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第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム 教育講演 皮膚の再生医療
- 1. 広範囲皮膚欠損に対する治療： 人工真皮・培養表皮・その他の再生医療 国立成育医療研究センター 形成外科 彦坂 信 利益相反はありません National Center for Child Health and Development
- 3. はじめに 本発表の主旨 – 創傷治癒に関して形成外科的な観点から概要を紹介する。 – 臍帯ヘルニアに限らず皮膚の再生医療に関する知見を紹介する。 スライドはslideshareで公開予定です。 – キーワード（予定）：Hikosaka, omphalocele
- 4. 目次 1. 「従来」腹壁再建のアルゴリズム 2. 「現在」実用化されている再生医療 3. 「未来」研究段階の再生医療
- 6. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器
- 7. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 mortality 23.4% mortality 21.8% Bauman et al. 2016 (systematic review) non-operative delayed closure、 なかでも銀製剤による治療を推奨
- 8. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 mortality 23.4% mortality 21.8% Bauman et al. 2016 (systematic review) non-operative delayed closure、 なかでも銀製剤による治療を推奨 Sanjuanelo et al. 2021 (systematic review) surgical staged closureでも Mortality 11～18%と良好な成績 mortality 11-18%
- 9. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 mortality 23.4% mortality 21.8% Bauman et al. 2016 (systematic review) non-operative delayed closure、 なかでも銀製剤による治療を推奨 Sanjuanelo et al. 2021 (systematic review) surgical staged closureでも Mortality 11～18%と良好な成績 mortality 11-18% 臍帯ヘルニアにおける 最善の治療方針は まだ定まっていない。
- 10. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 再生医療？ 臍帯ヘルニアにおける 最善の治療方針は まだ定まっていない。
- 11. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 再生医療
- 12. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018
- 13. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018 メッシュや壊死組織 →デブリードマン 陰圧閉鎖療法 腸管の問題 汚染創
- 14. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018 メッシュや壊死組織 →デブリードマン 陰圧閉鎖療法 両側の腹直筋欠損 →神経血管柄付き遊離筋移植 （機能的再建） 腸管の問題 汚染創 筋肉の欠損
- 15. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018 メッシュや壊死組織 →デブリードマン 陰圧閉鎖療法 両側の腹直筋欠損 →神経血管柄付き遊離筋移植 （機能的再建） Components separation +/- underlay mesh 腸管の問題 汚染創 筋肉の欠損 筋膜の欠損
