末原の現代文講義（小説編 ）第1回 「裏の意味を探る力」 咲-Saki- 阿知賀編でわかる小説問題の読み方 センター試験，小説対策シリーズの決定版。阿知賀編を読みながら，小説読解のポイントを解説していきます。あわせて亦野誠子のキャラクターを探ります。

1. 2015年度 直前
末原の現代文講義（小説編 ）
第1回 「裏の意味を探る力」
咲-Saki- 阿知賀編でわかる小説問題の読み方
担当: 末原恭子
受講生：亦野誠子（@matanoseiko）
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2. 小説対策 ≒ センター対策
今日は小説問題の解き方のコツを紹介するで。
（そんなもんに興味ない咲っ子のみんなは6ページへGo!や）
小説。アレですよね。センター試験で毎年、出題されているという。
でも、入試で小説問題がでることって少ないですよね。
せやな。だから小説対策ってのはセンター試験対策だと思ってくれれば
ええ。基本的には評論問題とおんなじです。「文中の文字情報（筆者/登
場人物の意図）と照らしあわせて、出題者の意図に沿う解答をつくる」
ことを徹底すればええ。
では，はじめに評論と小説の違いをまとめとくで。
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3. 評論文と小説の違い
末原チェック
Point!
評論文問題と小説問題の違いは、ズバリ読み取る意図の違いや。
評論文問題では著者が客観的に述べようとしている意図（主張）を読み取るのに
たいして，小説問題では主観的な意図（心情）を読み取る必要があるんや。そし
て，その心情は文中で変化する。ここも注意やな。また小説問題では、出題者が
登場人物の意図（心情）を伝えようと，設問で誘導してくるのも特徴やで。
評論文 小説
出題の目的
「他者の客観的な意図（主張）」を
客観的に読み取る力を測る
「他者の主観的な意図（心情） 」を
客観的に読み取る力を測る
読み取る意図 文中で変化しない 文中で変化する
他者 筆者・（出題者） 登場人物・（筆者）・（出題者）
登場人物 － 意図（心情）を伝えようするとは限らない
筆者 意図（主張）を伝えようとしている 登場人物の意図（心情）を伝えようとしている
出題者 筆者の意図（主張）を伝えようとしていない 登場人物の意図（心情）を伝えようとしている
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4. 小説問題の読み方 ３箇条
どや？評論と小説の違いはつかめたやろか？これをふまえると，問題文
を読むときには「想像力」「裏の意味を探る力」 「記憶力」の３つが必
要になるんや。
記憶力 … できごとが起きた順序・位置関係を記憶しておく力
想像力 … 文字情報から場面の映像を思い浮かべる力
裏の意味を探る力 …
登場人物の行動、場面の映像から、その意図・心情を読み取る力
注視：心情によって、見えるものが変化する（→人物の主観がわかる）
象徴：心情によって、ものの見え方が変化する（ →人物の主観がわかる）
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5. 小説問題の読み方＝マンガの楽しみ方
なるほど。これって，マンガの楽しみ方にも似てますね！
せや。誠子ちゃん，ええトコに気がついたな。そのとおりやで。
マンガの場合は「想像力」は絵が補ってくれるけど，
「裏の意味を探る力」と「記憶力」が大事なのは，いっしょやな。
問題を解くときは
「想像力」「裏の意味を探る力」 「記憶力」の３つを使って問題文を読
みながら，「すべに矛盾がなく」，「 疑問が解けるように 」に解答して
いくこと。これは出題者が登場人物の意図（心情）を伝えようと，設問
で誘導してくるという小説問題の特徴を活かした解き方になるな。
じゃ，ものは試しや。手始めに咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-Aで
「裏の意味を探る力」の使い方を見てみようか。
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6. 裏の意味の探り方の例題
問．咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-Aから推察できる亦野誠子の性格はどのような
ものか。その説明として最も適当なものを①～⑤のうちから一つ選べ。
①仲間に対して優しくふるまう一方で，敵に対しては怯まず立ち向かう，強さと優しさ兼ね備えた性格。
②後輩にたいして高圧的にふるまう一方で，上級生にたいしては媚びへつらう日和見的な性格。
