2014 年5 月6～ 10 日にドイツ（ ウイスバーデン） で開催された第11 回SOSORT 年次学術 総会の参加報告 ―我が国の脊柱側弯症の保存療法について考える― 麹町白石接骨院石原知以子・白石洋介

1. 2014 年 5 月 6～10 日に ドイ ツ（ウ イス バーデ ン） で開催 された 第 11 回 SOSORT 年次 学術
総会 の参 加報告
―我が 国の 脊柱側 弯症 の保存 療法 につい て考え る ―
麹町白石接骨院 石原知以子・白石洋介
Report of 11th SOSORT Annual Meeting, 8～10 May 2014, Wiesbaden in Germany
-Thinks about the conservative-therapy of the scoliosis in our country-
Chiiko Ishihara, Yosuke Shiraishi
Kojimachi Dr. Shiraishi’s Osteopath
1．はじめに
我が国の脊柱側弯症（特に成長期特発性の）
に対する治療は日本整形外科学会による診療
ガイドラインに依って進められている。脊柱
のカーブ型の分類やカーブの角度（Cobb 角）
については本学会誌である保健医療研究（第
５号 2013 年 3 月）に紹介している。成長期の
側弯は、学校検診によって発見されることが
多い。しかし、せっかく早期発見された経度
の側弯（25°未満）でも、25°（年齢・骨年
齢によって）に達するまでは要経過観察とさ
れ、積極的な角度進行予防策は取られない。
25°を超えると装具療法が処方される。その
後、外科的な対応が必要とされる 45°を超え
るまで装具以外の治療は行われない。我々は
今回、ドイツのウイスバーデンで開かれた 第
11 回 SOSORT (The International Scientific
Society on Scoliosis Orthopaedic and
Rehabilitation Treatment) 脊柱側弯症の保
存療法に関する国際学会に参加した。4 回目
の参加となる今回は、装具療法、運動療法、
温熱療法 及び、脊柱側弯症に特化した姿勢
指導（ASC; Active self correction by ISICO;
Istituto Scientifico Italiano COlonna
Vertebrale, or Italian Spine Scientific
Institute. scince 2002) により、一旦悪化
した角度が改善した症例をポスター発表した
（図）。8 年間経過を追ってきた症例を報告で
きたことは意義深いものと考えている。今回
の学会に参加して、脊柱側弯に対して特化さ
れた装具、運動療法、姿勢指導が重要である
ことを再認識した。ヨーロッパのこのような
学会活動を報告することで我が国の脊柱側弯
症に対する新たな取り組みへの導入につなが
れば幸いである。
2．プログラム
開催中（2014 年 5 月 6 日 火曜日～10 日 土
曜日）のプログラムは以下の通りだった。学
会 に 先 立 ち 6 日 と 7 日 に 、 Educational
Courses が設けられた。その後、8 日から 10
日まで Scientific Programme が遂行された。
SOSORT 2014 – WIESBADEN – GERMANY
Educational Courses
Tuesday – May 06th 2014
08:30 – 12:30 Educational Course: Basic
knowledge
13:30 – 17:15 Educational Course: Science
of bracing and exercise Schools
Wednesday – May 07th 2014
08:30 – 12:30 SOSORT Workshop ”
Exercises Schools”
08:30 – 12:30 SOSORT Workshop “Bracing”
08:30 – 12:30 SOSORT Workshop “ Patient
Management by Physicians”
13:30 – 18:30 Visit: Katharina Schroth
Clinic and Museum in Bad Sobernheim
Scientific Programme

2. Thursday 8th May 2014
08:10 – 09:04 SCIENTIFIC SESSION 1 –
Clinical Evaluation
09:05 – 09:59 SCIENTIFIC SESSION 2 –
Imaging and Surface Topography
10:25 – 11:25 INVITED LECTURES
11:25 – 12:15 SCIENTIFIC SESSION 3 –
Basic Science
13:30 – 14:30 INTERACTIVE SESSION 1:
First Brace Contest
14:30 – 15:30 INTERACTIVE SESSION 2:
First Exercise Contest
15:50 – 17:05 SOSORT – SRS Consensus
Friday 9th May 2014
08:05 – 08:20 ORAL POSTER SESSION 1
08:20 – 09:15 SCIENTIFIC SESSION 4 –
Bracing I
09:15 – 10:19 AWARD SESSION
10:20 – 11:15 SCIENTIFIC SESSION 5 –
Bracing II
11:15 – 11:55 PRESIDENTIAL LECTURES
13:00 – 14:00 CONTROVERSIAL ISSUES: Early
onset and congenital scoliosis
14:00 – 15:19 SCIENTIFIC SESSION 6 –
Bracing III and Sagittal Balance
15:20 – 16:14 SCIENTIFIC SESSION 7 –
Screening and Etiopathogenesis
Saturday 10th May 2014
08:05 – 08:41 ORAL POSTER SESSION 2
08:45 – 10:30 SCIENTIFIC SESSION 8 –
Physiotherapy
10:30 – 11:24 SCIENTIFIC SESSION 9 –
Quality of Life I
11:25 – 12:19 SCIENTIFIC SESSION 10 –
Quality of Life II
3. 脊柱側弯症に対する研究の動き
3.1 今回注目した報告
脊柱側弯症に対する装具療法や運動療法の
効果に対する有効性を示す報告が多くなされ
（?,?,?,?）、我が国における取り組み方との
大きな隔たりを感じた。組織学的な報告では、
脊柱側弯症の筋組織像は健常者の筋組織とは
異なっているが炎症像は見られず、また、凸
側より凹側の筋障害が大きいことが形態学的
に示された。
HE staining by Marcelo Wajchenberg.
SRS （Scoliosis Research Society： 脊
柱側弯症に対して主に手術療法を研究する学
会）の Dr. Timothy Hresko, USA からは BrAIST
調 査 (Dr. L. Dolan, Dr. S. Weinstein,
Univ.of Iowa) の結果が報告され、装具療法
の効果について肯定的な見解が示されたこと
は注目すべきことだった。
3.2 装具療法・運動療法コンテスト
今回、2 日目に装具療法と運動療法のコン
テストが催され各国の装具や運動療法が紹介
された。以下にいくつかの例を示す。
Cheneau Brace
Boston Brace

