先生のための著作権入門

©2016- Naoki Kato at TGU
先生のための著作権入門 2020/04改訂（随時更新中）
東京学芸大学
ICTセンター教育情報化研究チーム
加藤直樹

はじめに
もうICT活用は必須というか当然

はじめに
ところが
には注意すべきことが
資料提示
資料配布
デジタル教材でも
アナログ教材でも

はじめに
そして遠隔授業の需要も

はじめに
注意いただきたいこと
• 著作権は法律で定められたもので，
その解釈はなまものです．
• 様々なガイドラインや判例から
解釈するしかありません．
• 個々の事象の白黒は，
最終的には裁判でしか決まりません
• また私の解釈間違いもあると思います
• ですので，本資料は絶対的なものではないこ
とをご承知おきください．

著著作作権権のの基基本本
先生のための著作権入門

著作権の基本
著作物とは
• 第2条
一著作物思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、
美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二著作者著作物を創作する者をいう。
文書
写真
イラスト
映画
講演
講義
著作者
創作

著作権の基本
著作物とは
アイデア
大発明
大発見
創作的な表現
事実の記述
著作物
著作者の権利

著作権の基本
著作者の権利
• 第17条
著作者は、次条第１項、第19条第１項及び第20条第１項に規定する権利
（以下「著作者人格権」という。）並びに第21条から第28条までに規定す
る権利（以下「著作権」という。）を享有する。
２著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しな
い。
著作者の権利
著作者人格権
著作権
無方式で発生

著作権の基本
著作者人格権
• 公表権，氏名表示権，同一性保持権
公表
するかしないか
の決定権
氏名を表示するかしないか
表示するならどのような名にするか
の決定権
同一性を
保持する
権利

著作権の基本
著作者人格権の性質
• 一身専属
• 相続非対象＝著作者の死亡によって消滅
• 譲渡はできないが・・・
著作者人格権
譲渡
不行使契約
GLAY
ZONE

著作権の基本
教育に関係しそうな著作権
著作者の権利
著作者人格権
著作権

著作権の基本
上演，演奏，口述，上映
• 第22条，24条
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として
（以下「公に」という。）上演し、又は演奏する権利を専有する。
著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
演奏上演口述上映
演出

著作権の基本
公衆送信
• 第23条
著作者は、その著作物について、公衆送信（自動公衆送信の場合にあつて
は、送信可能化を含む。）を行う権利を専有する。
放送（無線通信）
有線放送
自動公衆送信
オン・デマンド
（異時・非同期）
送信可能化
同時・同期
記録
入力

著作権の基本
伝達
• 第23条
２著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達す
る権利を専有する。
受信装置
公衆送信
伝達

著作権の基本
複製
• 第21条
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
全部
一部分
形式変更
創作的でない変更

著作権の基本
翻案
• 第27条
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、
映画化し、その他翻案する権利を専有する。
翻案
（創作的な変更）
教材
（二次的著作物）
表現形式の
本質的な特徴
がある

著作権の基本
二次著作物の権利
• 第28条
二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、こ
の款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種
類の権利を専有する。
翻案
（創作的な変更）
教材
著作権
原著作者

著作権の基本
譲渡・貸与
• 第26条の2，３
著作者は、その著作物（映画の著作物を除く。以下この条において同
じ。）をその原作品又は複製物（映画の著作物において複製されている著
作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において
同じ。）の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
著作者は、その著作物（映画の著作物を除く。）をその複製物（映画の著
作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製
物を除く。）の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
譲渡
貸与
譲渡権消失
次の譲渡は自由になる

著作権の基本
頒布
• 第26条
• 映像教材は映画？ →Yesらしい
• ただし一般的なものは頒布権が適用されない
というのが最近の解釈
著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
２著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映
画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。
複製
※頒布によって頒布権は消えない
映画

これらの権利を他者が持っている著作物
を利用したければ・・・

著作権者に許諾をとればよい

えぇ～～

いやいや許諾をとらなくても
よい場合を紹介します

著作権の基本
著作権の制限
• 著作権法第3節第5款
著作者
著作権
コピーしちゃダメ
複製権の制限とは
「複製してはダメ」
ということが制限される
＝「複製して良い」

コラム
身近な著作権の制限の例
• 私的使用のための複製
• 注：デジタルデータは要補償金支払
CDパッケージの写真はTDK CD-RDE80PWX10N：http://www.tdk-media.jp/media/cd-audio/bbb40100.html

コラム
DVD作品の複製
• 第30条私的使用のための複製
コピーコントロール
アクセスコントロール
解除・複製
リッピング

著作権の基本
授業で著作物を使う際関係する制限
• 非営利
• 引用
• 学校その他の教育機関における複製等
もちろんですが自分が著作権を持っている
著作物は自由に使えます(^^)

