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民法改正に伴うウェブサービス利用規約
作成&改訂のポイント
2019年12月6日
STORIA法律事務所
弁護士 杉浦 健二
k-sugiura@storialaw.jp
弁護士杉浦 健二|k-sugiura@storialaw.jp
▼主な取扱分野
ウェブサービスの新規ビジネスモデル構築、
利用規約・プライバシーポリシーの策定、
AIプロファイリングビジネスの法的サポート、
ITビジネスやコンテンツビジネスにおける各種
契約書の作成。 SaaS、AI/IT、ソフトウェア、
IoT、データビジネス、エンタテインメントな
どの案件を主に取り扱う
▼主な顧問先企業
AI/ITビジネス、ウェブサービス、ソフトウェ
ア開発、プラットフォームビジネス、IoT、
データビジネス、ゲームコンテンツ制作、エン
タテインメント企画制作など東証一部からス
タートアップまで
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▼注力する法分野
AI/IT関連法、ウェブサービス関連法全般
(個人情報保護法、著作権法、資金決済法など)
▼略歴
企業勤務を経て2007年弁護士登録。2015年
STORIA法律事務所設立、東京・神戸の2事務所
体制(現在弁護士8名)。カリフォルニア州立工
科大学外部講師(2019年-)
▼メディア等(直近)
日本経済新聞(2019年8月16日朝刊)
NHK「ニュースウォッチ9」(2019年9月6日)
「クローズアップ現代+」(2019年10月29日)
個人情報保護法やAIプロファイリング問題に
関するコメント、出演など
弁護士法人STORIA https://storialaw.jp
STORIA法律事務所東京オフィス パートナー弁護士
1
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【本日のポイント】
ウェブサービス利用規約のほとんどが、
民法改正で新設された「定型約款」にあたる
①「定型約款」制度を理解する
② 民法改正で、自社のサービス利用規約に
どのような影響が生じるかを把握する
③ 施行日である2020年4月1日までに行うべき
自社の要対応事項をリストアップする
2
民法(債権法)改正の概要
▼民法(債権法)改正の概要
▼施行日→2020(令和2)年4月1日
※一部例外:定型約款に関する反対の意思表示の規定等
▼民法改正の目的
①社会経済の変化への対応(120年ぶりの大改正)
短期消滅時効の廃止、法定利率の引き下げ、定型約款の創設など
②国民一般にとっての分かりやすさの向上
確立した判例法理や現在通用しているルールの明文化
⇒そもそも法律が改正される影響とは?
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民法(債権法)改正の概要
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(前提)法律と契約の関係
■ルール1 法律と異なる内容を契約で定めれば、
契約が優先する(契約自由の原則)
例)請負の瑕疵担保責任は引渡から1年→契約で半年に変更可
■ルール2 契約に何も書かれていなければ、
法律が適用される
例)著作権は著作者が享有する(著17条1項)
4
交わした
契約書
法的効果
民法(債権法)改正の概要
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(前提)法律と契約の関係
■ルール1 法律と異なる内容を契約で定めれば、
契約が優先する(契約自由の原則)
例)請負の瑕疵担保責任は引渡から1年→契約で半年に変更可
■ルール2 契約に何も書かれていなければ、
法律が適用される
例)著作権は著作者が享有する(著17条1項)
法律が適用されて不利にならない立場なら、
あえて契約書で定めなくてもよい
(例)ベンダ側のプログラム著作権
5
民法(債権法)改正の概要
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(前提)法律と契約の関係
■ルール1 法律と異なる内容を契約で定めれば、
契約が優先する(契約自由の原則)
例)請負の瑕疵担保責任は引渡から1年→契約で半年に変更可
■ルール2 契約に何も書かれていなければ、
法律が適用される
例)著作権は著作者が享有する(著17条1項)
民法(債権法)改正の多くは、
契約に何も書かれていない場合に適用される
「デフォルトルールの変更」
6
民法(債権法)改正の概要
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▼強行規定については例外的に「法律>契約」
■1 契約が法律に優先するのが原則
(任意規定。契約自由の原則)
例)現行民法第637条
「瑕疵担保責任の請求は引渡から1年以内」
■2 一定の規定は、法律が契約に優先する
(強行規定)
例) 消費者契約法、労働基準法
定型約款の不当条項規制(548条の2第2項)
任意規定か強行規定、どちらなのかが重要
7
民法(債権法)改正の概要
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契約なし 契約あり
任意規定
法律の規定
(デフォルトルール)
が適用される
契約どおりに
修正される
強行規定
法律の規定
(デフォルトルール)
が適用される
契約によっても
修正できない
法律の性質
契約の有無
▼民法改正の多くはデフォルトルールの変更である
民法(債権法)改正の多くは、
契約に何も書かれていない場合に適用される
デフォルトルールの変更
8
民法(債権法)改正の概要
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契約なし 契約(利用規約)あり
任意規定
法律の規定
(デフォルトルール)
が適用される
契約(利用規約)
どおりに修正される
強行規定
法律の規定
(デフォルトルール)
が適用される
契約(利用規約)に
よっても修正できない
法律の性質
契約の有無
利用規約を適切に作成しておけば
強行規定に反しない限り
契約関係をデザインできる
▼法律のデフォルトルールを修正できるのが
契約(利用規約)
9
民法(債権法)改正の概要
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契約なし 契約(利用規約)あり
任意規定
法律の規定
(デフォルトルール)
が適用される
契約(利用規約)
どおりに修正される
強行規定
法律の規定
(デフォルトルール)
が適用される
契約(利用規約)に
よっても修正できない
法律の性質
契約の有無
定型約款の規定の一部
(不当条項規制)は
強行規定にあたる
▼しかし強行法規は契約(利用規約)でも
修正できない
10
民法(債権法)改正の概要
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▼ほとんどのウェブサービス利用規約は、
民法改正で新設された「定型約款」にあたる
【本日のポイント】
①「定型約款」制度を理解する
② 民法改正で、自社のサービス利用規約に
どのような影響が生じるかを把握する
③ 施行日である2020年4月1日までに行うべき
自社の要対応事項をリストアップする
11
定型約款の概要
12
定型約款の概要
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▼定型約款の概要まとめ①
▼これまで不明確だった「約款を用いた取引」の
法的安定性を確保するため、民法改正で新設された
▼有効性が不明だった「約款の一方的変更」の要件が
「ある程度」整理された
▼「約款」のうち、一部が「定型約款」にあたる
(全ての約款が定型約款にあたるわけではない)
▼ほとんどのウェブサービス利用規約は
「定型約款」にあたる
13
定型約款の概要
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▼定型約款の概要まとめ②
▼「定型約款」に該当すれば、
①個別の条項を認識していなくても、すべての条項に
ついて合意したとみなされる(みなし合意)
②一定の要件を満たせば、
個別の同意を得なくても一方的に内容を変更できる
③ただし不当条項についてはみなし合意とならないなど
利用者保護のために一定の制限がある
▼まだ不明確な点は多い(今後の事例の集積が待たれる)
⇒施行前&解釈が確定していない現段階で、実務上
どうしておくのが賢い選択かとの視点から解説する
14
▼定型約款に該当する場合の効果
定型約款の概要
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定型約款
(548の2Ⅰ)
定型約款でない約款
定型約款の規定が適用される
(改正法548の2~548の4)
※みなし合意が可能
(ただし不当条項は除く)
※一定の要件を満たす場合のみ、
一方的な変更が許される
民法の意思表示や契約に関する
一般的な規定(従来の約款理論)が
適用される(一問一答Q135、実務Q&AQ21)
※要件・効果は不明確
・不特定多数要件
・合理的画一性要件
約款の一方的な変更は、要件が厳しくなると考えられる
15
▼改正民法施行前後のスケジュール
定型約款の概要
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現在の利用規約
2020年4月1日
変更する際は定型約款の規定が適用される
①一方的な変更は548条の4の要件
を満たす必要あり
②548条の4の要件を満たさない
変更は個別に同意を得て行う
必要な変更は改正前
に行っておく
①548条の2の要件(みなし合意)で
締結できる
②不当条項規制あり(548条の2Ⅱ)
※toBサービスでも適用される
③一方的な変更は548条の4の要件
を満たす必要あり
④548条の4の要件を満たさない
変更は個別に同意を得て行う
利用規約の一方的な変更が許される要件は、
改正後は厳格になると考えられる。
そのため
①今後予定している変更があれば、改正前に
前倒しで行っておく
②新たに利用規約の作成を予定している場合
は、できるだけ後で変更が生じないよう
入念に作成しておく
③不当条項がないかチェックしておく
(ただし改正前に締結された定型約款に基づく契約に、
不当条項規制(548条の4Ⅱ)は適用されない)
⇒改正法が施行
利用規約に基づき新たに契約締結
16
定型約款の概要
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▼改正民法の施行前に行っておくべきこと
①今後利用規約の変更を予定している場合は、
改正前に前倒しで行っておく
※現行法では一方的な変更が許される要件は不明確であるが、
「変更後の利用継続による黙示的な同意」が認められる
余地があるとされる(経産省「準則」P26)
⇒しかしこのような同意条項の有効性は、改正後は疑問が残る
⇒自社の利用規約に「黙示の同意条項」があれば、
改正前の今のうちに最大限活用するべき
②変更する場合、改正法を見据えた内容にする
▼不当条項を含んでいないかどうかなど
③ウェブサービス利用規約以外の規約のチェック
▼定型約款に該当するかの確認(ソフトウェアライセンス規約など)
▼該当する場合には不当条項や変更規定のチェック
17
民法改正と、経産省
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
18
民法改正と経産省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
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経済産業省
「電子商取引及び
情報財取引等に関する準則」
▼経産省が現行法の解釈を提示する
ことにより、インターネットビジ
ネスをめぐる法解釈の指針として
機能している
▼最新版は平成30年7月に改訂
(https://www.meti.go.jp/press/2018/
