
ておくこと、しかし指導中いつもメモを見ることは
よくありません。
キーファクターとは、そのプレーについてできる
だけ短い言葉で与えられる重要不可欠なイ青軸のこと
です。一例を次表に示しておきます。このような,情
報が示範と一緒に与えられると一層効果的になるで
し 、
ょっ。
(6)「すべての少年に十分な用具を確保し、それが
すぐに使えるようにしておきなさいⅡ
4・「内容の提示」は4頁)
(I)「自分自身の能力への自信とラグビーに対する
情熱を示しなさい月
情熱はプレーヤーに伝染するものであり、同時に
それは知識と調和していなければなりません。
(2)「グループを十分にコントロールしなさい。指
導者は話をするときにはプレーヤーの任意をしっか
りと自分の方に向けさせなければなりません目
指導者は子どもたちが自分の方を見ていないと
き、子どもたち同士でしゃべっているとき、話をし
てはなりません。また、指導者は子どもたちの日に
太陽が入ってまぶしくなるような位置に立つべきで
はありません。
示範は指導者自身または誰か他の者に任せてもよ
いが、それを見るグループ全体は座らせるのがよい
でしょう。また、示範はいろいろの方向から観察さ
せる必要があります。子どもに指示をするときはで
きるだけ具体的に与えるのがよいでしょう。
(3)「はっきりと、活気づけるようにしゃべりなさ
い。また、音声、早さ、高低、強調占に変化をもた
せてしゃべりなさいⅡ
イギリスの教育界における格言「教育とは火をつ
けることであり、刀@差しに水を一杯にすることでは
ない」という言葉を思い出す必要があります。指導
者の声で子どもたちに火をつけることができるので
す。
指導を行うとき、平坦な声で、あるいはかん高の
声で行うことは効果的ではありません。期待するプ
レーの特質を反映させる声でなければならないので
す。
(4)「理解を助けるために示範や視覚的補助器具を
使いなさい。」
17
I
Ⅰ
@
@
@
1
キーフアクター チヤー ト
1
プレーヤー
1・フィットネス
2・スキル
3・心の準備
ゲームの原則
1・前進
2・支援
3・継続
4・圧カ
チームの課題
1・ボールの獲得
2・ボールの活用
3・ボールの保持
4・ボールの再獲得
個人スキル
I・ランニング
2・ハンドリング
3・キツキング
4・コンタクト
1田
1・ランニング
●ランニング
①スピード
②バランス
③スピードの変化
①方向の変化
●サイドステップ
①接"
②脚のドライブ(強いステップ)
③逃亡 (素早いステップ)
●スワーブ
①フェイント
②大きくカーブを描いて逃げる
●パス後のサポート
①ボールをしっかり押し出す
②一歩前に出る
③適い方の膝をスイングする
2.ハンドリング
●ベイシックパスの受け方 ●べーシックパスの投げ方 ●スピンパス
の視昇-ボールを見る ①指先を下に向ける ①両手をボールのサイドに置く
②ポジション-ポジションに早く着く②肘を曲げる ②後ろの手でロールする
③羊-手を伸ばす ③頭を目標に向ける
-肘を曲げる ④腕をしっかり振る
-手のひらを下に向ける ⑤ボールの後ろに置いた
指を目標に向ける
●ダミー
①確信させる
②小さな動作
③素早口動き
●飛ばしバ
①フラット
②おとりの
を狙う
●内側への浮かしパス
①サポートを視野に人れる
②高めのボールを出す
●スクリーンパス
①ドライブする
②ボールをかくす
③サポートする
●スイッチパス
①角度を広く取る
②ボールをかくす
③サポートする
●地上にあるボールのパス ●ドライブパス ●ボールのピックアップ
①後ろ足をボールの横に置く①ボールに体重をかける ①接近する
②足を開く ②脚で激しくドライブする ②両膝を曲げる
③ボールを掃くようにする ③手首でボールを素早く出す③拾い上げる
●キックのキヤソチ
①腕を伸ばす
②ボールをしっかり
抱える
③ボールを守る
●セービング
①飛び込む
②確保する
③立ち上がる
④ドライブある、
スクリーンする
3・キツキング
●キッキング
①ボールの持ち方
②リリース
③フォロースルー
●プレースキック ●チップキック
①頭の位置 ①ボールをすくうようにする
②接近 ②加速する
③軸足
④フォロースルー
●スクラムからのキック
①目標の確認
②低い姿勢を保つ
③ボールを足に押しつける
④小さなバックスイング、
小さなフォロースルー
●ラインアウトからのキ
①横向きになる
②一歩遠ざかる
③後ろ向きになる
④高いフオロースルー
4.コンタクト
●リップ ●バノブ ●スピンターン
①接近する ①横向きで接近する ①前足を支えにして止まる
②ボールにコンタクトする②かがむ ②スピンする
