Recommended
Recommended
More Related Content
Featured
Featured (20)
アート業界で働く人のための会計講座ー事業継続のためのツラくないお金の回し方を考えるー
- 4. はじめに アートとお⾦の問題 「お⾦」といっても実務（役割）はいろいろ 経理︓出納、記帳、決算作成 等 財務︓損益把握、資⾦繰り、ファンドレイジング（営業・広報）、予算実績管 理 等 税務︓確定申告 等 ※助成⾦の申請、報告 4
- 10. 会計はなんのためにする︖ ちょっと参考資料。会計のおこりについて • 「会計」︓「会って功績を計る」 • 前漢の司⾺遷（B.C.145~B.C.87）『史記』 • 司⾺遷は、B.C.2200年に夏王朝を始めた兎が、適材適所を実現 するために、仕事を任せた⼈に「会」ってその功績を「計」る⾏為に因 み、「会計」という⾔葉が⽣まれたとしている。 （吉⽥寛「市場と会計」2019） 10
- 11. 会計はなんのためにする︖ 会計とは例えば 会計︓accounting account︓評価・説明 accountability︓説明責任 計ること。評価。振り返ること。反省。⾃分を知ること。 • 事後処理。めんどくさい。 – 会計はなんの役に⽴つ︖ 対外的な信⽤を得られる、アピール材料になる – 先の⽬標を具体的にたてられる（予算） ⇒過去をきちんと詳らかに整理して、今を押さえ、未来を考えよう そのためのツール、⾔語 11
- 27. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする １．損益計算 使うお⾦ ＜ 得るお⾦ 最終的に利益がでるように ２．資⾦繰り 使うお⾦ ＜ 持ってるお⾦ ⼿元のお⾦が⾜りなくならないように これを公演・展⽰・プロジェクト単位、 かつ年度単位で継続しないといけない 今⼀度かみしめてみてください 27 8⽉公演、30万スタート、収⽀▲10万の例 300,000 -100,000 200,000 0 -400,000 300,000 6⽉ 7⽉ 8⽉ 残⾼ 収⽀ 6月 7月 8月 計 収支 -400,000 300,000 -100,000 残高 300,000 -100,000 200,000 200,000
- 28. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする １．損益計算 最終的に10万の⾚字。 どうする︖ ▼収益を10万増やす ・客単価をあげる ・動員を増やす ▼費⽤を10万減らす ・公演に直接かかる費⽤ ・稽古にかかる費⽤ ・制作にかかる費⽤ ・その他固定費 28 8⽉公演、30万スタート、収⽀▲10万の例 300,000 -100,000 200,000 0 -400,000 300,000 6⽉ 7⽉ 8⽉ 残⾼ 収⽀ 6月 7月 8月 計 収支 -400,000 300,000 -100,000 残高 300,000 -100,000 200,000 200,000
- 29. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ２．資⾦繰り 7⽉にキャッシュが⾜りなくなる。 どうする︖ ▼元⼿資⾦を増やす ・６⽉中までに10万⾦を借りる︕ ▼収⽀改善をする ・７⽉の⽀出をあと１０万抑える︕ ▼⼊出⾦のタイミングをずらす ・８⽉の収⼊を１０万だけ先に⼊⾦する︕ ・７⽉の⽀出を10万円だけ8⽉に遅らせる︕ 29 8⽉公演、30万スタート、収⽀▲10万の例 300,000 -100,000 200,000 0 -400,000 300,000 6⽉ 7⽉ 8⽉ 残⾼ 収⽀ 6月 7月 8月 計 収支 -400,000 300,000 -100,000 残高 300,000 -100,000 200,000 200,000
- 30. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする １．損益計算 ▼B/S（貸借対照表）とP/L（損益計算書） ▼現⾦主義と発⽣主義（実現主義） ▼費⽤収益の対応 ▼年度単位で考える 30
- 31. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする • 活動のイメージ 4⽉ 1⽉ 10⽉ 7⽉ 公演・ 展⽰ 公演・ 展⽰ イベント イベント イベント イベント 31 3⽉31⽇ 期末時点での状態を⾒る 貸借対照表（B/S） 期⾸から期末までの変化を⾒る 損益計算書（P/L）
- 33. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ▼現⾦主義と発⽣主義（実現主義） 例）１期にＡ事業が終了 年度をまたいで、Ａ事業に対する売上100万円が２期に⼊⾦ 現⾦主義 ２期︓100万円の売上計上 発⽣主義（実現主義） １期︓100万円の売上計上 ※発⽣主義は損益が必ずしもキャッシュの動きと連動しない 例）未収でも売上確定している時点で収益を認識する 33 １期 ２期 事業終了・売上確定 ⼊⾦ 発⽣主義で計上 現⾦主義で計上