07/20180727001/20180727001.html)
⇒民法改正を踏まえた改訂は未了
(2019年12月現在)
19
民法改正と経産省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
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▼定型約款に関する理解と解釈の参考となる書籍
■実務Q&A
「定型約款の実務Q&A」(商事法務)
村松 秀樹・松尾 博憲(著)
■一問一答
「一問一答 民法(債権関係)改正」 (商事法務)
筒井 健夫・村松 秀樹(著)
20
定型約款該当性(548条の2第1項)
21
▼定型約款に該当すると
定型約款の概要
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定型約款
(548の2Ⅰ)
定型約款でない約款
定型約款の規定が適用される
(改正法548の2~548の4)
※みなし合意が可能
(ただし不当条項は除く)
※一定の要件を満たす場合のみ、
一方的な変更が許される
民法の意思表示や契約に関する
一般的な規定(従来の約款理論)
が適用される(一問一答Q135、実務Q&AQ21)
※要件・効果は不明確
・不特定多数要件
・合理的画一性要件
定型約款に該当するかがどうかがまず重要
22
定型約款該当性(548条の2第1項)
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第548条の2第1項
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内
容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同
じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者
は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とする
ことを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個
別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじ
めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた
とき。
24
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼定型約款とは
「定型取引において、契約の内容とすることを目的として
定型約款準備者により準備された条項の総体」
▼定型取引とは
「定型約款準備者が不特定多数の者を相手方として行う取引で
あって、その内容の全部又は一部が画一的であることが
その双方にとって合理的なもの」
▼定型約款の定義をまとめると
①不特定多数の者を相手方として行う取引であり
(不特定多数要件)、かつ
②当該取引の内容の全部又は一部が画一的であることが
その双方にとって合理的である場合(合理的画一性要件)
において、契約の内容とすることを目的として
定型約款準備者により準備された条項の総体
25
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼不特定多数要件
…相手方の個性を重視せずに多数の取引を行う場合
⇒相手方の個性に着目して実質的に契約審査が行われている
場合は、不特定多数要件を満たさない。
もっとも定型化された基準への適合性を、
いわば画一的形式的に審査(スクリーニング)するに
とどまる場合は(反社条項やブラックリスト顧客のチェック等)、
不特定多数要件を満たすと考えられる。
※不特定多数要件は、以下の要素を中心に判断される。
①相手方の数や②契約締結までに要する時間
③相手方の負う義務の履行期や金額
(将来に履行される場合、高額取引である場合等)
④義務の種類(単なる金銭債務か労務提供なども含まれるか等)
⑤締結方式(ネットや郵送か対面か等)
⑥締結資格の限定(特定の資格者のみに限定しているか)
26
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼合理的画一性要件
…取引相手が約款の変更を求めずに契約を締結すること
(=契約交渉が行われないこと)が双方にとって合理的である場合
⇒取引金額が少額であったり迅速性が重視される取引は、
合理的画一性要件を満たしやすい
⇒画一性の理由が単に当事者の交渉力格差にあるときは、
合理的画一性要件を欠く(∵ 一方にとって合理的に過ぎない)
(フランチャイズ契約に関する国会答弁)
⇒画一性の理由が対応コストの転嫁回避による安価なサービス
提供の実現にあるときは、合理的画一性を満たす方向に傾く
(大規模な賃貸借契約に関する国会答弁)
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定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼取引の「一部が画一的」とは
当該取引の内容の全部又は一部が画一的であることが
その双方にとって合理的である場合(合理的画一性要件)
⇒契約条項のごく一部のみが画一的でない場合にまで、
定型取引と扱わないとするのは適切でない(実務Q&A Q7,Q4)
⇒「一部が画一的」とは、取引の重要部分のほとんどについて
合理的画一性要件を満たす場合を指す
契約条項のごく一部のみが画一的でない例:
▼携帯電話サービスで、利用者が個別に料金プランを選択して
契約を締結する場合
▼ SaaSでオプションサービスを複数選択できる場合
28
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼料金表、サービス内容も定型約款に含まれるか?
(例)利用規約内で料金表が明示されている
料金が明示されたページに利用規約からリンクが張られている
→〇 定型約款に含まれると考えられる
(例)複数の料金プランやサービス内容のなかから選択できる
→〇 同じプランを選択した利用者ごとに定型的である
限りは、なお定型約款に含まれると考えられる
⇒定型約款に該当する料金表やサービス内容を変更する場合は、
変更規定(548条の4)によることになる
⇒定型約款に該当しない場合、料金表やサービス内容の変更は、
個別合意が必要になる
29
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼定型約款に該当する例
・鉄道等の旅客運送約款、保険約款、スポーツクラブ利用約款
・ソフトウェアライセンス規約
・ECサイト購入約款
・ウェブサービス、アプリ利用規約
→SNSやオンラインゲーム等(BtoCサービス)
SaaS規約やECサイト出店規約(BtoBサービス)
ネットオークション規約(CtoCサービス)
のいずれも含まれる
※定型約款該当性を満たす内容である限り、「利用規約」「会員規則」
「ガイドライン」「SLA」など具体的な名称は問われない
▼定型約款に該当しない例
×事業者間の契約書ひな型
×労働契約書
×基本契約書の存在を前提とした個別契約書
×ユーザと個別に交渉を行っている場合(ひな型どおりの内容で締結しても×)
30
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼定型約款該当性に議論があるもの
・銀行取引約定書
→×(国会答弁では、個別交渉で修正されることもあり得る
ことを理由として該当性を否定)
・住宅ローン契約書
→×(国会答弁で否定。金額や取引の重大性)
・賃貸借契約書
→原則×(ただし大手不動産会社が複数の大規模居住用建物
について多数の賃貸借契約を締結するような場合は
例外的に該当しうるとの国会答弁)
・フランチャイズ契約
→×(画一的なのは単に交渉力の格差によるもの)
・プライバシーポリシー
31
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼プライバシーポリシーは定型約款か?
プライバシーポリシー(プライバシーステートメント、基本方針)
…事業者が個人情報保護を推進する上での考え方や方針
「個人情報の保護に関する基本方針」(政府資料)より
(前提)
個人情報保護法上、プライバシーポリシーのうち利用目
的等を定める部分は原則として公表・通知がされれば
よく、同意の取得は必須ではない。
→すべてのプライバシーポリシーについて
ユーザの同意を得る必要があるというのは誤り。
利用規約とは法的性質が異なる
32
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼プライバシーポリシーは定型約款か?
(参考)個人情報の保護に関する法律についての経済産業
分野を対象とするガイドライン
(平成28年12月・経済産業省)
「(2)個人情報保護を推進する上での考え方や方針の策
定等個人情報取扱事業者は、「個人情報保護を推進する
上での考え方や方針(いわゆる、プライバシーポリシー、
プライバシーステートメント等)」を策定し、それを
ウェブ画面への掲載又は店舗の見やすい場所への掲示等
により公表し、あらかじめ、対外的に分かりやすく説明
することが、消費者等本人との信頼関係を構築し事業活
動に対する社会の信頼を確保するために重要である。」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/161228koj
oguideline.pdf
33
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼プライバシーポリシーは定型約款か?
▼個人情報保護法において「本人の同意」が求められる条項
※個人情報保護法で条文上「本人の同意」が現れるのはこの4つだけ
①利用目的の達成に必要な範囲を超えた取扱いの同意(16条2項)
②要配慮個人情報の取得の同意(17条2項)
③個人データの第三者提供の同意(23条1項柱書)
④外国にある第三者へ個人データ提供の同意(24条)
▼個人情報保護法において公表等が求められる条項
①利用目的の通知、公表又は明示(18条1項2項)
②変更された利用目的の通知又は公表(18条3項)
③オプトアウトによる第三者提供に関する通知又は本人が容易に
知りえる状態に置くこと(23条2項柱書)
④共同利用についての通知等(23条5項3号)
⑤保有個人データに関する事項を本人の知りえる状態に置くこと(27条1項)
⑥匿名加工情報に関する公表事項(36条3項、4項及び6項、37条、39条)
34
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼プライバシーポリシーは定型約款か?
個人情報保護法上の「本人の同意」は、あくまで私法上の行為では
なく、契約の成立に向けられたものではない公法上の行為であるた
め「契約の内容とすることを目的として準備された…条項の総体」
(548条の2)にあたらず、定型約款には該当しない(実務Q&AQ30)
もっとも公法上の行為ではあるものの、あわせて「プライバシーに
関する請求権を行使しない」という意思表示を含む私法上の同意も
観念できる
(情報法制研究第2号・プライバシーに関する契約についての考察(2) 2017.11)
⇒とすればプライバシーポリシーも
定型約款に該当し得ることになるが・・
35
定型約款該当性(548条の2第1項)
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プライバシーポリシーが定型約款に該当するとなれば、
①「本人の同意」を定型約款のみなし合意で得たり
②定型約款の変更要件(548条の4)を
満たせばユーザの同意を得ない一方的な変更も
可能となり得るが・・・
本当にそうなのか?
36
定型約款該当性(548条の2第1項)
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▼個人情報保護法上の「本人の同意」取得も、
定型約款の「みなし合意」で得られるのか?