③ボールをもぎ取る ③突き上げる
●タックル
①頭の位置
②脚のドライブ
③腕の締め
●ボール奪取
①上体を曲げる
②腕をボールに絡ませる
③押し上げながら前に出
④下に引き落としてもぎ
5・ユニットプレー・チームプレー
●スクラム
①フットポ、ジーンコシ
②ボディおジション
③バインディング(グリップ)
④押し(ままさ九)
⑤メカニクス
●ラインアウト
①スロー
②ジヤノブとキヤソチ
③サポート
④バラエティ
●ラインアウトのスロー
①スタンス
②ホールの持ち方
③股火
④リリース
●ジヤシフ。
①アプローチ
②伸び
③、ジヤシフ。
●ラインアウトのサポート
①コンテスト
②プロテクト
③固まること
●ラック/モール
①サボート
(②ボディポジション
③ドライブ
。①ボールチヤン下ル
●バックプレー
①ラィン構成
②角度
③スピード
④突破
●防御
①コンテスト
②力
③タックル
①カバー
(Marks.R.J.P., Rugby Union National Coaching Scheme Level1, Rothmans Foundation,1994, P164 KEY FACTOR CHART ^^> t[^j¥¥^*
I8
一
一
優れた示範は何時間もの説明を省くことがでま
す,フィルム、ビデオテープ、黒板などの視覚的補
助器具の使い方を工夫するならば貴重な時間を節約
できます。
(5)「説明は簡潔に行い、プレーヤーに集申しても
らいたいキーファクターだけを強調しなさい。」
(6)「一部のプレーヤーに集中するために、他のプ
レーヤーを無税してはいけません。
指導者自らが監督できないプレーヤーの活動をコ
ントロールするためにキャプ
テンあるいはフォワードリーダーに代理させなさ
,-」
(7)「余りにしゃべり過ぎてはいけません。」
(8)「がみがみ小言を言ってはいけません。激励の
方が最も良い結果を生み出します。」
否定的なフィードバックよりも肯定的なフィード
バックが多いほど子どもたちの取り組みは熱心にな
ります。どんなことでもよいから子どもたちを誉め
だり、認めたりすることが指導する技術の基本で
す
5・「次のことをよく覚えておきなさい」(35
一、
目1
,、
(I)「楽しさと最大限の活動が最も重要です。」
「少年はラグビーが楽しければラグビーを続けま
す,このことは、ラグビーが彼らにどれだけうまく
導入されているか、どの程度彼らが熱中するかにか
かっています。実際彼らはハンドリングスキルが十
分にうまくなった時に初めてラグビーに完全に熱中
するものです。」「学習は目的を持った活動によって
なされる。」という格言を胸にとどめておくことが
基本的に必要です。
楽しさというのは顔に笑いがあるといった表面的
なものだけでなく、精一杯活動した後の楽しさ、技
や力が上手になったときの楽しさ、皆と一緒に活動
した後の楽しさ、何か新しい発見があったときの楽
しさといった練習後やゲーム後の子どもたちの「よ
ろこび」をさしています。
に)「練習内容の多ネ羊,性とそれの提示の仕方の多様
性が重要ですⅡ
指導者は本を読むこと、よいゲームを見ること、
経験豊かなプレーヤーにポジションの話をきくこ
と、講習会に出ること、これらによって知識を豊か
にするとともに教え方についても自ら勉強するこ
とが必要です。
(3)「練習をゲームと関連づけなければなりませ
んⅡ
動いている相手に関連づけて練習を準備しなけれ
ばテクニックは身についてもスキルは身につかない
でしょう。(Technique く技術@+ Pressure < 圧
力@二Skill く技能@)
(4)「動機づけはパフォーマンスを向上させます。
-Lかし度が過ぎると危険性もありますoJ
和手を僧むといったところまでプレーヤーを追い
込んで動機づけるのはよくありません。最良の動機
づけは他人からではなく自分自身に動機づけられた
ものです。
(5)「プレーヤーに考えること、そしてスキルを頭
の中でリハーサルすることを促しなさい。一このこ
とはパフォーマンスの向上をもたらすでしょうⅡ
3 シーズンの練習経験があれば、11一12オの少
年でも、例えばスクラムが回ったときどのように神
処するかをメンタルリハーサルすることができるで
し 、
ょっO
(6)「ゲームにおける成功は正しい状況判断できる
プレーヤーによってもたらされます。ラグビーの
ゲームを理解しているということは、各々の状況で
有効なプレーがわかっているという意味ですⅡ
効果的な状況判断にはプレーヤーは眼前の相手を
読み取る一何をするかを決定する一命令を身体各部
へ送るの3 つの段階をたどります。この3 つの段階
