1. 地域医療５年生発表
国民皆保険を維持するために
５年 入江、中瀬、藤井、松田

3. 歴史
 １９５０年半ばまで：
 農民や自営業者、零細企業従業員を中心に国
民の約３分の１、３０００万人が無保険者
 １９５８年：
 国民健康保険法が制定。
 １９６１年：
 全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、
皆保険が実現された
 現在：
 医療費増加やTPPなど、存続が危ぶまれている

4. 現在
 国民が負担する健康保険料や税金を財源に維持
 国民の誰もが健康保険に加入できる仕組み
 日本では健康保険への加入は「権利」であるとともに
「義務」であるとも言える。国民全員が何らかの健康
保険に加入することにより、疾病障害時の医療費に備
えられるようになっている
 健康保険は 被用者か そうでないか によって２つ
に分けられている
 保険料は一律ではなく、その人の所得に応じて
各市町村で決められる。

5. メリット
 医療機関を自由に選べる
 英国では、自由に選べず、病院にかかるには登録
家庭医の診察の紹介が必要。
 国民みんなが公的医療保険に加入
 米国では、約6人に1人、4500万人が無保険です。
 安い医療費で高度な医療
 米国では、1人当たりの医療費が日本の2倍以上、
救急車も有料 。
 我が国では、たとえ1ヶ月1千万円の医療を受けた
場合でも、窓口負担は4万円強。低所得者は更に
低い。

6. 厚生労働省ホームページより

7. ５種類の公的医療保険
後期高齢者医療制度
高額療養費
制度・生活
保護 など
１４００万人
75
歳
（前期高齢者財政調整制度）
65
歳
組
大
合
企
（
業
組管
・
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３
０
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０
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生命保険・民 康
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人
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済
組
合
（厚生労働省資料 2012年）

8. 医療費負担構造
患者
4兆9928億
円
13.9%
地方
4兆3662億円
12.1%
国庫
9兆1271億円
25.4%
被保険者
10兆1821億
円
28.3%
事業主
7兆3211億円
20.3%
（日本の医療費：約36兆円）
（厚生労働省資料 2012年）

9. 税金における医療費
（社会保障給付費）
（国税庁資料 2012年）
（財務省資料 2012年）

10. 保険診療の概念図
被保険者（患者）
①保険料の支払い
②診療サービス
（保険サービス）
③一部負担金の支払い
医療機関
保険者
④診療報酬の請求
⑤審査済み請求書送付
⑦診療報酬の支払い
審査支払機関
⑥請求金額の支払い
（厚生労働省資料 2012年）

11. 問題点
 社会構造の変化
 無保険者の増加
 少子高齢化
 医療の国際化
 TPP参加による影響
 TPP参加国の医療制度
→ どうすべきか？

12. 社会構造の変化
・無保険者の増加
・少子高齢化

13. 無保険者の増加
 国民保険の滞納世帯数は、2001年には390
万世帯（全体の17.8％）であったものが、
2006年には481万世帯（全体の19％）に増
えている。実質的に保険のない人も2000年
には10万人程度だったのが、2007年には35
万人に急増。つまりわが国でも無保険者が
増えている、しかも増え方が近年、急増し
ている。

14. 無保険者増加の影響
 無保険状態




→医療機関の窓口で医療費の全額を支払う
→受診率が著しく低下
→持病が重篤化、就労不能
→最終的に生活保護制度のもとで、より高額の医療
サービスや生活費を受ける
→結果、医療保険制度が空洞化して、結果的に社
会的コストが増えることになる。
 ちなみに、現状を放置した場合、市町村国保世帯に占
める滞納世帯の割合は2025年度には33.3％に達すると
推計される。この場合、医療費に対する税負担は現状
維持の場合に比べて1,400億円増加し、市町村国保の赤
字は6,400億円拡大する見込みである。

15. 厚生労働省ホームページより

16. 厚生労働省ホームページより

17. 医療の国際化
・TPP参加による影響
・TPP参加国の医療制度

18. TPPの影響
 混合診療の拡大、病院の株式会社化、医師・
看護師・患者の国際移動
 混合診療の拡大→下支えする保険診療の公的
医療費の増加
 病院の株式会社化→
①医療の質の低下（コスト削減、売り上げの増加の
ため）
②不採算の診療部門や病院からの撤退
③患者の選別、患者負担の増大
④自由診療の拡大による国民皆保険制度の崩壊（利
益増大のため自由診療が拡大）

19. TPPの影響
 医師・看護師・患者の国際移動→人材の
流動化が激しくなる地域医療を支える自
治体病院から都市部の病院への医師、看
護師の流出に歯止めがかからなくなる

20. 韓米FTA（自由貿易協定）の例
２０１２年３月１５日から発効
①保険薬剤費、保険医療材料費の大幅な増加
 ：FTA協定に組み込まれている「認可ー特許連係制度」（先
発薬を販売する製薬会社が医薬品に関する特許を主張すれ
ば、その対象となるジェネリック医薬品の販売が自動的に
停止する制度）によりジェネリック医薬品の発売ができな
くなる可能性がある。
②営利病院の存在が生み出す非営利医療機関、非営利原
則に対する圧力
 ：逆流防止（ラチェット)条項と呼ばれる条項があり、一度
市場開放、規制緩和が行われると、例え営利病院に問題が
あったとしても営利病院制度そのものを廃止することがで
きない。ラチェット＝後戻り