(私見)
プラポリの同意には
①個人情報保護法(公法)上の同意と
②プライバシーに関する請求権を行使しないという私法上の同意
の2つの意味がある。
②私法上の同意の範囲では、プラポリは定型約款(契約の内容とす
ることを目的として準備された…条項の総体)にあたるとしてみな
し合意が成立する可能性があるが、①個人情報保護法上の同意をみ
なし合意で得るのは困難と考えられる(個情法≠私法)。したがっ
て①個人情報保護法上の同意については、あくまで全文を事前に表
示したうえで同意を取得する方法による必要がある。
37
定型約款の組入要件(548条の2第1項)
39
定型約款の組入要件(548条の2第1項)
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第548条の2第1項
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内
容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同
じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者
は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とする
ことを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個
別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじ
めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた
とき。
40
定型約款の組入要件(548条の2第1項)
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▼個別の条項が契約の内容となる要件(組入要件)
①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
(例)「●●ウェブサービス利用規約を適用することに同意します」と
記載されたボタンをクリックした場合
(例)申込書に「別紙利用規約が適用されることに合意します」
との一文があり、これを確認したうえで署名捺印した場合
※個別条項が事前に表示されることは、合意が成立する要件ではない
②あらかじめ「その定型約款を契約の内容とする旨」
を相手方に表示していたとき
→同意クリック等の明示的な同意行為がなくとも、
あらかじめ「その定型約款を契約の内容とする旨」を相手方に表示
していれば、有効な契約になるとした
※単に利用規約を自社ウェブサイト内の別の箇所で公表しているだけでは
足りず、ユーザ向けに個別に表示されていることが必要
⇒①か②いずれかの要件を満たせば、個別の条項についても契約の内容に
組み入れられ、個別の条項を含めて合意したものとみなされる。
41
定型約款の組入要件(548条の2第1項)
▼しかし経産省「準則」の要件は改正民法より厳しい
サイト利用規約がその契約に組み入れられる…ためには、
Ⅰ 利用者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるように
適切にサイト利用規約をウェブサイトに掲載して開示されていること、及び
Ⅱ 利用者が開示されているサイト利用規約に従い契約を締結することに
同意していると認定できることが必要である。(準則Ⅰ-2-1、P20(2))
https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180727001/20180727001-1.pdf
→「準則」の要件は、②「あらかじめ…表示」のみで
足りるとする改正民法の組入要件よりも厳しい
→現行の「準則」は民法改正が反映される前であるが、
ウェブサービス事業者としては
改正法の②「あらかじめ…表示」要件によるのではなく、
「準則」の上記Ⅰ+Ⅱ要件を満たす運用としておくことが無難
→「準則」に従った運用をしているのであれば、
あえて現在の運用を変更する必要はない
storialaw.jp All rights reserved. 42
定型約款の組入要件(548条の2第1項)
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▼経産省「準則」が例示する具体例
○申込みボタンとともに、利用規約へのリンクが明瞭に設けられている場合
例「サイト利用規約に同意の上で申し込みます」+利用規約へのリンク
○利用規約への同意クリックが要求されており、かつ利用者が
いつでも利用規約を閲覧できるように利用規約の内容が開示されている場合
×サイト中の目立たない場所に利用規約が掲載されているだけで、
利用規約への同意クリックも要求されていない場合
→「準則」は上記のように利用者の何らかの同意行為を求めている
→ユーザに何らかの義務や不利益が生じ得るサービス
(有償サービスやUGCサービス)については従前どおり
「準則」の要件を採用し、
無償の検索サービスやニュース情報を提供するようなサービスに限って
②「あらかじめ…表示」要件(548の2Ⅰ②)を採用するのが無難
43
▼548条の2第1項の構造(まとめ)
定型約款の概要
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定型約款に該当するか
定型約款…定型取引(不特定多数要件+合理的画
一性要件)において、契約の内容とすることを目
的として準備された条項の総体
定型取引を行うことの
合意はあるか
みなし合意
組入合意はあるか
定型取引を行うことの合意
(次の組入合意と同時に行われることも多い)
① 定型約款を契約の内容とする旨の合意
または
② あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨
を相手方に表示
定型約款の個別の条項についても
合意をしたものとみなされる (ただし不当条項除く)
44
不当条項規制(548条の2第2項)
45
不当条項規制(548条の2第2項)
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第548条の2第2項
前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限
し、又は相手方の義務を加重する条項であって、
その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らし
て第1条第2項に規定する基本原則(信義則)に反して相手方の利
益を一方的に害すると認められるものについては、
合意をしなかったものとみなす。
第1条第2項
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければなら
ない。
46
不当条項規制(548条の2第2項)
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第548条の2第2項(シンプルにすると)
【要件】
①相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項で
②その定型取引の態様
その定型取引の実情
取引上の社会通念に照らして、
信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる条項
【効果】
合意をしなかったものとみなす。
→定型約款の合意は、個別の条項の内容まで
認識せずに契約を締結するもの
→不当な条項については定型約款の組入要件を
満たしていても「合意をしなかったものとみなす」とした。
47
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼不当条項の例
▼事業者の免責を広く認める条項(過大な免責規定)
▼過大な違約金を定める条項
▼長期の利用料を前払いさせつつ、
中途解約を認めない(一切の返金を行わない)条項
▼主サービスと比較して高額な保守費用を払わせる条項
▼本来購入目的の商品に加えて想定外の商品購入を
義務づける、抱き合わせ販売条項
→これらの条項が、常に不当条項に該当するわけではない。
その定型取引の態様や実情・取引上の社会通念から、
信義則に反する条項かどうかがケースバイケースで判断される
(例えば特定の分野に精通した専門家向けサービスか等)
48
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼不当条項規制の注意点
▼①条項の内容自体の不当性に加えて
②その条項の存在が合理的に認識・予測困難であったかという
不意打ち的要素も考慮される
→不意打ち的要素を減らすためには、利用規約に加えて
★ サイト内のサービス説明部分で目立つよう記載する
★ 同意クリック取得ページで目立つよう記載する
などの対策が考えられる
▼「代金が不当に高すぎる」といった給付と対価の不当性には
適用されない(Q&AP99。公序良俗違反の問題となる)
▼定型約款の不当条項規制は、
消費者契約法のようにBtoCサービスに限られず、
BtoBサービスにおいても適用される
▼不当条項規制対策で、最も検討すべきは「免責規定」
49
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定とは
▼自社が負う責任の範囲を限定する条項を
免責規定という
▼利用規約や契約書で免責規定を定めていない場合、
法律(民法)がそのまま適用される
▼民法がそのまま適用された場合、相当広い損害賠償責任を
負うことになってしまう
(自社に故意または過失(軽過失含む)がある場合に、
相当因果関係のある損害)
▼そこで免責規定を定めて自社の責任を限定するべきだが、
一定のラインを超えると免責規定は無効になってしまう
(不当条項規制、消費者契約法違反)
▼そこで免責規定はどこまで攻めるべきかが問題となる
50
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定の例
【F社利用規約(2012年当時)】※顧客データの消失事故
第35条(免責)
6 当社は、本サービスに関連して生じた契約者及び第三者の結果的損害、付随的損
害、逸失利益等の間接損害について、それらの予見または予見可能性の有無にかか
わらず一切の責任を負いません。
8 本条第2項から6項の規定は、当社に故意または重過失が存する場合または契約
者が消費者契約法上の消費者に該当する場合には適用しません。
第36条(損害賠償額の制限)
本サービスの利用に関し当社が損害賠償責任を負う場合、契約者が当社に
本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負うものとします。
▼軽過失であれば全部免責
▼故意重過失がある場合でも、賠償責任の上限額は
ユーザの支払額とする、という規定だった
51
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定の例
【C社利用規約(2018年当時)】※仮想通貨が外部に不正送信
第17条(免 責)
5 当社は、当社による本サービスの提供の中断、停止、終了、利用不能又
は変更、登録ユーザーのメッセージ又は情報の削除又は消失、登録ユー
ザーの登録の取消、本サービスの利用によるデータの消失又は機器の故障
若しくは損傷、その他本サービスに関連して登録ユーザーが被った損害に
つき、賠償する責任を一切負わないものとします。
⇒BtoC契約において、
「一切責任を負わない」旨を定めていた
⇒このような免責規定は、強行規定違反
(消費者契約法違反、不当条項規制違反)ではないか?
52
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼2019年8月に発生したAWS大規模障害
▼米Amazon社が運営する
クラウドサービス「アマゾン・
ウェブ・サービス」(AWS)で、
2019年8月23日、大規模なシス
テム障害が発生し、AWSを利
用する各社のサービスは接続が
不可、支払いや入金ができなく
なるなど、影響は広範囲に及ん
だ
(右図は日本経済新聞2019/8/23付ウェブ
サイト記事より引用)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZ
O48956120T20C19A8EA1000/
53
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼AWS カスタマーアグリーメント(2019年8月時点)
▼一部のサービスを
除き、可用性が95%
を下回った場合は
サービスクレジット
(将来使えるクーポ
ンのようなもの)を
交付する(SLA)
▼それ以外の責任は
限定され、最大でも
過去12か月の利用料
が上限
https://d1.awsstatic.com/legal/aws-customer-agreement/AWS_Customer_Agreement-JP_(2019-04-30).pdf
54
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定を考える視点
外部システム
(AWSなど)
ユーザー
(toC)
自社
サービス
▼消費者契約法
▼定型約款の
不当条項規制
ユーザー
(toB)
免責規定
▼定型約款の
不当条項規制
▼定型約款の
不当条項規制
※ただし準拠法の問題あり
免責規定
免責規定
①定型約款の不当条項規制は、toBにも適用される
②自社システムに障害発生 or 外部システムに障害発生
いずれの事態もありうる
55
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定を定める視点
▼1 自社にどの程度の落ち度がある場合に
(無過失・軽過失・重過失・故意)
▼2 いかなる範囲で損害賠償責任を負うか
(損害全額か、一定額に限定できるか)
56
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定がない場合 ⇒民法が適用される
57
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼「軽過失は責任を負わない」と定める場合
58
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼賠償額に上限額を設定する場合
59
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼一切責任を負わない(完全免責規定)は無効!