非非公公衆衆とと非非営営利利なな利利用用

非公衆と非営利な利用
「公」「公衆」を対象とした著作権
• これらは非公衆に対してなら
無許諾で行える

「公」「公に」「公衆」とは
• 不特定の人
• 特定かつ多数の人
非公衆
＝特定かつ少数（50未満）
しかし！！授業を受ける者は公衆！
改正著作権法第３５条
運用指針策定に関する論点整理
著作物の教育利用に関する関係者フォーラム

営利を目的としない場合の制限
• 第38条
授業は非営利と扱われます
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金（いずれの名義
をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条
において同じ。）を受けない場合には、・・・
料金の支払いなし
（その催しに対する）報酬なし
営利を目的としない催し

営利を目的としない上演等
• 第38条
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金（いずれの名義
をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条
において同じ。）を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述するこ
とができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者
に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
演奏
上演口述上映
演出

営利を目的としない伝達
• 第38条
３放送され、又は有線放送される著作物（放送される著作物が自動公衆
送信される場合の当該著作物を含む。）は、営利を目的とせず、かつ、聴
衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達する
ことができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。
受信装置
公衆送信
伝達

営利を目的としない貸与
• 第38条
４公表された著作物（映画の著作物を除く。）は、営利を目的とせず、
かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複
製物（映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画
の著作物の複製物を除く。）の貸与により公衆に提供することができる。
貸与

営利を目的としなくても
はダメです．複製や翻案したものを
するのもダメです
複製翻案（改変）公衆送信
営利を目的としない上演等や貸与

複製・翻案と譲渡がだめ
教材を作るにはやはり許諾が必要？

著著作作物物のの引引用用

著作物の引用
次の手が引用
• 第32条，47条の7
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、
公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当
な範囲内で行なわれるものでなければならない。
・・・第32条・・・の規定により複製することができる著作物は、これらの規定の適用
を受けて作成された複製物の譲渡により公衆に提供することができる。
引用による一部複製
譲渡も可能

著作物の引用
引用の条件
引用と転載について，日本医書出版協会，http://www.medbooks.or.jp/copyright/forauthor/quot.php
1. すでに公表された著作物であること。
2. 引用する「必然性」があること。
3. 引用部分が明瞭に区分されていること。
4. 引用部分とそれ以外の部分に「主従関係」
があること。
5. 原則として、原形を保持して掲載すること。
6. 原著者の名誉や声望を害したり、原著者の
意図に反した使用をしないこと。
7. 出所（出典）を明示すること。

著作物の引用
文章の改変は認められるか？
・・・デジタル教科書の実現には教科書検定から派生する問題につ
いての議論が必要である．現在，教科書として無償で配布するため
には検定を通る必要があるが，教材一つ一つを検定するのは非現実
的である．となると，教材の部分は有償になってしまうのであろう
か．文科省の動きに注目したい．・・・
加藤は「デジタル教科書の実現には検定の議論が必要である．無
償で配布するには検定が必要だが，教材を検定するのは非現実的で
ある．文科省の動きに注目したい」と述べている．
デジタル教科書の実現には教科書検定から派生する
問題についての議論が必要である。現在、教科書とし
て無償で配布するためには検定を通る必要があるが、
教材一つ一つを検定するのは非現実的である。となる
と、教材の部分は有償になってしまうのであろうか。
文科省の動きに注目したい。

著作物の引用
• 翻案可能とは非明示
• 同一性保護
• 第20条２四・・・著作物の性質並び
にその利用の目的及び態様に照らしやむ
を得ないと認められる改変・・・
• 第32条・・・公正な慣行に合致するも
のであり、かつ、報道、批評、研究その
他の引用の目的上正当な範囲内・・・
• 教材作りでは，まぁ大丈夫でしょう
• 論文では慣習的に行なわれている
• 学術誌等の引用の慣習に従えばよい
GLAY
ZONE

著作物の引用
図やイラストの引用
ト
リ
ミ
ン
グ
フ
ィ
ー
ド
バ
ッ
ク
情
報
追
加
これは翻案
創
作
的
な
変
更

著作物の引用
引用は強力です
• 引用して作った著作物の
著作権は自分にあるので
• 上演等，公衆送信，複製，貸与・譲渡
ができます．
自分の著作物

著作物の引用
孫引用
引用
引用出典はこちらを記載

著作物の引用
引用の注意点
二次著作物
（許可を取っての）
複製
引用

コラム
Web上の素材も引用できる？
• 引用のルールを守ればOK
• 有料サイトでもOK

やっぱ
改変もしたい

授授業業ににおおけけるる利利用用
（（かかななりり改改正正さされれままししたた））

授業における利用
最後の手が授業における利用です
• 第35条
学校その他の教育機関（営利を目的として設置されているものを除く。）
において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程におけ
る利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度に
おいて、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信（自動公衆送信の
場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。）を行い、
又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公
に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該
複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利
益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
２前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置す
（新設）る者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
３前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関におけ
る授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をそ
の原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当
該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若し
くは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所
において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適
用しない。

