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プロダクトマネジャーという仕事
プロマネって・・・
責任は重く、権限は少ない (実感)
プロマネでいられることがプレステージなのですよ (元上司)
会社の金を使ってイチかバチかのギャンブルができる (元同僚)
店に並べるのは営業の責任、売れなかったらプロマネの責任 (営業マン)
楽観的なプロマネのほうがいい仕事をする (元直属上司)
世の中で一番面白い仕事、たぶん (実感)
プロマネ(ブランド・マネジャー)の誕生
1931 年に P&G のニール・マケロイがブランド・マネジャーの職務規定に関す
る 800 語メモ“ Brand Man” を書く
担当製品のユニット別出荷数を十分に把握せよ
成長している既存製品の有効と思われる施策を他の領域にも応用せよ
課題を発見するため過去の広告や販促施策の歴史を調べよ
課題を特定して解決策を考え、かつ費用対効果を明確にせよ
販売計画成功のため最後までセールス担当をサポートせよ
目標達成のため必要とされるすべてを記録しフィールド調査をせよ
すべての顧客接点に全責任を持て
すべての広告費用に全責任を持て
地区マネジャーと地区の販促計画の問題点や改善策ついて議論せよ
プロダクトマネジャー制度の背景
 マーケティング概念の浸透
 製品やサービスは消費者のニーズに合わせるもので、消費者を製品に合
わせるものではない、という概念が組織中に浸透した
 ブランディングの重要性
 技術の進歩により類似した多くの新製品が誕生することになり、対競合
製品および自社内の他製品との差別化の必要性が増大した
 マス広告・マス流通の発達
 マスメディアと、セルフサービス店であるスーパーマーケットチェーン
の隆盛により人的販売のウェイトが下がり、一人のプロマネで実行でき
る領域が広がった(配荷、広告)
 企業の巨大化による権限の委譲
 企業が大きくかつ複雑になり、トップマネージメントが個々の製品や市
場を把握できなくなり、権限の委譲が必要になった
プロダクトマネジャー制の長所と短所
 長所
 担当製品の集中的な管理が可能になり、機会損失を回避したり問題の
早期発見が可能となる
 将来の上級幹部となるための絶好のトレーニングとなる
 トップマネージメントの決断・プライオリティづけを容易にする
 短所
 担当製品にしか関心が持てず、全社的な視野を欠く恐れがある
 他部門に対して指示的になったり、優越感を持つことがある
 プロマネは比較的年齢が若く、実務経験が浅いことが多く、サポート
部門が抱える問題に無頓着なことがある
プロダクトマネジャーの責務
 担当製品の売上と利益を最大化するためのプランの作成と実行
 短期的には売上と利益を最適化する
 長期的には売上と利益を最大化する
 Quality 、 Speed 、 Value の最大化
 製品開発の早期開始、早期発売とマーケットへの迅速な浸透
 早期にピークセールス・ピークシェアを最大化する
 製品寿命(プロダクトライフサイクル)の延長を図る
 営業活動のサポート
 顧客・消費者への正確で差別化された製品メッセージ・コピーの開発
 効果的なプロモーション・マテリアルの企画・作成
プロダクト・ライフサイクル
導入期: 新製品であるため認知度は高くなく、需要量も低い
‐ 市場場拡大を狙い啓蒙活動を中心に製品認知を高める
成長期: 認知が上がり需要が急増し、競合の参入が激化する
‐ 製品特徴や強みを強調しながらブランド力を高める
成熟期: 市場の成熟、競争の激化、価格競争が始まる
‐ 競合との差別化を図り、ロイヤルティとシェア維持を狙う
‐ 再活性化、リポジショニングの可能性を探る
衰退期: 製品の陳腐化、市場の縮小、撤退する競合の増加
‐ 支出を抑えながら既存顧客の確保に集中
プロダクト・ライフサイクルの段階別対応策
イノベーター理論
イノベーター: 冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人
(革新者) 時としてオタクとみられるが本物を見抜く力がある
アーリーアダプター: 流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人