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不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定の有効性【BtoC】
消費者契約法第8条
▼事業者の損害賠償責任の
全部を免除する規定は無効(1項①③)
▼事業者に故意・重過失がある場合は、
一部免責も無効(1項②④)
⇒事業者に軽過失がある場合の、一部免責のみが認められる
※軽過失の場合に、極めて低額の賠償責任のみに限定すると、
消費者契約法10条により無効となる可能性がある。
62
不当条項規制(548条の2第2項)
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【BtoC】軽過失の場合の一部免責のみ許される
※極めて低額の賠償責任のみに限定している場合は消契法10条違反の可能性
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不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定の有効性【BtoB】
▼軽過失時の全部免責は有効と考えられる(裁判例複数あり)
▼重過失時の一部免責を認める条項は?(重過失免責条項)
ケースバイケースだが、
サービスが無償又は低廉である等の事情がない限り、
重過失免責条項は無効とされる可能性がある点に注意
(裁判例)
「損害賠償責任の上限を契約金額」とする責任制限条項
について、事業者に故意または重過失がある場合には
適用されないとした例(東京地判H26.1.23)
(裁判例)
責任限度額が低すぎるときは、契約の内容にかかわらず
合理的な額を上限とすべきとした例(東京地判H16.4.26)
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不当条項規制(548条の2第2項)
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【BtoB】①軽過失時の全部免責は有効と考えられる
②故意重過失時の一部免責はグレー
66
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼F社免責規定の有効性
【F社利用規約(2012年当時)】※顧客データの消失事故
第35条(免責)
6 当社は、本サービスに関連して生じた契約者及び第三者の結果的損害、付随的損
害、逸失利益等の間接損害について、それらの予見または予見可能性の有無にかか
わらず一切の責任を負いません。
8 本条第2項から6項の規定は、当社に故意または重過失が存する場合または契約
者が消費者契約法上の消費者に該当する場合には適用しません。
第36条(損害賠償額の制限)
本サービスの利用に関し当社が損害賠償責任を負う場合、契約者が当社に
本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負うものとします。
▼軽過失であれば全部免責
▼故意重過失がある場合は、ユーザの支払額を上限とする
(一部免責)という規定だった
※BtoBの場合、重過失一部免責規定の有効性はグレー
※なお第三者委員会報告書において、重過失は認定されず
「軽過失の枠内ではあるものの、その過失の程度は比較的重度のもの」
67
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼C社免責規定の有効性
【C社利用規約(2018年当時)】※仮想通貨が外部に不正送信
第17条(免 責)
5 当社は、当社による本サービスの提供の中断、停止、終了、利用不能又
は変更、登録ユーザーのメッセージ又は情報の削除又は消失、登録ユー
ザーの登録の取消、本サービスの利用によるデータの消失又は機器の故障
若しくは損傷、その他本サービスに関連して登録ユーザーが被った損害に
つき、賠償する責任を一切負わないものとします。
⇒BtoC契約では、
・軽過失時の全部免責
・故意重過失時の一部免責
はいずれも無効
⇒消費者契約法第8条1項1号3号に反して
無効となる可能性大 +不当条項規制も適用される
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不当条項規制(548条の2第2項)
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▼「合意をしなかったものとみなす」の効果
(不当条項の例)
「本サービスを契約期間中に解約する場合は、残存期間に
対応するサービス料金の倍額の違約金を支払うものとします」
▼消費者契約法10条「条項…は、無効とする」
⇒一定の限度を超えた部分についてのみが一部無効とする
判断となり得た(倍額部分のみが無効となるなど)
▼548条の2Ⅱ「合意をしなかったものとみなす」
⇒そもそも「合意をしなかったことになる」以上、
不当条項の全部が契約から除外されると捉えるのが文理上自然
⇒一部無効で救われることを前提にグレーゾーンを攻めていた
条項について、全部無効となるリスクが否定できない(私見)
69
不当条項規制(548条の2第2項)
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▼免責規定を検討する視点
グレーゾーンまで踏み込んだ免責規定を定めるかは、
▼「一切責任を負わない」と利用規約に書くことで請求を
諦める利用者もいるかもしれない、と考えるか?
▼法的に無効な規定を定めることのレピュテーションリスク
▼適格消費者団体による訴訟リスク
などを勘案して検討していたところ、民法改正後は
▼民法548の2第2項はBtoBでも適用される
▼その効果は「合意しなかったものとみなす 」である
(一部のみが無効となって残存部分は有効となる可能性が減少?)
▼ユーザの権利意識の高まりとレピュテーションリスク
を踏まえて、グレーゾーンを攻める免責規定については
これまで以上に慎重に検討するべき(BtoBの重過失免責条項)
▼免責規定に加えてSLA、「特別サービス」としての補償対応
70
▼免責規定・SLA・SLAを超えた補償の関係
定型約款の概要
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免責規定
(利用規約)
SLA
(サービスレベルアグリーメント)
SLAを
超えた補償
<サービスの品質水準について合意する契約>
<民法のデフォルトルールを制限するための規定>
<契約で約束した以上の「サービス」としての補償>
※SLA(義務規定)と異なる規定として
SLO(努力目標)も存在する
71
内容の表示義務(548条の3)
73
内容の表示義務(548条の3)
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第548条の3
1 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取
引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求
があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容
を示さなければならない。
ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載
した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供してい
たときは、この限りでない。
2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒ん
だときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障
害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでな
い。
74
内容の表示義務(548条の3)
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▼定型約款の内容の開示義務
①合意前または合意の後相当の期間内に
②ユーザーから請求があってから
③遅滞なく、相当な方法で開示すれば足りる
※相当な方法=利用規約のURLを伝えるなど
※合意前に開示していることは、定型取引成立の要件ではない
※「相当の期間内」…消滅時効期間を踏まえれば、
最終取引時から5年程度(実務Q&AQ47)
75
内容の表示義務(548条の3)
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▼定型約款の内容の開示義務
ただしユーザーに対して、定型約款を記載した書面や
電磁的記録(PDF等)をメール送信等の方法により
提供していたときは、開示義務を負わない
(548条の3第1項但書)
⇒開示対応義務を負わないためにも、契約成立時にタイム
スタンプ付の利用規約PDFをDLさせたり、利用規約を
直接交付したうえでサインを得る運用が望ましい
▼合意前に不当に開示を拒絶した場合は、
みなし合意の規定(548条の2)は適用されない
⇔合意後に開示を拒絶した場合は、
債務不履行が問題となるのみ
重要
76
定型約款の変更(548条の4)
77
定型約款の変更(548条の4)
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第548条の4(定型約款の変更)
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変
更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意
をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更
後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨
の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なもの
であるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効
力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容
並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周
知しなければならない。
3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来す
るまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更に
ついては、適用しない。
78
定型約款の変更(548条の4)
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▼変更規定が定められた趣旨
▼不特定多数の相手方と画一的な取引を行う定型取引において
は、サービスに変更が生じた際も、画一的に変更手続きを行
う必要性が高い
(個別に同意を得ることは現実的でない場合も多い)
⇒そこで相手方と個別に合意することなく変更できる
場合を定めた
▼もっとも一方的な変更を無限定に認めると、ユーザ保護に反
する。そこで変更が認められる要件を限定し、かつ周知を
しなければならないものとした
▼ユーザにとって利益となる変更(利益変更)と
そうでない変更(不利益変更)とで
異なる要件を定めた
79
定型約款の変更(548条の4)
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▼利益変更の要件(548の4Ⅰ①)
⇒「相手方の一般の利益に適合するとき」は一方的な変更が可能
(具体例)
・利用料を減額する場合
・利用料を変更せずにサービスを拡充する場合
※相手方の全員にとって有利になる場合を指し、
一部の顧客に不利益を及ぼす場合は「相手方の一般の利益に
適合するとき」 に含まれないとされている
(一問一答Q57)
80
定型約款の変更(548条の4)
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▼不利益変更の要件(548の4Ⅰ②)
一方的な不利益変更の要件は厳しい
①契約をした目的に反しないこと
②ア 変更の必要性
イ 変更後の内容の相当性
ウ 変更条項の有無とその内容
エ その他の変更に係る事情
に照らして変更が合理的なものであること
▼変更条項の定め(ウ)がなくても変更は可能な場合があり、逆に
変更条項があるからといって常に一方的な変更が認められるわけでもない
▼変更の対象や要件を具体的に定めていることは有利な事情となる
×「当利用規約は、予告なく変更することがあります」
⇒不当条項(548の2Ⅱ)と判断される可能性もあり
▼変更後の条項の適用を望まないユーザに対して解除権を付与していること
▼変更周知から適用されるまでに十分な猶予期間を設けること
⇒いずれも「エ その他の変更に係る事情」を満たす方向に働く
81
定型約款の変更(548条の4)
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(裁判例)約款の一方的変更が争われた事例
銀行が、預金規定に暴力団排除条項を追加するための
約款の変更を一方的に行い、変更後の約款に基づいて
顧客との預金契約を解除した事例
①預金契約については、定型の約款により契約関係を
規律する必要性が高い
②必要に応じて合理的な範囲において変更されることも
契約上当然に予定されている
③暴排条項を既存の契約にも適用しなければ
その目的達成は困難
④不利益は限定的で、預金者は暴力団等から脱退すれば
不利益を回避できる
⇒顧客の同意のない約款変更の有効性を認めた
(福岡高判H29.10.4)
⇒改正法の施行後も、不利益変更の要件(548の4Ⅰ②)は満たすと考えられる
82
定型約款の変更(548条の4)
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▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと
する条項の有効性
実務上、利用規約の変更をユーザーに通知し、
変更後もユーザーが異議なく利用継続する場合は、
変更後の利用規約に同意したものとみなす定めをおいている
場合がある。→ このような規定は改正民法施行後も有効か?
条項例)ユーザーは、利用規約の変更後も本サービスの利用を継続
する場合、変更後の利用規約に同意したものとみなします。
▼経産省「準則」では、有効となる可能性を示しているが・・
「利用者による明示的な変更への同意がなくとも、事業者が利用規約の
変更について利用者に十分に告知した上で、変更の告知後も利用者が
異議なくサイトの利用を継続していた場合は、黙示的にサイト利用規約
の変更への同意があったと認定すべき場合があると考えられる」
(準則(平成30年7月)Ⅰ-2-1、P26③)
83
定型約款該当性(548条の2第1項)
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利用規約の変更後もユーザーが利用継続したことに
よって黙示的な同意が常に得られるとすれば、
変更規定(548条の4)の要件を守らずとも
一方的に変更ができてしまうことになるのでは・・
果たしてそれでよいのか?
