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第7章 ウェーブレットと多重解像度処理(後半)
15X3026 岡本秀明(おっかー)
1
目次
導入
7.4 高速ウェーブレット変換
7.5 2次元ウェーブレット変換
7.6 ウェーブレットパケット変換
2目次
目次
導入
・ウェーブレット変換とは、できたきっかけ
・フーリエ変換とウェーブレット変換
・マザーウェーブレットとscaling, shift
・「時間-周波数」解析のイメージと応用事例
・連続ウェーブレット変換
・離散ウェーブレット変換
3目次
目次
7.4 高速ウェーブレット変換
・高速ウェーブレット変換(FWT)とは
・FWT分析フィルタバンク
(導出、1回、2回、周波数分割特性、例題)
・FWT合成フィルタバンク
(1回、2回、例題の逆)
・時間分解能と周波数分解能
4目次
目次
7.5 2次元ウェーブレット変換
・2次元への拡張
(2つの関数、離散、逆離散、FWT分析、FWT合成)
・画像をウェーブレット変換する例
・シムレット
・ウェーブレット変換後の画像処理
(例1 エッジ強調 例2 ノイズ除去)
5目次
目次
7.6 ウェーブレットパケット変換
・ウェーブレットパケット変換とは
・ウェーブレット解析ツリー
・ウェーブレットパケット解析
(1次元、2次元)
・指紋画像のデータ量削減の例
6目次
導入
7
目次
導入
・ウェーブレット変換とは、できたきっかけ
・フーリエ変換とウェーブレット変換
・マザーウェーブレットとscaling, shift
・「時間-周波数」解析のイメージと応用事例
・連続ウェーブレット変換
・離散ウェーブレット変換
8導入
ウェーブレット変換とは
信号の特性を解析する手段の一つ。
基底関数として、ウェーブレットを用いる。
フーリエ変換によって周波数特性を求める際に失わ
れる時間領域の情報を、この変換においては残すこ
とが可能である。
9導入
ウェーブレット変換ができたきっかけ
1970年代にフランスの地球物理学者のMorletが
石油探査において
・埋蔵場所(信号の精密な時間)
・それが石油かどうか(周波数)
の2つの情報を同時に解析するために考案した。
10導入
ウェーブレット変換ができたきっかけ
Morletは石油探査において、当初はフーリエ変換による解析を試みていた。
しかし、探査機は地中に衝撃を与え、反射してくる振動を解析するが、
複数の層から反射され、干渉された信号からの石油源の特定は困難だった。
より局所的な時間での周波数成分を解析可能な手法が求められていた。
そこでsin, cosではなく、局所的に振動しているウェーブレットを利用して、
信号に含まれる周波数成分の時間的な変化を解析したことが
ウェーブレット変換の起源と言われている 。
11導入
ウェーブレット変換をマスターすれば
石油王になれるかも???
12導入
フーリエ変換とウェーブレット変換
フーリエ変換
・正弦波の足し合わせ
・「周波数」解析
・定常的な信号を解析する
ことには有効だが、非定常
なものには向いていない
13導入
ウェーブレット変換
・ウェーブレットの足し合わせ
・不規則、間欠的、非定常な
信号の解析ができる
・「時間-周波数」解析
フーリエ変換とウェーブレット変換
14導入
つまり、ウェーブレット変換は
「時間的変化の特徴」
「周波数成分の混じり方」
の2つを知るために用いられ
時間と周波数にかかわる信号情報を
同時に抽出することができる。
15導入
マザーウェーブレット
16導入
ウェーブレットの構成要素、基底。いろいろな種類がある。
・メキシカンハット
・モルレー
・ハール …などなど
マザーウェーブレットのscalingとshift
17導入
・マザーウェーブレット:
・スケールs, シフトtのウェーブレット関数:
s
Sを大きくすればマザーウェーブレットは引き伸ばされる。
したがってより大まかな変動を解析するのに適したウェーブレットとなる。
tを大きくすれば、時間が正の方向に平行移動する(遅延する)。
・・・(7.3-9)
「時間-周波数」解析のイメージ
18導入
元信号
高周波数
低周波数
「時間-周波数」解析の応用事例
・心電図 ・材木の共振特性
19導入
連続ウェーブレット変換
20導入
・ : 元信号
・ : スケールs, シフトtのウェーブレット関数 に基づいたウェーブレット変換
