福岡正信さんは農学者で、自然農法の提唱者です。農学は専門ではありませんが、人間観や仕事間について４０分ほど話しました。 ❏ 遺伝子 ❏ 自由意志 ❏ 真・善・美 ❏ 無為 ❏ 事に使える 〇「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28) 〇「ホモ・デウス : テクノロジーとサピエンスの未来」 ユヴァル・ノア・ハラリ(著), 柴田裕之(翻訳) 河出書房新社 (2018/9/6) 〇「反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (監修), 千葉 敏生 (翻訳) ダイヤモンド社; 第1版 (2017/6/21)

1. 解説#76 福岡正信
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安藤類央

2. 福岡正信
• 1913年2月2日 - 2008年8月16日
• 愛媛県出身の農学者。
• 自然農法を提唱。
• 著書 「わら一本の革命」 「福岡正信の〈自然〉を生きる」など
❐ 人間観
❐ 仕事観

3. 人間観

4. 遺伝子
• 無生物も植物も人間もみな同じ遺伝子なんです。
• それがなぜ動物になったり、植物になったり、発生時期が違ってきたりす
るのかというと、最初の発射台から発射されたときに、神様のコンピュー
タのなかにあらゆる歴史というか、微生物の構造からすべてがインプット
されていたからです。コンピュータの中に打ち込まれていたとも言える。
• そういうふうな解釈をしますと、人間なんかは最後の、地球に縁がなく
なって自然が滅びた時に人間も滅びる、その最後の幕引き役として生まれ
てきた動物ではないか。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)

5. 自由意志
• 私達が意味の究極の源泉であり、したがって、人間の自由意志こそが最高の権威である
と、人間至上主義は何世紀もかけて私たちに納得させてきた。
• ところが２０世紀に科学者がサピエンスのブラックボックスを開けれると、魂も自由意
志も「自己」も見つからず、遺伝子とホルモンとニューロンがあるばかりで、それらは
その他の現実を支配するのを同じ物理と化学の法則に従っていた。
• 私達は、そのような親身のカウンセリングサービスと引き換えに、人間は分割不能の個
人である、個々の人間には自由意志があって、何が善で、何が美しく、何が人生の意味
かをめいめいが判断するという考え方を、どうしても捨てざるを得なくなる。
「ホモ・デウス : テクノロジーとサピエンスの未来」
ユヴァル・ノア・ハラリ(著), 柴田裕之(翻訳) 河出書房新社 (2018/9/6)

6. 真・善・美
• 多種多様な価値観があっていいんだと言う先生たちもいますが、僕はやは
り本当の価値観は、真・善・美は一つしかありませんよと言っています。
• いくつもあってみんな違っていいじゃないか、人間の生き方にもいろいろ
あっていいじゃないか、価値観もいろいろあっていいじゃないか、そんな
ことを言っている時期はもう過ぎているんではないでしょうか。
• そんなことを言っていたら、十年後、二十年後には人間の滅亡も考えられ
ないことはないというところまで追い込まれています。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)

7. 自由意志
• 特定の願望が自分の中に湧き上がってくるのを感じるのは、それが脳内の
生化学的なプロセスによって生み出された感情だからだ。そのプロセスは
決定論的かもしれないし、ランダムかもしれないが、自由ではない。
• たとえて言えば、脳内の東京駅で、人は脳の決定論的なプロセスによって
特定の試行の路線を走る列車に乗り込まされるのかもしれないし、ランダ
ムに路線を選んで列車に飛び乗っているだけなのかもしれない。だが私た
ちは、自分に共産党に投票させる思考の路線に乗ることを「自由に」選ん
でいない。
「ホモ・デウス : テクノロジーとサピエンスの未来」
ユヴァル・ノア・ハラリ(著), 柴田裕之(翻訳) 河出書房新社 (2018/9/6)

8. 仕事観

9. 無為
• 人間はなにもしなくてよい。食っちゃ寝、食っちゃ寝して生きていればよ
い。＜生きているだけで楽しい＞という結論が二十五歳のときにでた。
• 自分の場合は理屈でいえば、＜まず何もしなくてよい＞という結論がでて
いて、＜ああしなくてもよかったんではないか、こうしなくてもよかった
んではないか＞と、しないように工夫してきました。
• 結局、人間が何もしなくていいようにしておいて、何もしないようになっ
たわけです。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)