35条適用の基本条件は
学校その他の教育機関（営利を目的として設置されているものを除く。）
において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程におけ
る利用に供することを目的とする場合
学校その他の教育機関
授業の過程における使用
担任する者
授業を
受ける者

複製できます配布できます
• 第47条の7
・・・第35条第１項・・・により複製することができる著作物は、これら
の規定の適用を受けて作成された複製物の譲渡により公衆に提供すること
ができる。
複製譲渡

ついに翻案もできます！
• 第47条の6
次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当
該各号に掲げる方法により、当請著作物を当該各号に掲げる規定に従つて
利用することができる。
一・・・第35条翻訳、編曲、変形又は翻案
教材
翻案
（加工）
創
作
的
な
変
更

よって・・・
• が可能になります
二次著作物
翻案
貸与
譲渡
複製
上演・演奏・上映・口述
複製
伝達

授業の過程とは
講義・演習等
（予習・復習を含む）
小中高校の
特別活動や部活動
教育センター等における
教員研修
免許状更新講習
通信教育での
各種授業
公開講座
FD・SD研修
模擬授業
会議
課程外の補修

教育を担任をする者とは
事務職員に
依頼できる
別組織
（教育委員会等）
配布
他の先生との
共用・共有

必要と認められる限度とは
クラス単位・授業単位
（複数クラス担任も含む）
の人数
授業参観の参観者
研究授業の参加者
大学の大人数授業も
同一授業だが
他の先生のクラス
も含む人数

権利者の利益を不当に害することと
なる場合とは
コピー
（複製）
配布
（貸与・譲渡）
本来は授業を受ける者が
購入するモノ

権利者の利益を不当に害することと
なる場合とは
一部分
コピー
（複製）
配布
これを繰り返し
結局，小部分以上を配布

コラム
（歌詞等を含む）音楽の利用
• 邦楽の著作権はほぼJASRAC
• もちろん35条は適用
• それ以外では，手続きは簡単だが有料
ビデオグラム録音料インタラクティブ配信料
音源がCD等の場合，
製作会社からも許諾をとる

コラム
動画共有サイトを利用
• 「個人」「団体＋国内曲」ならOK
Youtube，ニコニコ動画等
音源がCD等の場合は，
製作会社から許諾をとる

授業における公衆送信
※あくまでもここまで説明した
条件の中でであることに注意

遠隔授業における利用
遠隔合同授業
上演・演奏・上映・口述・伝達
提供
公衆送信
自動公衆送信
送信可能化
主会場
副会場
同時
教師はいても
いなくても良い

遠隔授業における利用
それ以外の公衆送信には補償金
• 第35条
• 組織で支払い
• 2020年度は特例で無償
２前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置す
（新設）る者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
補償金の支払い
Sartras

授業の過程で教材を配信できます
公衆送信
（同期・非同期）
送信可能化
記録授業を
受ける者
二次著作物翻案複製
担任する者
ファイルサーバ
Webサイト
配布
提示

授業の過程で映像を配信できます
収録
（複製）
二次的著作物
翻案
公衆送信
（同期・非同期）
送信可能化入力
記録
担任する者
授業を
受ける者
伝達

授業を収録したもの
• 35条を超えた瞬間に様々な権利が発生
• 肖像権は35条とは別途に要注意
著作物の上映口述や上演
著作物の板書や掲示
掲示された
著作物🎶🎶
背景音
児童・生徒先生

コラム
指導者用デジタル教科書の利用
提示はOK？
映像配信もOK？
複製・二次著作物を配布・配信
学習者用デジタル教科書の存在
出版社に要確認

コラム
COVID-19対策休校期の問題
休校期間
授業予習等
もし休校がこのまま続いて「授業」ができなかったら，
休校期間の学びは「授業の過程」ではなくなる？？
つまり35条が適用できない？？
授業？？？
課程外の補習授業と考えちゃえ！
小中学校は通常
遠隔授業は想定外

おおままけけにに

おまけに
他人の論文の活用
著作権
出版社
譲渡されていることがほとんど
RightsLink
http://www.copyright.com/

おまけに
外国の著作物
• ベルヌ条約
• 保護国法の原則
A国 J国
J国著作権法
で保護される
利用

おまけに
自分の論文の活用
• 契約をきちんと確認すること
著作権
出版社
譲渡
自分の著作物へ再利用
自サイトで公開
所属大学のリポジトリ

コラム
著作権の譲渡を受ける場合
• 第61条
契約時には注意
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。
2 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡
の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたもの
と推定する。
著作権
譲渡
翻訳権・翻案権等
二次的著作物・・・

おおわわりりにに

おわりに
教育・研究における著作物
知財開発推進センター？
職務で開発
教員
誰のもの？
全ての
• 著作権処理（費用支払を含む）
• 著作物管理（利用者からの問い合わせ）
ができるなら
所属組織（15条参照）
著作権処理は
非常に大変
多彩な教材の開発には
著作権部署が必須
権利だけ譲渡させるのはダメよ

おしまい
研修会お引き受けします
１回30万円から・・冗談です

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