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AI生成と
著作権
阿部真也
(AIPE知的財産アナリスト・
AI活用アドバイザー)2023年
6月18日勉強会用
※本発表資料は「NBIL-5」における勉強用
に作成されたものであり、私的団体内で
の勉強用資料であることを十分に理解さ
れたい。
※※本稿は執筆者の私見によるものであ
り、所属団体その他の見解を代表するも
のではない。また、執筆者の過去学会発
表・論文・書籍・ブログなどですでに発
表済みの内容を活用している。
※※※学術的に不十分な点及びPPT発表資
料のため、資料上は説明不足な点がある。
https://filmora.wondershare.co.jp/ai-
image.html?fm_channel=cpc_yahoo&utm_source=yahoo&utm_m
edium=cpc&utm_campaign=fd-ai-
image&utm_term=ai%20%E7%B5%B5%20%E4%BD%9C%E6
%88%90&yclid=YSS.1001084952.EAIaIQobChMI9evlmvDJ_wI
V0csWBR18IwtPEAAYASAAEgLfxPD_BwE
AI生成は誰でもいつでもどこでも
・2022年後半から2023年にかけて汎用性の高いAI生成ソフトが多数登場し、
もはや文章、画像、動画など誰でもいつでもどこでもAI生成が行うことの出
来るようになった。
・PC、スマホと同じように恐らくほぼまもなくどこでも必須(PCやスマホ
には必ず入るようになる)と思われる。
・前回発表通り、ある種何でもできる。
・市場環境は急速に伸びつつもレッドオーシャン化も進んできているものと
思われる。
※冒頭のソフトを使用
し簡単なプロンプトで、
←ほぼ数秒で生成→
(一応阿部作!?)
以下基本的に登場す
るイラストは冒頭の
AIソフトを使用して
阿部が作成したもの
存在しない専門家を作る
約30秒で作成されたルドルフ・レーフラ
【設定】
名前:ルドルフ・レーフラ
職業:画家
概要:19-20世紀に活躍したドイツの神学者カール・レーフラの弟で画家。当時
主流であった写実的絵画にやや批判的で抽象的光の濃淡を無視した写実的であり
ながらどこか抽象的で、現代美術に通じるわかりにくさを持った画家。当時は全
く評価されなかったが、現代に入って、その先駆性が見直され、近時評価が高
まっている。代表作「失うものなどない失楽園」「光を無視した黒い太陽」
勿論、語らせることも、過去の貴重な動画
が発見という感じに作らせることも可能。
設定含めて全てAIで何でもできます。
何ならAI生成についてインタビューするこ
とも
↓は自画像という設定
代表作「失うものなどない失楽園」
(5回ほどトライアンドエラーしたので5分ぐら
いで完成された「代表作」)
代表作「光を無視した黒い大陽」
(30かからずに作成された「代表作」)
素人なら十分だまされる(!?)
「失うものなどない失楽園」 「光を無視した黒い大陽」
立派な額に入れて、それらしく解説すれば素人はだまされるかも(!?)
専門家の見解
ビジネス支援ツールの例
前回紹介していない最新例
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000019657.html
プロンプトやSEO対策も様々
前回もお話しした、いかにAIに自社のことをPRしてもらえるか、を争う時代になるかも
性能検証も・・・新たな考察も
https://news.yahoo.co.jp/articles/f2c9f1693198377bb7e9bb9
4231ffaedb78ac5ec?page=3
サービスに関しての結論
・大学教員レベルでなくとも存在しない画家「ルドルフ・レーフラ」を詳しく解説し、代表作
を取り出して、あたかも本当に19世紀にそのような先駆的な画家がいたように見せかけること
は可能。
・キャラクター設定などもにも活用可能で、ほとんどAIで全て完結できる
・とはいえプロンプトの工夫が必要であるほか、最後はまだ人間依存のところもある。ある程
度人間で考える必要性はありそう。
・学習データの影響か、若干偏りではないかと思われるところはある。
・技術的にはある一定レベルになっているので社会で有効活用するためのルールが必要
・AIは大衆化してきており車に例えるとTフォードができた辺り
・車と同じくAIもインフラ整備や(運転)免許等々も考えないといけない状況
・商機も非常に多いが、レッドオーシャン化もしてきている
・現状のルールを制したものが勝つ
・ルールメイキングをしっかりしないと大変な社会になりかねない
・知財・標準化の専門家はこの機会を逃さずに積極的にルールメイキングに関わるべき。
社会的には大問題
わかりやすいところとしてクリエーター関係の反対が強い
恐らく社会構造を破壊しかねない
煩わしい人間関係・仕様書よりもAIに指示した方が楽という、そういう可能
性があり、広告代理店など影響が甚大な可能性もある
広告代理店などの管理も大変となる可能性がある
その他極めて多方面に影響がある
例「画像生成AI “クリエーターの権利脅かされる” 法整備など提言」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230427/k10014051061000.html
著作権でも多方面で課題が
・元データがわからない中で類似した作品ができた時の依拠性判断
・そもそもクリエータが困らないか。元データへの補償は本当に不要か
・学習データに不安はないか
・30条の4における著作権者の利益を不当に侵害する場合とは?