- 16. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018 メッシュや壊死組織 →デブリードマン 陰圧閉鎖療法 両側の腹直筋欠損 →神経血管柄付き遊離筋移植 （機能的再建） Components separation +/- underlay mesh 腸管の問題 汚染創 筋肉の欠損 筋膜の欠損 皮膚の欠損 組織拡張器 局所皮弁 区域皮弁 遊離皮弁
- 17. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018 メッシュや壊死組織 →デブリードマン 陰圧閉鎖療法 両側の腹直筋欠損 →神経血管柄付き遊離筋移植 （機能的再建） Components separation +/- underlay mesh 腸管の問題 汚染創 筋肉の欠損 筋膜の欠損 皮膚の欠損 組織拡張器 局所皮弁 区域皮弁 遊離皮弁
- 18. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） 欠損の大きさ 筋層 筋膜 皮膚 小 片側腹直筋の欠損 →そのまま閉鎖 小範囲 →そのまま閉鎖 局所皮弁 中 両側腹直筋の欠損 →遊離筋移植による 機能的再建 =<16cm →comp separation 区域皮弁 組織拡張器 大 >16cm →comp separation + underlay mesh 遊離皮弁 Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018
- 19. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） 欠損の大きさ 筋層 筋膜 皮膚 小 片側腹直筋の欠損 →そのまま閉鎖 小範囲 →そのまま閉鎖 局所皮弁 中 両側腹直筋の欠損 →遊離筋移植による 機能的再建 =<16cm →comp separation 区域皮弁 組織拡張器 大 >16cm →comp separation + underlay mesh 遊離皮弁 Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018
- 20. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） 欠損の大きさ 筋層 筋膜 皮膚 小 片側腹直筋の欠損 →そのまま閉鎖 小範囲 →そのまま閉鎖 局所皮弁 中 両側腹直筋の欠損 →遊離筋移植による 機能的再建 =<16cm →comp separation 区域皮弁 組織拡張器 大 >16cm →comp separation + underlay mesh 遊離皮弁 Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018
- 21. 形成外科領域での腹壁再建のアルゴリズム（成人） 欠損の大きさ 筋層 筋膜 皮膚 小 片側腹直筋の欠損 →そのまま閉鎖 小範囲 →そのまま閉鎖 局所皮弁 中 両側腹直筋の欠損 →遊離筋移植による 機能的再建 =<16cm →comp separation 区域皮弁 組織拡張器 大 >16cm →comp separation + underlay mesh 遊離皮弁 Plast. Reconstr. Surg. 141: 113e, 2018 腹直筋弁 大腿筋膜張筋弁
- 22. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） および 陰圧閉鎖療法 術後離開創 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 再生医療
- 23. 皮膚全層欠損創の治療アルゴリズム 上皮化の過程 • 真皮が残存する（びらん） ① 創底部の角化細胞から上皮化 • 真皮が残存しない（皮膚潰瘍・皮膚欠損創） ① 肉芽の増生 ② 周囲の角化細胞から上皮化 図は厚生省老人保健福祉局老人保険課 監修。褥瘡の予防・治療ガイドライン。照林社 。 1998
- 24. 皮膚全層欠損創の治療アルゴリズム 上皮化の過程 • 真皮が残存する（びらん） ① 創底部の角化細胞から上皮化 • 真皮が残存しない（皮膚潰瘍・皮膚欠損創） ① 肉芽の増生 ② 周囲の角化細胞から上皮化 図は厚生省老人保健福祉局老人保険課 監修。褥瘡の予防・治療ガイドライン。照林社 。写真は日本小児外科学会ホームページより。 1998 本日のトピック：臍帯ヘルニアの場合
- 25. 皮膚全層欠損創の二次治癒における原則 二次治癒における治療の原則 – 異物・壊死組織とコントロール →デブリードマン（外科的 / 化学的(軟膏)） – 感染のコントロール →洗浄、殺菌剤（軟膏） – 適切な湿潤環境 →軟膏、創傷被覆材 大前提 – 異物・壊死組織・感染がない × メッシュなど人工物 × 壊死組織 – 創底部の血流がある
