1. 兵庫県における広域化が
事務職員数に与える影響

2. 関西学院大学 経済学部 上村研究室

3. もくじ
Ⅰ.国民健康保険
• 1.医療保険とは
• 2.国民健康保険とは
• 3.国民健康保険の現状と問題点
Ⅱ.広域化
• 1.先行研究:湯田(2010)
• 2.広域化とは
• 3.広域化のメリット
• 4.先行研究:岸田(2002)
Ⅲ.分析
• 1.兵庫県での事務の効率化
• 2.分析内容
• 3.分析結果
Ⅳ.政策提言
• 1.広域化の方法
• 2.未納・滞納問題とその対策
参考研究

5. Ⅰ.国民健康保険

6. Ⅰ.国民健康保険
• 被用者保険の適用者以外の国
民すべてを被保険者
• 患者の自己負担分を除く給付
費については、基本的には保
険料（保険税）と公費で半分
ずつ負担
• ほとんど地方公共団体

7. Ⅰ.国民健康保険
一定以上の所得者
～69 歳
一般、
低所得者
３割負担（
３歳未満は２割）
70～74 歳
２割負担
３割負担
75 歳以上
１割負担

8. Ⅰ.国民健康保険
• 様々な社会的要因により、社会的弱者であり低所得者の
被保険者が増加
• 国保の支出の増大で会計が赤字

9. Ⅰ.国民健康保険
備考）国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 年齢３区分別人口割合の推移
ー出生中位（死亡中位）推計ー」より作成

10. Ⅰ.国民健康保険
備考）厚生労働省資料より引用

12. Ⅱ.広域化
国民健康保険財政の現状と問題点を考え、その直面している環境や状況が、国
民健康保険財政にどのような影響を与えているかを、計量経済モデルをつかっ
て分析
結果①
国民健康保険支出の費用関数を推定すると、特に加入者の高齢化による
影響が、国民健康保険財政の非効率性の拡大の最も大きな影響を与えて
いる
結果②
普通調整交付金や市町村一般会計からの繰入金などの財政補助が、
国民健康保険財政の非効率性を高めている
結果③
国民健康保険支出には規模の経済が存在していることから、被保険者規
模を大きくすることによって、国民健康保険財政の効率性は高まる

13. Ⅱ.広域化
では、その
とは、何でしょう
か。

14. Ⅱ.広域化
現在、国民健康保険財政(対象医療費30万以下)については
が管理してい
る。
しかし
市町村の財政事情が厳しくなっているた
め
で管理しよう、という
こと。

15. Ⅱ.広域化
2010年5月12日
国民健康保険法の改正
第四章の二 広域化等支援方針
第六十八条の二 都道府県は、国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険の財政の安定化を推進するための当該都道府県内の市町村に対する支援の方針（以
下「広域化等支援方針」という。）を定めることができる。
２
広域化等支援方針においては、おおむね次に掲げる事項について定めるものとする。
一 国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険の財政の安定化の推進に関する基本的な事項
二 国民健康保険の現況及び将来の見通し
三 前号の現況及び将来の見通しを勘案して、国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険の財政の安定化の推進において都道府県が果たすべき役割
四 国民健康保険事業に係る事務の共同実施、医療に要する費用の適正化、保険料の納付状況の改善その他の国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険の
財政の安定化を図るための具体的な施策
五 前号に掲げる施策の実施のために必要な関係市町村相互間の連絡調整
六 前各号に掲げるもののほか、国民健康保険事業の運営の広域化又は国民健康保険の財政の安定化を推進するため都道府県が必要と認める事項
３ 都道府県は、当該都道府県内の市町村のうち、その医療に要する費用の額について厚生労働省令で定めるところにより被保険者の数及び年齢階層別の分布状況そ
の他の事情を勘案してもなお著しく多額であると認められるものがある場合には、その定める広域化等支援方針において前項第四号に掲げる事項として医療に要する費
用の適正化その他の必要な措置を定めるよう努めるものとする。
４
都道府県は、広域化等支援方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、市町村の意見を聴かなければならない。
５
都道府県は、広域化等支援方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるものとする。
６
市町村は、国民健康保険事業の運営に当たっては、広域化等支援方針を尊重するよう努めるものとする。
７ 都道府県は、広域化等支援方針の作成及び広域化等支援方針に定める施策の実施に関して必要があると認めるときは、国民健康保険団体連合会その他の関係者に
対して必要な協力を求めることができる。
全国42都道府県が「広域化支援方
を策定
（2011年2月14日 針」
「全国高齢者医療・国民健康保険主管課
（部）長及び後期高齢者医療広域連合事務局長会議」）