84
定型約款の変更(548条の4)
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▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと
する条項の有効性
▼実務Q&A Q65
「顧客と明示的に合意をすることなく、定型約款の内容を変
更したうえで、『特段の申し出がない限り、変更後の約款
の内容に同意したものとみなします。』などと一方的に通
知することがあり得ますが、このような事情のみでは、顧
客との間で変更の合意が成立したと認定することはできな
いといわざるを得ないものと考えられます。」
▼実務Q&A Q64
「定型約款中に所定のルールと異なる取扱いをする旨の条項
が置かれていたとしても、その効力がそのまま認められる
ことはないと考えられます。」
⇒前ページの条項例のような「単純な利用継続のみにより変更後の
規約に同意したものとみなす条項」は、改正法の施行後は有効と
ならない可能性が高いと考えておくべき
85
定型約款の変更(548条の4)
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▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと
する条項の有効性
▼「準則」も、利用継続による黙示を無限定に認めるわけではな
く、一定の要件の下で黙示的な同意を認めるとしている
①変更が一般の利用者に合理的に予測可能な範囲内であるか否か
②変更が一般の利用者に影響を及ぼす程度
③法令の変更への対応、悪意の利用者による不正やトラブルへの
対応、条項・文言の整理など、一般の利用者であれば当然同意
するであろう内容であるか否か
④変更がサービスの改良や新サービスの提供など利用者にもメ
リットのあるものであるか否か
といった点は考慮される可能性があるとしている
(「準則」P27)
86
定型約款の変更(548条の4)
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▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと
する条項の有効性
▼単純な利用継続のみで黙示的な同意を得ようとするのではなく、
あくまで変更要件(548の4第1項)を満たす内容に変更する。
▼定型約款の変更要件を満たさない可能性がある変更を行う場合
は、変更後の利用規約への同意クリックを要求するなど、明示
の同意を得る構成とする(※この場合は548の4第1項に基づく変更で
はなく、従前の約款理論に基づく変更となる)
※実務Q&AQ65も「事後的に、個別に顧客と合意をして定型約款を利用
した契約の条項を変更することも否定はされていません」とする
▼利用規約の変更は、改正法の施行前に可能な限り行っておく
▼変更要件(548条の4)は、合意成立時の不当条項規制
(548の2Ⅱ)よりも厳格なので、定型約款作成時からできるだ
け事後の変更が生じないよう、入念に作成しておく
87
▼自動更新後の契約は、約款の変更か?
新たな定型約款の組入合意か?
(自動更新条項の例)※年間契約など期間の定めがある契約の場合
ユーザーは、本規約に基づく利用契約を、有効期間を更新せずに
終了させることを希望する場合には、有効期間満了日の1ヶ月前
までに、申し出ることとします。
この申し出がなされない場合は、有効期間満了日における本サー
ビス利用規約の内容にて、自動的に有効期間が1年間延長のうえ
更新されるものとし、以後も同様とします。
▼自動更新後も同一の契約と考える場合
→変更に該当し、厳格な変更要件を満たす必要がある
▼新たな定型約款により、契約を締結しなおすと考える場合
→548条の2の要件のみで足りる(=変更要件よりも緩やか。
信義則に反する条項がなければ有効)
⇒新たな契約の締結と構成することが可能かは解釈が待たれる
定型約款の変更(548条の4)
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定型約款の変更(548条の4)
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▼変更の手続要件
①定型約款を変更する旨
②変更後の内容
③効力発生時期
をインターネットその他の適切な方法により周知する
▼周知の方法は、ウェブサイト上の掲載や
メール送付が考えられる
▼不利益変更は、効力発生時期までに周知しなけれ
ば変更の効力が生じない
89
定型約款に関する経過規定(附則33条)
90
定型約款に関する経過規定(附則33条)
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▼経過規定
▼定型約款に関する規定は、
改正民法の施行日(2020年4月1日)以前に締結された
定型取引についても適用される(附則第33条1項)
→施行日前の利用規約を改正法施行後に変更する場合、
変更要件を満たす必要がある
▼ただし
①契約又は法律により解除権を現に行使することが
できない当事者の一方から、施行日前に
②反対の意思表示がされた場合は
定型約款に関する定めは適用されない(附則第33条2項3項)
※反対の意思表示をした場合は、改正民法の施行後も改正前民法が適用される
※改正前民法が適用される顧客が混在すると管理が煩雑になるため、
改正前から、顧客に解約権を認める条項を入れておく対応が考えられる
91
定型約款に関する経過規定(附則33条)
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▼経過規定
▼法務省「定型約款に関する規定の適用に対する
『反対の意思表示』について」
http://www.moj.go.jp/content/001242840.pdf
92
改正民法施行前に行うべき対策
93
▼改正民法施行前後のスケジュール
定型約款の概要
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現在の利用規約
2020年4月1日
変更する際は定型約款の規定が適用される
①一方的な変更は548条の4の要件
を満たす必要あり
②548条の4の要件を満たさない
変更は個別に同意を得て行う
必要な変更は改正前
に行っておく
①548条の2の要件(みなし合意)で
締結できる
②不当条項規制あり(548条の2Ⅱ)
※toBサービスでも適用される
③一方的な変更は548条の4の要件
を満たす必要あり
④548条の4の要件を満たさない
変更は個別に同意を得て行う
利用規約の一方的な変更が許される要件は、
改正後は厳格になると考えられる。
そのため
①今後予定している変更があれば、改正前に
前倒しで行っておく
②新たに利用規約の作成を予定している場合
は、できるだけ後で変更が生じないよう
入念に作成しておく
③不当条項がないかチェックしておく
(ただし改正前に締結された定型約款に基づく契約に、
不当条項規制(548条の4Ⅱ)は適用されない)
⇒改正法が施行
利用規約に基づき新たに契約締結
94
定型約款の概要
storialaw.jp All rights reserved.
▼改正民法の施行前に行っておくべきこと
①今後利用規約の変更を予定している場合は、
改正前に前倒しで行っておく
※現行法では一方的な変更が許される要件は不明確であるが、
「変更後の利用継続による黙示的な同意」が認められる
余地があるとされる(経産省「準則」P26)
⇒しかしこのような同意条項の有効性は、改正後は疑問が残る
⇒自社の利用規約に「黙示の同意条項」があれば、
改正前のうちに最大限活用するべき
②変更する場合、改正法を見据えた内容にする
▼不当条項を含んでいないかどうかなど
③ウェブサービス利用規約以外の規約のチェック
▼定型約款に該当するかの確認(ソフトウェアライセンス規約など)
▼該当する場合には不当条項や変更規定のチェック
95
利用規約(改正民法対応)の解説
96
ご質問・お問い合わせ等は下記まで
STORIA法律事務所東京オフィス
弁護士 杉浦 健二
Mail k-sugiura@storialaw.jp
URL https://storialaw.jp
kenjisugiura01
sugiurakenji
slack/chatwork/zoom対応
Tel 03-6711-5160
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル6階
(地下鉄大手町駅直結)
97
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民法改正に伴うウェブサービス利用規約作成・改訂のポイント20191206弁護士杉浦健二

  • 2. 弁護士杉浦 健二|k-sugiura@storialaw.jp ▼主な取扱分野 ウェブサービスの新規ビジネスモデル構築、 利用規約・プライバシーポリシーの策定、 AIプロファイリングビジネスの法的サポート、 ITビジネスやコンテンツビジネスにおける各種 契約書の作成。 SaaS、AI/IT、ソフトウェア、 IoT、データビジネス、エンタテインメントな どの案件を主に取り扱う ▼主な顧問先企業 AI/ITビジネス、ウェブサービス、ソフトウェ ア開発、プラットフォームビジネス、IoT、 データビジネス、ゲームコンテンツ制作、エン タテインメント企画制作など東証一部からス タートアップまで storialaw.jp All rights reserved. ▼注力する法分野 AI/IT関連法、ウェブサービス関連法全般 (個人情報保護法、著作権法、資金決済法など) ▼略歴 企業勤務を経て2007年弁護士登録。2015年 STORIA法律事務所設立、東京・神戸の2事務所 体制(現在弁護士8名)。カリフォルニア州立工 科大学外部講師(2019年-) ▼メディア等(直近) 日本経済新聞(2019年8月16日朝刊) NHK「ニュースウォッチ9」(2019年9月6日) 「クローズアップ現代+」(2019年10月29日) 個人情報保護法やAIプロファイリング問題に 関するコメント、出演など 弁護士法人STORIA https://storialaw.jp STORIA法律事務所東京オフィス パートナー弁護士 1
  • 3. storialaw.jp All rights reserved. 【本日のポイント】 ウェブサービス利用規約のほとんどが、 民法改正で新設された「定型約款」にあたる ①「定型約款」制度を理解する ② 民法改正で、自社のサービス利用規約に どのような影響が生じるかを把握する ③ 施行日である2020年4月1日までに行うべき 自社の要対応事項をリストアップする 2
  • 5. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. (前提)法律と契約の関係 ■ルール1 法律と異なる内容を契約で定めれば、 契約が優先する(契約自由の原則) 例)請負の瑕疵担保責任は引渡から1年→契約で半年に変更可 ■ルール2 契約に何も書かれていなければ、 法律が適用される 例)著作権は著作者が享有する(著17条1項) 4 交わした 契約書 法的効果
  • 6. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. (前提)法律と契約の関係 ■ルール1 法律と異なる内容を契約で定めれば、 契約が優先する(契約自由の原則) 例)請負の瑕疵担保責任は引渡から1年→契約で半年に変更可 ■ルール2 契約に何も書かれていなければ、 法律が適用される 例)著作権は著作者が享有する(著17条1項) 法律が適用されて不利にならない立場なら、 あえて契約書で定めなくてもよい (例)ベンダ側のプログラム著作権 5
  • 7. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. (前提)法律と契約の関係 ■ルール1 法律と異なる内容を契約で定めれば、 契約が優先する(契約自由の原則) 例)請負の瑕疵担保責任は引渡から1年→契約で半年に変更可 ■ルール2 契約に何も書かれていなければ、 法律が適用される 例)著作権は著作者が享有する(著17条1項) 民法(債権法)改正の多くは、 契約に何も書かれていない場合に適用される 「デフォルトルールの変更」 6
  • 8. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. ▼強行規定については例外的に「法律>契約」 ■1 契約が法律に優先するのが原則 (任意規定。契約自由の原則) 例)現行民法第637条 「瑕疵担保責任の請求は引渡から1年以内」 ■2 一定の規定は、法律が契約に優先する (強行規定) 例) 消費者契約法、労働基準法 定型約款の不当条項規制(548条の2第2項) 任意規定か強行規定、どちらなのかが重要 7
