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インフォテリア株式会社
2016 年 6 月
White Paper
Copyright (C) 2016 Infoteria Corporation. All Rights Reserved.
災害時の緊急時対策に
" モバイル情報共有 " は
なぜ有効なのか
Handbook を活用した情報共有の魅力と
熊本県自治体の電算担当者へのインタビュー付き
2
Copyright (C) 2016 Infoteria Corporation. All Rights Reserved.
はじめに
 2016 年 4 月 14 日に発生した「平成 28 年熊本地震」は「BCP(Business Continuity Planning:
事業継続計画)」が必要不可欠であるという現実を改めて突き付けました。
 BCP とは、組織が内外の脅威を識別し、防止策と組織の回復策を提供するための計画であり、緊急
事態の事前、最中、および事後に行うべき手順を定めたものです。
 その BCP の1つとして、緊急事態の最中の混乱の低減、さらには事後のスムーズな復旧のために、
緊急時の情報共有体制は重要な問題です。
 政府および自治体の活動においても、支援物資の確保が問題なのではなく、支援物資の内容把握と
各被災地および避難所の状況把握、そして状況把握に基づく支援物資の配送計画に問題があったこと
が広く報道されています。
 そこで本ホワイトペーパーでは、緊急時の情報共有のためにインフォテリアが提供しているモバイ
ル向けコンテンツ管理システム「Handbook」を利用し、関係者のスマートフォンやタブレットなど
で情報共有するという方法を紹介します。内容は以下の通りです。
・	 緊急時に求められる情報共有のポイント
・	 モバイル情報共有の概要とその魅力
・	 実際に緊急時に Handbook を活用した事例の紹介
 緊急事態が発生した際、被害を減らす活動をするにはどうしたらいいでしょうか。事後の速やかな
復旧はいかに実現できるのでしょうか。本ホワイトペーパーが、こうした問いへの1つの糸口になれば、
これ以上の喜びはありません。
プが情報を把握し、トップが判断して現場に周
知し、現場はフィードバックをする、という流
れです。順に見ていきましょう。
  第一に、現場の情報を把握して整理し、トッ
プが把握していくということが重要です。トッ
プが直接に把握できない場合には、情報を収集・
整理する人間がトップへレポーティングします。
 第二に、トップの判断を素早く全体に周知さ
せなければなりません。統制のとれた行動をす
るために、もれなく全員に伝えられる必要があ
ります。
 第三に、トップからの判断に関して現場の
フィードバックをする仕組みも必要です。トッ
プからの司令は一方方向であると重要なことを
見落とす可能性があります。状況変化の報告と
緊急時の情報共有とは
 まずは緊急時の情報共有のあり方と、その課
題について整理してみましょう。
緊急時はトップダウン
 緊急時の情報共有は平常時とは異なります。
 平時には現場で判断を行うことは有益かもし
れませんが、緊急時には限られたリソースをリ
スクが大きい問題に振り分ける必要があります。
 各々が目の前の課題に対しバラバラに動いて
しまっては、全体として重要な問題をないがし
ろにしかねません。
 そのため、緊急時の情報共有は水平的なもの
ではなく垂直的なものになります。つまり、トッ
3
Copyright (C) 2016 Infoteria Corporation. All Rights Reserved.
は別に、トップの判断を現場がどう感じている
のかということを把握するということは重要な
次の判断材料になります。
緊急時情報共有の課題
 上記の情報共有は当然のことのようですが、現
実には実現は困難です。その問題を順番に見て
いきましょう。
① マニュアルが参照されない
 まず、緊急時の活動での根本の問題を指摘し
ましょう。それは、いざというときに必要な情
報が手元にないという問題です。
 多くの企業において災害時のマニュアルは準
備されていることでしょう。そこにはパターン
別の手順や連絡先などが書かれているはずです。
 しかし、それらは電子ファイルとして共有サー
バーに保存されていたり、紙として書棚にある
かもしれませんが、緊急時にそうしたマニュア
ルが手元で閲覧できるとは限りません。頭にい
れておくべきだというのは非現実的でしょう。
 こういった状況のために、緊急時で混乱して
いる通信手段は更に混乱してしまうのです。
② 状況の把握が難しい
 その上で、まずは状況を整理してトップが全
体像を把握する際の問題点を指摘しましょう。
 第一に、被害報告の精度の問題があります。現
場は被害の報告に慣れていないためもあり、判
断上のポイントか分からないままに、ただただ
被害を報告するということが起こりえます。被
害の根本原因や被害の程度やその全容、放置し
た場合のリスクといった重要な情報が抜け落ち
ます。
 第二に、報告の情報量の問題があります。被
害があった場合にはその状況は刻々と変化する
ものなので、現場からの情報量が多くなります。
そのため、情報を整理する側は情報のアップデー
トに追われることになります。
 第三に、情報を整理する側も被害を受けてい
る場合、電力や通信、機器の不具合などにより、
