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BYODの成功を支えるMCMとは何か?
- 2. 2
はじめに〜 BYOD の現状
企業のシステム管理者を悩ませる共通の問題とし
て、BYOD (Bring Your Own Device:個人所有デバイ
スの業務での利用 ) が急浮上しています。昨今、雪崩
を打って業務に入り込む BYOD のスマートデバイス
をどう扱うべきかという悩みは、多くのシステム管理
者から耳にします。
BYOD とは決して新しい概念ではありません。一昔
前までは、私物 PC の職場持ち込みは一部の企業では
見られる現象でした。しかし、情報セキュリティの強
化に伴い、現在では多くの企業で私物 PC の持ち込み
は禁止されています。
そして、PC の BYOD の息が絶え、安心していた
システム管理者の下に、「PC と同等レベル」の機能
を備えるスマートフォンやタブレットが現れました。
BYOD は認めないという姿勢を貫いている会社が多
いのが日本の現状ですが、米国や中国など海外では
BYOD デバイスの利用は一般的になってきており、そ
の効果が実証されつつあります(図1)。
また、管理部門が BYOD を認めない方針を崩さな
い一方で、利用者が管理の届かない状況でなし崩し的
にデバイスを業務に持ち込んでしまっているケースも
多くみられます。いわゆる「シャドー IT」といわれ
る問題です。
ある実態調査によれば、BYOD のポリシーがある会
社はわずかに 12.6% である一方、53.1%の利用者は
BYOD を行なっているということで(図2および図
3)、シャドー IT が日本企業にはびこっている様子が
伺えます。
会社として何の管理も行なっていない状態で業務
に利用するのですから、シャドー IT の危険性が極め
て高いことは言をまたないことかと思います。
つまり、管理部門のセキュリティを保ちたいという
思いからの頑なな姿勢が、皮肉にもシャドー IT とい
うセキュリティ上のリスクを生み出してしまっている
といえるでしょう。
このホワイトペーパーは、こうした日本の BYOD
の現状に対して、BYOD のスマートデバイス活用を実
現するための一つの確かな指針を示すことを目的に書
かれました。
特に、タブレット活用企業で利用されることが多い、
営業や販売、会議、情報共有といったシーンにおける
業務用の情報・ファイル・データ(本ペーパーでは「コ
ンテンツ」と呼びます)の扱いにフォーカスします(図
4)。例えば、コンテンツには、営業や販売の現場で
使うカタログやスライド資料などの営業資料や会議資
料、教材などが含まれます。
そして、こうした業務用のコンテンツを BYOD の
デバイスで利用する場合に有効であるとして急浮上し
ているのが、MCM(モバイルコンテンツ管理)とい
う領域です。本ペーパーではこの MCM の有効性と実
際の活用事例をご説明し、BYOD 成功のポイントをご
紹介します。
BYOD の魅力の一つは、デバイスへの初期投資を抑
えながら、デバイス活用による生産性向上を実現で
きることです。MCM を正しく理解し、御社における
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75
100
日本
米国
中国
BYODのポリシー整備状況
ポリシーで禁止
(罰則規定あり)
ポリシーで禁止
(罰則規定なし)
ポリシーなし
ポリシーの有無不明
ポリシーで許可
(詳細ルールなし)
ポリシーで許可
(詳細ルールあり)
図1:BYOD の普及率
図3:BYOD のポリシー整備状況
BYODの経験
ほぼ毎日
週に2〜3回
一ヶ月に2〜3回
年に2〜3回
それ以下の頻度
BYODはしない
出典:「2012 年 6 月 企業におけるスマートフォン、タブレット端末の BYOD 実態調査」(トレンドマイクロ株式会社 , 2012 年 6 月 29 日)
図4:BYOD の経験の有無
出典:「アジア太平洋 12 カ国・地域対象、IT を活用したワークスタ
イルの実態調査」(ヴイエムウェア株式会社 ,2013 年 3 月 8 日)お
よ び「BYOD: Putting Users First Produces Biggest Gains, Fewest
Setbacks」(Vanson Bourne, 2013 年 1 月 23 日)
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BYOD の成功に役立てて頂ければ幸いです。
1. タブレット導入の基本は
押さえて
BYOD でスマートデバイスを導入する企業におい
て、それが企業でのスマートデバイス導入の初の試み
になることは少なくありません。そのため、BYOD に
特化したポイントだけでなく、スマートデバイスの導
入そのものの注意点を理解しておくことは有益でしょ
う。
スマートデバイスの導入については別のホワイト
ペーパー『タブレット企業導入を成功させる5つのポ
イント』にて説明しています。その5つのポイントと
は以下の通りです。
1. 活用用途・目的を明確にする
2. トップダウンで推進する
3. PC との違いを意識する
4. スモールスタートする
5. 独自アプリを開発しない
BYOD のスマートデバイス導入の場合でも上記のポ
イントは同じことが当てはまります。是非ともこちら
のホワイトペーパーを参照ください。
2. BYOD のセキュリティ確保
が難しい理由
会社配布のデバイス利用と BYOD のデバイス利用
ではセキュリティ確保の考え方が大きく異なります。
BYOD では機密情報を扱う上での大きな課題があるの
です。
現在、スマートデバイスのセキュリティを守る一般
的な方法は MDM(モバイル・デバイス管理)ツール
の導入です。MDM により、企業のセキュリティ・レ
ベルを満たすセキュリティ・ポリシーをシステム的に
適用することができるのです。
MDM の代表的なセキュリティ機能としては、イ
ンストールできるアプリケーションのコントロール
や root 化・Jailbreak の制限、紛失時の遠隔ロックや
ワイプ(情報削除)などがあげられます。こうした
MDM が提供するデバイス管理により、多くの企業で
は安心してスマートデバイスを利用できる環境を実現
しているのです。
BYOD で問題になるのは、デバイスそのものが個人
の所有物であるため、デバイス管理を十分に行うこと
ができない状況が多々あるということです。
会社配布の端末であれば、上記のようなデータ消去
も含む強力なコントロールや、アプリケーションのイ
ンストールを不可能化するような制限を加えることに
問題はないでしょう。
しかし、私物のデバイスにそうしたコントロールや
制限をかけることは現実的には難しいものです。
スマートデバイス利用の魅力はその豊富なアプリに
よって実現されている部分が多いため、デバイス保有
者が自分で好きなアプリケーションを利用できないよ
うなことを承諾するのは難しいのが現実です。しかし、
自由なアプリケーションのインストールを許せばマル
ウェアの脅威にさらされることになってしまいます。
また、私物のデバイスには個人の情報が蓄積されて
いることでしょうから、会社のコントロールによる
データの一括消去が現実的でないというようなことも
考えられます。
つまり、BYOD デバイスに対して、「デバイス」そ
のものを管理してしまうという手法は利用できないこ
とが多いのです。このことが、BYOD のセキュリティ
の問題を複雑にしているのです。
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グループウェア、社内SNS、
社内ポータルなどの利用
Eメール
営業活動
※電子カタログ、デモ等
ドキュメント閲覧
業績管理
店舗管理・在庫管理
生産管理
勤怠管理
経費精算
経理業務
保守・工事・配達サポート
その他
図4:法人のタブレット端末の導入目
的
図4:法人でのタブレット導入の目的
出典:「スマートデバイスに関する法人アンケート調査結果 2012」(株
式会社矢野経済研究所 , 2012 年 11 月 19 日)