・ : スケールs, シフトtのウェーブレット関数
・・・(7.3-9)
逆連続ウェーブレット変換
21導入
ただし、
・ : 元信号
・ : スケールs, シフトtのウェーブレット関数 に基づいたウェーブレット変換
・ : スケールs, シフトtのウェーブレット関数
・ : マザーウェーブレットの種類によって変わる定数
・・・(7.3-10)
・・・(7.3-11)
離散ウェーブレット変換
22導入
離散ウェーブレット変換は、
原信号を高周波成分と低周波成分に分解し、
分解された低周波成分を
また高周波成分と低周波成分に分解するという
処理を繰り返し行うことと等価である。
これを実現するために、
詳細成分を表すウェーブレット関数 の他に
スケーリング関数 と呼ばれる近似成分を表す基底関数を用いる。
スケーリング関数とウェーブレット関数
23導入
特性の異なる2種類の基底関数を組み合わせて信号を表すので、
フーリエ級数展開で正弦波および余弦波といった
2種類の基底を用いて級数展開が行われる点と類似している。
・・・(7.2-19)
・・・(7.2-10)
離散ウェーブレット変換
24導入
・ : 元信号
・ , : 離散ウェーブレット変換
・ : スケールj0, シフトkのスケーリング関数
・ :スケールj, シフトkのウェーブレット関数
・M = (L: 原信号のレベル l: 多重解像度解析におけるレベル)
・・・(7.3-5)
・・・(7.3-6)
逆離散ウェーブレット変換
25導入
・ : 元信号
・ , : 離散ウェーブレット変換
・ : スケールj0, シフトkのスケーリング関数
・ :スケールj, シフトkのウェーブレット関数
・M = (L: 原信号のレベル l: 多重解像度解析におけるレベル)
・・・(7.3-7)
7.4 高速ウェーブレット変換
26
目次
7.4 高速ウェーブレット変換
・高速ウェーブレット変換(FWT)とは
・FWT分析フィルタバンク
(導出、1回、2回、周波数分割特性、例題)
・FWT合成フィルタバンク
(1回、2回、例題の逆)
・時間分解能と周波数分解能
277.4 高速ウェーブレット変換
高速ウェーブレット変換(FWT)とは
離散ウェーブレット変換における多重解像度解析の
ウェーブレット係数およびスケーリング係数を
高速に計算する方法。
スケールj+1の式から、スケールjの式を求めることができるので
より細かな変動を解析するのに適したウェーブレットとなる。
2次元のサブバンド符号化方式に類似している。
→7.1.2節
287.4 高速ウェーブレット変換
FWT分析フィルタバンク
解像度が異なる信号のスケーリング係数と
ウェーブレット係数の間には、次の関係が成立する。
:
・ : ウェーブレット係数 ・ : ウェーブレットベクトル
・ : スケーリング係数 ・ : スケーリングベクトル
297.4 高速ウェーブレット変換
・・・(7.4-9)
・・・(7.4-10)
FWT分析フィルタバンクの導出
(7.2-18)の多重解像度精密化方程式において、
m=2k+n(xを2倍にスケーリング、xをkに変換)とすると、
同様に、
307.4 高速ウェーブレット変換
・・・(7.2-18), (7.4-1)
・・・(7.4-2)
・・・(7.4-3)
FWT分析フィルタバンクの導出
317.4 高速ウェーブレット変換
・・・(※)
FWT分析フィルタバンクの導出
327.4 高速ウェーブレット変換
(導出終わり)
337.4 高速ウェーブレット変換
Figure 7.17
これらの操作をブロック図形式でまとめる。
FWT分析フィルタバンクのブロック図形式
2回適用した場合
347.4 高速ウェーブレット変換
Figure 7.18(a)
Figure 7.17の分析フィルタバンクを枝状に接続することで、
スケールの大きい式から、よりスケールの小さい式へと
ウェーブレット係数が順次計算できる。
Figure 7.18(a)の周波数分割特性
357.4 高速ウェーブレット変換
Figure 7.18(b)
スケーリング空間Vjは、
ウェーブレット部分空間Wj-1と
スケーリング部分空間Vj-1に
分割される。
スケーリング空間Vj-1は、
ウェーブレット部分空間Wj-2と
スケーリング部分空間Vj-2に
分割される。
FWT分析フィルタバンクの例題
367.4 高速ウェーブレット変換
ハールスケーリングおよびウェーブレットベクトルを用いて