- 26. 形成外科領域での 皮膚全層欠損創の二次治癒の治療アルゴリズム フェーズ 医薬品（例） 肉芽増生 殺菌・静菌作用 増生作用 外用剤 （薬理作用） スルファジアジン銀 ﾎﾟﾋﾞﾄﾞﾝﾖｰﾄﾞｹﾞﾙ（ﾖｰﾄﾞ） PGE1 bFGF 被覆材 （湿潤環境） ﾊｲﾄﾞﾛﾌｧｲﾊﾞｰ（銀含有） ポリウレタンフォーム 陰圧閉鎖療法 陰圧閉鎖療法 人工真皮 人工真皮 上皮化 外用剤 （薬理作用） ﾌﾞｸﾗﾃﾞｼﾝ bFGF 被覆材 （湿潤環境） ハイドロコロイド
- 27. 皮膚全層欠損創の二次治癒における原則 二次治癒における治療の原則 – 異物・壊死組織と感染のコントロール – 適切な湿潤環境 大前提 – 異物・壊死組織・感染がない × メッシュなど人工物（vascular ingrowthを図る場合を除く） × 壊死組織 – 創底部の血流がある 創傷 創傷被覆材 軟膏 一例 吸湿性 湿潤 ポリウレタンフォーム 吸湿性の 製剤 カデキソマー（ヨード） 高い ハイドロファイバー ﾎﾟﾋﾞﾄﾞﾝﾖｰﾄﾞｹﾞﾙ（ヨード） 乾燥 ハイドロコロイド クリーム ｽﾙﾌｧｼﾞｱｼﾞﾝ銀（銀） 化学的デブリードマン 殺菌作用 組織障害性 低い
- 28. 皮膚全層欠損創の二次治癒における原則 二次治癒における治療の原則 – 異物・壊死組織と感染のコントロール – 適切な湿潤環境 大前提 – 異物・壊死組織・感染がない × メッシュなど人工物（vascular ingrowthを図る場合を除く） × 壊死組織 – 創底部の血流がある 創傷 創傷被覆材 軟膏 一例 吸湿性 湿潤 ポリウレタンフォーム 吸湿性の 製剤 カデキソマー（ヨード） 高い ハイドロファイバー ﾎﾟﾋﾞﾄﾞﾝﾖｰﾄﾞｹﾞﾙ（ヨード） 乾燥 ハイドロコロイド クリーム ｽﾙﾌｧｼﾞｱｼﾞﾝ銀（銀） 化学的デブリードマン 殺菌作用 組織障害性 低い 乾燥した創部 多少の壊死組織がある 感染のリスクがある やや湿潤な創部 *感染のリスクがある →銀を付加した製品 やや乾燥した創部
- 29. 皮膚全層欠損創の二次治癒における原則 二次治癒における治療の原則 – 異物・壊死組織と感染のコントロール – 適切な湿潤環境 大前提 – 異物・壊死組織・感染がない × メッシュなど人工物（vascular ingrowthを図る場合を除く） × 壊死組織 – 創底部の血流がある 創傷 創傷被覆材 軟膏 一例 吸湿性 湿潤 ポリウレタンフォーム 吸湿性の 製剤 カデキソマー（ヨード） 高い ハイドロファイバー ﾎﾟﾋﾞﾄﾞﾝﾖｰﾄﾞｹﾞﾙ（ヨード） 乾燥 ハイドロコロイド クリーム ｽﾙﾌｧｼﾞｱｼﾞﾝ銀（銀） 化学的デブリードマン 殺菌作用 組織障害性 低い 乾燥した創部 多少の壊死組織がある 感染のリスクがある やや湿潤な創部 *感染のリスクがある →銀を付加した製品 やや乾燥した創部 殺菌・静菌作用 増生作用 ｽﾙﾌｧｼﾞｱｼﾞﾝ銀 ﾎﾟﾋﾞﾄﾞﾝﾖｰﾄﾞｹﾞﾙ（ｲｿｼﾞﾝ） PGE1 bFGF 軟膏の薬理作用に注目を
- 30. 陰圧閉鎖療法 機序：創部に陰圧をかける機械的刺激により、肉芽組織の増生が促進される。 保険： – 外科手術後離開創・開放創。デブリードマン後皮膚欠損創 – 3週間、詳記をつければ4週間まで使用可能。 洗浄機能付きの製品 – 適応：既存の陰圧閉鎖療法が奏功しないと考えられる難治性創傷。局所感染が存在しても、 拡大がなく沈静化すると考えられる創傷 ＊経験ある医師と連携して適応を検討ください。 原則 – 異物・壊死組織がない。 – 感染がコントロールされている。 – 創面が血流のある組織である。 写真は 社ホームページより KCI
- 33. 陰圧閉鎖療法 機序：創部に陰圧をかける機械的刺激により、肉芽組織の増生が促進される。 保険： – 外科手術後離開創・開放創。デブリードマン後皮膚欠損創 – 3週間、詳記をつければ4週間まで使用可能。 洗浄機能付きの製品 – 適応：既存の陰圧閉鎖療法が奏功しないと考えられる難治性創傷。局所感染が存在しても、 拡大がなく沈静化すると考えられる創傷 ＊経験ある医師と連携して適応を検討ください。 原則 – 異物・壊死組織がない。 – 感染がコントロールされている。 – 創面が血流のある組織である。 写真は 社ホームページより KCI