のどこで過ちを起こしたかをコーチは知っておく泌、
要があります。スタンドオフは状況判断を行う代表
的なポジションであるのでスタンドオフでプレーす
る機会をできるだけ多くプレーヤーに与えるべきで
す一「ミニ・ラグビーは状況判断能力を生み育てる
養育場のようなものである」一。 (辻野 昭)
19
I
|
一
一
一
一
第5章 ウォーミングアノブと
ウオーミングダウン
1
qも
I・ウオーミ"ノグアノブ (Warming-up)
ウオーミング"アソフ。(Warming-up)はき荒んで字
の兼肴04本Yaを高めて身4本を運動に釦奇する21人草兵にする
ことです。
準血清田軍車力ともⅡ乎1ま力Ⅰるのはイ木浦土を「きめるとし@うこ
とだけでなく、ストレソチ千村操やノヘンドリング"神使習
などを耳又0人力ⅠたリハーサノレⅥ舌車力でもあるからで
す。
揖麦弘士ではストレソチング"をところどころに大@Lた
ゲームにオ日当するタイフ。の受琶重力でウオーミング"アッ
プを構厄比し、運車力の弓黄皮を徐々に甫めていき、揖き7ゑ
ははアドレナリンの分Ⅰ必、を似丑槌二するようなヰ刊i敷一反
広オ兼式の受琶重力を含むようにするのがよし@と言わ@tて
います。
(1)1ナ士1 での手7度しパス
図5-3腕を伸ばしながらボールを上 (下)
から下 (上)に渡す
q
四
図5-4腕を伸ばしながら脚の間でボールをまわ
図5-l腕を伸ばしながら
ボールを左 (右)横に渡す
図5-2 腕を伸ばしながらボールを左 (右)
斜め下から右 (左)斜め上に渡す
(2)ジョギングまたはグリッドを使ったコ一
ボール、インターパス (相互パス)など
①コーナーボール
6一8メートル四方のグリッドに4一5人が
ります。Oチームの一人が両手でボールを持ち
のボールでX(チーム)の一人にタッチするこ
よって得占するゲームです。ボールを持ってい
レーヤーは一歩だけしか動けません。また、3
上ボールを持ってはなり
+ / ん。和手チームのプレ一
にボールでタッチしたら
@ (チーム)と交代します,
Xメ 図5-5
20
ぜ
且o o
o
x^Q
②インターパス (相互パス)
6一8メートル四方のグリッドに上チーム3人の
3チームが各一つのボールを持ってはいり、イン
ターパスをしながらグリッド内を動きまわります。
「チェンジ」のコールで3つのチームのメンバーが
一人ずつチームをチェンジします。「ダウン」の
コールで各チームはすぐにボールを地面に置いて別
のボールをみつけてイン
■■ ターパスを続けます。その
Ⅰ 口口口
他 「クロース」(接近したパ
0oO ス)と「ワイド」(離れたパ
+ ●●●
++ ス)のコールなどを行いま
す。
図5名
(3)グリッドを使った直線交差など
同人数の4つのグループに分けます。各グループ
は8m四方の正方形のグリッドの各コーナーにつき
ます。各チームの先頭のプレーヤーは対角線上の反
対側のコーナーに若いたらボールをそこにいるグ
ループの次のプレーヤーにパスし、パスを受けたプ
レーヤーは同じように続けます。
30秒間全速力で行い、間にl0秒間の休みをと
;)ます。ボールを両手で持ち、全Ⅰ車力で起り、他の
コーナーから同時に走ってくる3人のプレーヤー達
と周辺視を使って衝突を避けることが目的です。
図5-7コーナーでパス
をする
図5-10左(右)ヘパス
してまっすぐ走る 左
(右)ヘパスし右(左)へ
走る
(4)これらの運動を低い強度で始め、徐々に最大限,
のぺースまでもっていきます。その途中体温が上
がったところで定期的に全員をストップさせてスト
レッチングを行います。例えば、1対1の手渡しパ
スづジョギングづストレッチングづインターパスづ
直線交差づストレッチングというようにです。
(5) ストレッチング
ストレッチング(stretchingを直訳すれば、伸展
(運動) のことです。反動(はずみ)をつけたり、相
手に押してもらったりして痛みをこらえて行う運動
に代わって、「筋肉をゆっくり伸ばしていき、その
伸展した状態を維拝する」という新しい型の柔軟性
の運動が、1975年にアメリカのボブ・アンダーソン
によって考案されました。これまでのように反動を
つけて運動を行うと、筋の中にある筋紡錘が反応
し、筋がそれ以上に伸びて障害を起こさないように
反射的に筋を収縮させる働きがみられ、逆効果にな
ります。したがって、この伸張反射が生じないよう
21
I
央
中
の
ド
ツ
る
リ
す
グ
を
8
ス
5
ハ
図
で
又
プ
ド
る
仮
鑓
1
1
す
5
っ
図
ま
図
,
肝
一
区
@ @
@ ? ? ?
o o o
V ...
