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コンピュータグラフィックスの歴史・原理・技術・応用
橋本 昌嗣
hashimoto.masatsugu@gmail.com
概 要
イメージは世界共通語となりうる.イメージを使ったコミュニケーションは情報伝達を圧倒的に効
率的にする.コンピュータの高性能化に伴い、テキスト情報処理からビジュアルな処理が増加して
いる.これらを支える,コンピュータの 3 次元グラフィックスが生成する仕組みを述べ,それらを実現
するハードウェアとソフトウェアについて解説する.さらに,コンピュータグラフィックスが科学技術計
算分野,医療分野,文化財等の分野で,どのように利用されているかを紹介する.これらを通じて,
コンピュータグラフィックスの原理を知り,自分たちの生活環境にどのように浸透していくかを予見し
て欲しい.
1. はじめに
世界史によると,現在確認されている人類史上
最古のグラフィックス(イメージ)は,3 万年前から 1
万年前の後期旧石器時代に主としてフランス西部,
スペイン北部の諸洞窟に書かれた絵画である.フ
ランスのラスコー,ニオー,コンパレル,スペインの
アルタミラ,カスティリャなど約120の洞窟絵画も知
られている.洞窟絵画の多くは,洞窟の奥,しかも
側壁の上部や天井に描かれた.ここに絵を描くた
めには,足場を組まなければならない.明かりをと
もす必要もある.そのような状況のなかで,不自由
な姿勢で作業したことが予想される.それは,苦
労の多い作業であったが,その苦労を忘れさせた
のは,狩りの成功についての切実な祈りではなか
ったと言われている.3 万年前から間違いなく人間
はグラフィックスによりコミュニケーションしていたこ
とを確信する.
文字が確認されるのは,メソポタミアではウルク
期(前 3500~前 3200)の後期である.粘土板によ
る記録システムが出現し,簡単な数を表す文字,
あるいは絵文字で表現していた.次のジェムデッ
ト・ナスル期になると,線状のサインの粘土板が多
数現れる.まだ,後の楔形文字にはいたっていな
いが,音標文字へ移行していて,シュメール文字
として読み取れるものもある.そのためウルク後期
とジェムデット・ナスル期を合わせて,原文字期(プ
ロト・リテライト)と呼ぶことがある.メソポタミアで文
字による記録が始まって間もないころ,エジプトで
も文字による記録が見られるようになった.おそら
くシュメール人から学んだものと考えられている.
中国では,紀元前 1000 年以上前の殷の甲骨文
字が確認できる.絵文字から文字への形成は,あ
る意味グラフィックスコミュニケーションの進化形で
あるといえるだろう.しかしながら,コンピュータの
歴史においては,全く逆で,テキストベースドコン
ピューティングからグラフィックスコンピューティン
グへの移行には,時を要する.「百聞は一見にし
かず」と言われるようにイメージは,言葉を重ねる
よりも情報を的確に伝えることがある.しかしながら,
その前提条件として,イメージ上に情報が整理さ
れていること,イメージ全体が意味を成しているこ
とが必要となる.情報を伝達するイメージを生成す
るためには,イメージを見せるためのシナリオ,シ
ナリオに従ったデータフォーマット,的確な表現の
ためのアルゴリズムを決定しなければならない.
2. コンピュータグラフィックスの歴史
コンピュータグラフィックスの歴史を表 1 に示
す.
表 1. コンピュータグラフィックスの歴史
1940 年代
1950 年代
1960 年代
1970 年代
1977 年
1980 年代
1990 年代
ENIAC 世界で最初の計算機
MIT で初期の研究
Sutherland スケッチパッド開発
ユタ大学で CG の研究始まる
CG の主要技術開発 シェーディ
ング,レイトレーシング
Star Wars で CG を利用
SiliconGraphics,Inc.設立
SIGGRAPH 開催
Jurassic Park 等映画で CG 使用
Graphics Library OpenGL,
DirectX 開発.PC 低価格化
3. コンピュータグラフィックスの原理
3 次元コンピュータグラフィックスによる画像生
成では,コンピュータ上に仮想空間を作り,物体
や光源などを配置して物体が視点からどのように
見えるか計算し,その結果をディスプレイ画像とし
てディスプレイに表示する.
3.1 座標の設定
コンピュータ上で 3 次元空間を構築するには座
標系の設定が必要である.定義された3次元座標
全体のことをワールド座標系という.またオブジェ
クト独自の座標系をローカル座標系という.オブジ
ェクトとは 3 次元空間に設定する立方体や球体と
いった対象物のことである.
3.2 モデリング
対象とする物体(オブジェクト)の形状をデータ
化する.オブジェクトの表現方法として次のような
ものがある.
・ワイヤーフレームモデル
オブジェクトを構成している頂点(x,y,z)と頂点を
結んだ線分(直線)で,そのオブジェクト全体を表
現する.
・サーフェイスモデル
オブジェクトの表面をポリゴン(多角形平面)の
集合として表現する.表面に柄を貼り付けることを
テクスチャマッピングという.
・ソリッドモデル
中身が詰まったオブジェクトを表現する.立体
や円柱の組み合わせで 3 次元形状を表す.その
組み合わせを足し算,引き算などの演算によって
行う.
・メタボール
3 次元オブジェクトを球の集合で表現する.人
体や顔,雲などの複雑な表現に利用される.
・ボクセル
3 次元オブジェクトを最小立法体の集合で表現
する.医療用 CT スキャンによる人体内部情報の
表現に利用される.
・パーティクル
大きさを持たない粒子の集合を使用して,煙や
炎などを表現する.ビックバン,滝,昆虫や動物の
群れの表現にも応用されている.
・フラクタル
自己相似形を生み出すしくみ
ワイヤーフレームとサーフェイスモデルとテクス
チャマッピングの例を図 1 に示す.
図 1.ワイヤーフレームモデル(左)と
サーフェイスモデル(中)と
テクスチャマッピング(右)の例
オブジェクトには,陰影計算のために必要な法
線ベクトル,光が当たったときのオブジェクトの質
感を設定するマテリアル(物質特性),表面に 2 次
元の写真(大理石や木目)や文字を貼る処理(テク
スチャマッピング)といった情報を与える.
さらに,オブジェクトに対して光源の設定,3 次
元空間のどこからどこを見るのかというカメラの設
定を行う.
3.3 アニメーション
モデリングしたオブジェクトに動きを設定する.
アニメーションとは,時間の経過とオブジェクトの
動きの関係を視覚的に表現することである.
3.4 レンダリング
これまでに設定した情報(オブジェクト/光源/カ
メラ)をもとに,コンピュータで画像の最小単位で
ある画素を計算し,イメージを生成することを,レ
ンダリングという.画像と画素の関係を図 2 に示す.
Pixel とは,グラフィックスの色などを指定できるコ
ンピュータ内での論理的な最小単位であり,Dot と
はディスプレイやプリンタが画像を表示/印刷する
際に画像を構成する小さな点のことである.
画像
画素
図 2. 画像と画素
レンダリングの主な機能は投影処理,クリッピン
グ処理,隠面処理,シェーディング処理,マッピン
グ処理,アンチエイリアシング処理からなる.1 連
のレンダリング処理を図 3 に示す.
図 3. レンダリング処理
【機能 1】投影処理(座標変換)
3 次元オブジェクトを 2 次元のスクリーンに映し
こむ.
【機能 2】クリッピング処理
視野に入る部分を決定する.
【機能 3】隠面(隠線)処理
ポリゴンやライン同士の前後関係を判断する.
この処理方法として,Z ソート法,Z バッファ法,ス
キャンライン法,レイトレーシング法(光線追尾法)
などがある.
(Z バッファ法)
オブジェクトの奥行き(Z 値)を比較し,最前面
のものを描画する.モデルの奥行き情報を保存す
る場所が Z バッファである.Z バッファ法の 1 連の
処理を図 4 に示す.
Zバッファ
スクリーン
図 4. Z バッファ法
(レイトレーシング法)
レイトレーシング法は光線追跡法とよばれる.こ
の方法は以下に示すように,視点からスクリーンの
それぞれの画素を通過するレイを放射し,それぞ
れのレイについて,すべてのポリゴンとの交差判
定を行い,交点のうち最も視点に近い交点(可視
化点)を求めるというものである.レイトレーシング
法の 1 連の処理を図 5 に示す.
X
スクリーン
Y
レイ
1.レイと物体の交差判定
2.全ての交点で視点に一番近いものを
可視点とする
3.その可視点の物体の色を画素に書き
込む
4.交差する物体が存在しない場合には
背景色をその画素に書き込む
図 5. レイトレーシング法
【機能 4】シェーディング処理
光源計算を行う.オブジェクトの面の明るさは,
光源の角度,視点の角度によって異なる.光源と
モデル(物体)の形状などをもとに,モデルに陰影
をつけることをシェーディングという.多角形平面
体のことをポリゴンという.各ポリゴンの中心点に
おける明るさをその面の明るさとしたものをフラット
シェーディングという.各ポリゴンの明るさを補完し
て,明るさが連続的に変わるような表現をする処
理を スムースシェーディングという.スムースシェ
ーディングの代表的なものとして,鏡面反射や透
過・屈 折効果など,複雑な表現を考慮したレイト
レーシング法が有名である.物体間の反射光を遮
る物体の影響まで考慮されたラジオシティ法は,
レイトレーシングによる鋭い画像に比べ,間接光
が醸し出す柔らかい雰囲気が表現できるのが特
徴である.フラットシェーディングとスムースシェー
ディングを図 6 に示す.
図 6. フラットシェーディング(左)と
スムースシェーディング(右)
【機能 5】マッピング処理
オブジェクトの表面にテクスチャマッピングを行
う.
【機能 6】アンチエイリアシング処理
画像を構成する画素がマス目状に構成されて
いるため,斜めの線を表現する場合,階段状に画
素を色づけすると,ジャギーが生じてしまう.それ
を緩和するために,線と背景の中間色を利用し表
現する技術をアンチエイリアシングという.アイン
チエイリアシング処理を図 7 に示す.
図 7. アンチエイリアシング処理概要
図 7 の左側が描きたい形であり,中央がジャギ
ーの生じた画像であり,右側がアンチエイリアシン
グ処理した画像である.
G T X S D
Software
Hardware
Scene Graph API Low Level API(OpenGL)
3D Device Driver
Graphics Board
CPU
Geometry Engine Raster Manager Display Generator
Scene Graph Viewing Frustum Frame Buffer Display
図 8. 3D グラフィックス処理とソフトウェアとハードウェアの役割
4. グラフィックス・ハードウェア概要
近年の 3D グラフィックス・ハードウェアの進歩
は著しく,ムーアの法則を上回る勢いで性能が向
上しており、それに伴い新しい機能も登場し続け
ている.しかし,ポリゴンで物体を表現し奥行き判
定をし,隠面消去をするという方式は変わってい
ない.