3. Lyon Brace
PASB
SEAS (Scientific Exercise Approach to
Scoliosis and Scoliosis) 法
Schroth 法
FITS (Functional Individual Therapy of
Scoliosis) 法
Side Shift 法
3.3 Katharina Schroth Clinic の訪問
２日目の午後から、Schroth（シュロス）法
の 創 始 者 で あ る Katharina 女 史 の ク リ ニ ッ
ク ” Katharina-Schroth-Klinik ” (Bad
Sobernheim, Germany）の見学に参加した。宿
舎、体育館、プールが完備され、2 週間の合
宿で運動療法を習得させており、世界中から
患者が集まっている。また、最初のクリニッ
クがあった場所には、90 年前から 3D の運動
療法に取り組んだ女史と患者の記録が展示さ
れ、ミュージアムとして公開されている。彼
女の行動がなければ脊柱側弯症に対する運動
療法の研究は始まらなかったのかもしれない。
Katharina-Schroth-Klinik

4. Christa Lehnert Schroth in
Bad Sobernheim Local History Museum
3.4 ポスター発表
The SEAS approach reduced Cobb angle, and
the thera-band exercise improved scapula
winging in a double major curve type of
adolescent idiopathic scoliosis (AIS). –
a case report - と題してポスター発表（症
例報告）した。以下に抄録文章のみを示す。
4, まとめ
装具療法だけでなく、運動療法の成果に関
するエビデンスも多く報告されていた。我が
国においても、早期に発見された軽度側弯症
に対しては経過観察 “wait and see” では
なく、積極的に運動療法を指導し、進行を抑
える努力をすべき “try and see” と考える。
中度以上の装具治療が必要な例にも、装具と
併用して運動療法を行い、進行のリスクを軽
減し、さらに角度と外観の改善を目指すべき
と考える。
装具についても、cad/cam などを導入して、
より矯正力のある，且つ子供たちが着用しや
すい装具の開発がされることを願う。
保存療法の活用で手術に至るケースを減ら
すことは、子供たちの将来のみならず、アメ
リカでも報告されているように医療費の削減
にも役立つものである。
参考文献
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医になるための診療スタンダード 1.脊椎・脊髄』羊
土社
[2] 古岡 邦人 (2009) 東京都医師会雑 誌, 62(4),
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[3] 脊柱側彎症学会 編 (2003)『改訂版 知っておき
たい脊柱側弯症』インテルナ出版 株式会社.
[4] 白石洋介・石原知以子（2013）『思春期特発性脊
柱側彎症(AIS)と運動療法 –ヨーロッパ諸国と我が
国の違い』保健医療研究．No.5, pp.11-23.
[5] Stefano Negrini, Fabio Zaina, Michele Romano,
Alessandra Negrini, and Silvana Parzini (2008)
Specific exercise reduce brace prescription in
adolescent idiopathic scoliosis: A prospective
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analysis. J Rehabil Med. ;40(6):451-455. doi:
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[6] Stefano Negrini, Angelo G Aulisa, Lorenzo
Aulis, Alin B, Circo, Jean Claude de Mauroy, Jacek
Durmala, Theodoros B, Grivas, Patrick Knott,
Tomasz Kotwicki, Toru Maruyama, Silvia Minozzi,
Joseph P, O'Brien, Dimitris Papadopoulos, Manuel
Rigo, Charles H, Rivard, Michele Romano, James H,
Wynne, Monica Villagrasa, Hans-Rudolf Weiss and
Fabio Zaina (2011) SOSORT guidelines:
Orthopaedic and Rehabilitation treatment of
idiopathic scoliosis during growth. Scoliosis,
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[7] Yohei Takahashi, Ikuyo Kou, Atsushi
Takahashi, Todd A Johnson, Katsuki Kono,
Noriaki Kawakami, Koki Uno, Manabu Ito, Shohei
Minami, Haruhisa Yanagida, Hiroshi Taneichi,
Taichi Tsuji, Teppei Suzuki, Hideki Sudo,
Toshiaki Kotani, Kota Watanabe, Kazuhiro Chiba,
Naoya Hosono, Naoyuki Kamatani, Tatsuhiko
Tsunoda, Yoshiaki Toyama, Michiaki Kubo, Morio
Matsumoto & Shiro Ikegawa (2011) A genomewide
association study identifies common variants
near LBX1 associated with adolescent idiopathic
scoliosis. Nat Genet 43: 1237-1240.