f(n) = {1, 4, -3, 0}
の高速ウェーブレット変換を計算せよ。
ただし、
とする。
FWT分析フィルタバンクの例題(解説)
377.4 高速ウェーブレット変換
問題条件をFigure 7.18(a)に適用して、
Wφ(2, n) = f(n) = {1, 4, -3, 0}
hΨ(-n) = {-1/√2, 1/√2}
Hφ(-n) = {1/√2, 1/√2}
FWT分析フィルタバンクの例題(解説)
387.4 高速ウェーブレット変換
より、
Wφ(2, n) = {1, 4, -3, 0} と、hΨ(-n) = {-1/√2, 1/√2} の畳み込みの
偶数インデックス部分が、WΨ(1, n)と同値となる。
つまり、 hΨ(-n)を反転させ、
それをWφ(2, n)に通過させた時の2つの関数の積の合計を順に並べる。
このときの偶数番目が求める値となるので
{-1/√2, -3/√2, 7/√2, -3/√2, 0} → WΨ(1, n) = {-3/√2, -3/√2}
FWT分析フィルタバンクの例題(解説)
397.4 高速ウェーブレット変換
よって、
Wφ(2, n) = f(n) = {1, 4, -3, 0}
hΨ(-n) = {-1/√2, 1/√2}
Hφ(-n) = {1/√2, 1/√2}
{-1/√2, -3/√2, 7/√2, -3/√2, 0}
↓
WΨ(1, n) = {-3/√2, -3/√2}
FWT分析フィルタバンクの例題(解説)
407.4 高速ウェーブレット変換
これを繰り返すことにより、
Figure 7.19
FWT分析フィルタバンクの例題(解説)
417.4 高速ウェーブレット変換
したがって求める解は、
WΨ(1, n) = {-3/√2, -3/√2}
Wφ(1, n) = {5/√2, -3/√2}
WΨ(0, n) = {4}
Wφ(0, n) = {1}
FWT合成フィルタバンク
逆高速ウェーブレット変換と同義。
スケールjの式から、スケールj+1の式を求めることができる。
・ : ウェーブレット係数 ・ : ウェーブレットベクトル
・ : スケーリング係数 ・ : スケーリングベクトル
427.4 高速ウェーブレット変換
・・・(7.4-14)
437.4 高速ウェーブレット変換
Figure 7.20
これらの操作をブロック図形式でまとめる。
FWT合成フィルタバンクのブロック図形式
2回適用した場合
447.4 高速ウェーブレット変換
Figure 7.21
Figure 7.20の分析フィルタバンクを枝状に接続することで、
スケールの小さい式から、よりスケールの大きい式へと
ウェーブレット係数が順次計算できる。
FWT分析フィルタバンクの例題の逆
457.4 高速ウェーブレット変換
畳み込みの和の計算を繰り返す。
Figure 7.22
時間分解能と周波数分解能
467.4 高速ウェーブレット変換
Figure 7.23
・元データ(左): 時間分解能のみ
・フーリエ変換(中): 周波数分解能のみ
・ウェーブレット変換(右): 高周波数ほど、時間分解能↑ / 周波数分解能↓
7.5 2次元ウェーブレット変換
47
目次
7.5 2次元ウェーブレット変換
・2次元への拡張
(2つの関数、離散、逆離散、FWT分析、FWT合成)
・画像をウェーブレット変換する例
・シムレット
・ウェーブレット変換後の画像処理
(例1 エッジ強調 例2 ノイズ除去)
487.5 2次元ウェーブレット変換
2次元への拡張
497.5 2次元ウェーブレット変換
離散ウェーブレット変換を2次元に拡張することを考える。
2次元では、1つの2次元スケーリング関数と、
3つの2次元ウェーブレット関数が必要である。
これらは、2つの1次元関数の積である。
水平方向の変化を検出
鉛直方向の変化を検出
斜め方向の変化を検出
・1次元
・2次元
507.5 2次元ウェーブレット変換
・・・(7.5-5)
・・・(7.5-6)
スケーリング関数とウェーブレット関数(1次元→2次元)
・・・(7.2-10)
・・・(7.2-19)
・1次元
・2次元
517.5 2次元ウェーブレット変換
・・・(7.5-5)
・・・(7.5-6)
・・・(7.3-5)
・・・(7.3-6)
離散ウェーブレット変換(1次元→2次元)
・1次元
・2次元
527.5 2次元ウェーブレット変換
・・・(7.5-9)
・・・(7.3-7)