・簡単なプロンプト入力だけで創作的寄与といえるか。
・どのレベルであれば、創作的寄与といえるのか?
・オーサーシップ(権利帰属)と資金回収の方法等
・今後の活用場面でのルール整備
・反AI活動(?)
・手書きの価値がむしろ増える(?)
・AI不使用認証(?)
・トロール対応・対策
プロント「知財」、アスペクト比1:1
「水彩画」で出力した →
結構頭が良いかも(?)
不安な方への企業独自取り組みも
日経新聞「Adobeも画像生成AI CTO「クリエーターに対価払う」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2155X0R20C23A3000000/
アドビは、元データのクリエー
ターへ対価を支払う仕組みを整え
たほか、もし訴訟になっても「全
額補償」を打ち出す
海外ではこういうものも
Protecting creatives or impeding progress? Machine learning and the EU copyright
framework - Kluwer Copyright Blog (kluweriplaw.com)
現在、少なくとも3件の訴訟(米国で2件(こちらとこち
ら)、英国で1件(こちら))があり、一般に公開されて
いる作品に生成MLモデルを学習させることは著作権侵害
であると主張している。3件の訴訟とも、オープンソース
の画像生成ツール「Stable Diffusion」の開発元である
Stability AIを被告としている。
一方、クリエイターを代表する団体からは、MLトレーニングのための著
作物の不正利用に対する明確な法的保護を求める声も上がっています。
こうした声は、米国やEUでも出ており、現在EU議会で審議されているAI
法案の議論の中で提起されている。報道によると、"アーティスト団体
は、作品が使用される前に権利者が明示的なインフォームドコンセント
を行うことを要求するセーフガードを含む、創造的芸術に特化した特定
のセクションを同法に導入するために動員している "という。
米国ではフェアユースとして学習データ利用を認めるべきか裁判中
少し解説
前スライド記事を用いながら少し解説
・ヨーロッパでは、法的枠組みがより明確になっている。
→そのため、今回の訴訟がすべてEU圏外で提起されたことも、おそらく説明がつくとされる。
→→2019年にCDSM(Copyright in the Digital Single Market)指令が採択されて以来、EUではトレーニ
ング用MLシステムに著作物を利用する際に適用されるルールが調和されている。日本も著作権法30
条の4でほぼ同じ状態といえる。
EUでは、いわゆるテキストマイニングとデータマイニング(TDM)に対する著作権の例外規定が
導入されている。
→CDSM指令は、テキスト及びデータマイニングを「パターン、傾向、相関関係を含むがこれに限定
されない情報を生成するために、デジタル形式のテキスト及びデータを分析することを目的とした
あらゆる自動分析技術」と定義。この定義は、学習データの観察された特性間の相関関係に大きく
依存する、現在の機械学習のアプローチを明確にカバー。トレーニングデータの一部としての著作
物の使用は、まさにTDM例外が起草されたときに予見されたタイプの使用である
CDSM指令3条及び4
条が日本の著作権
法30条の4と全く同
じ範囲とみるべき
かは現在不明
(?)