16. Ⅱ.広域化
全国42都道府県で、広域化方針が策定されている。
しかし
実際広域化を進めている都道府県は
佐賀・滋賀・埼玉・青森・大阪・京都・奈良など、
わずか数県。
今回の研究対象である兵庫県は策定は出しているものの
実際広域化は進んでいない。
福
井
佐
賀
京
都 滋
賀
大
阪 奈
良
青森
埼玉

17. Ⅱ.広域化
佐賀
佐賀
小規模保険者
の財政の安定
化
医療機関の偏
財政運営の広域
財政運営の広
在によってお
化による
域化による、
こる、医療給
事務費の削減
付の差の削減
保険者の年齢
構成や、分布
の差を解消
事務費の削減
国保財政の
安定化
佐賀
佐賀
埼玉

18. Ⅱ.広域化
では、その
に注目してみましょ
う。

19. Ⅱ.広域化
近畿７府県(滋賀、三重、京都、奈良、兵庫、大阪、和歌山)の国
民健康保険のパネルデータを用いて、国民健康保険の事務費につ
いて分析している。
国民健康保険事務の費用関数の被説明変数（目的変数）として
1000人あたりの事務職員数、１人あたりの総務費を採用する。
説明変数として（被説明変数を説明する変数）として被保険者数
（年間平均）、一世帯当たり被保険者数（年間平均）、保険料
（税）の徴収回数、被保険者一人あたりの療養諸費件数、事務職
員の給与、年度ダミーを採用する。

20. Ⅱ.広域化
被保険者数が多いほど規模の経済が働く
国保の事務費に規模の経済が働き、被保険者数が増える
ほど１人当たりの事務費は減少することを示し、小規模
保険者の合併が、事務費を大幅に削減する可能性が高い
ことを示している。
被保険者５０００人以下の市長村は特に効果がみられる
合併したほうが良い！

22. Ⅲ.分析
国民健康保険財政の
広域化
効率的な事務職員数
を計算・適応

23. Ⅲ.分析
被保険者1000人あたりの
事務職員数
• 各市町村ごとの、被保険者数に対する事務職
員数の割合がわかる
広域化した場合の効率的な事務職員数
を計算で求める
• 被保険者数1000人あたりの市町村ごとのデー
タを元に、兵庫県全体の効率的な事務職員数

24. Ⅲ.分析
兼任職員の比重が定まっていないた
め、カウント方法を分けて計算する
0.3
人
図
５
0.5
人
図
４
0.7
人
図
６

25. Ⅲ.分析
兵庫県市町村のうち、被
保険者1000人あたりの事
務職員数が最も少ない値
に合わせて、兵庫県全体
の事務職員数を決定
兵庫県市町村の被保険者
1000人あたりの事務職員
数の平均を基準に、平均
以下はそのまま、平均以
上は平均値まで削減して
計算

26. Ⅲ.分析
•稲美町
0.141
•南あわじ市
0.173
•南あわじ市
0.173

27. Ⅲ.分析
•0.435
•0.447
•0.459

28. Ⅲ.分析
兵庫県の平均給与
376692
西宮の広域化前の人件費
広域化前
(円)
ケース1
広域化後
0.3人
0.5人
241,346,564 248,051,682
254,756,800
96,088,298
96,088,298
差額
ケース2
163,031,824 151,963,384
158,668,501
広域化後
218,245,174 206,986,980
214,585,988
差額
78,314,740
0.7人
23,101,390
41,064,702
40,170,812

30. Ⅳ.政策提言
ケース２の
数値まで削減
平均値基準なので
実現可能
ケース１の
数値を目指す
可能な限り
人件費の削減
最小値基準なので 業務内容との兼ね
人件費的には最も 合いを考慮して、
理想的
事務職員数の最適
化