- 35. 再生医療とは 『細胞加工物を用いて身体の構造または機能の再建・修復または形成、疾病の治 療または予防を行う医療』（2013年 再生医療等の安全性の確保等に関する法 律） 『細胞を組み込んだ機器等を移植すること、または内在性幹細胞を細胞増殖分化 因子により活性化・分化させることにより、損傷した臓器や組織の自己再生能力 を活性化することで、失われた機能を回復させる医療』（国立医薬品食品衛生研 究所） 『再生医療（組織工学）の３要素＝細胞、足場、増殖因子』（Langer R and Vacanti JP. Tissue Engineering. Science 260 920-, 1993） 本発表では、皮膚の再建において「細胞・足場・増殖因子」のいずれかを含む治 療を取り上げます。
- 36. 再生医療とは 『細胞加工物を用いて身体の構造または機能の再建・修復または形成、疾病の治 療または予防を行う医療』（2013年 再生医療等の安全性の確保等に関する法 律） 『細胞を組み込んだ機器等を移植すること、または内在性幹細胞を細胞増殖分化 因子により活性化・分化させることにより、損傷した臓器や組織の自己再生能力 を活性化することで、失われた機能を回復させる医療』（国立医薬品食品衛生研 究所） 『再生医療（組織工学）の３要素＝細胞、足場、増殖因子』（Langer R and Vacanti JP. Tissue Engineering. Science 260 920-, 1993） 本発表では、皮膚の再建において「細胞・足場・増殖因子」のいずれかを含む治 療を取り上げます。 図は厚生省老人保健福祉局老人保険課 監修。褥瘡の予防・治療ガイドライン。照林社 。 1998 細胞 足場 増殖因子
- 37. 現在、実用化されている皮膚の「再生医療」 表皮の層（上皮化） 真皮の層（肉芽組織） 足場 人工真皮 脱細胞組織 増殖因子 自家培養表皮 人工真皮 （bFGF徐放が 可能なもの） bFGF HGF 細胞
- 38. 人工真皮 コラーゲン マトリックス（足場） 機序：下床からの細胞が進入し、「真皮様組織」に置換される 効能：肉芽増生、皮膚の質感の改善 保険： ①深達性熱傷、②外傷性皮膚欠損創、③腫瘍・母斑切除後の皮膚欠損創、 ④皮弁採取部、⑤粘膜欠損（テルダーミスのみ） 表は人工臓器 より。 40: 173-,. 2020
- 39. 人工真皮：使用方法 • 原則： ① 異物・壊死組織・感染が制御されている。 ② 創底面に血流がある。 • 使用法 ① 縫合固定して密着させる 圧迫と固定 ② ２～３週間で肉芽組織に置換 感染の疑い→一部/全部の開創 →ドレナージ、デブリードマン ③ 分層植皮、小範囲ならそのまま上皮化 三要素 細胞 足場 増殖 因子
- 40. 人工真皮：使用方法 • 原則： ① 異物・壊死組織・感染が制御されている。 ② 創底面に血流がある。 • 使用法 ① 縫合固定して密着させる 圧迫と固定 ② ２～３週間で肉芽組織に置換 感染の疑い→一部/全部の開創 →ドレナージ、デブリードマン ③ 分層植皮、小範囲ならそのまま上皮化
- 41. 人工真皮：実例① 巨大色素性母斑 PEPARS 163: 43-52, 2020.
- 42. 人工真皮：実例② 手背の皮膚剥脱創 PEPARS 163: 43-52, 2020.
- 43. 人工真皮 課題と今後の展望 原則 – 異物・壊死組織・感染が制御されている。 – 創底面に良好な血流がある。（〇骨膜、腱膜。×広範囲な骨・腱露出） 課題と今後の展望 – 2-3週かかる肉芽増生のスピードアップ：bFGF徐放化が可能な製品あり – 二期的に行っている植皮の同時移植：薄い人工真皮→速やかな血管進入 – 感染に弱い：慎重な経過観察と速やかなドレナージ・デブリードマン – 収縮：ペルナック ＞ テルダーミス、インテグラと報告されている。 PEPARS 163: 78-85, 2020.
- 44. 脱細胞組織 細胞外マトリックス（足場＋増殖因子） – ブタ小腸粘膜下組織 – 細胞外基質：コラーゲン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン等 – 増殖因子： FGF-2, TGF-β等 機序：下床からの細胞が進入し、「真皮様組織」に置換される。 効能：肉芽増生の促進、皮膚の質感の改善 保険： – 手術創などの皮膚全層/分層創傷
- 45. 脱細胞組織：使用方法 PEPARS 163: 53-61, 2020. • 原則： ① 異物・壊死組織・感染がない。 ② 創底面に血流がある。 • 使用法 ① 縫合固定して密着させる 圧迫と固定 ② ２～３週間で肉芽組織に置換 感染の疑い→一部/全部の開創 →ドレナージ、デブリードマン ③ 分層植皮、小範囲ならそのまま上皮化
- 46. 脱細胞組織：実用例 下腿静脈潰瘍 PEPARS 163: 53-61, 2020.