EU指令との対比
学術研究機関や文化遺産機関の研究者は、MLアプリケーションを訓練する
ために、合法的にアクセスできるすべての著作物(すなわち、公共のイン
ターネット全体)を自由に使用可能。それ以外の人(商用ML開発者を含
む)は、合法的にアクセス可能で、権利者がテキストやデータマイニング目
的での使用を明示的に留保していない著作物のみを使用可能
→日本と異なり、分かれている
その為記事では「ML学習=イノベーション=経済成⾧という物語の信奉者
にとっては、クリエイターやその他の権利者に、商業ML開発者による作品
の利用をオプトアウトする、あるいはより可能性の高い補償を要求する能力
を与えるこの枠組みは、イノベーションを阻害する大きな制限と感じること
でしょう。そして、世界の他の地域では、ML訓練のための著作物の利用は
「公正利用」にあたるという推定が残る限り、彼らはこれをEU経済にとって
の重大な競争上の不利とみなすだろう」としている。この点日本の方が有利
ただし、「公正利用」と同じような不当に利益を侵害しない条項はあり。
日本の著作権法30条の4
他参考:「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関す
る基本的な考え方」(著作権法第30条の4,第47条の4及び第47条の5関係)
令和元年10月24日 文化庁著作権課
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_17.pdf
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受
し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれ
の方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利
用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の
要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号
において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著
作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、
当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
著作権の未来について(記事での主張)
著作権の未来は?
また、TDM/MLに関するEUの法的枠組みは、(少なくともフェアユースに関する疑問が解決されるまでは)EU圏外のも
のよりも制限的であるように見え、(中略)知識へのアクセスのコミュニティの多くにとっては損失と認識されてきた
が、第4条の仕組みは、デジタル環境の現実にはるかに適応した著作権の未来を指し示すものとなる。
EUの立法者は、(欧州委員会が当初提案したように)学術的な文脈以外のあらゆる形態のテキストおよびデータマイ
ニングに著作権を包括的に拡大する代わりに、TDM/MLの文脈では、著作権保護は、実際にその意図を表明するほど望ん
でいるクリエイターおよび権利者のみに生じることを保証した。このアプローチは、著作権の最も基本的な問題の1つで
ある、著作物の利用をコントロールしたいと望むクリエイターとそうでないクリエイターの両方が、すべての創作活動
にデフォルトで適用されるという問題に対処している。EUのTDMの枠組みは、著作権保護を希望するクリエイターに限
定するものであり、インターネット上の他の人間的表現を、何十年も作品を閉じ込めるような息苦しいデフォルトの著
作権保護で覆うことはない。
今のところ、著作権に対するこのオプトイン・アプローチはTDMに限定されているが、このアプローチが実際に機能す
ることが証明されれば、特にMLトレーニングに関する進行中の議論において、このアプローチが拡大する可能性も考え
られなくはない。
登録ベースのアプローチに移行する、より近代的なEUの著作権の枠組みを構築することに関心のある人にとって、これ
は、アーティストや著者、その他のクリエイターが結束して、不必要で逆効果になりそうな著作権のさらなる拡大を求
めるのではなく、EU立法者が与えたツールを使うことが重要である理由を改めて示すものとなるはずだ。
著作権の課題 整理
学習元データ
補償・コントロー
ルの問題
30条の4により原
則クリアも良いの
か
使用時データ
ブラックボックス
偏りや意図しない
知財の侵害(?)
出力
依拠性問題
(現実的に直接依拠?)
トロール問題
流通
オーサーシップ
(権利帰属)
マネタイズ
(含むトロール問題)
↑プロント「知財」、アスペクト
比1:1 「未来的」で出力した
(阿部)オリジナル分類(少なくとも参考なし)のため要注意(=専門家による査読なし)
最新情報 内閣府及び文化庁
shiryo.pdf (cao.go.jp)
・AI開発・学習段階
と、生成・利用段階
で分ける。
・学習利用は原則的
に著作権侵害とはな
らない。
・生成・利用はでは、
通常と変わらず、類
似性と依拠性で判断。
前回公表済みスライドと同じ
旧来から指摘されていた課題
(振り返り)
プロント「著作権問題」、アスペクト
比1:1「水彩画」で出力した →
イシュー:何が問題か
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/ke
nsho_hyoka_kikaku/2017/johozai/dai6/siryou4.pdf
内閣府知的財産戦略推進事務局「AIに関して残され
た論点(討議用)」平成29年2月28日 p.2
オーサーシップ
をどうするか
AI生成物でも関与する人
①AIのプログラミング
②学習データの選択とモデルの選択
③AIの管理
④AIの出力結果の選択
前回公表済みスライドと同じ
旧来の議論 振り返り
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyo
ka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai4/siryou2.pdf
旧来の議論 振り返り②
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyo
ka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai4/siryou2.pdf
当然特許や意匠も論じられているが今回割愛
旧来の議論 振り返り③
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyo
ka_kikaku/2016/jisedai_tizai/dai4/siryou2.pdf
ルールメイキングの現状
今週のルールメイキングに関する報告
・主に先週公表された知的財産推進計画2023年のAI部分を中心に報告
・EUの最近の規制案等も簡単に報告
・その他 発表されている解説記事等(AI生成物は誰のものか)
知的財産推進計画2023年が発表さ
れました!!