現在広く使われているグラフィックス・ハードウェ
アの原型は,Silicon Graphics Inc.(SGI 社)の創
業者でスタンフォード大学の Jim Clark が 1981
年に発表した GeometryEngine に見ることができる.
Geometry Engine 技術を発展させ現在のグラフィ
ックスのアーキテクチャを確立したのは,Clark の
学生でSGI共同創業者のKurt Akeley である.彼
は 1986 年,SiliconGraphics 4D シリーズのワーク
ステーションで三次元物体の表面を三角形で表
現し,頂点を二次元座標に変換したのち三角形
内部を塗りつぶしながら奥行きバッファ(Z バッフ
ァ)を使って隠面消去を行うという手法を実現した.
その後は,処理速度の向上[という形でグラフィック
ス・ハードウェアは進歩してきて現在に至っている.
この間のイノベーションと言える質的な進歩は,
1990 年の Silicon Graphics VGX で実現されたリ
アルタイム・テクスチャマッピング技術,1990 年代
後半からの PC ベースのグラフィックス・ハードウェ
アの台頭、2001 年の NVIDIA 社によるプログラ
マブル GPU(Graphics Processing Unit)の登場で
ある.グラフィックス・ハードウェアの 1990 年以降
の性能の伸びを見ると,ワークステーション(90 年
~98 年)と PC グラフィックス(99 年~2004 年)の
それぞれについて,1 年で約 2.3 倍となっており、
ムーアの法則の数字を上回っている.
可視化を行うグラフィックスアプリケーションとハ
ードウェアの関係について,ソフトウェアの視点か
ら俯瞰してみる. 図 8 は 3 次元グラフィックス処
理を行うレイヤ図である.この図では,上のレイヤ
が下のレイヤを利用する,あるいは呼び出すという
関係を示す.アプリケーションソフトウェアがグラフ
ィックス・ハードウェアの機能を使うには,OpenGL
の関数を呼び出す必要がある.OpenGL は API
としての側面を持つが,実際の機能はハードウェ
アに直接アクセスするドライバソフトである.その意
味で,OpenGL の API 仕様は、ハードウェア・アー
キテクチャ(設計思想)そのものと言っていい.
5. グラフィックス・パイプラン
本章では,グラフィックスの処理機能別の観点
から,前章で述べた流れ作業をもう少し詳しく説明
する.図8に、グラフィックス処理の流れ作業を行う
グラフィックス・パイプラインの全体構成を示す.パ
イプラインは機能別に 5 つのステージからなり,そ
れぞれのステージで行うタスクの内容の頭文字を
とって,各ステージをそれぞれ G・T・X・S・D と呼
ぶ.以下、各ステージに関してタスクの処理内容
を簡単に述べる.
(1) G(Generation:シーングラフの生成)
表示したい三次元モデルのデータを,アプリケ
ーションが定義するデータ構造にしたがって主メ
モリ上に構築あるいは更新する.この主メモリ上の
データ構造はしばしばシーングラフと呼ばれる.G
の処理を行うのは CPU で動作するアプリケーショ
ンやライブラリである.
(2) T(Traversal:表示データの抽出)
構築されたシーングラフをたどり,OpenGL の
関数呼び出しによって三角形の頂点データ群を
グラフィックス・ハードウェアに送る.T の処理はア
プリケーションが行ったり,OpenGL の上位に位
置するライブラリが行ったりするが,最終的には
OpenGL ドライバがすべてのデータを出力する.
(3) X(Transformation, Xformation:頂点変換)
まず,三角形の頂点の(x, y, z)データや座標変
換行列データのほか,光源情報や三角形の明る
さ情報を,前段の T から受け取る.つぎに,各頂
点座標をスクリーン上の三次元座標(二次元スクリ
ーン座標と奥行きの z 値)に変換し,各頂点の明
るさも計算する.X の処理は GPU のチップ上で
行われる場合が多い.
(4) S(Scan conversion:三角形の塗りつぶし)
スクリーン座標系の三頂点として与えられた各
三角形の内部に存在する全画素について,RGB
の明るさを計算する.また、三角形上で各画素に
対応する点の奥行き(z 値)も計算し,最終的には
一番手前となる三角形についてその画素の明るさ
とする.結果はフレームメモリ上に画像データとし
て書き込む.S の処理は GPU で行われる.
(5) D(Display:画像データから画像信号への変換)
フレームメモリの画像データを読み出し,固定レ
ートの同期信号(ビデオの垂直同期)にしたがって
ビデオ信号としてコネクタ(VGA,DVI など)から
出力する.
6. 並列レンダリングシステムの構成法
運用を考えると,アプリケーションがマルチ CPU,
GPU に対応しているのであれば,共有メモリタイプ
の可視化計算機は,普段利用している PC と同様
の感覚で使用できるので理想的である.現在のグ
ラフィックス用 PC では,8CPU(16core),256Gbyte
メモリを 1 つのマザーボードに搭載可能で,
NVIDIA 社が提供する SLI の規格を用い,2 つの
PCI Express インタフェースにグラフィックスカード
を接続することができる.対応 OS は Windows,
Linux で利用可能である.現在,共有メモリで
最大構成可能なシステムは,SiliconGraphics 社
のPrismであった.Intel社のItanium2を256CPU,
ATI 社の 16 枚のグラフィックスカードが搭載可能
な最大 3TB 分散共有メモリシステムを実現してい
る.対応 OS は Linux のみである.将来,Intel 社の
Itanium2 と Xeon の CPU ソケットが共通化されるこ
とから,コモディティの CPU 上でも,分散共有メモ
リのシステムが実現される日は近いであろう.共有
メモリの限界を超えるシステムを実現する際には,
ソーティングを考慮し,Chromium 等を利用しなが
らクラスタ構築とする必要がある.
7. グラフィックス・ハードウェアの展望
NVIDIA 社や AMD 社により,GPU は 1 チップ
化され,描画のそれぞれのステージを効率的に同
じユニットで行うようになると,汎用計算にも利用可
能となり,GPGPU (General Purpose GPU)あるいは
GPU Computing と呼ばれている.CPU と比較する
と,CPU のコア数が現在 2~8 コアであることに対
し,GPU は超並列の 128 の Shader Unit をもつ.ま
た、メモリバンド幅も 100Gbps を超える.NVIDIA
社は,HPC(High Performance Computing)向けの
GPU「Tesla」を発表した.その単精度のピーク性
能は 1Tflops にも達する.また,Intel 社は x86 をコ
アとしたメニイコアの GPU「Larrabee」のアーキテク
チャを発表し,汎用プロセッサによるグラフィックス
処理に意欲的である.これらのプロセッサは,物理
計算に基づいた可視化を牽引していくであろう.
8. 可視化開発環境の展望
10 年前は,米国 SGI 社が CPU,グラフィックス・
ハードウェア製品,OS,コンパイラ,開発環境を 1
社で全て提供していたが,近年は,専門分野の会
社が,それぞれを提供している.そのため,継続し
てその環境が提供されない危惧もある.たとえば,
2003 年 Microsoft 社は OpenGL ARB を脱退して
いる.
開発者,研究者は開発環境の変化に柔軟に対
応し,最新のメインストリーム技術を積極的に取り
込んでいく必要がある.例えば,Microsoft 社の
Windows OS は定期的に更新され,Adobe 社は
Flash を発展させた AIR というアプリケーションプラ
ットフォームを提案している.GPGPU に関しては,
NVIDIA 社は CUDA,ATI 社は CTM という開発
環境を提供している.その中で,最適な開発環境
を選択しながら,開発した資産を維持する必要が
ある.
日本 SGI は,それらを考慮しながら Visual
Realityware という可視化開発環境の整備を進め
ている.Visual Realitywareの概念図を図9に示す.
概念図内を 3 つの枠で分割している.中段の枠が
「Technology Layer」であり,各社が提供する技術
を示している.下段の「OS」と記述してある枠はテ
クノロジが対応する OS を示している.黒い丸がつ
いている場所は,上のTechnology Layerの技術が
左に対応する Windows あるいは Linux 上で動作
することを示している.上段の枠は,「Application
Layer」を示し,メインストリームの技術に依存しな
いコードにより構成されたソフトウェア・モジュール
群を示している.
ここで中心となるのが「Application Layer]内に
ある「Abstraction Layer」である.例えば,OpenGL
と DirectX は「Abstraction Layer」により抽象化され,
どちらを利用するかはいつでも選択できることを目
指している.そのため,開発成果をマルチプラット
フォームに対して,迅速に展開可能であり,開発し
たコード資産は長期的に利用することができる.
SceneGraph
DataImporter
Dataexporter
MathLibrary
CADViewer
GeographyViewer
FluidViewer
RealTimeRayTracing
VolumeRenderer
Abstraction Layer
DirectX
Real Time
Renderer
GUI Tessellator GPGPU
OpenGL
AdobeFlash
NativeUI
OpenGLOptimizer
OriginalTessellator
NVIDIACUDA
ATICTM
ApplicationLayerTechnologyLayerOS
Windows
Linux
MixedReality
図.9 可視化開発環境 Visual Realityware 概念図
私たちは,Visual Realityware を利用し,アプリ
ケーションの開発を進めている.コード・レビューさ
れ,保守されたソフトウェア・モジュール群を利用
してつくられたアプリケーションは,短期間でバグ
の少ないアプリケーションの開発を実現する.
9. コンピュータグラフィックスの応用
様々な分野でのコンピュータグラフィックスの適
用分野を紹介する.
9.1 科学技術計算分野における可視化
科学技術の計算分野では,大規模なベクトル/
スカラーコンピュータでの流体力学,熱力学,分
子構造,天気情報といった計算/解析結果をわか
りやすく可視化する.その可視化環境 Reality
CenterTM
を図 10 に示す.
図 10. RealityCenter の例
この科学技術計算分野の可視化は,対象の現
象がきわめて複雑かつ人間にとって把握しづらい
場合が多く,対象を極力わかりやすく表示すること
が必要である.また,本来見えない,または見づら
い現象を明確に視覚化するために利用される.こ
のような計算結果はグラフィックスコンピュータと複
数の大画面スクリーンを組み合わせた施設で映し
出される.これにより,細部に渡る可視化情報を,
立体視しながら,複数人で情報共有をし,議論を
行うことにより,効率的な研究がなされている.