逆離散ウェーブレット変換(1次元→2次元)
537.5 2次元ウェーブレット変換
FWT分析フィルタバンク(2次元)
Figure 7.24(a)
547.5 2次元ウェーブレット変換
FWT分析フィルタバンク(2次元)
Figure 7.24(b)
557.5 2次元ウェーブレット変換
FWT合成フィルタバンク(2次元)
Figure 7.24(b)
567.5 2次元ウェーブレット変換
画像を高速ウェーブレット変換する例
Figure 7.25(a)
以下の画像を高速ウェーブレット変換することを考える。
黒の背景に
2次元の正弦波状のパルス
からなる128×128の
コンピュータ生成画像
577.5 2次元ウェーブレット変換
画像を高速ウェーブレット変換する例
Figure 7.25(b)
元画像を高速ウェーブレット変換した結果。
近似成分
元画像の1/4の大きさ
水平方向の詳細成分
鉛直方向の詳細成分 斜め方向の詳細成分
587.5 2次元ウェーブレット変換
画像を高速ウェーブレット変換する例
Figure 7.25(c)
Figure 7.25(b)の左上の画像を高速ウェーブレット変換した結果。
近似成分
元画像の1/16の大きさ 水平方向の詳細成分
鉛直方向の詳細成分 斜め方向の詳細成分
597.5 2次元ウェーブレット変換
画像を高速ウェーブレット変換する例
Figure 7.25(d)
Figure 7.25(c)の左上の画像を高速ウェーブレット変換した結果。
近似成分
元画像の1/64の大きさ
水平方向の詳細成分
鉛直方向の詳細成分 斜め方向の詳細成分
607.5 2次元ウェーブレット変換
シムレット
先ほどの画像の例で使われているマザーウェーブレット。
symmetrical wavelet → symlet
最も基本的なウェーブレットと考えられるハールの
基底の不連続さを解消しつつ、
可能な限り対称になるように設計されている。
これにより、一般的な自然画像の変換や圧縮ができるようになる。
617.5 2次元ウェーブレット変換
シムレット
ハール シムレット
627.5 2次元ウェーブレット変換
シムレット
シムレットをDWTした時のウェーブレット関数の移り変わりは…
シムレット 1回DWT 2回DWT 3回DWT
4回DWT 5回DWT 6回DWT
637.5 2次元ウェーブレット変換
シムレットを4回DWT した時の例
ウェーブレット関数
Figure 7.26(e)
スケーリング関数
Figure 7.26(f)
647.5 2次元ウェーブレット変換
シムレットを4回DWT した時の例
Figure 7.26(c)
Table 7.3
hφ(n)に対する4回DWT時の正規直交シムレットフィルタ(合成フィルタ)の係数は
以下のようになる。(→ 7.1.2 Subband Coding)
657.5 2次元ウェーブレット変換
Figure 7.26(a), (b) 分解フィルタ
残りの正規直交フィルタの係数は以下のようになる。
Figure 7.26(c), (d) 合成フィルタ
・・・ (7.1-14) より、
シムレットを4回DWT した時の例
667.5 2次元ウェーブレット変換
2次元ウェーブレット(水平方向)の低解像度のグラフィック描写を以下に示す。
Figure 7.26(g)
Figure 7.26(e), (f)
シムレットを4回DWT した時の例
677.5 2次元ウェーブレット変換
ウェーブレット変換後の画像処理
基本的なアプローチはフーリエ領域の場合と同様。
【大まかな手順】
1. 画像の2次元ウェーブレット変換を計算する。
2. フィルタリング処理を適用する。
3. 逆変換を計算する。
スケーリングおよびウェーブレットベクトルは、
ローパスおよびハイパスフィルタとして使用される。
よって、フーリエベースのフィルタリング技術のほとんどは、
同等のウェーブレットベースのフィルタリング技術を有する。
687.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 1 エッジ強調
先ほどの画像の例で、2回DWTしたものを弄ることを考える。
Figure 7.25(a) Figure 7.25(c)
697.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 1 エッジ強調
最小スケールの近似成分を0に設定した時の変化は?