③仲間と自分の実力を頼みにしており，常に自信をもって敵に立ち向かっていく好戦的な性格。
④上下関係を重んじる礼儀正しさを見せる一方で，自信家で向こう見ずなところがあるやんちゃな性格。
⑤後輩に対して思いやりを持つ一方で，秘めた思いを打ち明けることができない乙女な性格。
ちゅうわけで，次からは読解のポイントを一緒に抑えていくで。
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7. 読解のポイント①
お疲れ様サマです！
小説問題では（基本的に）すべての描写に意味を持たせて読解するのが原則や。
まず，「お疲れ様サマです」 からやろな。誠子ちゃんの一番有名なセリフや。
ここから，
・敬語を使っており，先輩を敬っている。
・「様サマです！」と言ってしまう子供っぽくてお調子者の性格
が読み取れるな。
先輩に対して１人だけ立ち上げって対応しているところにも注目。
「なぜ作者は亦野だけを立たせて書いたのか？」と疑問を持って欲しいとこや。
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8. 読解のポイント②
副将戦での回想シーン
副将戦での回想シーンとその直後や。
ここから
・白水を「シローズ」，鶴田姫子を「鶴姫」と呼ぶ 子供っぽさ
・「そりゃご丁寧なこって」 と発言するぶっきらぼうさ
・「私はただ和了りまくればいいだけ」と発言する自信と無鉄砲さ
が読み取れるな。わりと自分重視な子なんやな。
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9. 読解のポイント③
うん って 信用ないんだね…
大将戦では，互いに一番良く知るはずの同学年の渋谷から真偽を確認されているで。
実はココ重要。さりげないセリフやけどここから，
・亦野が普段から信用をなくすような発言をしている
ことが確認できるで。誠子ちゃん，
・少々ビッグマウスの勘違い屋さん と思われてるんやな…。
また山を円形にしてまうあたりにも子供っぽさが表れているな。
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10. 読解のポイント④
攻めを残しつつ軽くオリたい－ －
状況が悪い時でも完オリはしない。ここに誠子ちゃんの 無鉄砲さ が確認できるな。
ただ 軽くオリたい とは思ってるんや。
状況が悪くなってからの打たれ弱さ も要チェックやな。
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11. 解答編①
では，これらふまえて選択肢を見ていきましょう。
解答のときは，本文の記述と照らし合わせながら当てはまらない選択肢を消していくで。
①仲間に対して優しくふるまう一方で，敵に対しては怯まず立ち向かう，強さと優しさ兼ね備えた性格。
→ 敵に怯んでオリそこなった上に，調子を狂わしているので ×
②後輩にたいして高圧的にふるまう一方で，上級生にたいしては媚びへつらう日和見的な性格。
→ どちらも言いスギ なので × 媚びへつらってはいない。
③仲間と自分の実力を頼みにしており，常に自信をもって敵に立ち向かっていく好戦的な性格。
→ ①と同じ理由で ×
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12. 解答編②
④上下関係を重んじる礼儀正しさを見せる一方で，自信家で向こう見ずなところがあるやんちゃな性格。
→ 上下関係を重んじる = 「お疲れ様サマです」 ，大星「亦野せんぱーい」と合致
→ 自信家で向こう見ず = 渋谷「え…ホントに？」，「私はただ和了りまくればいいだけ」と合致
→ やんちゃな ＝ 「お疲れ様サマです」と合致
となって，選択肢のすべてが作中の箇所と照らし合わせることができるのがわかるな。
これ正解候補っぽいな。他にも正しそうな候補があったら，後でより詳細に検討するで。
⑤後輩に対して深い思いやりを持つ一方で，秘めた思いを打ち明けることができない乙女な性格。
→ 「深い思いやりを持つ 」は言いスギ。（ってか「淡が気をつければいいだけのこと」と合致しないな）
→ 「秘めた思いを打ち明けることができない」は心中では「淡」 ，発言するときは「大星」と一致か？
→ 「乙女な性格」はどこにも記述ナシ
この選択肢はちょっと微妙やな。ただ，言いスギの部分，対応する記述ナシの部分があるので
正解からははずせるな。言いスギと記述ナシで選択肢を切るのはセンター小説の定番やで。
というわけで正解は④や。
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13. 解答が「疑問を解いてくれる」か確認する