  • 9. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. 契約なし 契約あり 任意規定 法律の規定 (デフォルトルール) が適用される 契約どおりに 修正される 強行規定 法律の規定 (デフォルトルール) が適用される 契約によっても 修正できない 法律の性質 契約の有無 ▼民法改正の多くはデフォルトルールの変更である 民法(債権法)改正の多くは、 契約に何も書かれていない場合に適用される デフォルトルールの変更 8
  • 10. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. 契約なし 契約(利用規約)あり 任意規定 法律の規定 (デフォルトルール) が適用される 契約(利用規約) どおりに修正される 強行規定 法律の規定 (デフォルトルール) が適用される 契約(利用規約)に よっても修正できない 法律の性質 契約の有無 利用規約を適切に作成しておけば 強行規定に反しない限り 契約関係をデザインできる ▼法律のデフォルトルールを修正できるのが 契約(利用規約) 9
  • 11. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. 契約なし 契約(利用規約)あり 任意規定 法律の規定 (デフォルトルール) が適用される 契約(利用規約) どおりに修正される 強行規定 法律の規定 (デフォルトルール) が適用される 契約(利用規約)に よっても修正できない 法律の性質 契約の有無 定型約款の規定の一部 (不当条項規制)は 強行規定にあたる ▼しかし強行法規は契約(利用規約)でも 修正できない 10
  • 12. 民法(債権法)改正の概要 storialaw.jp All rights reserved. ▼ほとんどのウェブサービス利用規約は、 民法改正で新設された「定型約款」にあたる 【本日のポイント】 ①「定型約款」制度を理解する ② 民法改正で、自社のサービス利用規約に どのような影響が生じるかを把握する ③ 施行日である2020年4月1日までに行うべき 自社の要対応事項をリストアップする 11
  • 14. 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款の概要まとめ① ▼これまで不明確だった「約款を用いた取引」の 法的安定性を確保するため、民法改正で新設された ▼有効性が不明だった「約款の一方的変更」の要件が 「ある程度」整理された ▼「約款」のうち、一部が「定型約款」にあたる (全ての約款が定型約款にあたるわけではない) ▼ほとんどのウェブサービス利用規約は 「定型約款」にあたる 13
  • 15. 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款の概要まとめ② ▼「定型約款」に該当すれば、 ①個別の条項を認識していなくても、すべての条項に ついて合意したとみなされる(みなし合意) ②一定の要件を満たせば、 個別の同意を得なくても一方的に内容を変更できる ③ただし不当条項についてはみなし合意とならないなど 利用者保護のために一定の制限がある ▼まだ不明確な点は多い(今後の事例の集積が待たれる) ⇒施行前&解釈が確定していない現段階で、実務上 どうしておくのが賢い選択かとの視点から解説する 14
  • 16. ▼定型約款に該当する場合の効果 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. 定型約款 (548の2Ⅰ) 定型約款でない約款 定型約款の規定が適用される (改正法548の2~548の4) ※みなし合意が可能 (ただし不当条項は除く) ※一定の要件を満たす場合のみ、 一方的な変更が許される 民法の意思表示や契約に関する 一般的な規定(従来の約款理論)が 適用される(一問一答Q135、実務Q&AQ21) ※要件・効果は不明確 ・不特定多数要件 ・合理的画一性要件 約款の一方的な変更は、要件が厳しくなると考えられる 15
  • 17. ▼改正民法施行前後のスケジュール 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. 現在の利用規約 2020年4月1日 変更する際は定型約款の規定が適用される ①一方的な変更は548条の4の要件 を満たす必要あり ②548条の4の要件を満たさない 変更は個別に同意を得て行う 必要な変更は改正前 に行っておく ①548条の2の要件(みなし合意)で 締結できる ②不当条項規制あり(548条の2Ⅱ) ※toBサービスでも適用される ③一方的な変更は548条の4の要件 を満たす必要あり ④548条の4の要件を満たさない 変更は個別に同意を得て行う 利用規約の一方的な変更が許される要件は、 改正後は厳格になると考えられる。 そのため ①今後予定している変更があれば、改正前に 前倒しで行っておく ②新たに利用規約の作成を予定している場合 は、できるだけ後で変更が生じないよう 入念に作成しておく ③不当条項がないかチェックしておく (ただし改正前に締結された定型約款に基づく契約に、 不当条項規制(548条の4Ⅱ)は適用されない) ⇒改正法が施行 利用規約に基づき新たに契約締結 16
  • 18. 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. ▼改正民法の施行前に行っておくべきこと ①今後利用規約の変更を予定している場合は、 改正前に前倒しで行っておく ※現行法では一方的な変更が許される要件は不明確であるが、 「変更後の利用継続による黙示的な同意」が認められる 余地があるとされる(経産省「準則」P26) ⇒しかしこのような同意条項の有効性は、改正後は疑問が残る ⇒自社の利用規約に「黙示の同意条項」があれば、 改正前の今のうちに最大限活用するべき ②変更する場合、改正法を見据えた内容にする ▼不当条項を含んでいないかどうかなど ③ウェブサービス利用規約以外の規約のチェック ▼定型約款に該当するかの確認(ソフトウェアライセンス規約など) ▼該当する場合には不当条項や変更規定のチェック 17
  • 20. 民法改正と経産省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」 storialaw.jp All rights reserved. 経済産業省 「電子商取引及び 情報財取引等に関する準則」 ▼経産省が現行法の解釈を提示する ことにより、インターネットビジ ネスをめぐる法解釈の指針として 機能している ▼最新版は平成30年7月に改訂 (https://www.meti.go.jp/press/2018/ 07/20180727001/20180727001.html) ⇒民法改正を踏まえた改訂は未了 (2019年12月現在) 19
  • 21. 民法改正と経産省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」 storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款に関する理解と解釈の参考となる書籍 ■実務Q&A 「定型約款の実務Q&A」(商事法務) 村松 秀樹・松尾 博憲(著) ■一問一答 「一問一答 民法(債権関係)改正」 (商事法務) 筒井 健夫・村松 秀樹(著) 20
  • 23. ▼定型約款に該当すると 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. 定型約款 (548の2Ⅰ) 定型約款でない約款 定型約款の規定が適用される (改正法548の2~548の4) ※みなし合意が可能 (ただし不当条項は除く) ※一定の要件を満たす場合のみ、 一方的な変更が許される 民法の意思表示や契約に関する 一般的な規定(従来の約款理論) が適用される(一問一答Q135、実務Q&AQ21) ※要件・効果は不明確 ・不特定多数要件 ・合理的画一性要件 定型約款に該当するかがどうかがまず重要 22
  • 24. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. 第548条の2第1項 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内 容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同 じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者 は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とする ことを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個 別の条項についても合意をしたものとみなす。 一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。 二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじ めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた とき。 24
  • 25. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款とは 「定型取引において、契約の内容とすることを目的として 定型約款準備者により準備された条項の総体」 ▼定型取引とは 「定型約款準備者が不特定多数の者を相手方として行う取引で あって、その内容の全部又は一部が画一的であることが その双方にとって合理的なもの」 ▼定型約款の定義をまとめると ①不特定多数の者を相手方として行う取引であり (不特定多数要件)、かつ ②当該取引の内容の全部又は一部が画一的であることが その双方にとって合理的である場合(合理的画一性要件) において、契約の内容とすることを目的として 定型約款準備者により準備された条項の総体 25
  • 26. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼不特定多数要件 …相手方の個性を重視せずに多数の取引を行う場合 ⇒相手方の個性に着目して実質的に契約審査が行われている 場合は、不特定多数要件を満たさない。 もっとも定型化された基準への適合性を、 いわば画一的形式的に審査(スクリーニング)するに とどまる場合は(反社条項やブラックリスト顧客のチェック等)、 不特定多数要件を満たすと考えられる。 ※不特定多数要件は、以下の要素を中心に判断される。 ①相手方の数や②契約締結までに要する時間 ③相手方の負う義務の履行期や金額 (将来に履行される場合、高額取引である場合等) ④義務の種類(単なる金銭債務か労務提供なども含まれるか等) ⑤締結方式(ネットや郵送か対面か等) ⑥締結資格の限定(特定の資格者のみに限定しているか) 26
  • 27. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼合理的画一性要件 …取引相手が約款の変更を求めずに契約を締結すること (=契約交渉が行われないこと)が双方にとって合理的である場合 ⇒取引金額が少額であったり迅速性が重視される取引は、 合理的画一性要件を満たしやすい ⇒画一性の理由が単に当事者の交渉力格差にあるときは、 合理的画一性要件を欠く(∵ 一方にとって合理的に過ぎない) (フランチャイズ契約に関する国会答弁) ⇒画一性の理由が対応コストの転嫁回避による安価なサービス 提供の実現にあるときは、合理的画一性を満たす方向に傾く (大規模な賃貸借契約に関する国会答弁) 27
  • 28. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼取引の「一部が画一的」とは 当該取引の内容の全部又は一部が画一的であることが その双方にとって合理的である場合(合理的画一性要件) ⇒契約条項のごく一部のみが画一的でない場合にまで、 定型取引と扱わないとするのは適切でない(実務Q&A Q7,Q4) ⇒「一部が画一的」とは、取引の重要部分のほとんどについて 合理的画一性要件を満たす場合を指す 契約条項のごく一部のみが画一的でない例: ▼携帯電話サービスで、利用者が個別に料金プランを選択して 契約を締結する場合 ▼ SaaSでオプションサービスを複数選択できる場合 28
