風邪の鍼灸治療についてまとめました。CALISTA院長CHIHIRO

1. 風邪の治療

2. ウィルス
人細胞の100分の1ほどの
大きさ
治療薬がない
細胞がない
手洗いうがいで予防は難
細菌
人細胞の10分の1ほどの
大きさ
治療薬がある
細胞がある
手洗いうがいで予防可
東洋医学で考える風邪とは
風邪の邪気は最初に背中の風門から身体に入り、それが後頭部の風池にたまり、さ
らにその上の風府に集まる。そしてそれが頭の中に入り、身体の節々まで及んで、いわ
ゆる風邪の諸症状を引き起こすと考えられている。

3. 風邪は休養のサイン
私たちの人生は、ある幅の中で、病む時（陰）や健康な時（陽）を繰り返し、大きな
流れとしては死に向かっている。陰と陽を繰り返して成り立っているわけだから、陰の時が
来たからといっていたずらに不安がったり、がむしゃらに用の状態に戻ろうとしたり、薬でむ
りやり身体を動かそうとする必要もなかろう。
陰に身を置くことも人生の一様相と考え、じっくり自分を見つめることも必要。
『からだの声を聴く』 形井秀一
病気を全うする
どんな変動も「全う」することが大事だと整体では考えます。熱を出した時は、大人がまず熱
を出すその体力を認めます。「こんなに高い熱が出るなんて体力がある証拠だ」と褒め、「これ
を出し切ればぐんと成長するぞ」と励まします。大人がその現象を積極的に捉えることが子供
の安心感を引き出すのです。発熱による汗は、熱を放出する役割の他に、老廃物を排出す
る役割があるので、きちんと出し切らせることが肝心です。風邪の時は食欲が劣るものですが、
これは要求に従って構いません。水分の補給だけはちゃんとやっていれば、栄養は落とした方
が風邪の経過がいいのです。
『整体的子育て』 山上亮

4. ①悪寒する風邪
悪寒とは「寒さを悪(ﾆ)くむ」というように、外からの寒さに対抗して筋肉を 震わせて体温を
作っている反応です。悪寒は寒さに傷つけられた結果の反応なので、傷寒(ｼｮｳｶﾝ)といいま
す。風邪のウイルスに中 (ｱﾀ) ると中風ということか ら、「悪寒に始まるかぜを引くこと」を漢
方では「傷寒中風(ｼｮｳｶﾝﾁｭｳﾌｳ)」といいます。 体温を上げるために筋肉を震わせているの
が悪寒で、布団に入って暖めるようにしますから、「傷寒中風」の発熱に解熱剤が逆の効果
になることは誰にでもわかります。 寒け（悪寒）している時には少しの熱があっても身体を
温めましょう。ただ、高い熱は脳に良くないので、場合によっては頭を冷やすことも必要です。
②悪寒は無いか、軽い悪寒で高い熱が出る風邪
子供や夏に多く、高い熱がでます。寒気がしないのに熱が出てくるかぜを漢方では「温病(ｳﾝ
ﾋﾞｮｳ)」といいます。 この場合は身体を休ませ、涼しい場所に寝かし、頭を冷やすことが大切
です。温病の邪気は温性であるため、わずかながら津液を乾かす作用を持つのと同時に、衛
気の流れの異常に伴い津液の流れもおかしくなるので、軽い口渇、咳などといった症候が出
現します。ただし裏に邪が侵入したわけではないので、症状は肺の宣発粛降異常から派生し
たものが主になります。
悪寒のある風邪と、すぐ熱が出る風邪

5. 『傷寒論』三陰三陽病の三陽病～陽病を三つに分類、熱が主体（病位による）
傷寒論的アプローチ

6. ①太陽病：太陽の病たる、脈浮、頭項強痛して、悪寒す。
太陽病は、表と外を位とし、陽証の初発、その経過する日数もまだ浅く、その病熱が主と
して体表や身体上部に動いて、積極的な症状を呈す。
脈：浮（緩ｏｒ緊）
舌：赤、薄白苔
寒熱：発熱、悪風（風を嫌う）ｏｒ悪寒
随伴症状：頭痛、自汗ｏｒ無汗、鼻水、咳喘、項背強痛、
身体疼痛、腰痛など
①脈浮（緩ｏｒ緊）：発汗する場合緩に,無汗だと緊になる場合が多い
②頭痛：虚気上逆（臍下虚で気が下にたまらず、上にあがる為頭痛になる）
③無汗：奏理が閉じており熱が外に出せていない→灸で熱を出す
④鼻水ｏｒ咳喘：熱を冷まそうとし水がたまる、外に出そうとするため
⑤悪寒：陰陽のバランスが崩れている。中は冷えているため起こる
治療：熱を下に下げるため、合谷・中府・膻中など.
肺経の裏の大腸経を使い熱をひく。商陽の刺絡。大椎や肺兪の散鍼や
無汗の場合はお灸で熱を出す。臍下虚の場合は、腎経、気海、関元に補。