RealityCenter のシステム構成例を図 11 に示す.
大型スクリーン
立体プロジェクタ
ジョイスティック
立体装置一式
ONYX
VR 構築/体験ソフト
図 11. RealityCenter システム構成
©株式会社ソリッドレイ研究所
9.2 エンジニアリング分野の可視化
工学・産業・工業の分野においても各種現象の
可視化は重要である.その目的は,主に測定や
実験データの可視化であり,それらをより的確か
つ忠実に表示することに主眼がおかれる.まだ時
間的な制約は少なく,実験を繰り返し再現し,さま
ざまな角度から検討することがなされる.製造分野
では,コンピュータグラフィックスをデザイン(設計)
レビューでよく使われている.実際にものができる
前に,不具合の箇所を出来るだけ早く察知し,対
処しておこうというものである.メンテナンスのシミュ
レーションも行われている.
自動車産業は,製造工程にコンピュータグラフ
ィックスをうまく取り入れている.たとえば,車体の
デザインから試作車体の数値シミュレーション,そ
して製造工程の検討にいたるまで活用されている.
それにより,これまでモックアップで行っていたデ
ザインの過程,多くの自動車を潰して行った衝突
実験等で大幅な時間短縮が実現され,モデルチ
ェンジの期間短縮という形で企業の競争力となっ
ている.車のデザイン画が CAD 設計,構造解析
等の工程を通過しても,デザイン画に近い形で製
品になることは重要である.現在,自動車設計の
各工程では,それぞれ市販のアプリケーションを
利用している.日本 SGI は,各工程で使用されて
いるアプリケーションの隙間を埋め,スタイリング,
安全性,性能,環境問題への対処等を高い次元
で調和させる取り込みを行っている.
このように製造業では,製品の製造過程におい
て,デザインデータ, CAD データ,様々な解析デ
ータ,製品の CM 映像,設計者のインタビュー映
像等のデジタルデータが生み出される.これらをう
まく再利用すると,設計者の思いを伝える製品情
報を顧客に提供できる.このような製造過程の情
報を用いると,図 12 のように,雑誌や Web 上で公
開されていないリッチコンテンツで構成されるマー
ケティングシステムとなる.このようなシステムには
あわせてセキュリティシステムも必要となる.
図 12. 製造過程で生成されるデジタルデータを
再利用し構築したマーケティングシステムの例
日本 SGI は Ken Okuyama Design によるスポー
ツカーK.O7 と K.O8 の製造過程で,私たちのデザ
インレビューの技術協力を行った.2008 年 3 月に
開催されたジュネーブ国際モーターショーの Ken
Okuyama Design のブースでは,図 13 に示すよう
な実際の車と,スクリーン上にはその製造過程で
制作された CAD データの可視化が展示された.
図 13.Ken Okuyama Design のブース
9.3 放送分野での可視化
放送される天気予報番組では,青い壁面のブ
ルーバック(近年はグリーンバックもある)の前に人
間が立ち,CG と合成するバーチャルセットが一般
的になった.バーチャルセットの例を図 14 に示す.
水泳競技の中継では,プールの水面上にゴール
した選手の国旗がオンエアグラフィックスの技術を
使って合成されている.
図 14. バーチャルセット
© Accom’s ELSET Virtual Set System, IMP
and Virtual Studio Hamburg
9.4 地図情報システム
日本スペースイメージング株式会社の衛星イコ
ノス等により,地表をデジタルスキャンすることが可
能になった.得られた画像を利用し,3 次元の都
市景観シミュレータが開発されている.今後,迅速
な救助活動を支援する防災システムの開発も期
待される.また,株式会社ジオ技術研究所は,高
解像度の HD カメラを搭載した車で街並を撮影し,
高精細なテクスチャで構成された 3 次元地図を作
成している.ジオ技研と日本 SGI は共同でこの高
精細で巨大な都市データをリアルタイムに表示す
ることに成功した.成功の鍵は,高速に表示する
ための独自のフォーマットを策定とグラフィックスの
データが処理される過程でボトルネックのないシス
テムアークテクチャと不要な計算を省いた効率的
な可視化にある.日本 SGI は,100Gbyte 以上の
地図データを PC 上でリアルタイムに表示すること
に成功している.図 15 に PC 上で 100Gbyte 以上
の山手線内の 3 次元地図の可視化例を示す.
図 15. ジオ技術研究所の 3 次元地図の
PC でのリアルタイム可視化例
近年,コンピュータの計算性能に伴い,細かい
粒子のレベルでの流体解析が可能となった.この
新しい解析手法を「粒子法」という.地形データ上
で,粒子法を用いると,津波のシミュレーションが
可能となる.図 16 に解析結果の可視化例を示
す.
図 16. 粒子法流体解析による津波の可視化例
©インクリメント P㈱, ㈱キャドセンター, ㈱パスコ,
プロメテックソフトウェア㈱, 日本 SGI㈱
このようなシミュレーション手法を用いることで,
災害とその避難経路を事前に知ることができる.
北野宏明博士が提唱された RoboCup は,
「2050 年までに,完全自律型ヒューマノイド・ロボッ
トで,ワールドカップ・チャンピオンに勝利する」と
いう目標を掲げたプロジェクトである.しかし,
RoboCup の真の目的は,この目標達成の過程で
生み出される技術を,重要な社会的問題や次世
代産業の技術基盤へと展開することである.その
中のグランドチャレンジプロジェクトの 1 つとして存
在する RoboCup-Rescue は,コンピュータ・サイエ
ンスや人工知能,ロボティクスなどの最先端技術
を用いて,「災害救助」という普遍的価値を持つ問
題に貢献しようという基本的問題意識から始まっ
たプロジェクトである.RoboCup-Rescue が目指す
のは,災害現場にデジタル機器で武装化された
人間の救助隊と相互補完的に,自律型知能ロボ
ットや半自律型ロボット等が作業を行い,刻一刻と
変化する状況を種々のセンサシステムや現場のロ
ボット,救助隊や市民が情報発信し,包括的かつ
分散型災害救助シミュレータと連動する意思決定
支援システムが必要に応じて指示と情報を現場に
提供する,統合的な災害救助システムである.
災害救助システムにおいては,何より的確且つ
迅速な救助方針の決定が不可欠である.その実
現には,人間では近づくことが出来ない災害現場
の正確な把握と対策のシミュレーション,そして効
率的な情報の分析が鍵となる.衛星やファイバ・ケ
ーブルを経由して,災害現場に入ったレスキュー
ロボットから送られる映像と,高度でリアルな 3 次
元地図データがリアルタイムで一元的に大画面マ
ルチスクリーンへ表示することで,その洞察力が高
度に高められた人々が複数情報を同時に分析し,
より迅速な問題発見と的確な災害救助を実現する
総合的なシステム,それが SGI の考える災害救
助・防災システムである.日本 SGI が考える災害
救助システムの概要を図17に示す.日本SGIは,
こういったシステムの核となる独自のビジュアリゼ
ーション・システムとそのテクノロジを提供し,
RoboCupやRoboCup Rescueによる研究活動で培
われたロボット技術のさらなる発展と,総合的な災
害救助司令センターシステムの開発・実用化を目
指している.
図 17. 災害救助システム概要
9.5 医療分野の可視化
医療分野では,人体の内部情報の可視化をす
る必要があり,CT スキャンで得られた連続した画
像を用い,ボリュームレンダリングというボクセルと
呼ばれる直方体で輝度,不透明度等の情報を与
え,表現される.図 18 にボリュームレンダリング表
示された人体の例を示す.
図 18. ボリュームレンダリング表示した人体
©National Library of
Medicine Visible Human Project®
東京慈恵会医科大学の高次元医用画像工学
研究所は,「生きている人体」の心臓の拍動や,モ
ーションキャプチャから骨格の導体の 4 次元モデ
ルを取得し,日本 SGI と協力しリアルタイムの表示
を実現した.図 19 に生体情報の可視化例を示す.
ユーザは,インタラクティブに複数の断面を設定し、
全身または特定の部位の断層面の形状と構造を
観察することが可能である.また、断面によって分
割されたモデルの体積を計測することもできる.
図 19. 4 次元の生体情報の可視化
「Virtual Anatomia」
©IHDMI, Jikei Univ. 2009,
日本 SGI 株式会社
9.6 文化の可視化
文化財のデジタル保存/復元も行われている.
凸版印刷株式会社では,京都,奈良の文化財
の保存を手がけ,その 1 つとして,唐招提寺のイン
タラクティブなリアルタイムシミュレータを開発し,
学芸員,住職の説明により全く異なった視点から
の体験を可能としている.このシステムにより,通
常非公開となっている御影堂内の東山魁夷画伯
の障壁画を,いつでも好きなときに鑑賞することも
できる.仮想空間の移動は,凸版印刷株式会社
の独自開発のコントロールパッドにより,直感的で
容易にできる.現在,実際の唐招提寺は,10 年間
の修復工事のため,公開されていない.
株式会社 NHK エンタープライズ 21 では,江戸
城を復元し,電子セットとしての利用方法を可能と
した.図 20 に NHK エンタープライズ 21 により再
現された江戸城を示す.再現された江戸城は,柱,
屋根,畳などは「古さ」を表現し,襖絵などは完成
後 30 年後~50 年後の姿を想定し,CG により表現
されている.金地には,「金箔」「金泥」「砂子」など
金の種類別にそれぞれテクスチャの違いも表現さ
れている.
図 20. 電子セット「幻の江戸城」
©NHK エンタープライズ 21
9.7 デジタルプラネタリウム
SGI の Onyx から複数出力される映像は,少し
ずつ重ね合わせ出力し,プロジェクタの輝度を調
整することにより,シームレスな画面をエッジブレン
ディング技術によって,実現することができる.図
21 にエッジブレンディング技術を示す.
このような技術を用いた,ニューヨークにあるア
メリカ自然史博物館のハイデンプラネタリウムでは,
3 次元画像により,銀河から銀河への旅行を楽し
むことができる.ハイデンプラネタリウムの外観を
図 22 に示す.
図 21. エッジブレンディング技術
©SGI Japan,Ltd
図 22. ハイデンプラネタリウム
© 2000 American Museum of Natural History Photo
by Denis Finnin
ハイデンプラネタリウムでは,地球周回軌道上
の人工衛星に取り付ける大型の天体望遠鏡から
の観察結果など,アメリカ航空宇宙局(NASA)の
協力も得て,実際の天文学的調査の結果と宇宙
根拠に基づくコンピュータモデルをもとにショーを
製作している.ハイデンプラネタリムの映像の例を
図 23 に示す.
