20160203 あたまゼミ 発表資料

1. 生まれながらのサイボーグ
心・テクノロジー・知能の未来
アンディ・クラーク
第３章 可塑性のある脳、ハイブリッドな心
2016/02/03 @あたまゼミ
金子和正
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2. 調整可能な身体(P.93)
• 脳は知覚にあわせて身体の境界や位置についてのイメー
ジを絶え間なく構築している（ラマチャンドランの原
理）
• 例：長く伸びる鼻、机が痛い
→非生物的な要素（=道具）まで拡張した身体イメージを生
成することも可能
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3. 脳のご都合主義(P.99) (1)
• 脳はご都合主義である：世界に対して今必要な一部の情
報だけを抽出して処理している
– 例：トランプのトリック、変化盲（視線以外の部分が変わる、
通行人が入れ替わる）
• 知っているということは、そのデータに迅速かつ容易に
アクセスできるということ
– 視覚：視界の中で必要なものを見れる
– 記憶：必要な知識を思い起こすことができる
→こういった特徴をもつ脳は言語のある環境の中で何が起
きるか？
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4. 脳のご都合主義(P.99) (2)
認知的ショートカット：高次の概念を知覚可能なものに落とすこ
とで扱うことができるようになる
• 概念とラベリング：チンパンジーの同じ/違う
• 正確な計算は言語特有の数の表し方に依存している
– 根拠1：おおざっぱな数字と正確な計算の片方しかできない脳の損傷
– 根拠2：バイリンガルが言語を切り替えると正確な計算が遅くなる
– 根拠3：正確な計算では発話に関する領域が活発になる
– 根拠4：言語によって短期記憶できる数字の桁数は違う
• 生物的な脳と認知テクノロジーが作り出した環境の相補的な能
力のループの結果として問題解決ができる
– プレゼンテーション資料の作成
– 画家の反復的なスケッチ
• 言語を足場として思考やアイデア自体について思考することを
可能とする：「第二階の認知ダイナミクス」
– 思考の表出が言語ではなく言語が思考を作った：マングローブと島
の関係
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5. もっと良い脳を構築する(P.132)
• 人間の脳は構成的学習システムである
– 構成的学習:システムの学習が進むに連れてシステム自身の計
算・表象リソースが変化する
• 脳皮質では経験によって神経回路網の構成が変化する
– 視覚・聴覚に障害がある人に人工的な感覚器官によって刺激を
与えると該当する脳の神経回路網が発達する
• 人間の本質を考える上で、生物的/文化的と分けて論じ
ることはできない
– 若者の親指の発達
• 社会政策、教育制度に影響
– 教育：より良い脳に成長する環境を提供すること
– 脳が自らを環境に適応させていく←→環境を改善していくとい
うループが重要
まとめ：言語によって、思考について思考することが可能
になり、人間の認知が進んでいく準備ができた
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6. 論点・最近の話(1) 言語と神経科学
Ding, et al. 2016 [1]
• チョムスキーの生成文法：もともと普遍的な文法が脳にはある
• 文字列を理解できるのは、内部文法に従って階層的な構成要素に単
語を組み合わせることができるからだ、ということを支持する神経
生理学的な実験を行った
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[1] Ding, Nai, et al. "Cortical tracking of hierarchical linguistic structures in connected speech." Nature neuroscience 19.1
(2016): 158-164. APA
• 文法的には正しいが意味は通
らない文に対しても、文の階
層構造に対応した周波数の脳
波が観測された
（例 “Colorless green ideas sleep
furiously”）
• 違う言語の話者では対応する
脳波は観測されなかった

7. 論点・最近の話(2) 言語と概念
「言語的相対論」[1]（Sapir and Whorf 1930~1940）
個人が使用できる言語によってその個人の思考、世界の認識の
仕方が影響を受ける（規定される）
→ダグラス・エンゲルバート：ハイパーテキスト、GUIへの影響
「ピダハン語」[2]
アマゾン川の支流沿いに住んでいるピダハン族固有の言語
特徴
• 過去形、未来形がない
• 数詞がない
• 再帰がない（例：太郎は結婚したと三郎は言った）
数詞をもたなくても、同じ個数のものを揃える、といったことはでき
る→言語的相対論の強い仮説（言語が概念を生む）を否定
7[1] https://ja.wikipedia.org/wiki/言語的相対論 [2] https://ja.wikipedia.org/wiki/ピダハン語

8. 論点・最近の話(3) 社会進化論
社会・文化的な遺伝と、生物的な遺伝の独立な相互作用として
捉えるのではなく、人間という生物種の一器官としての社会・
文化・テクノロジーとして捉えられるのでは？
• 遺伝子・文化共進化説（DIT）：文化が生物的な形質、行動
に影響を与える
• ニッチ構築理論：生物は環境に働きかけ、環境からの影響に
よって進化していく
– 北ヨーロッパの民族は長く酪農をしていたので、乳糖耐性遺伝
子型をもつ人が多い
– ヤムイモを栽培すると水たまりができやすくなって蚊が増殖し，
マラリアが伝染しやすくなり，それに対してマラリア耐性遺伝
子頻度が増加する
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