「="
I
11
にゆっくりと引き伸ばしていき、軽い緊張を感じる
ところで止め、その体制を10一15秒あるいはよヤ)長
く維持します。決して痛みが出るほどには伸ばさな
いことが重要です。
ラグビーではス トレッチ体操として次のような111頁
序と部位で行うのがよいでしょう。
①ア キ レ ス腱
太股の裏側を床に対して垂直
に、足の裏をかかとまで床に
まっすぐに着けて置くこと。
膝の裏側を曲げることによっ
てストレッチを行います。
図5-l2
ノ
乙 ②ふ くらはぎの筋
かかとを床につけて、足の先をまっすぐ前に向け
て後ろ足を伸ばします。前足の膝を曲げることに
よってストレッチを行います。
④太股の前面直立して手で足を持ち上げます。両
はつけたままでかかとを殿部の
に引っ張り上げます。ストレッ
している間はずっと直立したま
でいます。(相手と支えあうな
で して、バランスをくずさない
うに注意します。)
⑤六
図5-15 ㍊用三聖地面に向けてやさしく押
庁几花U
⑥。""。""'
図5-16
ノ
八
図5-17
ノ
籾
図5-13
③膝屈曲節 (ハムストリング)
股関節を直角に、脚の後ろ側をまっすぐにして、
立っている方の足先が前方をさすように立ちます。
ウエストの所で体を
り ゆっくり前に曲げま
す。背中の下部に痛み
目 を感じたら胴体を立て
- / たまま、立っている方
の足を少し曲げてスト
レッチを行います。
図5-14
⑥股関節の屈曲筋
立っている方の足がまっすぐ前をさしていて
中が弓なりに、正面の膝を曲げることによって
レッチを行います。
22
色
釘
辻
の背中の下郎
i・両手を床の上にぴったりとつけておきます。
/
山背中、尻、かかとを壁につけておきます。腕は水
平より少し高くなるように、前腕が手のひらを前面
に向けて垂直になるようにします。肘と前碗を壁に
押し付けます。
Ⅰ
Ⅱ・壁に向かって股関節を押しつけます。
/
1
図5-20
Ⅲ・腕立て伏せを行うように腕をゆっくり伸ばして
いきます。ただし股関角行は床につけたままにしてお
きます。最後まで伸ばしたら1、2秒その姿勢を保
ちます。スタートの地点にもどります。
ム
図5-21
(
⑧肩
i・上腕を垂直に下におろし、指が背骨を並ぶように
します。肘を下に押し付けることによってストレッ
チを行います。
⑨百
八手を頭の上に置きます。頭を横
方向及び下方向に引っ張ります。
Ⅱ・肘を頭の正面で前方に向け、
手を頭の後ろに置きます。頭を
前方向及び下方向にやさしく
引っ張ります。なお引っ張って
いる腕の側面に頭を少し向けま
す。
¥
図5-25
2. ウオーミングダウン(Warming-down)
ウォーミングダウン(Warming-down)は整理運
動のことで使った筋肉の回復を早める上で重要で
す。自分自身で行うマッサージのような役割を果た
すものと考えてよいでしょう。
激しい運動で生じた老廃物を取り除くために筋肉
に酸素を含んだ血液を流し込まなくてはなりませ
ん。そのために練習やゲームの直後に軽い運動とス
トレッチングを行うノ要があります。ウォーミング
アップに比べてウォーミングダウンは軽祝される傾
向がありますが、必ず行いたいものです。
3一4分ジョギングなどを行い、続いてウォーミ
ングアップで行ったストレッチングを繰り返しま
す。
(辻野昭)
23
図5-24
掻
1
I
第6章段階別の指導目標と指導内容
ここではミニ・ラグビーの対象である小学生を低
学年、中学年、高学年という三段階に区切り、それ
ぞれの段階での指導目標と指導内容を述べますが、
その前に、ミニ・ラグビーの指導者が理解しておい
た方がよいと思われるポイントを二つ述べておきま
す。
くゲームの原則@
最初に述べておきたいのはゲームの原則について
です。ラグビーのゲームはまず「ボールの手奪」か
ら始まります。そしてボールを獲得した側が「攻撃
側」となり、獲得できなかった側が「防御側」とな
ります。(注:ここで言う「攻撃側」と「防御側」と
は、競技規則での定義とは異なり、ボールを持って
いるか、いないかを意味します。)
「攻撃側」の目的は、プレーを継続して最終的に
得点をすることです。そのための原則としてまず
「前進(Go-forward)」が上げられます。得点(トラ
イ)をするためには、相手のゴールラインを越えて
ボール持ち込まなくてはなりません。そのために最
も重要なことは相手ゴールラインに向かって前進す