通常の情報処理力を確保できない可能性があり
ます。
 第四に、こうした情報の収集において、メー
ルと電話が主な通信手段で、情報の整理は表計
算ソフトで行われがちであることも注意が必要
です。添付メールによる情報の錯綜や、最新情
報に関する錯誤は深刻な問題となりえます。
③ 指示の周知が難しい
 次に状況を把握した上でトップが行動を決め
た場合の問題を見ていきましょう。
 第一に、告知で問題となるのは、どの情報を
どの範囲に提供するかという問題です。全ての
情報を全ての社員に配布すると、それぞれに必
要な情報は埋もれがちです。一方で、最低限必
要な情報だけを配信すると、いざ他の部門との
協働があった場合に、一緒に閲覧したい資料が
共有されていないという状況が起こります。
 第二に、状況は刻々と変化するため、指示も
アップデートされていきます。最新の指示や古
い情報を見て行動してしまう可能性が高まるこ
とも問題でしょう。
 第三に、問題は緊急時には社内ポータルに接
続できる環境にいない可能性があるということ
です。情報を収集する側と同様に現場側も機材
やネットワークの問題がありえますし、それ以
上に、現場でパソコンを使うという状況ではな
い可能性があります。
④ 現場の反応が分からない
 最後に緊急時の指示が現場を無視したものに
なりがちなことも指摘しておきます。
 緊急時に作成される指示は丁寧に作られない
ので、わかりにくいものになりがちです。そし
て、全体像が理解されなかったり、納得がなかっ
たりする状態で、指示を実行することは次の問
題につながりかねません。
 現場がどう受け止めているのかを知ることが
重要なのです。

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  • 3. 3 Copyright (C) 2016 Infoteria Corporation. All Rights Reserved. は別に、トップの判断を現場がどう感じている のかということを把握するということは重要な 次の判断材料になります。 緊急時情報共有の課題  上記の情報共有は当然のことのようですが、現 実には実現は困難です。その問題を順番に見て いきましょう。 ① マニュアルが参照されない  まず、緊急時の活動での根本の問題を指摘し ましょう。それは、いざというときに必要な情 報が手元にないという問題です。  多くの企業において災害時のマニュアルは準 備されていることでしょう。そこにはパターン 別の手順や連絡先などが書かれているはずです。  しかし、それらは電子ファイルとして共有サー バーに保存されていたり、紙として書棚にある かもしれませんが、緊急時にそうしたマニュア ルが手元で閲覧できるとは限りません。頭にい れておくべきだというのは非現実的でしょう。  こういった状況のために、緊急時で混乱して いる通信手段は更に混乱してしまうのです。 ② 状況の把握が難しい  その上で、まずは状況を整理してトップが全 体像を把握する際の問題点を指摘しましょう。  第一に、被害報告の精度の問題があります。現 場は被害の報告に慣れていないためもあり、判 断上のポイントか分からないままに、ただただ 被害を報告するということが起こりえます。被 害の根本原因や被害の程度やその全容、放置し た場合のリスクといった重要な情報が抜け落ち ます。  第二に、報告の情報量の問題があります。被 害があった場合にはその状況は刻々と変化する ものなので、現場からの情報量が多くなります。 そのため、情報を整理する側は情報のアップデー トに追われることになります。  第三に、情報を整理する側も被害を受けてい る場合、電力や通信、機器の不具合などにより、 通常の情報処理力を確保できない可能性があり ます。  第四に、こうした情報の収集において、メー ルと電話が主な通信手段で、情報の整理は表計 算ソフトで行われがちであることも注意が必要 です。添付メールによる情報の錯綜や、最新情 報に関する錯誤は深刻な問題となりえます。 ③ 指示の周知が難しい  次に状況を把握した上でトップが行動を決め た場合の問題を見ていきましょう。  第一に、告知で問題となるのは、どの情報を どの範囲に提供するかという問題です。全ての 情報を全ての社員に配布すると、それぞれに必 要な情報は埋もれがちです。一方で、最低限必 要な情報だけを配信すると、いざ他の部門との 協働があった場合に、一緒に閲覧したい資料が 共有されていないという状況が起こります。  第二に、状況は刻々と変化するため、指示も アップデートされていきます。最新の指示や古 い情報を見て行動してしまう可能性が高まるこ とも問題でしょう。  第三に、問題は緊急時には社内ポータルに接 続できる環境にいない可能性があるということ です。情報を収集する側と同様に現場側も機材 やネットワークの問題がありえますし、それ以 上に、現場でパソコンを使うという状況ではな い可能性があります。 ④ 現場の反応が分からない  最後に緊急時の指示が現場を無視したものに なりがちなことも指摘しておきます。  緊急時に作成される指示は丁寧に作られない ので、わかりにくいものになりがちです。そし て、全体像が理解されなかったり、納得がなかっ たりする状態で、指示を実行することは次の問 題につながりかねません。  現場がどう受け止めているのかを知ることが 重要なのです。