31. Ⅳ.政策提言
都道府県
単位化
• 兵庫県の例と同様に各
都道府県で実現
国単位化
• さらに国単位化するこ
とで規模の経済がはた
らき、より効率化を図
る

32. Ⅳ.政策提言

33. Ⅳ.政策提言
備考） 厚生労働省資料より

34. Ⅳ.政策提言
備考） 田中・四方・大津（2011）より

35. Ⅳ.政策提言

36. Ⅳ.政策提言
低所得者や社会的弱者が
多数を占める

37. Ⅳ.政策提言

38. Ⅳ.政策提言
被用者保険の加入者も退職後
国民健康保険に加入

39. Ⅳ.政策提言

40. Ⅳ.政策提言
より
の方が

41. Ⅳ.政策提言

42. Ⅳ.政策提言
未納・滞納問題解決の為の対策
文書
滞納資格適性化
費用
は・・？
訪問
民間企業の
コールセンター

43. Ⅳ.政策提言

45. 参考文献
大森正博（2009）「日本の医療制度改革の方向性について」『租税研究』ｐｐ39-55
慶応義塾大学 河合啓希研究会 医療分科会(2010)USFJ政策フォーラム2010発表論文「持続可能な日本の医療制度改革」『医療貯
蓄制度』第１章～第５章
岸田研作(2002)「国民健康保険の事務費と規模の経済-近畿７府県の国民健康保険のパネルデータを用いた分析」『日本経済研究』
No.45,pp.246-261。
窪田道夫（2006）「労働力の国際移動に対する医療政策 アジア経済の一体化と外国人労働者の社会保障」『アジア研究』
52(3), 70-83
田中聡一郎・四方理人・大津唯(2011)「国民健康保険料の滞納と納付意思についての分析」『ソシオネットワーク戦略ディスカッ
ションペーパーシリーズ』第６号。
知野哲郎(2009)「日本の医療提供システムと医療政策」『東京芸大大学紀要』NO.60 pp169-182
陳 金霞（2004） 医療制度の国際比較―米先進諸国の医療保険制度千葉大学社会文化科学研究 ９, pp93-107
長坂健二郎（2007）「諸外国の医療制度」『大阪経済大論集』第58巻第５号,ｐｐ135-162
船橋 恒裕（2007）「医療費の地域格差についてー国民健康保険における医療費支出の分析」 『日本の将来推計人口』
湯田道生(2010)「国民健康保険制度が抱える諸問題が国保財政に及ぼす影響：予備的分析」『中京大学経済学論叢』第21号。

46. 参考文献
健康保険の自己負担割合
（http://tt110.net/11kenkouhoken/H-k-futan.htm）
厚生労働省
（http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/iryou_doukou_b.html）
国民健康保険 よくわかるガイド！
（http://nlkhgtbj.com/2011/05/post_1.php）
埼玉県市町村国民健康保険広域化等支援方針
（http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/423401.pdf#search=‘）
市町国民健康保険の広域化等支援方針
(http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/kf-iryouhoken/national_health_insurance_widening.html)

47. 御清聴有難うございました。

48. 先行研究：田中・四方・大津(2011
)
• 田中総一郎・四方理人・大津唯(2011)子公民健康保険料
の滞納と納付医師についての分析 ソシオネットワーク戦
略ディスカッションペーパーシリーズ第6号2011年2月
• 手法…実際の国民健康保険料の滞納に関する実証分析、
さらに仮想質問により医療保険が任意加入であった場合
の保険料納付医師に関する分析
• 結果…失業者に対する保険料減免の利用の工場や公的医
療保険制度に関する知識・理解を高めていくことが、保
険料滞納問題への有効な対応策として考えられる
• 課題…公的医療保険に関する知識・理解をどのようにし
て高めていけるようにするか具体的な案を出す必要があ
る

49. 保険料滞納と納付意思
• 流動性制約仮説
– 所得の影響
– 貯蓄の影響
• 失業と滞納確率
• 主観的健康状態による逆選択仮説の可能
性
• 公的医療保険制度に関する知識の有無
失業者に対する保険料減免の利用の向
上や公的医療保険制度に関する知識・
理解の向上

50. 知識・理解を高めるために
• 地域活動（広報）
• 学校教育
• ＴＶのＣＭでの呼びかけ

51. • 資格証明書の統一
• 生活困窮者に対する保険料設定