7. ②少陽病：少陽の病たる、口苦、咽乾、目眩也。
少陽病は、外位を専らとし表位と外位及び、陽証にして病がやや進行し、すでに邪熱（ウイルス・
細菌）が外位である胸隔内に内攻し、外位を中心として、半ば表位と裏位に相動き、種々の症
状を呈す。
脈：弦緊
舌：紅、厚白苔
寒熱：往来寒熱（寒くなったり、熱くなったり）
随伴症状：目眩、咳嗽、口渇、みぞおちのつかえ、微熱、身熱、難聴、咽乾、口苦、腹痛、
嘔気、嘔吐、心煩（胸に熱をもつ）、胸が詰まって苦しい、胸痛、食欲不振など
①胸脇苦満、心煩、胸痛：発汗し胸に熱が残ってしまっている。
②心下痞：臍下虚で気がつきあげて、心が痛む
③口乾、口渇：熱に引き寄せられ、水（水毒）が下に行く為。
④食欲不振・胸に熱がある為、黙々とし食欲を欲せず
治療：
胸満には、手の心包・心・肺経などを熱を引く
熱を冷まして、水毒をなくすためには、期門・不容・巨闕など肝・胆経に熱を引く。
水分・腎経で水分調節
臍下虚の場合は、腎経、気海、関元に補

8. ③陽明病：陽明の病たる、胃家実なり。
陽明病は、裏位と外位を領域とし、陽証の極であり、食物や水分が腹中の邪熱のた
めに乾燥して結実し、毒性化するに及んで種々な症状を呈す。
※心下と下腹に熱が入ってくる
脈：洪大ｏｒ遅
舌：紅・乾燥、黄苔
寒熱：潮熱、悪熱
随伴症状：全身にくまなく汗、大煩渇、胃実、腹実満（大便硬、腹痛）、譫語、小便不利など
①脈遅：便で気の流れが悪くなる為
②胃家実：胃熱で食欲が増す場合と胃熱で湿が溜まり食欲がない場合がある
③燥屎（そうし）：熱によって固まってしまったうんち
④譫語：熱が上にあがってくるとうわごとを言う、健康な場合イライラとして出る
てんかんもちの方は、注意、特に春は熱が上がりやすい。
⑤小便不利：腸に水分を取られる為、尿が出ない
⑥腹実満：お腹を押すと固いが、水が表面にのってぽちゃぽちゃする
便の周りに熱があり、その外に水分が引き寄せられ水で腹満する。

9. 治療：お腹を緩め、膀胱経の承筋・承山でひく。膀胱経胃経で下げる。
※どこの深さに病が、入ってしまっているのか見極める事で、
治療経過を予測する事が出来る。
例えば、陽明病治療後に今胸脇苦満が出たとしても陽明病から少陽病へ
症状が軽くなっていると判断出来る

10. 虚証に用いられるのが「桂枝湯」（けいしとう）、実証に用いられるのが「麻黄湯」（まお
うとう）、虚実間に用いられるのが「葛根湯」（かっこんとう）。
葛根湯：風邪の初期。悪寒。頭痛・肩こり・鼻づまり・鼻水・下痢など
麻黄湯：関節痛
小青竜湯：鼻水の多い風邪
柴胡桂枝湯：食欲不振。胃腸障害を伴う風邪。微熱が取れずにすっきりしない。
参蘇飲：風邪の症状がそう強くなく、頭痛や咳が治らない。妊婦でも気軽に使える。
桂痲各半湯：風邪を引いて少し経ったもの。体力中程度。
あまり症状がはっきり出ず、ダラダラと続く風邪に有効。
※桂皮（シナモン）
臍下虚により気が上がり頭
痛が出ている人には食養生
としておすすめ。
漢方薬

11. 黄帝内経 霊枢 熱病篇 第二十三
熱病を治療する五十九穴
少沢、関衝、商陽、少商、中衝、少衝、後溪、中渚、三間、少府、束骨、臨泣、
陥谷、太白、五処、承光、通天、頭臨泣、目窓、正営、承霊、脳空、聴会、完
骨、承漿、唖門、百会、顖会、神庭、風府、廉泉、風池、天柱
熱病で皮膚が痛み、鼻孔が詰まり、顔がむくむとしたら、皮に治療すべき。
肺気は鼻を通じ、皮毛を主っているので、五十九穴の中からは肺経を取るべきで、
火（心経）を取ってはならない・・・饞鍼（接触鍼用の鍼）
熱病で身体が重だるく、無力感がある上に熱があり、煩悶し、口唇、喉が渇くなどしたら、脈
にも治療すべきである。もし皮膚に浮腫が現れ、口が渇き、冷や汗をかくなどしたら、心は脈を
主っているので、治療には心経を取るべきで、水（腎経）を取ってはならない。・・・饞鍼
熱病で顔面が青くなり、頭が痛み、身体がフラフラするとしたら、筋に治療を施すべきである。
歩行不能となり、涙が止まらなくなったら肝は筋を主るので、治療には肝経を取るべきで、
金（肺経）をとってはならない・・・蜂鍼（瀉血用の鍼）

12. 頭痛、こめかみから目の絡脈までが痙攣して痛み、鼻血が出やすいのは厥熱病で
ある。てい鍼が良い。病症の虚実に基づき、種々の方法で補寫を行う。
熱病で腸内に熱がある場合は、脾胃の兪穴（太白・陥谷）及び、両側の五指
の間の兪穴（太衝・束骨・足臨泣）を取る。また、豊隆を取って経気を導引す
れば、気を得ることができる。
熱病で汗をかくもの、脈象が順調で、鍼を使って発汗させてよいものは、魚際・太
淵・太都・太白を取る。瀉法を用いれば熱邪を去らせ、補法を用いれば汗を出さ
せることができる。汗の出方があまりに多い場合は、三陰交を取る。