(初期採用者) 他の消費者層への影響力が大きく、OLと呼ばれる
アーリーマジョリティ: 比較的慎重な人。流行り始めたものを積極的に
(前期追随者) 取り入れる。ブリッジピープルとも呼ばれる。
レイトマジョリティ: 比較的懐疑的な人。周囲と同じ選択をする。商品
(後期追随者) は成熟段階に入っている。フォロワーと呼ばれる
ラガード: 最も保守的な人。流行や世の中の動きに関心が
(遅滞者) 薄い。イノベーションが伝統になるまで採用しない
。
イノベーター理論によるユーザー分析
16 %の溝を超えるとカテゴリーとして定着する
プロマネはコーディネイターである
 プロマネの仕事は、定められた期日までに、定められた資源内で、
  約束したプロジェクトを完遂することである
 プロマネ一人では何もできない
 そのためのコーディネイションが主たる業務となるので、プロマネは
担当製品に係わるすべての情報の中心(発信および受信)となる
 研究開発部
 市場調査部
 広告代理店
 財務・経理部
 工場・物流部
 営業部
 マネジメント
プロマネのコーディネイションに必要なスキル
 高い生産性( Productivity )
– 時間の有効的利用( Time Slippage を減らす)
 コミュニケーション能力(アイデアを売り込む能力)
– 文書によるコミュニケーション
– プレゼンテーション
 クリエイティビティ
– 改革意欲(現製品・現プランが最高のものではない)
– 多くの代替案(複眼思考、引き出しの数)
– 好奇心の強さ
時間を有効に使う ‐ 生産性を上げるために
 プライオリティの高い仕事から片付ける ( インパクト、緊急性)
 デッドラインを設定する
 自分のベストタイムを知る(それを他人に知らせる)
 書類を全部完璧に読もうとしない
 毎日作業リストをつけて作業確認をする(プライオリティをつける)
 部下に仕事を任せる(権限の委譲、秘書)
 始めた仕事は必ず終える
 明確な目的がある時、本当に必要な時だけ会議を開く
    議長と書記を任命する(アジェンダと議事録の発行)
    議長は会議の目的が議論か決定か情報共有かをまず確認する
    必ず結論を出し、次のステップ(誰が、いつ、何を)を明確にする
    会議時間は短くし、延長はしない
文章によるコミュニケーション
 誰に、何を伝えるのか、どんなアクションを起こしてもらいたいのかを考える
 読み手が行動を起こすキーファクターは何なのか、そのキーファクターに関す
る情報を集め、分かりやすく並べ替え、結論を論理的に引き出す
 書き出す前に次の点を考慮する
 過去にうまく書かれた同様な書類があれば参考にする
 文頭に目的を簡単明瞭に述べる
 読み手が分かるように必要最低限の背景を述べる
 どのようなアクションを取ろうとしているのかを詳細に述べる
 その根拠をサポートデータとともに示す
 簡潔なチャートやグラフは有効であることが多い
 文頭から文末までロジカルに組み立てる
分かりやすいレポート・メモの書き方
 第一パラグラフですべて(概要)が分かるように書く
 バックグラウンドを必要に応じて加える
 提案の内容の詳細とラショネール
 数量、コスト、期間などの数値化できる情報
 他に考慮された選択肢と、それらが採用されなかった理由
 考えられるリスク(もしあれば)
 ネクストステップ(誰が、いつまでに、何をするのか)
 事実と自分の解釈・判断は明確に分ける(読み手に分かるように)
 書いたら時間をおいて、もう一度よく読み直す(特に E メールの時)
プレゼンテーション  -  準備がすべて
 プレゼンの目的を明確にしておく
 プレゼンマテリアルをチェックする
 スライドはシンプルに(一枚のスライドにたくさん盛り込まない)
 ビジュアル・エイズ(グラフ、チャート、写真など)を使用する
 強調するところは備忘手段をとる(マーカー、ポストイット)
 説得するための材料・根拠をそろえておく( EEEFAS )
 聞き手の知識、反応を予測する
 バックアップ資料を用意しておく
 Q&A を想定しておく
 リハーサルを行う
 機器のチェックも忘れずに