ること(ボールを前進させること)です。それは必
ずしも直線的に前に出ることを意味するわけではあ
りませんが、攻撃側はいかに前進するかを常に考え
なくてはなりません。
「前進」の次に来る原則は「支援(SupPort)J です。
ゲームではボールは一つであり、当然ボールを持っ
ているプレーヤーは一人です。従って、ボールを
持っているときもさることながら、ボールを持って
いない時にいかに動き、ボールを待っている味方を
サポートするかが重要です。
「支援」の次に来るのは「継続(Continuity)J です。
前進し、支援ができれば攻撃は継続します。ミスを
せずに攻撃を継続できれば必ずトライのチャンスが
生まれることでしょう。
一方「防御側」の目的はボールを(再)獲得し、
自分達が「攻撃側」になることにあると言えます。
そのための原則は「圧力(Pressure)J です。少しで
も前に出て相手に圧力をかけ、相手に余裕(時
的・空間的)を与えないようにすることが重要
す。そうすればボール(つまり攻撃権)を取り返
チャンスが必ずなとずれるはずです。
「前進」「交接」「継続」「圧力」は、ミニ・ラグビ
の生みの親とも言えるウェールズのレイ・ウイリ
ムズがI973年に「プレーの原則」として示して
来、ゲームの西原則、ラグビーの基本原則などと
言われ、ラグビーを単純化して捉え、指導するた
のキーワードとして使われてきました。ミニ・ラ
ビーの指導者も理解しておくべき言葉です。
くタグ・ラグビーとミニ・ラグビーの関係
もう一つはタグ・ラグビーとミニ・ラグビーン
関係についてです。タグ・ラグビーはラグビ一
の増大を目的に、今までにラグビーボールに触,
ことのない者、とりわけ年少者をターゲット;
て、l997年(平成9年)に日本ラグビーフット,
ル協会がその導入を決定し、以降その普及に積
に努めています。最近では小学校や中字校の体
材としてタグ・ラグビーが使われるようになっ
ており、大変好ましいことです。タグ・ラグビ
通して一人でも多くの子どもが日本では必ずし
じみがあるとは言えない楕円球に触れ、親しん
らえることは、今後のラグビー普及の一助にな
のと思われます。
タグ,ラグビーとミニ・ラグビーの最大の
は、コンタクトプレーの有軸です。タグ・ラク
ではコンタクトプレーを排し、ボールの直接,
奪を無くしています。この点に置いて、タグ・
ビーとミニ・ラグビーは根本的に異なるスポ
いえます。しかし、そうすることでゲーム要
なくして単純化し、より安全性を計り、初心
軽に出来るスポーツとなっています。
ミニ・ラグビーの観占から言えば、タグ、
ビーは初心者とりわけ年少の初心者に対して
ボールを持って起り、相手を抜き、パスする
重点を置いたリードアップゲームとして活用
とが可能です。また、最近高字年のミニ・う
のゲームでは、ボールキャリアーがコンタク
24
一
り求め、パスをしたりスペースを探したりするプ
レーが少なくなる傾向があることから、そのような
場合の矯正練習として活用することも出来ます。し
かしミニ・ラグビーを十分に楽しんでいるプレー
ヤーに対し、取り立ててタグ・ラグビーをさせるノ、
要はありません。
タグ・ラグビーでラグビーに興味を持った子ども
を、どのようにす@Lはスムーズにミニ・ラグビーに
移そ予できるかという質問を受けることがありますO
その子どもの年令や体格、性格、他のスポーツ経験
等、いろいろな要素があることから、一律な答えは
見つかりません。しかし、どのようにしてコンタク
トプレーを導入・オ旨導するかが大きなポイントとな
ると思われます。というのも、前述したようにタ
グ・ラグビーとミニ・ラグビーとの違いはコンタク
トプレーの有無だからです。
指導者は、タグ・ラグビーが気に入ったからミ
ニ・ラグビーも気に入るとか、タグ・ラグビーが出
来ればミニ・ラグビーも出来るなどと、安易に考え
ないことです。タグ・ラグビーとミニ・ラグビーは、
ダイレクトにつながっているものではないことを、
言ゑ;鼓することが大切です。
前置きが長くなりましたが、それではミニ・ラグ
ビーの段階別指導目標とその指導内容を見ていきま
しょっ。
I・低学年(小学校1一2年程度)の指導目標と指
導内容
(I)指導目標
低学年での指導目標としては、次の二つが上げら
れます。
①簡単なゲームが出来る
②スポーツに親しむ態度を育てる
そしてこの目標を達成するためのより具体的な目
十票として、次の三つが上げられます。