- 41. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ２．資⾦繰り 資⾦繰りは損益でなく収⽀で考える（⼊出⾦のタイミング） 41 架空劇団 キャッシュフロー 8月 ９月 10月 11月 計 備考 月初残高 0 50 100 -100 入場料収入 1,100 1,100 9月末公演① 助成金収入 500 500 10月に締めて、11月末入金 短期借入 500 500 10月に締めて、11月末入金 収入 計 500 1,100 0 500 2,100 人件費 俳優 300 100 400 メンバーは後払い 人件費 運営 200 250 450 メンバーは後払い 舞台費 0 200 200 公演月の翌月払い 会場費 400 400 稽古場も舞台会場も前払い。 広報記録費 50 50 100 チラシデザイン印刷、当日記録 その他雑費 0 （本当はプライベートで5万負担） 借入返済 500 500 支出 計 450 1,050 200 350 2,050 収支 計 50 50 -200 150 50 月末残高 50 100 -100 50
- 42. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ２．資⾦繰り • ポイント – 収⽀で⾚になる時期はどこか︖ – 最⼤でいくら現⾦がマイナスになるおそれがあるか︖ – そのマイナス分をあらかじめ前準備できるか︖ – お⾦を借りられるか︖ – ⽀払を遅らせられるか︖ – 収⼊を前倒しできるか︖ – ⼀か⽉単位でなく、実際にはもっと細かく気にしていく必要がある 42
- 43. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ２．資⾦繰り – キャッシュがあると、、、 • 資⾦繰りに悩み対策に費やす時間が減り、ストレスもなくなる。事業そのものに注⼒できる。最終的な 損益だけ気にすればよい。 • ⼤きな助成⾦・補助⾦が狙える – 助成⾦・補助⾦は事後精算が多い。 • ⼤きなハコが借りやすい（前払いが多い） • リスクをとった勝負をしかけられる（⾚字も許容できる） – キャッシュなしで団体運営を始めると、、、 • ⼤きな⽀出ができるタイミングが限られる • すぐに個⼈負担としてふりかかる、プライベートの⽣活をおびやかす ※参考 「資本取引・損益取引区分の原則」（企業会計原則の⼀般原則の３） 元⼿のお⾦と経営活動のためのお⾦は区分すべし 43
- 44. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ２．資⾦繰り • 借⼊でも良い – 利息を払うだけで上記の不安が全て消し⾶ぶ。 – 100万円を３カ⽉３％で借りたとして、100万×３％÷１２×３＝ 7,500円 44
- 47. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする 収⽀構造を事業別に捉えてみる ▼公演① ⾚字補填の助成⾦をとると⾚字 ※収益でみると70％なのに… ※⼈件費はここで賄えている ▼事業部⾨ 計 公演①のマイナスを他で補って、 合計で150,000円の⿊字 ▼管理部⾨ 事業関係なくかかるお⾦ （税⾦等は省略してます） ▼計 年間で40,000円の⿊字 ※結果どうなったかと、なぜそうなったか 47 （円） 架空劇団 年間予算 公演① 公演② イベント グッズ 事業部門 計 管理部門 計 入場料収益 1,000,000 500,000 0 0 1,500,000 0 1,500,000 助成金収益 1,000,000 0 0 0 1,000,000 0 1,000,000 イベント収入 0 0 250,000 0 250,000 0 250,000 その他収入 0 0 0 100,000 100,000 0 100,000 収益 計 2,000,000 500,000 250,000 100,000 2,850,000 0 2,850,000 人件費 俳優 500,000 100,000 0 0 600,000 0 600,000 人件費 運営 400,000 50,000 50,000 0 500,000 0 500,000 舞台費 500,000 100,000 0 0 600,000 0 600,000 会場費 500,000 100,000 50,000 0 650,000 0 650,000 広報記録費 200,000 50,000 0 0 250,000 0 250,000 その他雑費 0 20,000 0 0 20,000 0 20,000 グッズ原価 0 0 0 80,000 80,000 0 80,000 事業費 計 2,100,000 420,000 100,000 80,000 2,700,000 0 2,700,000 粗利 -100,000 80,000 150,000 20,000 150,000 0 300,000 消耗品費 0 0 0 0 0 10,000 10,000 視察費 0 0 0 0 0 100,000 100,000 管理費 計 0 0 0 0 0 110,000 110,000 費用 計 2,100,000 420,000 100,000 80,000 2,700,000 110,000 2,810,000 損益 計 -100,000 80,000 150,000 20,000 150,000 -110,000 40,000 収益／総収益 70.2% 17.5% 8.8% 3.5% 100.0% 0.0% 100.0% 損益／総収益 -3.5% 2.8% 5.3% 0.7% 5.3% -3.9% 1.4%
