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ジャック・エリュール「プロパガンダ」
- 12. 11
第 1 章 プロパガンダの特質
真の現代的プロパガンダは現代の科学的体系の文脈のなかでのみ機能できる。しかし、
真の現代的プロパガンダとは何であろうか。多くの観察者は、プロパガンダは一連のまや
かしとも多少の重要な実務とも捉えている。さらに心理学者や社会学者はこうした実務の
科学的特質をほとんどの場合受け入れずにいる。我々はプロパガンダが科学というよりも
技法であるとの考えに賛同する。しかし、それは“現代的”技法であり、つまりプロパガ
ンダは一つまたは幾つかの科学の分野に基礎を置くものである。プロパガンダはこうした
科学分野の表出であり、科学分野とともに動き、その成功を共有し、その失敗の目撃者を
生む。プロパガンダが個人に対する感化や技巧、或いは洗練されていないまやかしの使用
であった時代は過去のものとなった。我々が四つの観点から明らかにするように、今や科
学はプロパガンダに進出してきている。
第一に、現代的プロパガンダは心理学や社会学の科学的分析に基づいている。徐々にで
はあるが、プロパガンディストは人の知識や傾向、欲求、必要性、心的機能に基づいて、
深層心理学と同程度に社会心理学に基づきながら、技法を構築している。集団の形成や解
体の法則、大衆への影響、環境的限界の知識に基づいて、その方法が構築されている。現
代の心理学や社会学の科学的調査なしに、プロパガンダは存在し得ない。或いは、むしろ
我々はペリクレスやアウグストゥスの時代にも存在したプロパガンダの原始的段階に、い
まだにいるのかもしれない。もちろん、プロパガンディストたちは科学の諸分野に不完全
なかたちで組み込まれているかもしれない。彼らは科学の諸分野を誤解し、心理学者たち
の注意深い結論を越え、実際には応用などまったくしていないのに、心理学的発見を応用
していると主張するかもしれない。しかし、それらのことはすべて新たな方法を見つけよ
うという努力のようにも見える。たった 50 年ほどの間だが、人類は心理学的、社会学的科
学を応用しようとしてきた。重要なことは、プロパガンダが科学に従属し科学を利用する
と決めたことである。もちろん、心理学者は怒り、それは科学の誤用であるというかもし
れない。しかし、同じ議論は物理学者と原子爆弾にも当てはまるし、この主張はあまり重
みを持たない。科学者は世界のなかで生きていて、そこにあって彼が発見したことは応用
されるということを理解すべきである。プロパガンディストは否応なしに社会学や心理学
をもっと理解するだろうし、より正確に用いるだろうし、結果としてより影響力を増すだ
ろう。
第二に、プロパガンダは一連のやり方を厳格に、かつ正確に検証されたものにしようと
するので、それは単なる方法でなくなり、すべてのプロパガンディストに強いるほどのも
のになり、プロパガンダが自分の一時的な感情に従うといったことはますます少なくなる
という点において、プロパガンダは科学的である。プロパガンディストは、適切な訓練を
受けた者によって適用されたある正確な公式をより多くかつ正確に用いなければならない
。科学に明確に基づいた技法の本質である。