図 23. ハイデンプラネタリウムの映像
© 2000 American Museum of Natural History.,
San Diego Super Computer Center – USCD,
Digital Galaxy Project, Dome photo by Denis Finnin
日本では,株式会社五藤光学研究所は,3 次
元フルカラーCG をリアルタイムに生成し,ドームス
クリーンに投影する「バーチャリウム」を富士川ウォ
ーターワールド,松江テルサに導入している.
株式会社イメージスタジオ109,株式会社サンラ
イズ,ディスクリート,丸文株式会社,日本 SGI 株
式会社は,プラネタリウム施設を有効利用し,
SiliconGraphics Octane2 を使って,「起動戦士ガ
ンダム」のストーリー世界を科学的に考証し,デジ
タルセルアニメーションと3Dコンピュータグラフィッ
クスで再現し,全天周スクリーン上で上映された.
図 24 に,プラネタリウムに上映された機動戦士ガ
ンダムの映像の 1 例「Green Divers」を示す.
図 24.プラネタリウムで上映された「Green Divers」
© SOTSU-SUNRISE
9.8 Mixed Reality 技術
Mixed Reality とは,コンピュータで表現されたリ
アルタイム CG の画像と現実に撮影したライブ映
像とをリアルタイムで継ぎ目なく融合させる技術の
総称である.日本では,エム・アール・システム研
究所の試験研究成果を引き継いで,実用化のた
めの継承研究がキヤノン株式会社で行われてい
る.シースルーヘッドマウントディスプレイ(HMD)を
装着し,CG の車と街並みとの調和を楽しんだり,
車の内部から CG の内装で色の組み合わせなど
を確認することも可能である.
図 25. Mixed Reality ©キヤノン株式会社
図 25 の HMD を装着して実物のシートに座って
いる人物の見える映像が上の図である.実物大の
コンピュータグラフィックス(CG)車両を体験するこ
とが可能で,車の仕様を対話的に操作可能である.
図 25 中の左図が実際の空間で,右図が HMD を
通して得られる,実際の空間の中に CG を重畳さ
れた映像である.
実装されているユーザインタラクションとして,車
種の変更,ボディーカラーの変更,CG 車両のドア
の開閉,ホイール・内装等の変更機能などがある.
図 26 に HMD より見える映像の例を示す.
図 26. HMD より見える映像 ©キヤノン株式会社
システム構成として,位置センサにて,ユーザと
インタフェースデバイスの位置を計測し,CG描画
コンピュータの中で,リアルタイムに CG と現実世
界の合成を実現する.図 27 に Mixed Reality シス
テムの構成図を示す.
SGI Onyx
Converter
実写映像 + CG (VGA)
実写映像
・ センサー
・ カメラ(表示)
・ 表示
HMD
位置情報を送る
位置情報を送る
Video + Graphics
Optotarck
図 27. Mixed Reality システム構成図
©キヤノン株式会社
Mixed Reality は,CG画像による仮想空間づく
りを主に目指してきた Virtual Reality 技術に新し
い流れを付け加えるものである.今後の利用方法
として,ショールームやアトラクション,設計デザイ
ン等での分野での応用が期待される.
10. ビジュアル・コミュニケーションの展望
「百聞は一見にしかず」といわれるように,イメー
ジを利用したコミュニケーションは,情報伝達を効
率化する.表 2 に計算機が支援する協調活動
「CSCW(Computer Supported Cooperative Work)」
を対面/分散であるか,リアルタイム/蓄積・非同期
であるかにより分類したものを示す.
蓄積・非同期型のタイプの協調作業は,情報共
有を得意とし,リアルタイム型の協調作業は意思
決定の支援を得意とする.近年のブロードバンド
環境の整備により,リアルタイム型のコミュニケー
ションが可能となってきた.
表 2. Computer Supported Cooperative Work の分類と応用例
リアルタイム型 蓄積・非同期型
対面型
プリンタ機能付ホワイトボード
デザインレビューソフトウェア
- CAD データを使った設計確認
- 3 次元地図を使った景観シミュレーション
販売支援
分散型
IP-phone, skype
テレビ会議
Mail, Web
- サイボース, 掲示板, blog
- 議事録, 日記, 2 ちゃんねる, SNS
Google Earth, Google Map
企業・研究期間で迅速な意思決定を実現する
ためには,蓄積・非同期型のツールで議論するの
ではなく,リアルタイム型の協調活動をうまく導入
していくことが鍵となる.自動車会社では,店頭で
営業スタッフが PC を活用し、お客様へ車づくりの
特徴や他社との比較などを視覚的に分かりやすく
説明するビジュアルプレゼンテーションを導入し,
成果を上げているものもある.
これらを実現するためには,コンテンツのアーカ
イブ,著作権管理,見せる相手を考慮したコンテ
ンツの再構成,配信,効果的な提示方法の確立
が必要である.
11. おわりに
本稿では,グラフィックス・パイプラインについて
ふりかえり,さらに,グラフィックス・ハードウェア,
可視化開発環境,ビジュアル・コミュニケーション
の展望を述べた.人間が予見できないであろう事
象を迅速に可視化することによって,意志決定の
支援となるであろう.
起こっている問題を顕在化させることを「見える
化」といわれている.つまり問題は既に起こってい
るのだ.それに対し,私たちは,ビジョンを共有す
ることを「魅せる化」と提唱している.ビジョンを先
行して共有しておけば,ビジョンに照らし合わせ,
起こりそうな問題は未然に予防できる.
さいごに,私たちは,可視化実務経験から,高
品位な可視化には 3 種類のタイプの人材が必要
だと考えている.1 つ目は可視化対象のデータの
意味が分かる人(Scientist).2 つ目は,可視化のた
めの手順を知っている人(Engineer).具体的にい
うと,GPU のしくみを知り,OpenGL,DirectX, MPI
などが使えるプログラマや AVS,Maya 等の可視
化ソフトウェアが使えるアプリケーションエンジニア
などである.3 つ目は,シナリオが書け,芸術的な
センスをもった人(Artist)である.私たちは,これら
3 種類の人材を駆使しながら,「魅せる化」におい
て,効果的に可視化技術を活用したいと考えてい
る.
12. 謝辞
本テキスト作成にあたり,3 章では,財団法人 画
像情報教育振興協会 宮井あゆみ様に,4 章では,
日本 SGI 株式会社 柿本正憲様に,株式会社エクサ
松本昌幸様に,9 章では,株式会社ソリッドレイ研究
所 , 株式 会社 未来技 術研 究所, Ken Okuyama
Design 奥山清行様,株式会社ジオ技術研究所 三
毛陽一郎様, 東京大学 越塚誠一教授, プロメテッ
ク・ソフトウェア株式会社 藤澤智光様, 株式会社パ
スコ, 東京慈恵会医科大学 鈴木直樹教授, 筑波大
学 西岡貞一教授,株式会社 NHKエンタープライズ
21 松本寿子様,キヤノン株式会社 山本裕之様にご
協力頂いた.また多くの上司,同僚,恩師である東北
大学 中村維男名誉教授からも有用な助言を受けた.
これらの方々のご協力がなければ,このテキストは完
成しえなかった.ここに記して,心より感謝する.最後
に,本講義の機会を与えて下さった上智大学に感謝
致します.
参考文献
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館, 1999
[2] 謝世輝. スーパー世界史. 講談社, 2001
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論と実践.オーム社, 2001.
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CG-ARTS 協会(財団法人画像情報教育振興協会),
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の最新技術 bit Vol.31 No.11 P3-7,1999.
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Rendering”, In Proc. SIGGRAPH 1988, pp.239-246
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“Infinite Reality: A Real-Time Graphics System,” In
Proc SIGGRAPH 1997, pp. 293-302 (July 1997).
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User-Programmable Vertex Engine, ” In Proc.