10. 引き算の知恵
• 第６部「否定の道」では、足し算（作為）よりも引き算（不作為）の方が
賢明で、効果的であることを説明する。
• 引き算こそが寿命を延ばす
• 支出を減らして寿命を延ばすというのは、ひとつの引き算戦略だ。説明し
てきたように、干渉バイアス、「否定の道」、何かをしたいという欲求が、
医原病を引き起こし、今まで話してきたありとあらゆる問題の現況になる。
• だが、ここに、「否定の道」を取り入れてみよう。何かを取り除くのは、
とても強力な（そして経験的により厳密な）行動になりうるのだ。
「反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」ナシーム・ニコラス・タレブ
(著), 望月 衛 (監修), 千葉 敏生 (翻訳) ダイヤモンド社; 第1版 (2017/6/21)

11. きっかけと原因を混同しない
• いまの線虫説では日本のマツは救えないのではないか。犯人で
言えば線虫やカミキリムシはチンピラにしかすぎない。最後の
死骸掃除人です。それよりも大気汚染のようなことで土壌が賛
成になったことがスタートになっているはずです。
• 直接的にはマツタケ菌が病害によってやられているのが第一原
因だけれど、第二は幹に外来の病原菌が侵入して衰弱したとい
う見方をしています。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)

12. きっかけと原因を混同しない
❏脆い橋が崩壊した原因を、最後に横切ったトラックのせいにできるだろうか?
❏さらに、どのトラックで橋が壊れるかを前もって予測することは可能だろうか?
❏人々はサブプライムローン市場の崩壊を予測すべきだったと考えたサブプライムローン市場
の崩壊は危機の症状であって、根本原因ではないからだ。
❏２００１年、オバマ大統領はその年の春に起こったエジプト革命を予測できなかった政府の
諜報活動を非難した。おなじように、エジプトの暴動を予測できなかったことを諜報ミスと非
難するのは、複雑系に対する誤解と政策の誤りの両方を示している。そして、この一見で超大
国の七面鳥ぶりが明らかになった。
❏重要なのは果ての国のロングテールのテールの部分に存在する抑圧されたリスクであり、崩
壊を引き起こした最後の砂粒を予見できなかったことではない。
「反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (監修),
千葉 敏生 (翻訳) ダイヤモンド社; 第1版 (2017/6/21)

13. タイミングが重要
• わずかなことで、タイミングを失することがあるんです。これだけ簡単な農法ですが、
素人の多くは、藁の撒布のしかたやクローバーの生え具合の雑草退治で失敗します。
• 麦藁の振り方がムラになるために草が生えてくるとか、最初のチャンスを逸したりする
と草が生えて稲が麦が草に負けたりすることがあります。ですから、非常に危険だと言
えば危険な農法ですが、放任ではなく、注意してやればだれでもやれる。
• そうですね。放任ではない。自然農法と言うのは一番厳しい農法と言えますが、そうい
うふうに言いますと科学的な知識がなければいかないのかとなります。しかし、そうで
もないんです。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)

14. 引っ張られる
• そうです。ニワトリなどでも朝から晩まで、夜が明けてから忙しそうに走
り回ってあれを拾い、これを拾い、忙しいんです。自分たちがあれこれプ
ランを立てているというより、作物に引っ張られているんです。
• 毎日、稲の葉っぱでも三日か五日に一枚ずつ葉ができます。その自然の移
り変わりの激しさ、変化につられてじっとしていられない。自然のお手伝
いをするのにきりきり舞いをさせられ、自然に引っ張り回されて働く。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)

15. 事に仕える
• 働くということは自分は好かな
いんですが、仕えることですね。
仕事です。事に仕える。自然に
仕える。自然と言うのは簡単に
言えば神だと思います。神に仕
える。大根に仕える。稲に仕え
るのは楽しい。
「福岡正信の〈自然〉を生きる」 福岡 正信,
金光 寿郎 春秋社; 改題版 (2021/9/28)
『晩鐘』（ばんしょう）
ジャン＝フランソワ・ミレー 1857-1859