i・ラグビーは楽しい遊びであることを感じさせる
h・ゲームにおいてボールを持って自由に走ること
を促す
Ⅲ・ルールを守る態度を学ばせる
とくに初心者に対しては、ラグビーを楽しい遊び
であると感じさせることが第一の目標となります。
そしてこの目標を達成する過程で、ボールを持って
自由に走ることを促し、ルールを守る態度を学ばせ
ることが出来ます。ところで、低学年という発達段
階にとって、攻防相乳型のゲーム(ラグビーがまさ
にそれですが)は難しいものです。そこで、低学年
ではより簡易なミニ・ゲーム、すなわち5 人制のミ
ニ・ラグビーを活発に行えることを指導の中心に置
き、その中ではことさらFWのスキルあるいはBK
のスキルという考え方をとる必要はありません。ま
た、この段階ではラグビーの基本原則の第一である
「前進」を理解させます。
(2)指導内容
・①ラグビーは楽しい遊びであることを感じさせるた
めには
ラグビーの動きと子どもたちの日常生活(学校の
体育を含む)の中の動きは、大きく異なります。
従って、指導者(大人)のラグビー観やゲームのイ
メージをそのまま子どもたちに当てはめていくので
はなく、遊び的な指導の中でラグビーの動き作りを
行いたいものです。また、子どもたちは保護者の意
志や強制(?) によってラグビーに参加しはじめる
というのが一般的な現状であることから、そのよう
な状態から子ども自身の意志でラグビーに参加する
ようになる指導方法・内容を指導者は常に考え、求
め続けなければなりません。
②ゲームにおいてボールを待って自由に走ることを
促すためには
まず、子どもたちにとって親しみのない楕円球の
特性に気付かせるために、子どもたちにラグビー
ボールに触れるいろいろな機会を、いわゆる「ラグ
ビーのゲーム」といった既成概念にとらわ@Lずに設
定しなければなりません。すなわち、低学年では、
ボールコントロールとボディコントロール、言い替
えれば、個人とボールとの関係をいかにスムーズに
理解させるかが課題となります。その上で、次のよ
うなことができるようになる指導内容を考える必要
25
I
-
一
,
b
があります。
i・ボールを待って勢いよく走ること
Ⅱ・パスされたボールを恐がらずにキヤソチす
ること
Ⅲ・地上にあるボールを止まらずに拾い上げる
,と
」
③ルールを守る態度を学ばせるためには
フェアプレーはすべてのスポーツの中に存在しま
すが、ラグビーにおいてはその根幹を成すもので
す。あらゆる指導の機会を通して、子どもたちに
フェアプレーの精神を示すことが重要です。しかし
この段階の子どもにフェアプレーといっても十分な
理解を得ることは難しいでしょう。そこで、まず練
習やゲームにおいてどうすれば勝てるのかあるいは
得占できるのかを教え、それと共にやってはいけな
いことをよく理解させ、ルールを守る態度を学ばせ
ることを主眼とします。そのためには、子どもたち
に理解できる簡易なルールによる練習・ゲームをエ
夫すること、ルール違反があった場合はそれがよく
ないことであることをその子どもにしっかり理解さ
せる指導が必要です。
これらの目標を達するために、低学年には5人制
のミニ・ラグビーにとらわれず、もっと少人数の簡
易ゲームを導入します。具体的には、1回のナイス
ランやナイスパスで、ゲインラインを越えてトライ
が取れるようなゲーム、すなわち1対1や2対2の
ゲームから始めます。そして、人数を段階的に増や
して行く中で、自然にスキルが身に付き、自分から
積極的に動けるようになるような指導をしたいもの
です。十分にスペースのあるゲームから試みて下さ
い。また、ゲームになればコンタクトプレーが生じ
ますが、低学年がモールやラックといった集団プ
レーを意識できる段階ではないことから、特に指導
する必要はないでしょう。なお、5人制ミニ・ラグ
ビーを行うためには、以下のようなプレーが可能と
なるような指導が必要となってきます。
i・走りながらパスし、またキャッチする
h・ボールを持っている相手に向かって防御に
でる
Ⅲ・相手をかわして走ろうとする
2・中学年(小学校3一4年程度)の指導目標と
導内容
(1)指導目標
中学年での指導目標としては、次の二つが上
れます。
①やや組織的なゲームが出来る
②フェアな態度を育てる
そしてこの目標を達成するためのより具体的
標として、次の三つが上げられます。
i・個人スキルを理解させ、その習得をはか