2023年6月9日 知的財産戦略本部会合 議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/230609/gijisidai.html
2023年6月12日 日本商工会議所 トレンドボックス
https://www.jcci.or.jp/news/trend-box/2023/0612162808.html
知財本部
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/index.html
2023年6月9日 決定された知的財産推進計画2023
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku_kouteihyo2023.pdf
同上概要
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku2023_gaiyou.pdf
同上意見募集結果
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2023/iken.html
※同日により上記セミナー
の情報は盛り込めておりま
せん
後日YouTube確認予定
ちなみに同日
https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program/
知財専門家からすると目立たないと思いますが、重点計画も同日閣議決定です
まず、素晴らしいガイドライン
があります
概要記事
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230530/k10014082451
000.html
生成AIの利用ガイドライン(日本ディープラーニング協会)
https://www.jdla.org/document/
専門家の反応と解説
専門家の結論
私も確認しまし
たが、先生おっ
しゃるとおりと
いうところです。
詳細は柿沼先生
の資料等をご覧
ください
https://twitter.com/tka0120
ただし提言意見等見所も多い
意見募集結果(再掲)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2023/iken.html
例:弁理士会の意見
EUの動きなど
オーサシップについて
「AIが生成した小説は誰のものか 著作権を巡る世界に大波が押し寄せる」杉光
一成 金沢工業大学大学院教授
https://www.jiji.com/jc/v8?id=202306chatgptword
非常に好評
創作的寄与については「生成AIは、いわば人間の「秘書」や「部下」の代わり
になり得ることが言われているが、まさに生成AIを人から指示を出された「秘
書」や「部下」のように捉えて、「指示を出した側」が著作者となり得るのかを考
えよう、というわけである。」と解説
「ChatGPTにすべてを1回で自動生成させたわけではなく、各章の構成や
目次は自分で検討した上で、このような指示を繰り返し行い、最終的には自分であ
る程度まで文章を直したと想定される。」というような場合、著作権者になり得る
と解説。
杉光先生記事 続き
「トラブルが急増する」と警告
「このようにAIが関与した生成物に著作権が認められる場合と認められない場合
がある、となれば、当然のことながらほとんどの場合、AIを使って何らかの物を
生成した人は、著作権を確保するために、AIに生成させた(あるいはAIを利用
した)こと自体をそもそも言わなくなる(隠す)ことが予想されるからだ。」(私
も同意見)
AIを使って「『自分が作ったイラストのパクりだ』といったトラブルが急増する
恐れがある。」(私も同意見)
「他方、AI生成物の保護を認めなければ、あるいは通常の著作権よりも弱いも
のとすれば、先に述べたように多くの人は「これは自分の力で創作したものであっ
てAIは用いていない」と主張することになろう。その結果、「”権利のある創作物
に見えるもの”が爆発的に増える」(内閣官房・知的財産戦略推進事務局の検討資料
『AIによって生み出される創作物の取り扱い 討議用 平成28年』)ことになり
かねない。つまり、AI生成物に権利を認めても認めなくても、いずれにおいても
いばらの道が待っているとしか言いようがない。」(私も同意見)
同種の主
張は情報
ネット
ワーク・
ロレ
ビュー第
19巻
(2020)
等で私
(阿部)
も行って
いる↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/inlaw/19/0/19_190005/_
article/-char/ja/
杉光先生記事 続き②
「要するに、例えば画像生成AIツールの場合であれば、どの画像を学習
に用いて、誰がどのような画像を生成したか、という記録を残しておくべ
き」という主張を取り上げる
登録制度への言及や外形的判別不能について述べた上で、「個人的には」
と断りをつけつつ、大規模改正が必要との認識を示す。
また未来像として
「イラストなどの絵画や文章、曲の著作権侵害に関する訴訟(または紛
争)で、被告側(侵害したと訴えられた側)から、『原告(訴えた側)の著
作物であると主張しているものは、AIが生成したものではないか。つまり、
そもそも著作権が発生していないはず』といった類いの反論が増加すること
が予想されている。」
同種の主
張は情報
ネット
ワーク・
ロレ
ビュー第
19巻
(2020)
等で私
(阿部)
も行って
いる↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/inlaw/19/0/19_190005/_
article/-char/ja/
杉光先生記事 から普通の人が
導き出す答え
「従って、今後は著作物の創作者の側で、自らが「著作者」であることを示
す証拠、例えば、企画書、創作ノート、スケッチ、取材ノート等を日頃から
残しておくことが重要となり得る。」という部分が参考となるのではないか。
しかしそうなるとAIの発展性に変な制約(完全自動化ではなく、そういう
よけないなことを行わせるような機能の充実)、一手間かけるということな
ど、ここの部分だけ取り出してしまうと少々の結果になりかねない。しかし、
現行法からはこれ以上の結論とはならないだろう。
=やはり改正しかない(?)