どやったろか。「裏の意味を探っ」て答えを導き出せたやろか？
こうして解いてみると国語の解答に「なんとなく」なんてあいまいなものは存在し
ないことがわかるやろ。
調子狂う…。
（誠子ちゃん，間違えてたみたいやな。①でも選んでたんかな…）
大切なのは，真実を選ぶのではなく問題文（阿知賀編）から読み取れる範囲で選択
肢を選ぶことや。小説問題を筆者自身が誤答するってのは当然なんやな。問題文か
ら読み取れる情報以上のことを知ってしまってるんやから。
さて，ここからが本番やで。答えが出ただけで終わらないのが小説問題の深いとこ
ろなんや。この解答がどんな疑問を解決してくれるのか，検証していくで。
算数の検算みたいなもんや。
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14. 検証のポイント①
白糸台のナンバー５とは何だったのか？
「白糸台のナンバー５はそこらの県代表エースをしのぐ」
色々なところで矛盾が指摘されているセリフやな。これに対して
わざわざ１ページ前で小鍛治プロが副将にエースはいないっていってるし。
大将戦でも赤土監督がレギュラーはトップ５とは限らないってダメ押ししてる。
どれがホントなのか…。これ、正解選択肢とみるとすべてナゾがとけるな。
誠子ちゃんが勝手に勘違いしてるだけやったんや…。おイタがスギる子やで…。
そりゃ渋谷も「ホントに？」って疑うわ。
小鍛治「副将にエースはいない」
「白糸台のナンバー５は
そこらの県代表エースをしのぐ（ドヤァ）」
赤土「レギュラー ≠ トップ５」
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15. 検証のポイント②
なぜ亦野は立っていたのか？
なぜ亦野はよく立っているのか？
これも正解選択肢みればわかるな。
宮永に対しては体育会系の礼儀正しさを発揮して立って挨拶をした。
大将戦では，単に大星が心配で落ち着いていられないだけや。子どもみたいやな。
先輩に対して立って思わず挨拶 落ち着きがなく、大星が心配で座っていられない
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16. 検証のポイント③
ほっぺもにとは何だったのか？
亦野が大星を大将戦に送り出す場面。敗者亦野の潔さが表れている。そうとらえられ
がちやな。
それは間違えや。亦野はたんなるやんちゃ坊主や。
わかりやすいように言葉を補っておいたで。
たんに弘世に叱られるのを恐れているだけで，それ以上でも，それ以下でもないで。
く
な
っ
て
弘
世
先
輩
に
怒
ら
れ
る
か
も
し
れ
な
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17. 検証のポイント④
なぜ亦野は大星を名前で呼ばないのか？
では，最後の疑問です。
なぜ亦野は大星を名前で呼ばないのか？次の３つがあり得ると思います。
① 自分が誠子と呼ばれたくないから。
② 淡に特別な感情を持っているが，恥ずかしくて呼べない。
③先輩，後輩のけじめをつけるため。昔は淡と呼んでいた。
ただ，これは今のところ判断できません。本編亦野が大星に抱いてるのが恋慕
の情なのか，はたまた後輩，姉妹に対する親愛の情なのか。それがわかるのは
本編待ちになりそうです。 17/18

18. まとめ
どや？「裏の意味の探り方」を少しは理解できたやろか？
もう一度，小説問題のポイントまとめるで。
小説問題では（基本的に）すべての描写に意味を持たせて読解するのが原則。
「想像力」「裏の意味を探る力」 「記憶力」の３つを使って問題文を読みなが
ら，「すべに矛盾がなく」，「 疑問が解けるように 」に解答していく。
今回は「裏の意味を探る力」を使って解答し，正解選択肢から「疑問がとける」ことを確
認したで。「なぜ解答から疑問が解けるのか」って話や，「なぜすべての記述に意味をも
たせるのか」 ， 「順番を記憶することの重要性」，「問題説明をヒントにする」なんて話
は，またの機会やな。この辺りまで意識するとH28年度センター試験の出題者が何を期待
しているかがよくわかるで。
では，ほなな～。
お疲れ様サマです！
（今回，私，ボロクソに言われてた気が…。気のせいかな…。）
出題：小林立，五十嵐あぐり，”咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A” ，全6巻，スクウェア・エニックス (2011-2013)
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