- 49. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする 助成事業例① ⽂化芸術活動の継続⽀援事業 （１）は2/3助成（ICTが6分の1以上）ある場合は3/4 ⽐較的⾼め︕ （２）は全額助成、（１）の交付決定額以内 交付額は10万以上（それ未満の少額交付はなし） ※⾚字補填の要件はなし︕（収⼊は関係ない） 例）継続⽀援事業で交付額満額もらいつつ⾃⼰負担が⼀番少ないパターン 49 A-① 支出額 交付額 自己負担 （１）ICT含む 133,334 100,000 33,334 ※ICT22,223円以上 （２）コロナ費 100,000 100,000 0 233,334 200,000 33,334 A-①、B 支出額 交付額 自己負担 （１）ICT含む 1,333,334 1,000,000 333,334 ※ICT222,223円以上 （２）コロナ費 500,000 500,000 0 1,833,334 1,500,000 333,334 A-① 支出額 交付額 自己負担 （１）ICT含まない 150,000 100,000 50,000 （２）コロナ費 100,000 100,000 0 250,000 200,000 50,000 A-①、B 支出額 交付額 自己負担 （１）ICT含む 1,500,000 1,000,000 500,000 （２）コロナ費 500,000 500,000 0 2,000,000 1,500,000 500,000
- 52. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする 対象外経費の例 賞⾦、交通費のうちグリーン料⾦ 等 計上できない経費の例 事務所維持費、事務職員給与、振込⼿数料、⽔光熱費、備品（１点10万円以上）、印紙代、交際費、飲 ⾷費 等 まあ、事業してたら普通にかかるよね 52
- 55. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする 所得不⾜にいざなう構造 →収益構造改善のためにこうなったら嬉しい ①運営費助成（さっきの表の全部の範囲が対象） ②団体の利益獲得を阻害しない助成 - 収⼊要件をやめる（⾚字補填の考えをやめる） - 投資の発想で助成（資産買うとか。それは難しそう） - 翌年に繰り越せる⻑期助成（単年度主義との折り合い） 55
- 57. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ４．固定費と変動費、損益分岐点 – 固定費・・・売上増減に関わらずかかる費⽤（家賃・⽔光熱費・固定の職員給与など） – 変動費・・・売上に応じて発⽣する費⽤（作品制作費、プロジェクトにかかる外注⼈件費など） ①まず必ずかかる固定費を計算 50万 ②⼀回あたりいくら利益がでるかを計算 20万ー10万＝10万 ③何回で固定費が回収できるか計算 50万÷10万＝5回 57 0 200,000 400,000 600,000 800,000 1,000,000 1,200,000 1,400,000 1,600,000 0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 損益分岐点 収⼊ 固定費 費⽤ 計
- 58. 会計の何をわかってるとよい︖ ①お⾦のサイクルをイメージする ※⼀概に切り離せることではなく組み合わせだが、、、 • 売上に意義がある事業 – 取引。⾃分の輪。お⾦を払ってもらうことで個⼈に届ける価値 → 何が回ってる︖ • 助成⾦や補助⾦を獲得しているなど、費⽤に意義がある事業 – 公共の福祉、再分配、税⾦ → 何が回ってる︖ • 何はなくとも発⽣する収益と費⽤ – 組織の持続性、⾃分やメンバーの⽣活 → 何が回ってる︖（⽣活） 58
- 62. 会計の何をわかってるとよい︖ ②予算をつくる（事業計画の共有） 予実管理（予算と実績の管理） 助成⾦をとっているとき、２つの指標がぶつかるので、わけて考える ①利益を出したい（⽀出したくない） ②対象経費を使いたい（⽀出したい） どっちが⼤事か︖ ・団体の持続可能性をとれば①の⽅が⼤事︕ ・②も⼤事。 当⾯の⼈件費確保、将来への投資 ・年度（または複数年度）で⿊字になる予算をまずつくる ・各部⾨の役割分担を考え、それぞれで⽬標値をたてる – 稼ぐ部⾨、遊ぶ部⾨、将来のための部⾨など 62
- 69. 何を（どこを）⽬指すか︖ • 事業バランスの把握 – 構造的に助成⾦事業（公益性の⾼い事業）を主催する場合、単体だと ⾚字になりがち。管理費・固定費もかかる – どこでバランスをとるのか︖ • ⾚字を把握した上で助成⾦・補助⾦を活⽤する。 • 受託事業を受けるなど他で稼ぐ︕ • 個々⼈でのリスクヘッジ – 複数の職場を持つ – 助け合える場をもつ（互助ネットワーク） – 外に出ていく姿勢 – 個⼈で稼げる武器と場をもつ – 助けてくれる⼈を探す 69