  • 29. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼料金表、サービス内容も定型約款に含まれるか? (例)利用規約内で料金表が明示されている 料金が明示されたページに利用規約からリンクが張られている →〇 定型約款に含まれると考えられる (例)複数の料金プランやサービス内容のなかから選択できる →〇 同じプランを選択した利用者ごとに定型的である 限りは、なお定型約款に含まれると考えられる ⇒定型約款に該当する料金表やサービス内容を変更する場合は、 変更規定(548条の4)によることになる ⇒定型約款に該当しない場合、料金表やサービス内容の変更は、 個別合意が必要になる 29
  • 30. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款に該当する例 ・鉄道等の旅客運送約款、保険約款、スポーツクラブ利用約款 ・ソフトウェアライセンス規約 ・ECサイト購入約款 ・ウェブサービス、アプリ利用規約 →SNSやオンラインゲーム等(BtoCサービス) SaaS規約やECサイト出店規約(BtoBサービス) ネットオークション規約(CtoCサービス) のいずれも含まれる ※定型約款該当性を満たす内容である限り、「利用規約」「会員規則」 「ガイドライン」「SLA」など具体的な名称は問われない ▼定型約款に該当しない例 ×事業者間の契約書ひな型 ×労働契約書 ×基本契約書の存在を前提とした個別契約書 ×ユーザと個別に交渉を行っている場合(ひな型どおりの内容で締結しても×) 30
  • 31. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款該当性に議論があるもの ・銀行取引約定書 →×(国会答弁では、個別交渉で修正されることもあり得る ことを理由として該当性を否定) ・住宅ローン契約書 →×(国会答弁で否定。金額や取引の重大性) ・賃貸借契約書 →原則×(ただし大手不動産会社が複数の大規模居住用建物 について多数の賃貸借契約を締結するような場合は 例外的に該当しうるとの国会答弁) ・フランチャイズ契約 →×(画一的なのは単に交渉力の格差によるもの) ・プライバシーポリシー 31
  • 32. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼プライバシーポリシーは定型約款か? プライバシーポリシー(プライバシーステートメント、基本方針) …事業者が個人情報保護を推進する上での考え方や方針 「個人情報の保護に関する基本方針」(政府資料)より (前提) 個人情報保護法上、プライバシーポリシーのうち利用目 的等を定める部分は原則として公表・通知がされれば よく、同意の取得は必須ではない。 →すべてのプライバシーポリシーについて ユーザの同意を得る必要があるというのは誤り。 利用規約とは法的性質が異なる 32
  • 33. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼プライバシーポリシーは定型約款か? (参考)個人情報の保護に関する法律についての経済産業 分野を対象とするガイドライン (平成28年12月・経済産業省) 「(2)個人情報保護を推進する上での考え方や方針の策 定等個人情報取扱事業者は、「個人情報保護を推進する 上での考え方や方針(いわゆる、プライバシーポリシー、 プライバシーステートメント等)」を策定し、それを ウェブ画面への掲載又は店舗の見やすい場所への掲示等 により公表し、あらかじめ、対外的に分かりやすく説明 することが、消費者等本人との信頼関係を構築し事業活 動に対する社会の信頼を確保するために重要である。」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/161228koj oguideline.pdf 33
  • 34. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼プライバシーポリシーは定型約款か? ▼個人情報保護法において「本人の同意」が求められる条項 ※個人情報保護法で条文上「本人の同意」が現れるのはこの4つだけ ①利用目的の達成に必要な範囲を超えた取扱いの同意(16条2項) ②要配慮個人情報の取得の同意(17条2項) ③個人データの第三者提供の同意(23条1項柱書) ④外国にある第三者へ個人データ提供の同意(24条) ▼個人情報保護法において公表等が求められる条項 ①利用目的の通知、公表又は明示(18条1項2項) ②変更された利用目的の通知又は公表(18条3項) ③オプトアウトによる第三者提供に関する通知又は本人が容易に 知りえる状態に置くこと(23条2項柱書) ④共同利用についての通知等(23条5項3号) ⑤保有個人データに関する事項を本人の知りえる状態に置くこと(27条1項) ⑥匿名加工情報に関する公表事項(36条3項、4項及び6項、37条、39条) 34
  • 35. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼プライバシーポリシーは定型約款か? 個人情報保護法上の「本人の同意」は、あくまで私法上の行為では なく、契約の成立に向けられたものではない公法上の行為であるた め「契約の内容とすることを目的として準備された…条項の総体」 (548条の2)にあたらず、定型約款には該当しない(実務Q&AQ30) もっとも公法上の行為ではあるものの、あわせて「プライバシーに 関する請求権を行使しない」という意思表示を含む私法上の同意も 観念できる (情報法制研究第2号・プライバシーに関する契約についての考察(2) 2017.11) ⇒とすればプライバシーポリシーも 定型約款に該当し得ることになるが・・ 35
  • 36. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. プライバシーポリシーが定型約款に該当するとなれば、 ①「本人の同意」を定型約款のみなし合意で得たり ②定型約款の変更要件(548条の4)を 満たせばユーザの同意を得ない一方的な変更も 可能となり得るが・・・ 本当にそうなのか? 36
  • 37. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼個人情報保護法上の「本人の同意」取得も、 定型約款の「みなし合意」で得られるのか? (私見) プラポリの同意には ①個人情報保護法(公法)上の同意と ②プライバシーに関する請求権を行使しないという私法上の同意 の2つの意味がある。 ②私法上の同意の範囲では、プラポリは定型約款(契約の内容とす ることを目的として準備された…条項の総体)にあたるとしてみな し合意が成立する可能性があるが、①個人情報保護法上の同意をみ なし合意で得るのは困難と考えられる(個情法≠私法)。したがっ て①個人情報保護法上の同意については、あくまで全文を事前に表 示したうえで同意を取得する方法による必要がある。 37
  • 39. 定型約款の組入要件(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. 第548条の2第1項 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内 容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同 じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者 は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とする ことを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個 別の条項についても合意をしたものとみなす。 一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。 二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじ めその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた とき。 40
  • 40. 定型約款の組入要件(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼個別の条項が契約の内容となる要件(組入要件) ①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき (例)「●●ウェブサービス利用規約を適用することに同意します」と 記載されたボタンをクリックした場合 (例)申込書に「別紙利用規約が適用されることに合意します」 との一文があり、これを確認したうえで署名捺印した場合 ※個別条項が事前に表示されることは、合意が成立する要件ではない ②あらかじめ「その定型約款を契約の内容とする旨」 を相手方に表示していたとき →同意クリック等の明示的な同意行為がなくとも、 あらかじめ「その定型約款を契約の内容とする旨」を相手方に表示 していれば、有効な契約になるとした ※単に利用規約を自社ウェブサイト内の別の箇所で公表しているだけでは 足りず、ユーザ向けに個別に表示されていることが必要 ⇒①か②いずれかの要件を満たせば、個別の条項についても契約の内容に 組み入れられ、個別の条項を含めて合意したものとみなされる。 41
  • 41. 定型約款の組入要件(548条の2第1項) ▼しかし経産省「準則」の要件は改正民法より厳しい サイト利用規約がその契約に組み入れられる…ためには、 Ⅰ 利用者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるように 適切にサイト利用規約をウェブサイトに掲載して開示されていること、及び Ⅱ 利用者が開示されているサイト利用規約に従い契約を締結することに 同意していると認定できることが必要である。(準則Ⅰ-2-1、P20(2)) https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180727001/20180727001-1.pdf →「準則」の要件は、②「あらかじめ…表示」のみで 足りるとする改正民法の組入要件よりも厳しい →現行の「準則」は民法改正が反映される前であるが、 ウェブサービス事業者としては 改正法の②「あらかじめ…表示」要件によるのではなく、 「準則」の上記Ⅰ+Ⅱ要件を満たす運用としておくことが無難 →「準則」に従った運用をしているのであれば、 あえて現在の運用を変更する必要はない storialaw.jp All rights reserved. 42
  • 42. 定型約款の組入要件(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. ▼経産省「準則」が例示する具体例 ○申込みボタンとともに、利用規約へのリンクが明瞭に設けられている場合 例「サイト利用規約に同意の上で申し込みます」+利用規約へのリンク ○利用規約への同意クリックが要求されており、かつ利用者が いつでも利用規約を閲覧できるように利用規約の内容が開示されている場合 ×サイト中の目立たない場所に利用規約が掲載されているだけで、 利用規約への同意クリックも要求されていない場合 →「準則」は上記のように利用者の何らかの同意行為を求めている →ユーザに何らかの義務や不利益が生じ得るサービス (有償サービスやUGCサービス)については従前どおり 「準則」の要件を採用し、 無償の検索サービスやニュース情報を提供するようなサービスに限って ②「あらかじめ…表示」要件(548の2Ⅰ②)を採用するのが無難 43
  • 43. ▼548条の2第1項の構造(まとめ) 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. 定型約款に該当するか 定型約款…定型取引(不特定多数要件+合理的画 一性要件)において、契約の内容とすることを目 的として準備された条項の総体 定型取引を行うことの 合意はあるか みなし合意 組入合意はあるか 定型取引を行うことの合意 (次の組入合意と同時に行われることも多い) ① 定型約款を契約の内容とする旨の合意 または ② あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨 を相手方に表示 定型約款の個別の条項についても 合意をしたものとみなされる (ただし不当条項除く) 44
  • 45. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. 第548条の2第2項 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限 し、又は相手方の義務を加重する条項であって、 その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らし て第1条第2項に規定する基本原則(信義則)に反して相手方の利 益を一方的に害すると認められるものについては、 合意をしなかったものとみなす。 第1条第2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければなら ない。 46