→国は「検討中・・・」
同種の主
張は情報
ネット
ワーク・
ロレ
ビュー第
19巻
(2020)
等で私
(阿部)
も行って
いる
※その他、議論を2つ分ける必要性があるほか、「日本は『機械学習パラダイス』では
あっても、『AI生成・利用パラダイス』ではない点はくれぐれも気を付けるべきであ
ろう。」といった釘さしも。詳しくは記事をご覧ください↓
https://www.jiji.com/jc/v8?id=202306chatgptword (再掲)
いつもの議論
https://www.msn.com/ja-
jp/news/world/ai%E3%81%AF%E4%BB%95%E4%BA%8B%E
3%82%92%E6%B0%B8%E4%B9%85%E3%81%AB%E3%81
%AF%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%81%97%E3%81%AA%
E3%81%84-ai%E3%81%AE%E7%88%B6-
%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%B3%E6%95%99%E6%
8E%88%E3%81%8C%E4%B8%BB%E5%BC%B5/ar-
AA1cCWB4?cvid=5915e43198634845b46400a32a7ea7a9&
ei=18
いつもの議論②
第1回US-Asia国際著作権シンポジウム[人工知能と著作権
法] – 早稲田大学知的財産法制研究所[RCLIP]
各団体の動き
https://www.ieice.org/jpn_r/president/2022/statement.html
大学の声明例 国立大学
https://utelecon.adm.u-tokyo.ac.jp/docs/20230403-generative-ai
東大
大学の声明例 中堅私立大学
https://www.toyo.ac.jp/news/top/202304241800/
東洋大の例
大学の声明例 美術大の場合
大学のかぶをあげる例も
中身
https://www.musabi.ac.jp/news/20230511_03_01/
基本スタンスはこうなるのでは?
https://www.ieice.org/jpn_r/president/2022/statement.html
先述 電子情報通信学会の会⾧声明
知財専門家も主に「法的」部分で技術的専門性を活かして、生成系AIの問題に解決
することは重要な取り組みと思われるのではないか?
考察と提案
・とはいえマネタイズしないものを知財専門家が考えるのも本来的な部分と異なる
=それは学者が考えること(後は、政策担当者?)
・そういう意味ではマネタイズ、実装部分では知財専門家の活躍の幅もあるはず。
・倫理的・道徳的問題だけではなく最終的には資金の問題=自由のためには資金がいる
・民間ベースでルールメイキングを頑張る必要性あり
※とはいえ最後はベーシックインカムなど政策論になるかもしれない・・・
政策論の例→
https://www.msz.co.jp/boo
k/detail/09070/
プロンプト「ルールメ
イキング」アスペクト
比9:16 「未来的」で
出力 未来的???
ところで・・・猫も杓子もAIを語る
・AI関連はレッドオーシャン化激しい。
・どなたかレットオーシャン化指標(コモンディデイ化
指標?市場飽和指標?)Red Ocean Effectみたいなものご
教示願えればと。
・恐らくAI関係はあらゆる面でレッドオーシャン化、玉
石混淆が激しく、その手の指標計算すると面白いは
ず・・・
・この領域で勝ち上がって行くのも難しいのは事実
・とはいえ動向は追って積極的な関与、意見は出しは必
要では?ルールメイキング・・・
プロンプト「猫も杓子も」アスペクト比1:1 「水彩画」で出力
「ニャーニャーAIを語る語るニャー」
プロンプト「猫も杓子も」アスペクト比16:9 「未来的」で出力
何故こうなった!!