プレゼンテーションの進め方
 まず今日のプレゼンの目的を伝える
 簡潔で順序を踏んだプレゼンテーションを心がける
 ゆっくり大きな声で話す
 アイコンタクトに留意する
 スクリーンばかり見ない(聴衆に背を向けない)
 必要と思われる箇所でサマリーを加える
 相手が納得・理解しているか時々質問して確認する
 聴衆の表情、動き、ジェスチャーからペースを変えることも必要である
 リラックスし声のトーン、間、緩急に気をつけて話す
 できればプレゼンに多少のユーモアを盛り込む
 次のプレゼンをより良くするためにフィードバックをもらう
Secrets of Successful Presentations
 Know your objective     今日何を伝えたいのか明確に
 Analyze your audience    聴衆を分析して説得法を考える
 Organize     十分な準備をしてストーリーを死守する
 Grab the audience   -   まず冒頭で聴衆を引き付ける
 Talk louder than you think you should    声は大きく
 Pause for effect   -   テンポや間を置くことも大切
 Use gestures    ジェスチャーは強調するのに有効、リラックスもできる
 Make eye contact    聴衆の目を見る(全体的に)
 Questions and answers ” …”   答えにくい質問には 今のご質問は と質
問を ” …”繰り返しながら考える。ない時は よくある質問は と自ら切り出
す。さっと切り上げて終えるのが大事
聞き手を説得するための EEEFAS
 Experience   個人の経験・実体験
 Expert opinions  専門家や OL ・権威の意見、文献
 Examples  具体的な実例
 Facts  客観的事実
 Analogies  類似例・類推・たとえ
 Statistics  統計的事実・数字
ブランドの再活性化
 使用量を増加させる
 頻度、一回あたりの量、使い易さ、動機づけ、過度の使用によるマイ
ナスイメージの解消、コンプライアンスの改善、新しい使用場所
 新しい用途の提案
 リポジショニング(新市場・新ターゲット)
 新しい付加価値をつける
 新技術による既成製品の陳腐化
 パッケージ、コピーの改良、広告量の増大
ブランドを殺すことも時には必要
• ブランドロイヤルティが低く、プロダクト・ポートフォリオ上で
DOG (負け犬)と分類され(低い市場成長率、低いシェア)、会
社内に他に投資の対象がある場合は、ブランド価値の維持を考える
よりサポートを中止し、市場から撤退する選択肢も考慮すべき
• 過去にある程度のブランド価値を保持していた製品は、ブランド認
知もあり、サポート中止後も販売が激減する可能性が低く、製造コ
ストも低いことが多いので、利益を搾り出すミルキング戦略が経営
的に有効なことが多い
• 問題点:プロマネを説得するのが難しい
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント
プロマネの心得
 プロマネはその製品に関しては社長のような存在である
 一番必要なものは担当製品に対する愛情
-自分が製品を信じきっていなければ誰も説得できない
 マーケティングは科学とアートの両方の面を持っている
-客観的な調査結果や統計による数量的管理
-担当プロマネとしての思い入れや直感
 外資系の共通言語は英語ではなく数字とロジックである
-思い入れや直感も後付けでもロジカルに説明することが必要
 一番面白い仕事だと信じること( 2 勝 8 敗でもヒーローになれる)
お疲れ様でした。さいごに・・・
Serve your customers !
プロマネの責務は担当製品の売り上げと利益を最大化することだ
が、売り上げや競合のことを考える前に、マーケターはまずどう
やって顧客を満足させるか(ブランド価値を上げ、ブランドロイ
ヤルティを高めるか)を考えるべきである。

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