4輪車型成果主義の提案
- 4. 1.はじめに -1.問題状況(1)
24.3
27.9
32
33.6
32.5 32
34.3
36.5
35.4 34.7
35.8 36.6 35.9 34.2
31.1
30
28.8
31
32.4 32.3
0
5
10
15
20
25
30
35
40
平成5年
6年
7年
8年
9年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
17年
18年
19年
20年
21年
22年
23年
24年
就職氷河期(1993年~2005年)
厚生労働省 H26新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況より筆者作成
過去20年間の早期離職率推移(大卒)
▽就職氷河期以降も早期離職率が約3割
※新卒三年以内の離職を早期離職とする。
- 13. 3.アプローチ
13
努力 業績 外在的報酬 満足
期待 誘意性
内的在報酬
▽期待理論(ポーター=ローラー・モデル)
手段性
Point1
• いくら努力したと
しても業績に結び
つくとは限らない。
Point2
• いくら業績を上げ
ても報酬に結びつ
くとは限らない。
Point3
• その報酬が個人に
とって魅力的だと
は限らない。
- 29. 5.事例 -2.ニチレイ型成果主義(5)
29
Point1 Point2 Point3
問題 いくら努力したと
しても業績に結び
つくとは限らない。
いくら業績を上げ
ても報酬に結びつ
くとは限らない。
その報酬が個人の
満足につながると
は限らない。
4輪車型
成果主義
1.人材開発制度を
取り入れる。
2.成果に基づく
賃金制度
3.多面評価
4.本人の希望を反
映した人事制度
ニチレイ型
成果主義
1.新人材開発制度 2.新賃金制度 3. 360度評価
4. 新異動配置制度
Editor's Notes
- まずはじめに早期離職についての問題状況の説明をします。
- 新卒者の早期離職の問題が社会問題として認識されてから久しい。
就職氷河期の時代はミスマッチが早期離職の原因とされてきた。しかし就職氷河期を過ぎても早期離職は3割越えである。
またこれを事業規模別にみると・・・・(次のスライド)
- 事業規模別に離職率を見てみると、従業員規模が小さい方が離職率は高い。
これは、中小企業は大企業と違い採用の際にふるいにかけることができないため、主にミスマッチが原因の離職だといえる。
一方、大企業は中小企業よりも採用の際にふるい落とし選抜ができるにも関わらず、20~30%後半の離職率がある。
大企業でも早期離職の問題は存在するため、今回は大企業に着目する。
(メモ)
大企業の定義
中小企業基本法によると、従業員数が300人以下であると中小企業に分類されるため、従業員数300人以上を大企業とする。
参考http://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html
またここでいう大企業とは、中小企業基本法で定義された「中小企業」に該当しない企業と考え、300人以上の規模の事業所のこととする。
参照:http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/24-16.pdf
大企業の定義:
中小企業基本法[1]第二条で定義された「中小企業」に該当しない企業を「大企業」とみなすのが一般的である。その場合、大企業の定義は以下のようになる。
1資本金の額又は出資の総額が3億円を越え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が300人を越える会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く)に属する事業を主たる事業として営むもの
2資本金の額又は出資の総額が1億円を越え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が100人を越える会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
3資本金の額又は出資の総額が5000万円を越え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が100人を越える会社及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
4資本金の額又は出資の総額が5000万円を越え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が50人を越える会社及び個人であつて、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの
尚、その他の基準は以下のとおりである。
1中小企業基本法第2条の定義 - 資本金の額が3億円以下、又は 従業員数が300人以下の会社(製造業等の場合)を中小企業としている。
2租税特別措置法第42条の定義 - 資本金の額が1億円以下の会社を中小企業者としている。
- 次に、早期離職が企業にとってどのような弊害をもたらすのかを説明する
・採用にかかるコスト
・社員育成にかかるコスト
→企業側にとって多大なコスト負担となる。
(メモ)
▽採用にかかるコスト
東京商工会議所の新卒者採用向調査によると、一人当たりの採用にかかる費用が20 万円以上という回答がおよそ3分の1の企業にあたります。また、早期離職を補う形で中途採用を増やしたりすることで、二次的な費用も発生します。更に、採用時の研修費用や給与などを合算すると莫大な損害額になっていることも容易に想像することができます。
☆もう少し詳しく規模別。産業別にどのくらいのコストがかかるか分かるデータがほしい。(大企業に絞った時どのくらいのコストになるか知りたい。)
▽社員育成にかかるコスト
産労総合研究所「教育研修費用の実態調査」より筆者作成 一人あたりの教育研修費用 http://www.e-sanro.net/jinji/j_research/j_research05/pr_1510/
- では、早期離職の理由はなんなのか?