Figure 7.25(c) Figure 7.27(a)
707.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 1 エッジ強調
比較的ゆるやかな正弦波でも、ここまではっきりと強調される。
Figure 7.25(a) Figure 7.27(b)
717.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 1 エッジ強調
では、さらに水平方向の詳細成分を全て0に設定すると?
Figure 7.27(a) Figure 7.27(c)
727.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 1 エッジ強調
鉛直方向のエッジのみとなる。
Figure 7.27(b) Figure 7.27(d)
737.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 2 ノイズ除去
人間の頭部のCT画像を考える。
この画像の背景は、
付加的な白色雑音で
一様に崩壊している。
この画像をウェーブレット変換し、
詳細(ウェーブレット)係数を
閾値化することによって
ノイズを低減させることができる。 Figure 7.28(a)
747.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 2 ノイズ除去
しかし、詳細係数を
単純に0にするだけでは、
ノイズが低減するだけではなく、
画像のエッジもぼけてしまう。
よって解像度の高い詳細係数を
閾値化することにより、
エッジのぼかしは減少する。
(逆に解像度が高すぎると、
今度はノイズが除去できなくなる) Figure 7.28(b)
757.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 2 ノイズ除去
適切な解像度でのフィルタ画像と、その時の詳細係数の差分。
Figure 7.28(c) Figure 7.28(d)
767.5 2次元ウェーブレット変換
画像処理の例 2 ノイズ除去
解像度が低い場合のフィルタ画像と、その時の詳細係数の差分。
Figure 7.28(e) Figure 7.28(f)
7.6 ウェーブレットパケット変換
77
目次
787.6 ウェーブレットパケット変換
7.6 ウェーブレットパケット変換
・ウェーブレットパケット変換とは
・ウェーブレット解析ツリー
・ウェーブレットパケット解析
(1次元、2次元)
・指紋画像のデータ量削減の例
797.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット変換とは
離散ウェーブレット変換の
周波数分解能を向上させた手法。
高周波成分のより細かい解析を可能にする。
807.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット変換とは
 ウェーブレット変換
Figure 7.30(a) Figure 7.32(a)
 ウェーブレットパケット変換
817.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレット解析ツリー
まず、FWT分析フィルタバンクを2分木で表すことを考える。
Figure 7.18(a) Figure 7.29
827.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレット解析ツリー
これらの概念を3回FWTに適用。
解析バンク、解析ツリー、そして対応する周波数スペクトルを示す。
Figure 7.30(a), (b), (c)
837.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレット解析ツリー
この解析ツリーは、ウェーブレット変換をよりコンパクトに表し、
ウェーブレット関数とスケーリング関数の関係性を和集合で
表したものと対応していることがわかる。
Figure 7.30(b)
・・・ (7.6-1)
・・・ (7.6-2)
・・・ (7.6-3)
847.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
ウェーブレット解析ツリーから
ウェーブレットパケット解析ツリーへと拡張することを考える。
Figure 7.30(b) Figure 7.31
857.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
A: 近似フィルタリング
D: 詳細フィルタリング
例)
Wj-1, DAは、スケールj-1の
ウェーブレット係数に
詳細フィルタリング、
近似フィルタリングの順で、
フィルタリングすることで得ら
れる。 Figure 7.31
867.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
Figure 7.31の解析バンクと周波数スペクトルを示す。
Figure 7.32(a), (b)
877.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
Figure 7.32(b)を和集合で表した例を示す。
・・・ (7.6-4)
・・・ (7.6-5)
887.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
式(7.6-5)の周波数スペクトルを示す。
・・・ (7.6-5)
Figure 7.33
897.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