資格もレッドオーシャン化
この手の民間AI系資格いくつあるだろうか・・・(す
でにカウントの仕方だが2,3は乱立)
そろそろ国家資格が必要かもしれない
提案
恐らく一元的使用者帰属がよい
・経済的分析はまた途中
・とはいえ、AI生成で数多くの課題を解決する一つのキーは、帰属問題
・これを複雑化せずに使用者一元的にすることは良いのではないか
→現在のPC生成物と同じでシンプルかつ、支障も少ない
→→ただし、人間ドグマは課題
・海賊対応もしやすい
・難しくすればするほど、AIの発展性を歪めかねない。無駄な手間も多くなる
・トロール問題は残る
AIに関する何らかの団体を立ち上げ
て、団体による共同規制のようなも
のは考えられないだろうか
・データ集約化+認証+権
利をAI使用者帰属させるため
のスキーム。
・海賊対策等でAIの使用者に
一元的に権利帰属させる一
方、データ提供者への還元
スキームと、安心できる
データから作成されたAI生成
物の認証を組み合わせ
※ただし、最新の情報を考えるとあくまでも
学習段階と生成・利用段階を分ける二元論で
進むようであり、学習時は原則(著しい場合
除く)著作物は自由利用、生成・利用時は通
常通も判断となる様子。ある意味過去の発表
者意見とも近いところもあるといえる。
現状のスキームを考え
ると本アディアはあく
までも、一つの思考実
験であり、現行解釈か
らすると少々無理があ
るともいえる
前回公表済みスライドと同じ
さらに進んでディープフェイクなど、
(ディープフェイクのみならずAI対
応でも可)むしろ上手く活用するス
キームも考えられなくも無い
ディープフェイクを悪者では無く、良い使い方ができるよう活用する。上手く使えば
ディープフェイクも素晴らしい技術に
前回公表済みスライドと同じ
ディープフェイク活用スキーム(案)
AIに自身を
学習させる
ことを許諾
俳優などモ
デル
AIに関しての団体
許諾に対し
ての対価支
払い
ディープ
フェイク
作成者
学習用データ
の提供
対価の支払い
ディープ
フェイクの
の使用者
AIの提供 対価の支払い
ディープ
フェイク作
品
正統なディープフェイ
ク使用者と認定
国 監督
必要に応じ
て補助金も
ディ
ープ
フェ
イク
認証
現状のスキームを考え
ると本アディアはあく
までも、一つの思考実
験であり、現行解釈か
らすると少々無理があ
るともいえる
前回公表済みスライドと同じ
参考になりそうな既存制度等例
教育分野専門だと
㇐般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(サートラット)
https://sartras.or.jp/
☆授業目的公衆送信補償金制度は、2018年5月の法改正で創設された制度
2018年の法改正で、ICTを活用した教育での著作物利用の円滑化を図るため、これま
で認められていた遠隔合同授業以外での公衆送信についても補償金を支払うことで
無許諾で行うことが可能
改正著作権法35条運用指針についてはこちら
https://sartras.or.jp/unyoshishin/
いわば35条の補償金運用団体となる※
※同上目的より「本会は、著作者、実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者の権利を有する者(以下「権利
者」という。)のために、授業目的公衆送信補償金(以下「補償金」という。)を受ける権利又は複製権等の許諾権を行使し権
利者に分配することによって、教育分野の著作物等の利用の円滑化を図るとともに、あわせて著作権及び著作隣接権の保護に関
する事業等を実施し、もって文化の普及発展に寄与することを目的とします。
認証ではないがライセンス系で
クリエイティブ・コモンズ
https://creativecommons.jp/
「AI学習不可」や「AI生成」または「AI不使
用」といったものもライセンス、契約法の
中で解決する手段もあるかもしれない
ただしバックにある著作権法…ベルヌ体制※が前
提でもあるので、何らかAIに関してのルールメイ
キングは国際的に必要かもしれない。
※ベルヌ体制の語は名和小太郎氏
コラムにも掲載したように…
https://www.jagat.or.jp/past_archives/story/1542.html
IPscopeコラム
https://ipscope.nbil5.jp/ai6/
現行法でも①権利管理が事実上できていない、②インターネットの発展により依拠性要件