h・チームを構成するユニットとその役割を
解させる
iii・自らルールを守り、レフリーに従う態度
ばせる
中学年は動作の習得が最も盛んな時期です。
段階では、将来の礎となる個人スキルの習得が
の目標となります。また、自己中心的であった
年に対し、中学年になると仲間と協力して物事
付することが可能になります。そこで、チーム
くつかのユニットによって構成され、それぞ
ニットには基本的な役割があること、そして
がうまく機能するためには協力が必要なこと,
させるとともに、基本的なユニットプレーの
はかります。このためには低宇年から一歩
ゲームを準備する必要がありますが、それが
のミニ・ラグビーである必要はありません,
で、7人制ミニ・ラグビーによって、より組
ゲームができるよう子どもたちを導くための
考えます。低学年ではゲームの第一の原則
「前進」の理解を促しましたが、中学年では
「交接(サポート)」し、攻撃を「継続」する
もう二つの原則を理解させます。
(2)指導内容
①個人スキルの理解とその習得をはかるた
26
個人スキルとして、低学年ではランニングとハン
ドリングが主たる内容でしたが、中学年ではラグ
ビーにはランニング、ハンドリング、コンタクト、
キッキングという四つの個人スキルがあることを理
解させ、その習得をはかります。そのためにはグ
リッドやチャンネルを使った練習を工夫し、子ども
たちに多様な練習機会を提供します。低字年から始
めた子、中学年から始めた子、発達の早い子・遅い
子、運動能力の高い子・低い子等、いろいろな子ど
もがいます。指導者は一人ひとりをよく見極め、練
習の工夫とともにグルーピングにも気を配り、きめ
細かい指導で個人スキルの習得・向上に努めなくて
はなりません。
②チームを構成するユニットとその役割を理解させ
るためには
一般的にチームは、FW及びBKの二つのユニッ
トに分けられます。しかしゲームでの機能を考える
と、BKの中でもHBとそれ以外のB K ははⅠ童いが
あることが容易に理解されるでしょう。つまりチー
ムはFW、HB、BK (HB以外のBK) の三つの
ユニットからなり、それぞれボールゲッター(ボー
ル獲得役)、リンクプレーヤー(つなぎ役)、ペネト
レイター(突破役)としての役割を担っているので
す。これを理解させるためには、低学年よりやや組
織的なゲームを準備します。そしてゲームヘ向けて
の練習過程において、それぞれのユニットを構成す
るポジション、そのポジションに求められるスキル
(ポジショナルスキル)を理解させ、練習します。し
かし、決してポジションの早期固定、専門化をは
かってはいけません。すべてのプレーヤーにすべて
のユニットを経験させます。この経験は、子どもが
ラグビーを継続し、最終的にどのようなポジション
につこうとも、大きな財産になるはずです。
③自らルールを守り、レフリーに従う態度を宇ばせ
るためには
スキルの向上、ゲームの組織化に伴って、徐々Lこ
いろいろなルールを導入していきますが、低学年で
見られがちな「他人のルールⅠ豊反は指摘できても自
分ではそのルールを守れない」というのではなく、
自ら積極的にルールを守る態度を養うとともに、
ルールⅠ皇反を指摘されたら潔くそれを認められるよ
うな指導が必要です。またゲームにはレフリーが存
在し、たとえ自分が正しいと思っていてもレフリ一
の判定に従わなくてはいけないことを学ばせること
も重要です。このためには、日頃から「ルール道
守」、「レフリー絶対」を子どもたちに訴え続けなく
てはなりません。そしてなにより重要なのは、指導
者自身がルールを守りフェアな態度を示すことで子
どもたちを導くことです。この蒔期には、興奮のあ
まり時として好ましくない行動や言動がおこること
があります。そのような場合、指導者は速やかに対
応、しなくてはなりません。
3・商学年
導内容
(1)指導目中
高学年で
れます。
①組織的な
②20フエ
せる
(小学校5
指導目標
ゲームがで
アな態度と
6年程度)の指導目標と指
しては、次の二つが上げら
きる
エアプレーの精神を理解さ
そしてこの目標を達成するためのより具体的な目
標として、次の三つが上げられます。
i・個人スキルをさらにシェイプアップする
Ⅱ,ユニットスキルを理解・遊行させる
Ⅲ・相手そしてレフリーに対し敬意の念を持た
せる
ミニ・ラグビーの完成を目指すこの段階では、と
かくユニットスキルあるいはチームスキルが優先さ