- 47. 脱細胞組織 課題と今後の展望 原則 – 異物・壊死組織・感染が制御されている。 – 創底面に良好な血流がある。 課題と今後の展望 – 人工真皮に対する優位性は確認されていない。 – 感染に弱い：慎重な経過観察と速やかなドレナージ・デブリー ドマン
- 48. bFGF bFGF：塩基性線維芽細胞増殖因子（増殖因子） 注意：悪性腫瘍は禁忌。粘膜面には噴霧しない 使用法：5cm離して5回噴霧→直径6cmが有効濃度になる 効能：肉芽組織の増生、上皮化の促進 ＊創傷被覆材や軟膏の交換時、人工真皮貼付前に組み合わせ て使用できる。 保険：皮膚潰瘍
- 49. 自家培養表皮* 自家の表皮細胞シート（細胞・成長因子） 歴史 – 1975年 Greenら 3T3細胞をフィーダーにしてヒト表皮細胞シートの作成に成功 – 以後、主に重症熱傷に応用されてきた 機序：増殖因子の効果。細胞が生着（？） 効能：上皮化の促進 保険（日本） – 2009年に重症熱傷、2016年に先天性巨大色素性母斑、2018年先天性表皮水疱症 * 2020/3/26 https://mainichi.jp/articles/20200326/ddl/k26/040/364000c 臍帯ヘルニアに保険適応なし。図は毎日新聞 地方版 より。
- 50. 自家培養表皮 実例① 重症熱傷 二期的：真皮を人工真皮で再構築 PEPARS 163: 1-8, 2020. 使用法 ① 皮膚採取（2平方ｃｍ） 培養で３週間以上 ② 真皮を温存または再構築 人工真皮または 同種皮膚で３週間 ③ 移植
- 51. 自家培養表皮 実例② 巨大色素性母斑 一期的に分層メッシュ植皮と併用 Area of ecxision = 13 × 10cm Full thickness skin excision Split thickness skin graft Meshed-STSG CEA ３週間以上前に 2平方ｃｍの皮膚採取
- 52. 自家培養表皮 実例② 巨大色素性母斑 4 weeks post-op 2 months post-op 3 months post-op Immedilately post-op 4 months post-op Elastic and mobile skin
- 53. 自家培養表皮 実例② 巨大色素性母斑 Pre-op 1.5 years post 1st stage, 1 year post 2nd stage. Nearly complete excision is achieved. Reconstructed skin is elastic. Donor site scar on scalp is well hidden by hair. Extremity became slightly thinner. ½ year post 1st stage
- 54. 自家培養表皮 課題と今後の展望 課題 – 高価：採取・培養キット：446万円、調整・移植キット15万4千円 – 培養に3週間を要する – 真皮の温存または再構築が必要 – 生着率が低い：熱傷での４週目の生着率は全体で68% • 人工真皮の併用で43%、分層メッシュ植皮の併用で80%前後
- 55. HGF* ヒトHGF hepatocyte growth factorをコードするプラスミドDNA（増殖因子） 機序：虚血病巣付近の筋肉内に投与すると、筋肉細胞内で転写・翻訳されること でHGFを産生・分泌し、血管新生、虚血症状を改善する。 保険： – 標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術が困難な、下肢慢性動脈閉塞症 – 2019年に再生医療等製品として条件付き早期承認 投与法：4週間隔で2回、効果不十分であれば3回投与。 課題： – 高価（60万円/回） – 適応が限られている – 有効性の本格的な検証はこれから *臍帯ヘルニアに保険適応なし。
- 58. 同種培養皮膚 同種培養表皮・真皮・皮膚（足場、増殖因子（、細胞？）） – Green型表皮細胞シートや – コラーゲンマトリックスに真皮線維芽細胞と表皮角化細胞を播種したものなど。 効能：肉芽増生、上皮化の促進 利点： – 同種の細胞を培養：培養の待期期間が不要でoff the shelfで使える – 凍結保存可能で運搬・保存が容易な製品もある。 現在地点： – 同種培養表皮シート：韓国、米国などで市販されている。
- 60. 間葉系幹細胞移植 間葉系幹細胞（骨髄、末梢血や組織から採取される幹細胞。 多能性はなく限定された細胞へのみ分化可能）を抽出・培 養・移植する（細胞・増殖因子） 機序：皮膚においては、CD34陽性 血管内皮前駆細胞が用い られ、血管増生により創傷治癒を促進させる。 現在地点：本邦では重症下肢虚血での臨床試験が進行中 図は日小循誌 ： 31 80-87,2015.
- 61. 血管網を組み込んだ材料 • 3D printingなどにより血管網 をあらかじめ組み込んだ皮膚 組織を作成し、細胞を播種さ せる（足場、細胞、増殖因 子） • 現在地点：まだ基礎研究の段 階で、最適な構築方法が模索 されている。 Cell Stemcell Review 21, 340- 2018.
- 63. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 再生医療 原則：腹壁の全層を再建する
- 64. 臍帯ヘルニアの治療アルゴリズム 皮膚 筋層・筋膜 Staged surgical 皮弁 Components separation Mesh Non-operative delayed および 術後離開創 外用剤（銀、ヨード） 陰圧閉鎖療法 人工真皮 J Pediatr Surg 51 (2016) 1725–1730 サイロ 組織拡張器 再生医療 原則： 異物・壊死組織・感染の制御 適切な湿潤環境 創面に血流がある 肉芽増生→上皮化 軟膏の薬効に注目を
- 65. 臍帯ヘルニアの治療における皮膚の再生医療 現在利用可能なもの – 人工真皮（足場） – 脱細胞組織（足場・増殖因子） – bFGF（増殖因子） 近い将来に有望なもの – 同種培養皮膚 – 表皮角化細胞のスプレー製剤 更に未来に有望なもの – 血管網・細胞を組み込んだ材料