一般に、Pスケールの1次元ウェーブレットパケット変換における
可能な分解の数は以下のように表される。
・・・ (7.6-6)
907.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析(2次元)
最初の2次元ウェーブレットパケット変換の周波数スペクトルと解析
ツリーを示す。
Figure 7.34(a), (b)
917.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析(2次元)
3スケール2次元ウェーブレットパケット変換の周波数スペクトルと
解析ツリー(一部)を示す。
Figure 7.35
927.6 ウェーブレットパケット変換
一般に、Pスケールの2次元ウェーブレットパケット変換における
可能な分解の数は以下のように表される。
つまり、 3スケール2次元ウェーブレットパケット変換の場合
83522通りとなる。
・・・ (7.6-7)
ウェーブレットパケット解析(2次元)
937.6 ウェーブレットパケット変換
ウェーブレットパケット解析
ウェーブレットパケット解析における可能な分解の数は非常に多い。
そのため、個々にそれらを調べていくことは
不可能ではないにしても現実的に厳しい。
よって、最適な分解を見つけるための
効率の良いツリー探索アルゴリズムが求められる。
947.6 ウェーブレットパケット変換
指紋画像のデータ量削減の例
右図の400×480の指紋画像を表現するのに
必要なデータ量を削減する問題を考える。
画像圧縮→第8章
今回は圧縮プロセスの出発点として
3スケールウェーブレットパケット分解を
使用する。
Figure 7.36(a)
957.6 ウェーブレットパケット変換
指紋画像のデータ量削減の例
右図の分解は、
3スケールのウェーブレットパケットツリーの
83522種類の分解のうちの1つである。
Figure 7.35の解析木のような
64枚の分解図である。
しかし、この分解が何らかの形で
圧縮のために最適である確率は非常に低い。
そのうえ、適切な基準がない場合
最適性を確認することすらできない。 Figure 7.36(b)
967.6 ウェーブレットパケット変換
指紋画像のデータ量削減の例
ここで以下のような2次元関数を考える。
変換ベースの圧縮方式の多くは、
情報量が少ないものを閾値処理で切り捨てることで機能する。
つまり今回の場合、値が0に近い分解図が
最も多くなるような分解を見つければ良い。
・・・ (7.6-8)
977.6 ウェーブレットパケット変換
指紋画像のデータ量削減の例
具体的なアルゴリズムを以下に示す。
親
子
各リーフの情報量において、
1. 4つの子の和 < 親 ならば、分解に子を含める。
2. 4つの子の和 ≧ 親 ならば、親のみを残す。
これにより、不要な子孫を計算せずに済む。
987.6 ウェーブレットパケット変換
指紋画像のデータ量削減の例
このアルゴリズムによって得られた最適化分解と、対応する解析ツ
リーを以下に示す。
Figure 7.37 Figure 7.38
997.6 ウェーブレットパケット変換
指紋画像のデータ量削減の例
実際に今回の指紋画像の例は、
FBIが大規模な指紋データを維持するため
に利用されている。
指紋画像のデジタル化と圧縮のため
ウェーブレットベースの国家規格を
1993年に確立した。
1007.6 ウェーブレットパケット変換
Cohen-Daubechies-Feauveau ウェーブレット
先ほどの指紋画像の例で使われているマザーウェーブレット。
スケーリング関数、ウェーブレット関数が対称であり、
類似の長さを持つため、
最も広く使用されている双直交ウェーブレットである。
1017.6 ウェーブレットパケット変換
Cohen-Daubechies-Feauveau ウェーブレット
Cohen-Daubechies-Feauveauのフィルタ係数を以下に示す。
Table 7.4
1027.6 ウェーブレットパケット変換
Cohen-Daubechies-Feauveau ウェーブレット
Cohen-Daubechies-Feauveauの分解フィルタ係数および合成フィル
タ係数を以下に示す。
Figure 7.39(a), (b) 分解フィルタ Figure 7.39(c), (d) 合成フィルタ
1037.6 ウェーブレットパケット変換
Cohen-Daubechies-Feauveau ウェーブレット
Cohen-Daubechies-Feauveauの二重ウェーブレット関数および二重
スケーリング関数を以下に示す。
Figure 7.39(e), (f) 二重ウェーブレット関数 Figure 7.39(g), (h) 二重スケーリング関数
参考文献
Digital Image Processing: International Edition: Rafael C. Gonzalez, Richard E. Woods
Wavelet Analysis for Image Processing: Tzu-Heng Henry Lee Graduate Institute of
Communication Engineering, National Taiwan University, Taipei, Taiwan, ROC
よくわかる信号処理 - フーリエ解析からウェーブレット変換まで: 和田成夫
フーリエ変換からウェーブレット変換へ やり直しのための通信数学: 三谷政昭
ウェーブレット変換の基礎と応用事例: 橘亮輔
画像処理のための複素数離散ウェーブレット変換の設計と応用に関する研究: 加藤毅
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