1. 科学をやさしく深く考える 「光の不思議・暮らしに役立つ光」
第4回 「光と地球環境」
2012 年 2 月 25 日
１．誰もがみんな光っている
1.1 焚き火の周囲はなぜ熱い（暖かい)？
木が燃える ＝＞ 火によって温度が高くなった空気が体に触れる から？
温まった空気は上に昇る 火の上はこれでも OK．
温まった空気は横には流れない，風上にいてもあたたかい なぜ？
光，赤外線が空間を伝わり，肌や衣服を温める．
日射を浴びると暖かいのと同様 ただし，赤外線は見えない
赤外線ストーブとファンヒーターの暖め方の違い
1.2 放射
あらゆる物体
＝＞周囲に電磁波としてエネルギーを
「放射」している．
電磁波：紫外線，光，赤外線，電波など
電磁波の波長 ＝＞波長は「色」

2. プランク関数
物体は、いろいろな色（波長）の光（電磁波）を放射している。
太陽の光 七色の虹
ウィーンの変位則
「物体の温度」と 「その物体が放射する最大エネルギーの電磁波の色（波長）」の関係
（波長）＝2897÷（温度＋273）
太陽の場合 5500℃ ＝＞ 0.5 ミクロン ＝＞ 可視光線
地球の場合 15℃ ＝＞ 10 ミクロン ＝＞ 赤外線
2012 年 2 月 21 日 16:00 運輸多目的衛星ひまわりの可視画像（左）と赤外画像（右）

3. ２．地球のエネルギー収支簿 －太陽の輝きと地球の輝き－
2.1 電気コンロの上の石ころの熱収支
電源を入れる
温度が上がり始める
ある温度以上にはならない
コンロから熱は与えているはず・・・・ なぜ？？
熱は逃げる。
電磁波を放射している ＝＞エネルギーを放出している
エネルギーを放出 ＝＞ 熱を放出 ＝＞ 冷える
地球（あらゆる物体）は常に自分自身で冷えようとしている．
電磁波としてエネルギーを放出（放射）している
接した空気に熱を奪われる
2.2 エネルギーの放射量に関する法則
シュテファン・ボルツマンの法則（1 平方メートルあたりの光のエネルギー：F）
F ＝σT4
＝ 0.00000057×(温度＋273)×(温度＋273)×(温度＋273)×(温度＋273)
＝＞ その温度に応じた熱を周囲の空間に放出している
その熱量は，同じ大きさであれば，温度が高くなると多くなる
もらう熱量が同じで、温度が上がるにつれて、捨てる熱量が増えてゆく
預金通帳の残高と入金、出金の関係
もらうエネルギー（熱）が捨てるエネルギー（熱）より多い ＝＞ 温度上昇
もらうエネルギー（熱）が捨てるエネルギー（熱）より少ない ＝＞ 温度低下
もらうエネルギー（熱）が捨てるエネルギー（熱）と等しい ＝＞ 温度一定

4. 2.3 地球の熱収支
地球にとっての熱の供給源である日射について
熱をもらうばかりでは，地球の温度は際限なく上昇してゆく・・・・・・
太陽：表面の温度が約 5500℃のガスの球
同じ大きさの 5500℃の金属の球を太陽の位置に置く
＝＞ 太陽と同じような光を出す（太陽と同じように見える）
＝＞ 5500℃の物体に見合ったエネルギー（熱)を主に光の形で放出し
ている
地球：表面温度 18℃ほどの物体として宇宙空間に主に赤外線としてエネルギーを放
出している．
放射で冷えている物体の温度（地球の平均温度)はどう決まる？
もらう熱 物体の温度を上げる
捨てる熱 物体の温度を下げる
もらう熱は一定であるとする。
（もらう熱）＞（捨てる熱） 「収支決算は入超」 温度は上昇する
捨てる熱が増える（放射で熱を捨てているなら）
温度は次第に上昇し，捨てる熱が増え，
（もらう熱）＝（捨てる熱） となったところで温度上昇は止まる
（もらう熱）＜（捨てる熱） 「収支決算は出超」 温度は低下する
温度低下とともに捨てる熱が減り，
（もらう熱）＝（捨てる熱） となったところで温度低下は止まる
いずれにしても，収支バランスがとれるように，物体の温度は決定される．
地球 もらう熱 ＜＝ 太陽放射（日射)
捨てる熱 ＜＝ 地球放射（赤外放射)
太陽からもらう熱と同じだけの熱を捨てるように地球の温度は決まる．
（注：ここでは，気温という言い方はしていない．平均的な地球の温度）

5. ３．大気の毛布 －温室効果と地球温暖化－ 収支のつりあいを求めて
地球表面温度の決まり方
単純化するために，雲はないとする．
ポイント：大気までは地球であり，大気の外（宇宙空間）に捨てる熱量が日射量とつり
あうように温度が決まる．
①温室効果がない場合
（空気：窒素，酸素だけの空気)
②温室効果がある場合
（窒素、酸素のほかに、水蒸気，二酸化炭素，メタン等の温室効果ガスが含まれる)
温室効果がある場合： 温室効果がない場合より地表面の温度を上げることにより，
宇宙空間に放出する熱量を太陽からもらう日射量につりあわせる．
現在の地球（平均気温 15℃）：温室効果がない場合（－18℃）と比べて，30 度以上も温度
は高い
いわゆる人間活動がもたらす地球温暖化について
人間活動が関与しない地球温暖化はあるのか？
・入射してくる日射のエネルギー
・地球の公転軌道や自転軸の傾きの変化
・植生分布の変化
などなど