れ、個人スキルがおろそかにされる傾向にありま
す。しかし、どんな素晴らしいチームプレーも結局
はそのプレーに関与するプレーヤーのハイレベルな
個人スキルから成り立っていることをよく理解し、
個人スキルの重要性を忘れてはなりません。また、
中学年では基本的なユニットの役割とその理解をは
かりましたが、高手年ではそれをさらに発展させ、
∼
と
票
の
フ
27
I
擢
"一"""
¥
ミニ・ラグビーで求められるユニットスキルをよp)
明確に理解させるとともに、その同上をはかれ)ま
す。小学年までに前進、支援(サポート)、継続は
指導されました。南学年ではこれに加え圧力(プ
レッシャ一)の理解をはかります。プレッシャー
は、防御において相手にプレッシャーを掛けること
を主に意味しますが、攻撃において相手のプレッ
、ンャ一に屈することなく攻撃を敢行するという意味
で捉えることも可能でしょう。いずれにせよ、高学
年になるとプレッシャ一下のゲームが行われるし、
また行われなくてはならないということです。これ
は中字年でも言えることですが、すべての子どもた
ちが必ずしも低学年からラグビーを行い、高学年を
Ⅰ印えるわけではないことから、そのようなプレー
ヤーをどのようにして低学年からラグビーをプレー
している子どもたちと同化させるかを、指導者は常
に考えなくてはなりません。
(2)指導内容
①個人スキルをさらにシェイプアップするためには
中学年までに、一応の個人スキルは扱われまし
た。高学年では、それらのスキルをより早いスピー
ドで、そしてプレッシャ一下で行えるようにならな
くてはなりません。そのためには、個人スキルの練
習において常に相手を意識させ、またプレッシャ一
のかかった;吠態で練習する工夫が重要です。
②ユニットスキルを理解・遊行させるためには
高学年では中学年で扱われたユニットスキルを、
人数の上でもレベルの上でも発展させます。人数
が増えることで味方とのより一層の協同、プレッ
、ンャ一のかかった状況での相手への対応、プレーの
スピードアップと、中学年0こ比べて混乱を引き起こ
す要素がいろいろあります。そのような中でミニ・
ラグビーに求められるユニットスキルの理解をはか
り、遊行できるようにプレーヤーを導くためには、
プレーヤーの習熟度にあわせた練習状況・条件のコ
ントロール(工夫)が不可大です。中学年でも述べ
ましたが、たとえ南学年であっても、そしてその子
どもが将来ラグビーを続ければまず間違いなくある
ポジションにつくことに指導者が確信を持ったとし
ても、それでもポジションの固定化・専門化を行う
べきではありません。
③相手そしてレフリーへの敬意の念を持たせるため
には
運動能力が向上し、人数が増え、またラグビー経
験を重@aるに従って、高学年では小学生とはいえ敵
しいゲームが展開されるようになります。しかし、
自己のコントロールを失うようなことがあってはな
りません。商学年では、ゲームを行うには相手がい
なくてはならないこと、そしてシフリーがいなくて
はならないことを、しっかりと理解させるノ要があ
ります。このためには、相手は「相手」であって決
して「敵」ではないこと、自分達が楽しむための
パートナーであることを、交流会等の対外ゲームは
もちろんのこと、普段のチーム内での晩年的な練"
においても常に強調することが重要です。またオ旨,"
者は、レフリーは子どもたちがゲームを楽しむのを
助ける援助者として存在していることを、子どもえ
ちに理解させる努力もしなくてはなりません。ゲ
ムに負けた理由をレフリーに見いだそうとするよう
な態度を子どもたちの前で示すような指導者はポ
題外と言えるでしょう。このことが理解されれば
自ずと相手そしてレフリーに対して敬意の念が生
れてくるはずです"その結果、ゲームが終われば;
に言われることなく自然にお互いに挨拶を交わし
健闘を謂え合い、レフリーに感謝することでし
う。これが「ノーサイドの精神」です。
(川島淳
28
1
ミニラグビー指導の手引き2002(1)JRFU
ミニラグビー指導の手引き2002(1)JRFU
ミニラグビー指導の手引き2002(1)JRFU
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行動ターゲティングと嗜好推測Ken Yasumatsu
 

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