→早期離職の理由の位置は給与に不満
→最初に転職を考えた際に悩んだ内容は仕事の内容
→「賃金」や「仕事内容」は若者にとって重要。
- また世代別の仕事に関する考え方をみると
→たとえ収入が少なくなっても自分のやりたい仕事をしたい
→20代が高くなっている。
→仕事内容を重視していることが分かる。
①「仕事に対する意味欲求」
次世代は、社会的に意義のある、あるいは貢献しがいのある仕事がしたいという欲求が強い。事業のミッションや仕事の意味づけが重みを持っている。
②「成長・上昇欲求」
次世代は多少辛いことに我慢してでも、新しいノウハウやスキルを身につけたいと考えているし、自分のキャリアを高めていきたいと考えている。決して前世代に比べてやる気がなくなっているわけではない。ただ、自分の成長につながらない「やらされ仕事」に対する拒否反応が、以前よChukyo Business Review Vol. 10(2014. 3) 111Organizational Change with “Employee-centered Operations” Through the Implementation of the “VOICE Model”り高まったといえる。それは、成長・上昇意欲が高いことの反面的現れである。
③「創造性発揮欲求」
次世代は、仕事を通じて自分らしい創意工夫や創造性をもっと発揮したいと考えている。できれば、自分だけしかできないといわれる仕事がしたいと考えている。
④「承認欲求」
誰からも認められたい、多くの人から認められたいという欲求であり、次世代ではこの傾向が強まっている。自分の実績として誇れる仕事がしたいとか、お客さまや社会から感謝されたいという気持ちは、この承認欲求を中心に形成されている。つまり、自分がどう評価されているのかという意識が高いことを示しており、的確なフィードバックを行うことが重要になってきている。
⑤「自己実現欲求」
多少収入が少なくなっても自分のやりたい仕事がしたいとか、会社や仕事のことと家庭や生活のことをバランスさせて社会に貢献したい、という考え方がこの欲求を示している。
- 次に早期離職についての先行研究を整理する。
- ・大竹さんと猪木さんの研究の説明
・伊藤さんの研究の説明
このように、若年者の早期離職の要因分析をしている研究は豊富
しかし、早期離職の解決策の提案をしている先行研究は少なかった。
(そこで今回は・・・次のスライド)
(1)若年者の早期離職について
若年者の早期離職の要因を探る研究蓄積は豊富だ。しかし多くは企業側要因に着目するのではな
く,個人や就職時の景気要因に関心があるものとなっている。
黒澤・玄田(2001)では90年代後半以後,若年者の早期離職率が高まっている状況を受け,離
職率の高まりが,近年の若者の意識の変化によるものか,その他の要因によるものかが分析されて
いる。ここでは若年者の職業観は変化していない中で,卒業時の景気が悪かったことが若年正社員
の早期離職に繋がっていると指摘している。また,大竹・猪木(1997)は学卒後の勤続期間の分
析により,バブル期に比べて不況期に入社した者の勤続期間が有意に短くなること,太田ほか
(2007)や近藤(2008)は不況期に学校を卒業した者ほどその後の就業率が長期的に低いままで
あることを指摘している。これら一連の先行研究によって,学卒時に不況だったことが早期離職を
増やしたと指摘されるようになった。
また,一時期の景気要因だけでなく長期的な経済環境の変化から生じた雇用システムの変化によ
って,離職が増えていることを示唆する研究も見られるようになってきた。濱秋ほか(2011)は
90年代後半以降に終身雇用率の低下や,年功賃金のフラット化が生じており,日本的雇用慣行が
維持されなくなってきていることを指摘し,このような賃金上昇率の低下によって,若年労働者の
転職が増えている可能性を指摘している。
⇒しかし、早期離職の解決策を提案している論文は少なかった。
⇒そこで、早期離職の解決策を提案したいと考えた。その解決策の提案とは成果主義を取り入れることである。理由は・・・(次のスライドから:若者のモチベーション)
- ・本稿の目的を早期離職を減らす方法を提案する。
・モチベーション理論の観点から
(なぜモチベーション理論の観点から早期離職を減らす方法を説明できるのかを述べる。※赤い四角の内容)
- モチベーション論の中でもポーター=ローラーの期待理論を用いて説明する。
(メモ)
このモデルは実証研究も多く、ほかの理論にくらべると、最も汎用の度合いが高いとされているからである。
※ブルーム・モデルについては欠勤・離職と職務満足度の関係性を説明するには期待理論は有効であるとしている。
- 一般に、個人の努力が一定の業績に結びつく可能性が高く、第二にそうした業績が何らかの報酬をもたらす可能性が高く、その報酬が個人にとって魅力的であるであれば、個人の高いモチベーションが生じるとされる。
☆ここでいう報酬というのには外在的報酬と内在的報酬がある。
・外在的報酬:賃金など
・内在的報酬:仕事そのものからくる「やりがい」など
ただし、ここで考慮される点がいくつかある。
(期待理論で考慮する点)
①本人の能力を成果に結びつける配慮をする
②本人の成果が本人が納得するように評価され、その評価に基づき報酬を提供しなければならない。
③その報酬が本人にとって魅力的でなければならない。
- ここで、この期待理論をつかって、○○成果主義を提案したいと思います。
- ○○成果主義とは?