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http://developer.nvidia.com/object/cuda.html
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http://www.sgi.co.jp/products/software/va/
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を受注、構築:
http://www.sgi.co.jp/newsroom/press_releases/
2006/may/mazda.html
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会 No.113, 2003
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大学院情報科学研究科博士論文, 2004

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  • 1. コンピュータグラフィックスの歴史・原理・技術・応用 橋本 昌嗣 hashimoto.masatsugu@gmail.com 概 要 イメージは世界共通語となりうる.イメージを使ったコミュニケーションは情報伝達を圧倒的に効 率的にする.コンピュータの高性能化に伴い、テキスト情報処理からビジュアルな処理が増加して いる.これらを支える,コンピュータの 3 次元グラフィックスが生成する仕組みを述べ,それらを実現 するハードウェアとソフトウェアについて解説する.さらに,コンピュータグラフィックスが科学技術計 算分野,医療分野,文化財等の分野で,どのように利用されているかを紹介する.これらを通じて, コンピュータグラフィックスの原理を知り,自分たちの生活環境にどのように浸透していくかを予見し て欲しい. 1. はじめに 世界史によると,現在確認されている人類史上 最古のグラフィックス(イメージ)は,3 万年前から 1 万年前の後期旧石器時代に主としてフランス西部, スペイン北部の諸洞窟に書かれた絵画である.フ ランスのラスコー,ニオー,コンパレル,スペインの アルタミラ,カスティリャなど約120の洞窟絵画も知 られている.洞窟絵画の多くは,洞窟の奥,しかも 側壁の上部や天井に描かれた.ここに絵を描くた めには,足場を組まなければならない.明かりをと もす必要もある.そのような状況のなかで,不自由 な姿勢で作業したことが予想される.それは,苦 労の多い作業であったが,その苦労を忘れさせた のは,狩りの成功についての切実な祈りではなか ったと言われている.3 万年前から間違いなく人間 はグラフィックスによりコミュニケーションしていたこ とを確信する. 文字が確認されるのは,メソポタミアではウルク 期(前 3500~前 3200)の後期である.粘土板によ る記録システムが出現し,簡単な数を表す文字, あるいは絵文字で表現していた.次のジェムデッ ト・ナスル期になると,線状のサインの粘土板が多 数現れる.まだ,後の楔形文字にはいたっていな いが,音標文字へ移行していて,シュメール文字 として読み取れるものもある.そのためウルク後期 とジェムデット・ナスル期を合わせて,原文字期(プ ロト・リテライト)と呼ぶことがある.メソポタミアで文 字による記録が始まって間もないころ,エジプトで も文字による記録が見られるようになった.おそら くシュメール人から学んだものと考えられている. 中国では,紀元前 1000 年以上前の殷の甲骨文 字が確認できる.絵文字から文字への形成は,あ る意味グラフィックスコミュニケーションの進化形で あるといえるだろう.しかしながら,コンピュータの 歴史においては,全く逆で,テキストベースドコン ピューティングからグラフィックスコンピューティン グへの移行には,時を要する.「百聞は一見にし かず」と言われるようにイメージは,言葉を重ねる よりも情報を的確に伝えることがある.しかしながら, その前提条件として,イメージ上に情報が整理さ れていること,イメージ全体が意味を成しているこ とが必要となる.情報を伝達するイメージを生成す るためには,イメージを見せるためのシナリオ,シ ナリオに従ったデータフォーマット,的確な表現の ためのアルゴリズムを決定しなければならない. 2. コンピュータグラフィックスの歴史 コンピュータグラフィックスの歴史を表 1 に示 す. 表 1. コンピュータグラフィックスの歴史 1940 年代 1950 年代 1960 年代 1970 年代 1977 年 1980 年代 1990 年代 ENIAC 世界で最初の計算機 MIT で初期の研究 Sutherland スケッチパッド開発 ユタ大学で CG の研究始まる CG の主要技術開発 シェーディ ング,レイトレーシング Star Wars で CG を利用 SiliconGraphics,Inc.設立 SIGGRAPH 開催 Jurassic Park 等映画で CG 使用 Graphics Library OpenGL, DirectX 開発.PC 低価格化
  • 2. 3. コンピュータグラフィックスの原理 3 次元コンピュータグラフィックスによる画像生 成では,コンピュータ上に仮想空間を作り,物体 や光源などを配置して物体が視点からどのように 見えるか計算し,その結果をディスプレイ画像とし てディスプレイに表示する. 3.1 座標の設定 コンピュータ上で 3 次元空間を構築するには座 標系の設定が必要である.定義された3次元座標 全体のことをワールド座標系という.またオブジェ クト独自の座標系をローカル座標系という.オブジ ェクトとは 3 次元空間に設定する立方体や球体と いった対象物のことである. 3.2 モデリング 対象とする物体(オブジェクト)の形状をデータ 化する.オブジェクトの表現方法として次のような ものがある. ・ワイヤーフレームモデル オブジェクトを構成している頂点(x,y,z)と頂点を 結んだ線分(直線)で,そのオブジェクト全体を表 現する. ・サーフェイスモデル オブジェクトの表面をポリゴン(多角形平面)の 集合として表現する.表面に柄を貼り付けることを テクスチャマッピングという. ・ソリッドモデル 中身が詰まったオブジェクトを表現する.立体 や円柱の組み合わせで 3 次元形状を表す.その 組み合わせを足し算,引き算などの演算によって 行う. ・メタボール 3 次元オブジェクトを球の集合で表現する.人 体や顔,雲などの複雑な表現に利用される. ・ボクセル 3 次元オブジェクトを最小立法体の集合で表現 する.医療用 CT スキャンによる人体内部情報の 表現に利用される. ・パーティクル 大きさを持たない粒子の集合を使用して,煙や 炎などを表現する.ビックバン,滝,昆虫や動物の 群れの表現にも応用されている. ・フラクタル 自己相似形を生み出すしくみ ワイヤーフレームとサーフェイスモデルとテクス チャマッピングの例を図 1 に示す. 図 1.ワイヤーフレームモデル(左)と サーフェイスモデル(中)と テクスチャマッピング(右)の例 オブジェクトには,陰影計算のために必要な法 線ベクトル,光が当たったときのオブジェクトの質 感を設定するマテリアル(物質特性),表面に 2 次 元の写真(大理石や木目)や文字を貼る処理(テク スチャマッピング)といった情報を与える. さらに,オブジェクトに対して光源の設定,3 次 元空間のどこからどこを見るのかというカメラの設 定を行う. 3.3 アニメーション モデリングしたオブジェクトに動きを設定する. アニメーションとは,時間の経過とオブジェクトの 動きの関係を視覚的に表現することである. 3.4 レンダリング これまでに設定した情報(オブジェクト/光源/カ メラ)をもとに,コンピュータで画像の最小単位で ある画素を計算し,イメージを生成することを,レ ンダリングという.画像と画素の関係を図 2 に示す. Pixel とは,グラフィックスの色などを指定できるコ ンピュータ内での論理的な最小単位であり,Dot と はディスプレイやプリンタが画像を表示/印刷する 際に画像を構成する小さな点のことである. 画像 画素 図 2. 画像と画素 レンダリングの主な機能は投影処理,クリッピン グ処理,隠面処理,シェーディング処理,マッピン グ処理,アンチエイリアシング処理からなる.1 連 のレンダリング処理を図 3 に示す. 図 3. レンダリング処理
  • 3. 【機能 1】投影処理(座標変換) 3 次元オブジェクトを 2 次元のスクリーンに映し こむ. 【機能 2】クリッピング処理 視野に入る部分を決定する. 【機能 3】隠面(隠線)処理 ポリゴンやライン同士の前後関係を判断する. この処理方法として,Z ソート法,Z バッファ法,ス キャンライン法,レイトレーシング法(光線追尾法) などがある. (Z バッファ法) オブジェクトの奥行き(Z 値)を比較し,最前面 のものを描画する.モデルの奥行き情報を保存す る場所が Z バッファである.Z バッファ法の 1 連の 処理を図 4 に示す. Zバッファ スクリーン 図 4. Z バッファ法 (レイトレーシング法) レイトレーシング法は光線追跡法とよばれる.こ の方法は以下に示すように,視点からスクリーンの それぞれの画素を通過するレイを放射し,それぞ れのレイについて,すべてのポリゴンとの交差判 定を行い,交点のうち最も視点に近い交点(可視 化点)を求めるというものである.レイトレーシング 法の 1 連の処理を図 5 に示す. X スクリーン Y レイ 1.レイと物体の交差判定 2.全ての交点で視点に一番近いものを 可視点とする 3.その可視点の物体の色を画素に書き 込む 4.交差する物体が存在しない場合には 背景色をその画素に書き込む 図 5. レイトレーシング法 【機能 4】シェーディング処理 光源計算を行う.オブジェクトの面の明るさは, 光源の角度,視点の角度によって異なる.光源と モデル(物体)の形状などをもとに,モデルに陰影 をつけることをシェーディングという.多角形平面 体のことをポリゴンという.各ポリゴンの中心点に おける明るさをその面の明るさとしたものをフラット シェーディングという.各ポリゴンの明るさを補完し て,明るさが連続的に変わるような表現をする処 理を スムースシェーディングという.スムースシェ ーディングの代表的なものとして,鏡面反射や透 過・屈 折効果など,複雑な表現を考慮したレイト レーシング法が有名である.物体間の反射光を遮 る物体の影響まで考慮されたラジオシティ法は, レイトレーシングによる鋭い画像に比べ,間接光 が醸し出す柔らかい雰囲気が表現できるのが特 徴である.フラットシェーディングとスムースシェー ディングを図 6 に示す. 図 6. フラットシェーディング(左)と スムースシェーディング(右) 【機能 5】マッピング処理 オブジェクトの表面にテクスチャマッピングを行 う. 【機能 6】アンチエイリアシング処理 画像を構成する画素がマス目状に構成されて いるため,斜めの線を表現する場合,階段状に画 素を色づけすると,ジャギーが生じてしまう.それ を緩和するために,線と背景の中間色を利用し表 現する技術をアンチエイリアシングという.アイン チエイリアシング処理を図 7 に示す. 図 7. アンチエイリアシング処理概要 図 7 の左側が描きたい形であり,中央がジャギ ーの生じた画像であり,右側がアンチエイリアシン グ処理した画像である.