21. 韓米FTA（自由貿易協定）の例
③民間医療保険の公的保険制度に対する圧力拡大
 ：民間保険への規制を認めないという内容に基づけ
ば、民間医療保険商品への新しい規制や新民間医療保
険商品に対する規制ができなくなる。
④「ISD条項」発動を恐れての公的医療政策の後退
 ：投資家対国家間の紛争解決条項（ISD条項）の存在。
ISD条項を使えば例え国民のための健康政策として実施
されたものであっても、それが投資家の市場縮小につ
ながると考えられた場合、投資家は権利侵害を理由に
国際仲裁機関に対象国を提訴することができる。

22. ISD条項
 「ISD条項」と呼ばれる「投資家対国家間
の紛争解決条項(Investor State Dispute
Settlement）」です。企業への干渉を防ぐ
ためでもありますが、主に自由貿易協定
(FTA)を結んだ国同士において、多国間に
おける企業と政府との賠償を求める紛争
の方法を定めた条項です。つまり、企業
に損害が発生した時、企業が政府に対し
て損害賠償を請求することができるとい
うものです。

23. TPPに関連する国々の医療制度
■アメリカ
医療保障は民間保険が中心。国民の約6割は雇用主が任
意で提供する民間医療保険、約1割は個人で医療保険に
加入しています。障害者や高齢者は公的医療保険メ
ディケアに加入し、メディケアは、連邦政府が社会保
障税で運営しています。2007年の時点で無保険者が約
15％もいます。低所得者の公的医療保険はメディケイド
と言い、これも連邦政府で運営されています。
民間医療保険になると、年間保険料は自己支払いがあ
り、診療時にも自己負担があります。高額の場合は越
えた部分ですべて自己負担になります。さらに、既往
歴によっては医療保険に入れないこともあります。つ
まり、日本の民間医療保険みたいなものです

24. TPPに関連する国々の医療制度
■カナダ
国民医療保険制度をメディケアと言いま
す。州などが保険者で医療保険税など州税
財源で運営しています。メディケアは急性
期の入院費用と医師の診察費をほぼ全額補
償しますが、歯科、薬剤費などは対象外の
ため、実際は自己負担は約3割です。専門
医や病院の診療を受けるためにはかかりつ
け医の紹介が必要です。

25. TPPに関連する国々の医療制度
■オーストラリア
国営医療制度であるメディケアは医療目的税
を主財源とし、民間保険の併用を推奨してい
ます。開業医を主治医に登録する義務があり
ます。一般診療所の外来患者と主治医の紹介
で専門医や公立病院を受診する場合は、その
医療費はメディケアが支払いますが、公立病
院の医師を指名できません。直接、公立病院
に受診すると医師の指名ができますが、民間
病院に受診するのと同じで、一旦すべて支払
い、事後請求で診療費の入院なら75％、外来
なら85％が返ってきます

26. TPPに関連する国々の医療制度
■韓国
国民皆保険制で、保険者は国民健康保険公
団です。国民健康保険公団の補償は、入院
8割、外来は5～7割で、自己負担の比率が
高いです。保険対象外の高度診療も多いた
め、補完的な民間医療保険が普及していま
す。混合診療もOKです。患者紹介制度
で、高度医療機関への紹介なしの受診は保
険適用外で自費になります。

27. TPPに関連する国々の医療制度
■シンガポール
国からの医療制度はなく、外来はほとんど
が実費です。国民は、給料の何割かを国の
管理下にある個人の口座に積み立てること
が義務づけられています。「CPF（中央積
立基金）」という強制積立貯金制度です。
そこから医療費を出したり、あまり使わな
ければ、将来の年金になります。完全に個
人主義です。

28. では、どうすべきか？

29. 国民皆保険－支え合いの形
 硬直化した制度を活性化するために市場
や競争の刺激を取り入れながらも、根幹
の社会連帯は崩してはならない。
 TPPを上手に取り込む
 無保険者を減らす

30. 医療費抑制－医療者側から
 高額な医療を減らす
 生活習慣病の予防
 早期発見・早期治療
 リハビリと社会復帰
 不要な医療を減らす
 必要十分な検査・処置
 住民への啓蒙

31. 参考文献
 国民皆保険が危ない
 平凡社新書、山岡淳一郎
著、平凡社 、2011年
 TPPは国民医療を破壊する―韓米FTAに学ん
だ医療者からの訴え
 京都府保険医協会、かもがわ出版 、2012年
 厚生労働省：我が国の医療保険について
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenk
ou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
 日経新聞
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS15036_V11C
13A0EE8000/