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小さな世界 ---リアルタイム映像と録画映像のシームレスな遷移による小人化体験の向上
Editor's Notes
- ご紹介にあずかりました題目で関西大学総合情報学部、竹村が発表します
- 今回の研究目的として私は小人の世界を体験することができるエンタテインメントコンテンツの制作を行ないました
こういったコンテンツの制作を行った背景として近年家庭用のvrデバイスの高度化や普及によって非日常体験、つまりファンタジーのような世界の体験を可能とするコンテンツというものが増えてきました
こうしたものが増えている一方でHMDをつけた時に「今いる現実と離れすぎた」仮想空間に連れていかれることによって体験に入り込み切れないといったことがあります。
これがどういうことかというと、例えば漫画の世界に入り込むvrコンテンツの場合HMDをつけることでその漫画の作品の仮想空間に入るのですが、HMDを付けた時に「体験は偽物である」と思ってしまうことでその後の漫画の主人公の技を使うといった体験を楽しみ切れないといったことが挙げられます
こうした問題がある中で今回は今いる現実からシームレスに仮想体験に遷移することで、体験が現実に行わていると思わせるコンテンツを制作しました。
はじめに今回制作したコンテンツのHMDに出力される映像をご覧ください。
- 前半は小人への目線の変化を表現して映像
ここはリアルタイムなので目の前で手を振ったりすることができる
後半は小人の目線で世界を動きまわる体験
ここでは体験環境に実際に設置したコース上移動するが録画映像となっているためリアルタイム映像では起こり得ないことが行われる
- 次に先行研究について説明します。
この先行研究は先ほど挙げた体験に入り込めないという点を指摘した研究となっています
どういうことかというと体験を行うときにHMDをつける必要があるのですけどこの時に体験が行われている現実環境とHMDをつけたときに見える仮想環境というものが離れた環境、つまり乖離した環境であるときに体験者が得られる高揚感、緊張感、不安感といった感覚に制限が生じるということを指摘しています
- これを解決する方法として この先行研究ではHMDをつけた時に「体験が行われている環境を再現した仮想環境」を提示することによって「体験が現実に行われている」と思わせその後、提示した再現した仮想環境からアニメーション効果などを用いた遷移映像を使うことで先ほど挙げた感覚の制限というものを受けることなく仮想環境での体験を行うことが可能となるとしています
- しかしこの手法では「現実を再現した仮想環境」を含めてすべて事前に作成されたものであるため体験環境の変化というものには対応することができないものとなっています
例えば体験を行う場所を変えたり、体験場所に新しく物が増え風景が変わる、時間帯が変わって暗くなったといった変化があった場合にその都度体験そのものを作り直す必要があります
- これに対し本研究では提案された手法の現実環境を再現した仮想環境と遷移映像に当たる部分を実際に体験を行うと同時に撮影するリアルタイム映像に置き換えることによって体験環境の変化に対応しつつ、先行研究で提案された手法と同様に体験が「現実に行われている」感覚を与えられるのではないかと考えました
加えて、リアルタイム映像を使うことにより、より体験が「現実に行われている」感覚を与えることを狙います。
- この考えのもと、小人へ変化する体験と小人の世界を動き回る体験を内包したエンタテインメントコンテンツ「小さな世界」を制作しました。
また、このコンテンツが体験者に与えることを目的とする感情を設定し、この提案手法により体験者が得る感覚がどのように変化したかを検証しました。
- 先ほどでました体験者にあたえることを目的にする感情について説明します。
コンテンツを制作するにあたってスライドに記載している感情を設定しました。
①では小人になるという本来不可能なことが可能となる「喜び」と、どのような体験がまっているのだろうという「期待感」を設定しました。
②では日常ではありえない、摘まみ上げられる、窓から投げ捨てられる、といった演出を加えることによってその世界ならではの「驚き」「恐怖」を設定しています。
- この指針のもと実装した「小さな世界」がこのようなものになります
それぞれに機構について詳しく説明します。
- 赤枠の部分が小人へ変化する体験を実装している部分で、リアルタイムの映像が映し出されます。
カメラが降下する映像によって小人への変化を表現しています。
- 次に青枠の部分が小人の世界を動き回る体験を実装したものです。
こちらは録画映像となっていて、青枠の中のコース上を走行するような映像によって小人の世界を動き回る体験を表現しています。
また、映像の後半に小人の世界ならではの演出として、コースの途中から窓の外に投げ捨てられる演出を加えています
- 映像中のコースは体験者の目の前に見える様に、実際に体験を行う環境に設置します。
これにより、これから起こる体験の内容を想像させ、ミスリードを誘い、「驚き」「恐怖」を与えることを狙います。
- 前半の体験がリアルタイム映像で後半が録画映像であるため、録画映像に切り替わったと気づかれてしまうと感覚の制限が生じてしまう可能性があります。
そのため。2つの映像は体験者に気づかれることなく切り替える必要があります。
そこで今回はリアルタイム映像の終わりに壁を設置し、録画映像を同じ色の壁の映像から始めることで体験者に気づかれることなく映像の切り替えを行いました。
これをシームレスな遷移を行う機構としています。
- 実験ではこのシームレスな遷移がある「小さな世界」とシームレスな遷移がない「小さな世界」の2つを用意し、それぞれの体験を行った後に設定した感情についてどれほど感じることができたかを5段階で評価してもらいました。
- シームレスな遷移があるものとシームレスな遷移がない体験の映像がこちらになってます。
シームレスな遷移がないものでは1秒画面を暗転させることで映像の切り替えを明白にしています。
シームレスな遷移があるものについても一瞬画面が暗くなりますがHMDでは気づかない程度のものとなっています。
- 実験結果はこのようになっています。
こちらのグラフは設定したそれぞれの感情をどれほど感じることができたかを5段階で評価してもらったものの平均値を表したグラフです。
シームレスな遷移によって「驚き」「恐怖」が向上しました。一方で「喜び」「期待感」といった感情は低下しました。
- このような結果となった考察として。
体験者は「体験が現実に行われている」という感覚をえたまま、設置されたコースを見て想像していた体験とは異なる、つまりリアルタイムの映像では起こり得ない体験が行われたため「驚き」「恐怖」が向上したと考えられます。
また、「驚き」「恐怖」は後半の体験に設定された感情であるため、前半の体験の印象が薄くなり、設定した「喜び」「期待感」が低下したと考えられます。