  • 4. G T X S D Software Hardware Scene Graph API Low Level API(OpenGL) 3D Device Driver Graphics Board CPU Geometry Engine Raster Manager Display Generator Scene Graph Viewing Frustum Frame Buffer Display 図 8. 3D グラフィックス処理とソフトウェアとハードウェアの役割 4. グラフィックス・ハードウェア概要 近年の 3D グラフィックス・ハードウェアの進歩 は著しく,ムーアの法則を上回る勢いで性能が向 上しており、それに伴い新しい機能も登場し続け ている.しかし,ポリゴンで物体を表現し奥行き判 定をし,隠面消去をするという方式は変わってい ない. 現在広く使われているグラフィックス・ハードウェ アの原型は,Silicon Graphics Inc.(SGI 社)の創 業者でスタンフォード大学の Jim Clark が 1981 年に発表した GeometryEngine に見ることができる. Geometry Engine 技術を発展させ現在のグラフィ ックスのアーキテクチャを確立したのは,Clark の 学生でSGI共同創業者のKurt Akeley である.彼 は 1986 年,SiliconGraphics 4D シリーズのワーク ステーションで三次元物体の表面を三角形で表 現し,頂点を二次元座標に変換したのち三角形 内部を塗りつぶしながら奥行きバッファ(Z バッフ ァ)を使って隠面消去を行うという手法を実現した. その後は,処理速度の向上[という形でグラフィック ス・ハードウェアは進歩してきて現在に至っている. この間のイノベーションと言える質的な進歩は, 1990 年の Silicon Graphics VGX で実現されたリ アルタイム・テクスチャマッピング技術,1990 年代 後半からの PC ベースのグラフィックス・ハードウェ アの台頭、2001 年の NVIDIA 社によるプログラ マブル GPU(Graphics Processing Unit)の登場で ある.グラフィックス・ハードウェアの 1990 年以降 の性能の伸びを見ると,ワークステーション(90 年 ~98 年)と PC グラフィックス(99 年~2004 年)の それぞれについて,1 年で約 2.3 倍となっており、 ムーアの法則の数字を上回っている. 可視化を行うグラフィックスアプリケーションとハ ードウェアの関係について,ソフトウェアの視点か ら俯瞰してみる. 図 8 は 3 次元グラフィックス処 理を行うレイヤ図である.この図では,上のレイヤ が下のレイヤを利用する,あるいは呼び出すという 関係を示す.アプリケーションソフトウェアがグラフ ィックス・ハードウェアの機能を使うには,OpenGL の関数を呼び出す必要がある.OpenGL は API としての側面を持つが,実際の機能はハードウェ アに直接アクセスするドライバソフトである.その意 味で,OpenGL の API 仕様は、ハードウェア・アー キテクチャ(設計思想)そのものと言っていい. 5. グラフィックス・パイプラン 本章では,グラフィックスの処理機能別の観点 から,前章で述べた流れ作業をもう少し詳しく説明 する.図8に、グラフィックス処理の流れ作業を行う グラフィックス・パイプラインの全体構成を示す.パ イプラインは機能別に 5 つのステージからなり,そ れぞれのステージで行うタスクの内容の頭文字を とって,各ステージをそれぞれ G・T・X・S・D と呼 ぶ.以下、各ステージに関してタスクの処理内容 を簡単に述べる. (1) G(Generation:シーングラフの生成) 表示したい三次元モデルのデータを,アプリケ ーションが定義するデータ構造にしたがって主メ モリ上に構築あるいは更新する.この主メモリ上の データ構造はしばしばシーングラフと呼ばれる.G
  • 5. の処理を行うのは CPU で動作するアプリケーショ ンやライブラリである. (2) T(Traversal:表示データの抽出) 構築されたシーングラフをたどり,OpenGL の 関数呼び出しによって三角形の頂点データ群を グラフィックス・ハードウェアに送る.T の処理はア プリケーションが行ったり,OpenGL の上位に位 置するライブラリが行ったりするが,最終的には OpenGL ドライバがすべてのデータを出力する. (3) X(Transformation, Xformation:頂点変換) まず,三角形の頂点の(x, y, z)データや座標変 換行列データのほか,光源情報や三角形の明る さ情報を,前段の T から受け取る.つぎに,各頂 点座標をスクリーン上の三次元座標(二次元スクリ ーン座標と奥行きの z 値)に変換し,各頂点の明 るさも計算する.X の処理は GPU のチップ上で 行われる場合が多い. (4) S(Scan conversion:三角形の塗りつぶし) スクリーン座標系の三頂点として与えられた各 三角形の内部に存在する全画素について,RGB の明るさを計算する.また、三角形上で各画素に 対応する点の奥行き(z 値)も計算し,最終的には 一番手前となる三角形についてその画素の明るさ とする.結果はフレームメモリ上に画像データとし て書き込む.S の処理は GPU で行われる. (5) D(Display:画像データから画像信号への変換) フレームメモリの画像データを読み出し,固定レ ートの同期信号(ビデオの垂直同期)にしたがって ビデオ信号としてコネクタ(VGA,DVI など)から 出力する. 6. 並列レンダリングシステムの構成法 運用を考えると,アプリケーションがマルチ CPU, GPU に対応しているのであれば,共有メモリタイプ の可視化計算機は,普段利用している PC と同様 の感覚で使用できるので理想的である.現在のグ ラフィックス用 PC では,8CPU(16core),256Gbyte メモリを 1 つのマザーボードに搭載可能で, NVIDIA 社が提供する SLI の規格を用い,2 つの PCI Express インタフェースにグラフィックスカード を接続することができる.対応 OS は Windows, Linux で利用可能である.現在,共有メモリで 最大構成可能なシステムは,SiliconGraphics 社 のPrismであった.Intel社のItanium2を256CPU, ATI 社の 16 枚のグラフィックスカードが搭載可能 な最大 3TB 分散共有メモリシステムを実現してい る.対応 OS は Linux のみである.将来,Intel 社の Itanium2 と Xeon の CPU ソケットが共通化されるこ とから,コモディティの CPU 上でも,分散共有メモ リのシステムが実現される日は近いであろう.共有 メモリの限界を超えるシステムを実現する際には, ソーティングを考慮し,Chromium 等を利用しなが らクラスタ構築とする必要がある. 7. グラフィックス・ハードウェアの展望 NVIDIA 社や AMD 社により,GPU は 1 チップ 化され,描画のそれぞれのステージを効率的に同 じユニットで行うようになると,汎用計算にも利用可 能となり,GPGPU (General Purpose GPU)あるいは GPU Computing と呼ばれている.CPU と比較する と,CPU のコア数が現在 2~8 コアであることに対 し,GPU は超並列の 128 の Shader Unit をもつ.ま た、メモリバンド幅も 100Gbps を超える.NVIDIA 社は,HPC(High Performance Computing)向けの GPU「Tesla」を発表した.その単精度のピーク性 能は 1Tflops にも達する.また,Intel 社は x86 をコ アとしたメニイコアの GPU「Larrabee」のアーキテク チャを発表し,汎用プロセッサによるグラフィックス 処理に意欲的である.これらのプロセッサは,物理 計算に基づいた可視化を牽引していくであろう. 8. 可視化開発環境の展望 10 年前は,米国 SGI 社が CPU,グラフィックス・ ハードウェア製品,OS,コンパイラ,開発環境を 1 社で全て提供していたが,近年は,専門分野の会 社が,それぞれを提供している.そのため,継続し てその環境が提供されない危惧もある.たとえば, 2003 年 Microsoft 社は OpenGL ARB を脱退して いる. 開発者,研究者は開発環境の変化に柔軟に対 応し,最新のメインストリーム技術を積極的に取り 込んでいく必要がある.例えば,Microsoft 社の Windows OS は定期的に更新され,Adobe 社は Flash を発展させた AIR というアプリケーションプラ ットフォームを提案している.GPGPU に関しては, NVIDIA 社は CUDA,ATI 社は CTM という開発 環境を提供している.その中で,最適な開発環境 を選択しながら,開発した資産を維持する必要が ある. 日本 SGI は,それらを考慮しながら Visual Realityware という可視化開発環境の整備を進め ている.Visual Realitywareの概念図を図9に示す. 概念図内を 3 つの枠で分割している.中段の枠が 「Technology Layer」であり,各社が提供する技術 を示している.下段の「OS」と記述してある枠はテ クノロジが対応する OS を示している.黒い丸がつ いている場所は,上のTechnology Layerの技術が
  • 6. 左に対応する Windows あるいは Linux 上で動作 することを示している.上段の枠は,「Application Layer」を示し,メインストリームの技術に依存しな いコードにより構成されたソフトウェア・モジュール 群を示している. ここで中心となるのが「Application Layer]内に ある「Abstraction Layer」である.例えば,OpenGL と DirectX は「Abstraction Layer」により抽象化され, どちらを利用するかはいつでも選択できることを目 指している.そのため,開発成果をマルチプラット フォームに対して,迅速に展開可能であり,開発し たコード資産は長期的に利用することができる. SceneGraph DataImporter Dataexporter MathLibrary CADViewer GeographyViewer FluidViewer RealTimeRayTracing VolumeRenderer Abstraction Layer DirectX Real Time Renderer GUI Tessellator GPGPU OpenGL AdobeFlash NativeUI OpenGLOptimizer OriginalTessellator NVIDIACUDA ATICTM ApplicationLayerTechnologyLayerOS Windows Linux MixedReality 図.9 可視化開発環境 Visual Realityware 概念図 私たちは,Visual Realityware を利用し,アプリ ケーションの開発を進めている.コード・レビューさ れ,保守されたソフトウェア・モジュール群を利用 してつくられたアプリケーションは,短期間でバグ の少ないアプリケーションの開発を実現する. 9. コンピュータグラフィックスの応用 様々な分野でのコンピュータグラフィックスの適 用分野を紹介する. 9.1 科学技術計算分野における可視化 科学技術の計算分野では,大規模なベクトル/ スカラーコンピュータでの流体力学,熱力学,分 子構造,天気情報といった計算/解析結果をわか りやすく可視化する.その可視化環境 Reality CenterTM を図 10 に示す. 図 10. RealityCenter の例 この科学技術計算分野の可視化は,対象の現 象がきわめて複雑かつ人間にとって把握しづらい 場合が多く,対象を極力わかりやすく表示すること が必要である.また,本来見えない,または見づら い現象を明確に視覚化するために利用される.こ のような計算結果はグラフィックスコンピュータと複 数の大画面スクリーンを組み合わせた施設で映し 出される.これにより,細部に渡る可視化情報を, 立体視しながら,複数人で情報共有をし,議論を 行うことにより,効率的な研究がなされている. RealityCenter のシステム構成例を図 11 に示す. 大型スクリーン 立体プロジェクタ ジョイスティック 立体装置一式 ONYX VR 構築/体験ソフト 図 11. RealityCenter システム構成 ©株式会社ソリッドレイ研究所 9.2 エンジニアリング分野の可視化 工学・産業・工業の分野においても各種現象の 可視化は重要である.その目的は,主に測定や 実験データの可視化であり,それらをより的確か つ忠実に表示することに主眼がおかれる.まだ時 間的な制約は少なく,実験を繰り返し再現し,さま ざまな角度から検討することがなされる.製造分野 では,コンピュータグラフィックスをデザイン(設計) レビューでよく使われている.実際にものができる 前に,不具合の箇所を出来るだけ早く察知し,対 処しておこうというものである.メンテナンスのシミュ レーションも行われている. 自動車産業は,製造工程にコンピュータグラフ ィックスをうまく取り入れている.たとえば,車体の デザインから試作車体の数値シミュレーション,そ して製造工程の検討にいたるまで活用されている. それにより,これまでモックアップで行っていたデ