の無力化が進行(少なくともトロール的に言いがかりをつけるだけならば)③その他(表
現の自由への制約や共創を阻害する等様々な批判)があったがAI登場でそれが加速し
A:(なし崩し的に創作した著作物の著作権が消えていく)「著作権法崩壊ルート」
B:アナログ系統をこのままの著作権法で死守しつつ、AI・デジタル系を別法体系でカ
バーする「デジタル法(情報法)独立ルート」
C:著作権法を大幅にリバイバスする「著作権法リバイバルルート」
といった3ルートに分岐するものと思われる。 としていた
コラム執筆後に非常に古いが アーカイブにて23年前の2000年の記事を発見した(公益社団法人日本印刷技術協会のアーカイブ)
この中で名和小太郎氏は現在の著作権に対する理解を
「第1は正統派の解釈である『正統的理解』で,ベルヌ条約を基にして考えている。第2はWTO/TRIPSの考え方をベースとした
マーケット主導型の『市場主導的理解』である。第3は世界データセンターのルールに代表される『研究者的理解」である。」
と3分割し「名和氏は今後,著作権における理解は,正統的理解が狭まり,市場主導的理解と研究者的理解がせめぎあいながら
広がっていくだろうと予想する。」としていた
議論的にはコモンズ論(?)
コモンズと反コモンズ(?)
わかりやすい解説 名和小太郎(2004)管理Vol47 NO.4 pp.286-288
「コモンズの悲劇、反コモンズの悲劇」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/47/4/47_4_286/_pdf/-char/ja
昨年末ようやくノーベル経済学賞受賞者の
オストロムの「コモンズのガバナンス」が
翻訳されました・・・
23年前だが・・・
・仮に前スライドで23年前に名和氏が示した下記が正しいとすると、著作権秩序を知財専門家が主体となった民間ベースで作ってゆ
く事となるかもしれない。
「市場主導型は法律と契約をベースにして,各自が契約を結びながら権利を恣意的に上乗せをしていくという考え方である。」「市場的理解が広がれば,
コンテンツをもつ人は今までの秩序に安住することは難しくなるかもしれない。ネットワーク環境や端末など新しい技術が次々に開発され,競争原理が働
くと,正統派理解(法律)でも保護できず,契約をしていないため市場的理解(契約)でも保護できなくなるケースが出てくるかもしれない。」「電気通
信の場合は,ITUで国家間の取り決めを行い,各国で法律として制定する。しかし,正統的理解でルールを決めると時間がかかるため,市場主導的なデファ
クトスタンダードも普及している。さらに,研究者が集まり,ユーザ主導の民間の標準化団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)でインターネット
に関わる標準化を行い,RFC(Request For Comments)として規格書を公開するという動きもある。
正統的理解と市場主導型理解は,条約が先にあり,足りない部分をいろいろ提案していく。しかし,研究者理解を中心としたインターネットの世界は何
もないところからスタートしているため,秩序が必要である。そこで名和氏は,インターネットにおけるさまざまなルール作りは,今後,著作権を含めて,
標準化の世界がモデルになるかもしれないと語る。
例えば,個人情報や安全などは本来法律や条約で保護するものである。しかし,ISOではISO9000の延⾧として,環境や健康,リスクマネジメントなども
扱う動きがある。ISOに強制力はないが,そのかわり,法律よりは容易に作ることができる。各国がISOのように相互認証という方法でルールを作れば,国
境を越えたところでもデジタルコンテンツにおける著作権の秩序ができてくるかもしれない。(通信&メディア研究会2000年2月29日ミーティングよ
り)」
まとめ
・AI生成について著作権法に絞りつつ最近の概観と、方向性、
さらに独自提案までを織り込んだ。
・状況は日々動いている。動きが速いからこそ知財/標準化の
専門家はこの機会を逃さずに積極的にルールメイキングに関
わるべきと考える。
・本資料は勉強会資料であり、あくまでも参考となるように、
やや発散的ながら多方面の議論、参考情報を提供している。
今後の議論の参考となれば幸いである

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