3つの制度を含む。
1、人材開発制度
2、成果に基づく評価制度
成果に基づく賃金制度←一般的に考えられる成果主義
多面評価
3、本人の希望を反映した人事制度
- まずはじめに個人にとって成果主義とはなにか?を考える。
→組織からの報酬が個人の満足につながるには、その報酬が若者にとって魅力的でなければならない。
→若者にとって魅力的な報酬とは??
- 「1.はじめに」で説明したように若者が「賃金や仕事内容」を重要視することがわかるため、外在t的報酬を賃金、内在的報酬を仕事内容とする。
- ※赤字が提案
Point1
努力が業績に結びつくという期待があればモチベーションが上がる。とされているが、いくら努力したとしても業績に結びつくとは限らない。
この問題の解決策として、人材開発制度を採り入れ、社員の能力開発をすることを提案する。
この制度で業績(:成果)が出せるように社員の能力開発をすることで、努力が業績に結びつくと期待できる体制を整える。
Point2
業績が報酬に結びつくようになっていれば、個人のモチベーションはあがる。とされているが、業績が期待に結びつくとは限らない。
そのため、成果に基づく評価制度が必要になってくる。具体的には① 成果に基づく賃金制度②多面評価制度である。
Point3
- 成果主義導入の成功例である、ニチレイについてお話します。
ニチレイは、冷凍食品を主に扱っている、従業員1万人超えの大企業です。
①冷凍食品・加工食品の製造・販売
②食品素材(水産物・畜産物)の輸入・加工・販売
③倉庫・低温物流・不動産
- ニチレイの1971年から45年間の主要財務指標の推移をみてみると、バブル崩壊後の不況の煽りを受けて、1998年に初の単年度赤字を出しています。
ニチレイは、ここからの業績回復を図るため、2000年に成果主義を導入しました。
導入後の2000年以降は、2004年のBSE・鳥インフルエンザを除けば、徐々に業績回復をしていることがわかります。
この成功したニチレイ独自の成果主義は、一般的に「ニチレイ型成果主義」と呼ばれています。
ROE=自己資本比率
1988年 オランダでの冷蔵倉庫会社を買収
2003年の12月 牛肉のBSEの感染が見つかり、
- 先程説明した期待理論に、ニチレイ型成果主義を当てはめてみると、
表の通りになります。
まず、1の新人材開発体系について説明します。
- “ユニバーシティ”とは、「キャ リア開発研修」を代表とする各種研修や通 信教育などを統合した教育体系を指し、当 社グループでは「わかりやすく、選びやすく、 役に立つ」というコンセプトのもと、さまざま な教育プログラムを用意しています。 2005年度は、「ニチレイ・ユニバーシ ティ」の考え方に基づき、各事業会社が主 体となり各社に適した能力開発体系の構 築を検討しました。
- 次に2、について説明します。
- 職務給と成果給のみの給与体系に移行することで、若手社員を中心に仕事に対する意欲を高めるのが狙い。管理職に限定せず、新入社員まで含めて年齢給を廃止する例は珍しい
- 次に3、4、について。
-
*2000年前後の3年以内早期離職率は、5%を超えていたが、導入後の5年後には2%に低下した。
- 若者の早期離職の要因と若者の仕事観
↓
外的報酬は賃金、内的報酬は自己実現(具体的には自分のやりたい仕事をする)である。
期待理論から、一般に人は努力が業績に結びつき、業績が報酬に結びつき、その報酬が満足のゆくものであったら、動機づけとなるためにその職場に定着すると考えられ、早期離職が減らせる。
これらの報酬を当人の納得いくように提供するためには、3つ点に注意しなければならない。
1つ 本人の能力を成果に結びつける配慮をする
2つ 本人の成果が本人が納得するように評価され、その評価に基
づき報酬を提供しなければならない。
3つ その報酬が本人にとって魅力的でなければならない。
・以上の点に注意したとき以下の制度を取り入れるべきである。
1 人材開発制度
2 成果に基づく評価制度
成果に基づく賃金制度
多面評価3 本人の希望を反映した人事制度
・これらの制度を包括して○○成果主義と呼ぶことにする。
- 今回は、若者にとって魅力的な報酬を賃金と仕事内容(自己実現)と設定したが、早期離職の理由を見てみると、人間関係が原因であることも無視できない。精神的な面からも、早期離職を解決する方法を探すことが今後の課題である。
→メンター制度
- 食品大手のニチレイは入社3年目までを「ファーストキャリア」とする教育制度を導入しています。全国の各事業所に一人づつ配属する新入社員に対し、約1年間同じ職場の社員をメンターと呼ばれる教育係りにしました。メンターは仕事の相談に応じたり、生活面での悩みを聞いたり、やる気を引き出すのが役割です。 新入社員は入社翌年の1月に2年目に向けてメンターと面談もします。「今の仕事内容は自分に合わない」という社員に対し素早く「配置転換」で対処したケースもありました。ニチレイは「社会人の入り口で戸惑う新入社員に必要な支援やアドバイスをする制度の確立が欠かせない」と考えています。