  • 7. ザインの過程,多くの自動車を潰して行った衝突 実験等で大幅な時間短縮が実現され,モデルチ ェンジの期間短縮という形で企業の競争力となっ ている.車のデザイン画が CAD 設計,構造解析 等の工程を通過しても,デザイン画に近い形で製 品になることは重要である.現在,自動車設計の 各工程では,それぞれ市販のアプリケーションを 利用している.日本 SGI は,各工程で使用されて いるアプリケーションの隙間を埋め,スタイリング, 安全性,性能,環境問題への対処等を高い次元 で調和させる取り込みを行っている. このように製造業では,製品の製造過程におい て,デザインデータ, CAD データ,様々な解析デ ータ,製品の CM 映像,設計者のインタビュー映 像等のデジタルデータが生み出される.これらをう まく再利用すると,設計者の思いを伝える製品情 報を顧客に提供できる.このような製造過程の情 報を用いると,図 12 のように,雑誌や Web 上で公 開されていないリッチコンテンツで構成されるマー ケティングシステムとなる.このようなシステムには あわせてセキュリティシステムも必要となる. 図 12. 製造過程で生成されるデジタルデータを 再利用し構築したマーケティングシステムの例 日本 SGI は Ken Okuyama Design によるスポー ツカーK.O7 と K.O8 の製造過程で,私たちのデザ インレビューの技術協力を行った.2008 年 3 月に 開催されたジュネーブ国際モーターショーの Ken Okuyama Design のブースでは,図 13 に示すよう な実際の車と,スクリーン上にはその製造過程で 制作された CAD データの可視化が展示された. 図 13.Ken Okuyama Design のブース 9.3 放送分野での可視化 放送される天気予報番組では,青い壁面のブ ルーバック(近年はグリーンバックもある)の前に人 間が立ち,CG と合成するバーチャルセットが一般 的になった.バーチャルセットの例を図 14 に示す. 水泳競技の中継では,プールの水面上にゴール した選手の国旗がオンエアグラフィックスの技術を 使って合成されている. 図 14. バーチャルセット © Accom’s ELSET Virtual Set System, IMP and Virtual Studio Hamburg 9.4 地図情報システム 日本スペースイメージング株式会社の衛星イコ ノス等により,地表をデジタルスキャンすることが可 能になった.得られた画像を利用し,3 次元の都 市景観シミュレータが開発されている.今後,迅速 な救助活動を支援する防災システムの開発も期 待される.また,株式会社ジオ技術研究所は,高 解像度の HD カメラを搭載した車で街並を撮影し, 高精細なテクスチャで構成された 3 次元地図を作 成している.ジオ技研と日本 SGI は共同でこの高 精細で巨大な都市データをリアルタイムに表示す ることに成功した.成功の鍵は,高速に表示する ための独自のフォーマットを策定とグラフィックスの データが処理される過程でボトルネックのないシス テムアークテクチャと不要な計算を省いた効率的 な可視化にある.日本 SGI は,100Gbyte 以上の 地図データを PC 上でリアルタイムに表示すること に成功している.図 15 に PC 上で 100Gbyte 以上 の山手線内の 3 次元地図の可視化例を示す. 図 15. ジオ技術研究所の 3 次元地図の PC でのリアルタイム可視化例 近年,コンピュータの計算性能に伴い,細かい 粒子のレベルでの流体解析が可能となった.この 新しい解析手法を「粒子法」という.地形データ上
  • 8. で,粒子法を用いると,津波のシミュレーションが 可能となる.図 16 に解析結果の可視化例を示 す. 図 16. 粒子法流体解析による津波の可視化例 ©インクリメント P㈱, ㈱キャドセンター, ㈱パスコ, プロメテックソフトウェア㈱, 日本 SGI㈱ このようなシミュレーション手法を用いることで, 災害とその避難経路を事前に知ることができる. 北野宏明博士が提唱された RoboCup は, 「2050 年までに,完全自律型ヒューマノイド・ロボッ トで,ワールドカップ・チャンピオンに勝利する」と いう目標を掲げたプロジェクトである.しかし, RoboCup の真の目的は,この目標達成の過程で 生み出される技術を,重要な社会的問題や次世 代産業の技術基盤へと展開することである.その 中のグランドチャレンジプロジェクトの 1 つとして存 在する RoboCup-Rescue は,コンピュータ・サイエ ンスや人工知能,ロボティクスなどの最先端技術 を用いて,「災害救助」という普遍的価値を持つ問 題に貢献しようという基本的問題意識から始まっ たプロジェクトである.RoboCup-Rescue が目指す のは,災害現場にデジタル機器で武装化された 人間の救助隊と相互補完的に,自律型知能ロボ ットや半自律型ロボット等が作業を行い,刻一刻と 変化する状況を種々のセンサシステムや現場のロ ボット,救助隊や市民が情報発信し,包括的かつ 分散型災害救助シミュレータと連動する意思決定 支援システムが必要に応じて指示と情報を現場に 提供する,統合的な災害救助システムである. 災害救助システムにおいては,何より的確且つ 迅速な救助方針の決定が不可欠である.その実 現には,人間では近づくことが出来ない災害現場 の正確な把握と対策のシミュレーション,そして効 率的な情報の分析が鍵となる.衛星やファイバ・ケ ーブルを経由して,災害現場に入ったレスキュー ロボットから送られる映像と,高度でリアルな 3 次 元地図データがリアルタイムで一元的に大画面マ ルチスクリーンへ表示することで,その洞察力が高 度に高められた人々が複数情報を同時に分析し, より迅速な問題発見と的確な災害救助を実現する 総合的なシステム,それが SGI の考える災害救 助・防災システムである.日本 SGI が考える災害 救助システムの概要を図17に示す.日本SGIは, こういったシステムの核となる独自のビジュアリゼ ーション・システムとそのテクノロジを提供し, RoboCupやRoboCup Rescueによる研究活動で培 われたロボット技術のさらなる発展と,総合的な災 害救助司令センターシステムの開発・実用化を目 指している. 図 17. 災害救助システム概要 9.5 医療分野の可視化 医療分野では,人体の内部情報の可視化をす る必要があり,CT スキャンで得られた連続した画 像を用い,ボリュームレンダリングというボクセルと 呼ばれる直方体で輝度,不透明度等の情報を与 え,表現される.図 18 にボリュームレンダリング表 示された人体の例を示す. 図 18. ボリュームレンダリング表示した人体 ©National Library of Medicine Visible Human Project® 東京慈恵会医科大学の高次元医用画像工学 研究所は,「生きている人体」の心臓の拍動や,モ ーションキャプチャから骨格の導体の 4 次元モデ ルを取得し,日本 SGI と協力しリアルタイムの表示 を実現した.図 19 に生体情報の可視化例を示す. ユーザは,インタラクティブに複数の断面を設定し、 全身または特定の部位の断層面の形状と構造を 観察することが可能である.また、断面によって分 割されたモデルの体積を計測することもできる.
  • 9. 図 19. 4 次元の生体情報の可視化 「Virtual Anatomia」 ©IHDMI, Jikei Univ. 2009, 日本 SGI 株式会社 9.6 文化の可視化 文化財のデジタル保存/復元も行われている. 凸版印刷株式会社では,京都,奈良の文化財 の保存を手がけ,その 1 つとして,唐招提寺のイン タラクティブなリアルタイムシミュレータを開発し, 学芸員,住職の説明により全く異なった視点から の体験を可能としている.このシステムにより,通 常非公開となっている御影堂内の東山魁夷画伯 の障壁画を,いつでも好きなときに鑑賞することも できる.仮想空間の移動は,凸版印刷株式会社 の独自開発のコントロールパッドにより,直感的で 容易にできる.現在,実際の唐招提寺は,10 年間 の修復工事のため,公開されていない. 株式会社 NHK エンタープライズ 21 では,江戸 城を復元し,電子セットとしての利用方法を可能と した.図 20 に NHK エンタープライズ 21 により再 現された江戸城を示す.再現された江戸城は,柱, 屋根,畳などは「古さ」を表現し,襖絵などは完成 後 30 年後~50 年後の姿を想定し,CG により表現 されている.金地には,「金箔」「金泥」「砂子」など 金の種類別にそれぞれテクスチャの違いも表現さ れている. 図 20. 電子セット「幻の江戸城」 ©NHK エンタープライズ 21 9.7 デジタルプラネタリウム SGI の Onyx から複数出力される映像は,少し ずつ重ね合わせ出力し,プロジェクタの輝度を調 整することにより,シームレスな画面をエッジブレン ディング技術によって,実現することができる.図 21 にエッジブレンディング技術を示す. このような技術を用いた,ニューヨークにあるア メリカ自然史博物館のハイデンプラネタリウムでは, 3 次元画像により,銀河から銀河への旅行を楽し むことができる.ハイデンプラネタリウムの外観を 図 22 に示す. 図 21. エッジブレンディング技術 ©SGI Japan,Ltd 図 22. ハイデンプラネタリウム © 2000 American Museum of Natural History Photo by Denis Finnin ハイデンプラネタリウムでは,地球周回軌道上 の人工衛星に取り付ける大型の天体望遠鏡から の観察結果など,アメリカ航空宇宙局(NASA)の 協力も得て,実際の天文学的調査の結果と宇宙 根拠に基づくコンピュータモデルをもとにショーを 製作している.ハイデンプラネタリムの映像の例を 図 23 に示す. 図 23. ハイデンプラネタリウムの映像 © 2000 American Museum of Natural History., San Diego Super Computer Center – USCD, Digital Galaxy Project, Dome photo by Denis Finnin 日本では,株式会社五藤光学研究所は,3 次 元フルカラーCG をリアルタイムに生成し,ドームス クリーンに投影する「バーチャリウム」を富士川ウォ ーターワールド,松江テルサに導入している. 株式会社イメージスタジオ109,株式会社サンラ イズ,ディスクリート,丸文株式会社,日本 SGI 株 式会社は,プラネタリウム施設を有効利用し, SiliconGraphics Octane2 を使って,「起動戦士ガ ンダム」のストーリー世界を科学的に考証し,デジ
  • 10. タルセルアニメーションと3Dコンピュータグラフィッ クスで再現し,全天周スクリーン上で上映された. 図 24 に,プラネタリウムに上映された機動戦士ガ ンダムの映像の 1 例「Green Divers」を示す. 図 24.プラネタリウムで上映された「Green Divers」 © SOTSU-SUNRISE 9.8 Mixed Reality 技術 Mixed Reality とは,コンピュータで表現されたリ アルタイム CG の画像と現実に撮影したライブ映 像とをリアルタイムで継ぎ目なく融合させる技術の 総称である.日本では,エム・アール・システム研 究所の試験研究成果を引き継いで,実用化のた めの継承研究がキヤノン株式会社で行われてい る.シースルーヘッドマウントディスプレイ(HMD)を 装着し,CG の車と街並みとの調和を楽しんだり, 車の内部から CG の内装で色の組み合わせなど を確認することも可能である. 図 25. Mixed Reality ©キヤノン株式会社 図 25 の HMD を装着して実物のシートに座って いる人物の見える映像が上の図である.実物大の コンピュータグラフィックス(CG)車両を体験するこ とが可能で,車の仕様を対話的に操作可能である. 図 25 中の左図が実際の空間で,右図が HMD を 通して得られる,実際の空間の中に CG を重畳さ れた映像である. 実装されているユーザインタラクションとして,車 種の変更,ボディーカラーの変更,CG 車両のドア の開閉,ホイール・内装等の変更機能などがある. 図 26 に HMD より見える映像の例を示す. 図 26. HMD より見える映像 ©キヤノン株式会社 システム構成として,位置センサにて,ユーザと インタフェースデバイスの位置を計測し,CG描画 コンピュータの中で,リアルタイムに CG と現実世 界の合成を実現する.図 27 に Mixed Reality シス テムの構成図を示す. SGI Onyx Converter 実写映像 + CG (VGA) 実写映像 ・ センサー ・ カメラ(表示) ・ 表示 HMD 位置情報を送る 位置情報を送る Video + Graphics Optotarck 図 27. Mixed Reality システム構成図 ©キヤノン株式会社 Mixed Reality は,CG画像による仮想空間づく りを主に目指してきた Virtual Reality 技術に新し い流れを付け加えるものである.今後の利用方法 として,ショールームやアトラクション,設計デザイ ン等での分野での応用が期待される. 10. ビジュアル・コミュニケーションの展望 「百聞は一見にしかず」といわれるように,イメー ジを利用したコミュニケーションは,情報伝達を効 率化する.表 2 に計算機が支援する協調活動 「CSCW(Computer Supported Cooperative Work)」 を対面/分散であるか,リアルタイム/蓄積・非同期 であるかにより分類したものを示す. 蓄積・非同期型のタイプの協調作業は,情報共 有を得意とし,リアルタイム型の協調作業は意思 決定の支援を得意とする.近年のブロードバンド 環境の整備により,リアルタイム型のコミュニケー ションが可能となってきた.
