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1.
2015/10/20 並木宜史 『トルコのもう一つの顔』小島剛一著 著者とトルコの関わり 学生時代に自転車でトルコを旅してる時にトルコ人のホスピタリティに触れトルコが好きに なる。それ以後言語学研究のために年に数ヶ月トルコに滞在し各地を周るようになった。 トルコの歴史教育は偏向教育 ”アルメニアという国が歴史上「一度も存在しなかった」とトルコの学校では教えている。 また、「ジンギス汗はトルコ人である」ことになっている。”(p74) これはコンビニにあるようなトンデモ本の類に書いている内容ではなく、歴史教科書に書い てあって多くの子供がその内容を学んでいる。当然このような状況では、トルコで習った歴 史は外国で通用しないという事態が発生する。ある意味トルコ政府は外国に出て恥ずかしい 人間を教育することを推奨しているのだ。 他民族との関わり ”アフガニスタンからの「トルコ系」難民は喜んで受け入れ、耕地を与えるなどしたトルコ だが、クルド人難民は「招かれざる客」であり、イラン政府と交渉して一部をイランに受け 入れさせた”(p118) トルコ政府は他民族に対して極めて差別的な態度で臨むが、トルコ人に近いと言われるチェ ルケス人や、外国のテュルク系民族に関しては寛容な態度をとる。口では誰もが平等なトル コ人とは言っているが、実際にはトルコ系を優遇しているだけということがわかる。 ムスリムとしてのアイデンティティ ”「あなたは大学も出ているし、世界中を旅行していろいろなものを見て来たのに、どうし ていまだにイスラームに改宗していないのですか」”(p54) 道中の一幕であるが、これが世俗主義を掲げている国の住民の発言と考えると、ちょっと衝 撃的である。いわゆるイスラム原理主義者と同レベルの偏見に凝り固まった者は想像以上に 多いのだろう。 ”トルコ共和国建国の父ムスタファ・ケマルは確かに近代化を目指して宗教色のない教育を 始め、公立の学校で女生徒がベールをかぶることを禁じたりしたのだが、当初から回教の聖 職者は公務員であった。”(p83) トルコは世俗主義というのを建国の柱にしていることもあって、ムスリム家ではあるもの の、イスラーム的な文脈で語られることは少ない。実際には、ムスリムとして他の諸国のム スリムとの連帯感というか、ムスリムとそれ以外といったようなウチとソトの区別としてア イデンティティが機能していることも伺える。 【底本】 『トルコのもう一つの顔』小島剛一著 中央公論新社 1991/2/25
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