1020図画工作科における表現・鑑賞を一体とする造形活動の理論化
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第47回日本美術教育研究発表会にて発表しました。
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1020図画工作科における表現・鑑賞を一体とする造形活動の理論化
- 1. 図画工作科における表現・鑑賞を 一体とする造形活動の理論化の試み ーレヴィ＝ストロース芸術哲学を援用してー 上智大学大学院総合人間科学研究科 教育学専攻博士後期課程 日本学術振興会特別研究員DC1
- 6. ３．レヴィ＝ストロース芸術哲学の援用 原理性：科学的思考（エンジニアリング）と神話的 思考（ブリコラージュ）の中間に位置する思考様式 として「芸術」を挙げており、これらの思考様式を 「構造と出来事（偶然性）の関係性」のみによって 言い当てている 普遍性：西洋美術・原始美術・工芸・デザインなど を、領域で分類せずに、芸術的思考によって統合的 に論じる枠組みを提起している 理論的親近性：表したいことを実現する、材料に働 きかける、それらの良さを判断するなど、図画工作 科における資質能力とそれを培う活動との親近性が 見られること
- 9. 科学的思考・神話的思考の特質 科学的思考（エンジニア的問題解決） • 構造から出来事をつくりだそうとする （知識から演繹し現象を再現・予測・制御する） • 構造＝仮説や理論など、対象の性質を表す概念 （concept）による秩序（ex. E=mc2など） 神話的思考（ブリコラージュ的問題解決） • 出来事から構造をつくりだそうとする （身近な材料や出来事を組み変えて問題を解決する） • 構造＝物語や神話など、出来事を表す心象（image）や 記号（sign）による秩序（ex. 小説、料理など）
- 22. 制作executionの偶然性 しかし偶然性は制作の過程で内部的にあらわれることも ある。彫刻家が手にした木材の寸法や形状、木目の方向、 木肌の質、使う道具の不完全さ、制作の途中におこるマ チエール（matiére, material）や計画の抵抗、作業の途中 におこる思いがけぬ事件などがそれである。（p.34） ＝創作過程の中で変化していく材質や形の偶然性
- 34. 芸術的思考モデルから考える 図画工作科の教科内容 A表現⑴： 機会 相関性 材料に働きかける側面 ＝制作相関性の重視 A表現⑵： 表したいこと・つくりたい ものを実現する側面 ＝機会・用途相関性の重視 構造 制作 相関性 用途 相関性 B鑑賞：制作過程・作品の よさや美しさを鑑賞する ＝各相関性の観点から、 構造と偶然性の結合のよさ を感性的・知的に判断する
- 35. 芸術的思考モデルから考える 図画工作科の資質・能力 発想・構想の能力： 機会 相関性 各相関性の観点から、 表すモデル・使う材料と その用途を自ら発想する 創造的技能の能力： 各相関性の観点から、 偶然性に対処し工夫する 構造 制作 相関性 用途 相関性 鑑賞の能力： 各相関性の観点から、 構造と偶然性の結合（偶然 性を構造化できているか） を感性的・知的に判断する
- 37. 造形活動において働いている 芸術的思考の理論化 「考え、試行錯誤し、造形感覚を洗練しつつ問 題を解決し、作品の前で生きていることの素晴 らしさ、人は何かができる（中略）ことを体験 することは無駄ではない。（中略）ブリコラー ジュという言葉がふうっと浮かんでくる。」 （藤澤, 1986） これまで指摘されて来た、造形活動に内在して いる造形的・試行錯誤的「思考」の特質につい て、本研究は芸術的思考として構造化すること を試みた
- 38. 本研究の可能性 知識基盤社会：知識・技能を教え込むコンテンツ・ ベースドの教育ではなく、知識・技能を具体的な文 脈において活用できる資質・能力の学習を志向する コンピテンシー・ベースドの学習（OECD, 2010； Burke, 1989） 学習科学：知識・技能の「原理」（principles）と、 その「構造」（structures）の教授こそ、学習の 「転移」（transfer）を可能にする（Bruner, 1961； Sawyer, 2006） これらの社会的・理論的背景を受けた、芸術的思考 の分析による、芸術系教科の教育的意義の提起
- 39. 本研究の限界 理論的課題・実践的課題 造形的興味・関心の能力との接続：「つくりだ す喜び」や「遊び」はフロー体験との同型性が 指摘されている（宇田, 2013；桐田, 2013） ⇒試行錯誤的問題解決のフィードバックの容易 さが「楽しさ」の要因と考えられるが要検討 創造性研究との接続：ブリコラージュ的問題解 決と創造性との比較検討（Loarne, 2005） ⇒芸術的思考と創造性との比較検討 授業実践・カリキュラムとの接続：芸術的思考 がどのような状況で働くかの分析と比較検討