  • 11. 表 2. Computer Supported Cooperative Work の分類と応用例 リアルタイム型 蓄積・非同期型 対面型 プリンタ機能付ホワイトボード デザインレビューソフトウェア - CAD データを使った設計確認 - 3 次元地図を使った景観シミュレーション 販売支援 分散型 IP-phone, skype テレビ会議 Mail, Web - サイボース, 掲示板, blog - 議事録, 日記, 2 ちゃんねる, SNS Google Earth, Google Map 企業・研究期間で迅速な意思決定を実現する ためには,蓄積・非同期型のツールで議論するの ではなく,リアルタイム型の協調活動をうまく導入 していくことが鍵となる.自動車会社では,店頭で 営業スタッフが PC を活用し、お客様へ車づくりの 特徴や他社との比較などを視覚的に分かりやすく 説明するビジュアルプレゼンテーションを導入し, 成果を上げているものもある. これらを実現するためには,コンテンツのアーカ イブ,著作権管理,見せる相手を考慮したコンテ ンツの再構成,配信,効果的な提示方法の確立 が必要である. 11. おわりに 本稿では,グラフィックス・パイプラインについて ふりかえり,さらに,グラフィックス・ハードウェア, 可視化開発環境,ビジュアル・コミュニケーション の展望を述べた.人間が予見できないであろう事 象を迅速に可視化することによって,意志決定の 支援となるであろう. 起こっている問題を顕在化させることを「見える 化」といわれている.つまり問題は既に起こってい るのだ.それに対し,私たちは,ビジョンを共有す ることを「魅せる化」と提唱している.ビジョンを先 行して共有しておけば,ビジョンに照らし合わせ, 起こりそうな問題は未然に予防できる. さいごに,私たちは,可視化実務経験から,高 品位な可視化には 3 種類のタイプの人材が必要 だと考えている.1 つ目は可視化対象のデータの 意味が分かる人(Scientist).2 つ目は,可視化のた めの手順を知っている人(Engineer).具体的にい うと,GPU のしくみを知り,OpenGL,DirectX, MPI などが使えるプログラマや AVS,Maya 等の可視 化ソフトウェアが使えるアプリケーションエンジニア などである.3 つ目は,シナリオが書け,芸術的な センスをもった人(Artist)である.私たちは,これら 3 種類の人材を駆使しながら,「魅せる化」におい て,効果的に可視化技術を活用したいと考えてい る. 12. 謝辞 本テキスト作成にあたり,3 章では,財団法人 画 像情報教育振興協会 宮井あゆみ様に,4 章では, 日本 SGI 株式会社 柿本正憲様に,株式会社エクサ 松本昌幸様に,9 章では,株式会社ソリッドレイ研究 所 , 株式 会社 未来技 術研 究所, Ken Okuyama Design 奥山清行様,株式会社ジオ技術研究所 三 毛陽一郎様, 東京大学 越塚誠一教授, プロメテッ ク・ソフトウェア株式会社 藤澤智光様, 株式会社パ スコ, 東京慈恵会医科大学 鈴木直樹教授, 筑波大 学 西岡貞一教授,株式会社 NHKエンタープライズ 21 松本寿子様,キヤノン株式会社 山本裕之様にご 協力頂いた.また多くの上司,同僚,恩師である東北 大学 中村維男名誉教授からも有用な助言を受けた. これらの方々のご協力がなければ,このテキストは完 成しえなかった.ここに記して,心より感謝する.最後 に,本講義の機会を与えて下さった上智大学に感謝 致します. 参考文献 [1] グラハムハンコック. 神々の指紋(上,下). 小学 館, 1999 [2] 謝世輝. スーパー世界史. 講談社, 2001 [3] 藤井千之助. 総合世界史図表. 第一学習社, 1992 [4] アルベルト・シリオッティ. エジプト驚異の古代 文明. A.A GADDIES & SONS, 1994 [5] Jamaes D.Foley, コンピュータグラフィックス理 論と実践.オーム社, 2001. [6] 中嶋正之,他.技術編 CG 標準テキストブック. CG-ARTS 協会(財団法人画像情報教育振興協会), 1999 [7] 日本 SGI 株式会社システムインテグレーション本 部研修センター.コンピュータグラフィックス基 礎.日本 SGI 株式会社,1999
  • 12. [8] 西田友是.フォトリアリスティックレンダリング の最新技術 bit Vol.31 No.11 P3-7,1999. [9] 輿水大和.まるごと図解最新コンピュータグラフ ィックスがわかる.技術評論社, 2000 [10] 今間俊博.CG 基礎セミナー.オーム社開発局,2002 [11] 中嶋正之.3 次元 CG.オーム社,1994. [12] 中嶋正之.コンピュータビジュアリゼーション.共 立出版社,2000 [13] 松本昌幸.グラフィックス技術の全てを掌中に収 める SGI.日経 CG SiliconGraphics 320/540 のすべて P22-26,1999 [14] 中村維男.コンピュータデザインコンセプト.講談 社サイエンティフィック,2002 [15] JockieNeider.OpenGLProgrammingGuide.Addison -Wesley,1993. [16] J. Clark, “The geometry engine: A VLSI geometry system for graphics,” In Proc. SIGGRAPH 1982, pp. 127-133 (July 1982). [17] K. Akeley, T. Jermoluk, “High-Performance Polygon Rendering”, In Proc. SIGGRAPH 1988, pp.239-246 (August 1988). [18] K. Akeley, “The Silicon Graphics 4D/240GTX Super -workstation,” IEEE CG&A, Vol. 9, No. 4, pp.71-83 (July 1989). [19] K. Akeley, “RealityEngine Graphics,” In Proc. SIGGRAPH 1993, pp. 109-116 (August 1993).. [20] J. Montrym, D. R. Baum, D. L. Dignam, C. J. Migdal, “Infinite Reality: A Real-Time Graphics System,” In Proc SIGGRAPH 1997, pp. 293-302 (July 1997). [21] E. Lindholm, M. J. Kilgard, H. Moreton, “ A User-Programmable Vertex Engine, ” In Proc. SIGGRAPH 2001, pp. 149-158 (August 2001). [22] Chromium: http://chromium.sourceforge.net/ [23] NVIDIATesla:http://www.nvidia.com/object/tesla_co mputing_solutions.html [24] Adobe AIR: http://labs.adobe.com/technologies/air/ [25] NVIDIACUDA http://developer.nvidia.com/object/cuda.html [26] ATICTM: http://ati.amd.com/companyinfo/researcher/documents /ATI_CTM_Guide.pdf [27] 相川恭寛.OpenGL プログラミングガイドブック. 技術評論社,1995. [28] George Eckel.OpenGL Volumizer Programmer’s Guide,1998 [29] Greg Humphreys. WireGL: A Scalable Graphics System for Clusters.ACM SIGGRAPH 2001. [30] Steven Molnar. A Sorting Classification of Parallel Rendering. [31] 戸室隆彦, 日本SGI Solution News Linux Solution特 集 February 2004 [32] 越塚誠一著, 粒子法, 丸善(株)出版事業部, 2005 [33] Virtual Anatomia: http://www.sgi.co.jp/products/software/va/ [34] 13) 日本 SGI がマツダから「商談支援システム」 を受注、構築: http://www.sgi.co.jp/newsroom/press_releases/ 2006/may/mazda.html [35] 松木強.Digital Medicine.デジタルフラットパネル の有用性-ColorLock 技術による LCD のキャリブ レーション-P65-67.有限会社ルートワン,2000 [36] 財団法人 新映像産業推進センター 先導的アーカ イブ映像制作支援事業推進室. 先導的アーカイブ 映 像制 作支援 事業 作品集 .大日本印 刷株式 会 社,1999 [37] 通商産業省機会情報産業局新映像産業室.デジタ ルアーカイブ「先導的アーカイブ映像制作支援事 業」報告.株式会社ニューメディア,1999 [38] 田村秀行.「研究所紹介」(株)エム・アール・シス テム研究所.情報・システムソサイエティ誌 第 2 巻第 3 号(通巻 7 号) [39] 橋 本 昌 嗣 ,Jonathan Brandt. Object Oriented 3D Graphics. 北陸先端科学技術大学院大学情報科学 研究科修士論文副テーマ,1995 [40] 橋本昌嗣,海谷治彦,篠田陽一.映像文法に基づいた 遠隔リアルタイム会議システムの画像インタフェ ース制御法.北陸先端科学技術大学院大学情報科 学研究科修士論文,1997 [41] 川上直木,川瀬宏一郎,小寺康男,鈴木大輔,萩原豊隆, 橋本昌嗣,落水浩一郎.ネットワークを介した協調 活動の支援環境.北陸先端科学技術大学院大学情 報科学研究科 ResearchReport,1996 [42] P. Dourish and S. Bly. Portholes: Supporting Awareness in a distributed Work Group. In CHI’92 Proceedings, 1992 [43] 松下温,岡田謙一編著. コラボレーションとコミュ ニケーション. 共立出版, 1995 [44] 石井裕著: CSCW とグループウェア.オーム社,1994 [45] 高橋誠.会議の進め方.日本経済新聞社,1987 [46] 高橋誠.問題解決手法の知識.日本経済新聞社, 1996 [47] Tadao Nakamura, Masatsugu Hashimoto, Geng Chun, Norio Izumi. Visual Architecture. Proceeding of the Second International Conference on Information, 2002 [48] HenrikWannJenson 著,苗村健訳.フォトンマッピン グ.オーム社出版局,2002 [49] Greg Hunphreys.Chromium:A Streaming-Proces- sing Framework for Interactive Rendering on Cl- usters. Proceedings of ACM SIGGRAPH 2002, 2002 [50] 橋本昌嗣,耿春,平田哲也,柿本正憲,中村維男, リア ルタイム・ビジュアル・デザインレビューの設計 と実装,情報処理学会グラフィックスと CAD 研究 会 No.113, 2003 [51] 橋本昌嗣, Visual Computer Architectures, 東北大学 大学院情報科学研究科博士論文, 2004