  • 46. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. 第548条の2第2項(シンプルにすると) 【要件】 ①相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項で ②その定型取引の態様 その定型取引の実情 取引上の社会通念に照らして、 信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる条項 【効果】 合意をしなかったものとみなす。 →定型約款の合意は、個別の条項の内容まで 認識せずに契約を締結するもの →不当な条項については定型約款の組入要件を 満たしていても「合意をしなかったものとみなす」とした。 47
  • 47. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼不当条項の例 ▼事業者の免責を広く認める条項(過大な免責規定) ▼過大な違約金を定める条項 ▼長期の利用料を前払いさせつつ、 中途解約を認めない(一切の返金を行わない)条項 ▼主サービスと比較して高額な保守費用を払わせる条項 ▼本来購入目的の商品に加えて想定外の商品購入を 義務づける、抱き合わせ販売条項 →これらの条項が、常に不当条項に該当するわけではない。 その定型取引の態様や実情・取引上の社会通念から、 信義則に反する条項かどうかがケースバイケースで判断される (例えば特定の分野に精通した専門家向けサービスか等) 48
  • 48. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼不当条項規制の注意点 ▼①条項の内容自体の不当性に加えて ②その条項の存在が合理的に認識・予測困難であったかという 不意打ち的要素も考慮される →不意打ち的要素を減らすためには、利用規約に加えて ★ サイト内のサービス説明部分で目立つよう記載する ★ 同意クリック取得ページで目立つよう記載する などの対策が考えられる ▼「代金が不当に高すぎる」といった給付と対価の不当性には 適用されない(Q&AP99。公序良俗違反の問題となる) ▼定型約款の不当条項規制は、 消費者契約法のようにBtoCサービスに限られず、 BtoBサービスにおいても適用される ▼不当条項規制対策で、最も検討すべきは「免責規定」 49
  • 49. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定とは ▼自社が負う責任の範囲を限定する条項を 免責規定という ▼利用規約や契約書で免責規定を定めていない場合、 法律(民法)がそのまま適用される ▼民法がそのまま適用された場合、相当広い損害賠償責任を 負うことになってしまう (自社に故意または過失(軽過失含む)がある場合に、 相当因果関係のある損害) ▼そこで免責規定を定めて自社の責任を限定するべきだが、 一定のラインを超えると免責規定は無効になってしまう (不当条項規制、消費者契約法違反) ▼そこで免責規定はどこまで攻めるべきかが問題となる 50
  • 50. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定の例 【F社利用規約(2012年当時)】※顧客データの消失事故 第35条(免責) 6 当社は、本サービスに関連して生じた契約者及び第三者の結果的損害、付随的損 害、逸失利益等の間接損害について、それらの予見または予見可能性の有無にかか わらず一切の責任を負いません。 8 本条第2項から6項の規定は、当社に故意または重過失が存する場合または契約 者が消費者契約法上の消費者に該当する場合には適用しません。 第36条(損害賠償額の制限) 本サービスの利用に関し当社が損害賠償責任を負う場合、契約者が当社に 本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負うものとします。 ▼軽過失であれば全部免責 ▼故意重過失がある場合でも、賠償責任の上限額は ユーザの支払額とする、という規定だった 51
  • 51. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定の例 【C社利用規約(2018年当時)】※仮想通貨が外部に不正送信 第17条(免 責) 5 当社は、当社による本サービスの提供の中断、停止、終了、利用不能又 は変更、登録ユーザーのメッセージ又は情報の削除又は消失、登録ユー ザーの登録の取消、本サービスの利用によるデータの消失又は機器の故障 若しくは損傷、その他本サービスに関連して登録ユーザーが被った損害に つき、賠償する責任を一切負わないものとします。 ⇒BtoC契約において、 「一切責任を負わない」旨を定めていた ⇒このような免責規定は、強行規定違反 (消費者契約法違反、不当条項規制違反)ではないか? 52
  • 52. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼2019年8月に発生したAWS大規模障害 ▼米Amazon社が運営する クラウドサービス「アマゾン・ ウェブ・サービス」(AWS)で、 2019年8月23日、大規模なシス テム障害が発生し、AWSを利 用する各社のサービスは接続が 不可、支払いや入金ができなく なるなど、影響は広範囲に及ん だ (右図は日本経済新聞2019/8/23付ウェブ サイト記事より引用) https://www.nikkei.com/article/DGXMZ O48956120T20C19A8EA1000/ 53
  • 53. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼AWS カスタマーアグリーメント(2019年8月時点) ▼一部のサービスを 除き、可用性が95% を下回った場合は サービスクレジット (将来使えるクーポ ンのようなもの)を 交付する(SLA) ▼それ以外の責任は 限定され、最大でも 過去12か月の利用料 が上限 https://d1.awsstatic.com/legal/aws-customer-agreement/AWS_Customer_Agreement-JP_(2019-04-30).pdf 54
  • 54. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定を考える視点 外部システム (AWSなど) ユーザー (toC) 自社 サービス ▼消費者契約法 ▼定型約款の 不当条項規制 ユーザー (toB) 免責規定 ▼定型約款の 不当条項規制 ▼定型約款の 不当条項規制 ※ただし準拠法の問題あり 免責規定 免責規定 ①定型約款の不当条項規制は、toBにも適用される ②自社システムに障害発生 or 外部システムに障害発生 いずれの事態もありうる 55
  • 55. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定を定める視点 ▼1 自社にどの程度の落ち度がある場合に (無過失・軽過失・重過失・故意) ▼2 いかなる範囲で損害賠償責任を負うか (損害全額か、一定額に限定できるか) 56
  • 56. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定がない場合 ⇒民法が適用される 57
  • 57. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼「軽過失は責任を負わない」と定める場合 58
  • 58. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼賠償額に上限額を設定する場合 59
  • 59. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼一切責任を負わない(完全免責規定)は無効! 60
  • 60. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定の有効性【BtoC】 消費者契約法第8条 ▼事業者の損害賠償責任の 全部を免除する規定は無効(1項①③) ▼事業者に故意・重過失がある場合は、 一部免責も無効(1項②④) ⇒事業者に軽過失がある場合の、一部免責のみが認められる ※軽過失の場合に、極めて低額の賠償責任のみに限定すると、 消費者契約法10条により無効となる可能性がある。 62
  • 61. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. 【BtoC】軽過失の場合の一部免責のみ許される ※極めて低額の賠償責任のみに限定している場合は消契法10条違反の可能性 64
  • 62. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定の有効性【BtoB】 ▼軽過失時の全部免責は有効と考えられる(裁判例複数あり) ▼重過失時の一部免責を認める条項は?(重過失免責条項) ケースバイケースだが、 サービスが無償又は低廉である等の事情がない限り、 重過失免責条項は無効とされる可能性がある点に注意 (裁判例) 「損害賠償責任の上限を契約金額」とする責任制限条項 について、事業者に故意または重過失がある場合には 適用されないとした例(東京地判H26.1.23) (裁判例) 責任限度額が低すぎるときは、契約の内容にかかわらず 合理的な額を上限とすべきとした例(東京地判H16.4.26) 65
  • 63. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. 【BtoB】①軽過失時の全部免責は有効と考えられる ②故意重過失時の一部免責はグレー 66
  • 64. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼F社免責規定の有効性 【F社利用規約(2012年当時)】※顧客データの消失事故 第35条(免責) 6 当社は、本サービスに関連して生じた契約者及び第三者の結果的損害、付随的損 害、逸失利益等の間接損害について、それらの予見または予見可能性の有無にかか わらず一切の責任を負いません。 8 本条第2項から6項の規定は、当社に故意または重過失が存する場合または契約 者が消費者契約法上の消費者に該当する場合には適用しません。 第36条(損害賠償額の制限) 本サービスの利用に関し当社が損害賠償責任を負う場合、契約者が当社に 本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負うものとします。 ▼軽過失であれば全部免責 ▼故意重過失がある場合は、ユーザの支払額を上限とする (一部免責)という規定だった ※BtoBの場合、重過失一部免責規定の有効性はグレー ※なお第三者委員会報告書において、重過失は認定されず 「軽過失の枠内ではあるものの、その過失の程度は比較的重度のもの」 67
  • 65. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼C社免責規定の有効性 【C社利用規約(2018年当時)】※仮想通貨が外部に不正送信 第17条(免 責) 5 当社は、当社による本サービスの提供の中断、停止、終了、利用不能又 は変更、登録ユーザーのメッセージ又は情報の削除又は消失、登録ユー ザーの登録の取消、本サービスの利用によるデータの消失又は機器の故障 若しくは損傷、その他本サービスに関連して登録ユーザーが被った損害に つき、賠償する責任を一切負わないものとします。 ⇒BtoC契約では、 ・軽過失時の全部免責 ・故意重過失時の一部免責 はいずれも無効 ⇒消費者契約法第8条1項1号3号に反して 無効となる可能性大 +不当条項規制も適用される 68
  • 66. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼「合意をしなかったものとみなす」の効果 (不当条項の例) 「本サービスを契約期間中に解約する場合は、残存期間に 対応するサービス料金の倍額の違約金を支払うものとします」 ▼消費者契約法10条「条項…は、無効とする」 ⇒一定の限度を超えた部分についてのみが一部無効とする 判断となり得た(倍額部分のみが無効となるなど) ▼548条の2Ⅱ「合意をしなかったものとみなす」 ⇒そもそも「合意をしなかったことになる」以上、 不当条項の全部が契約から除外されると捉えるのが文理上自然 ⇒一部無効で救われることを前提にグレーゾーンを攻めていた 条項について、全部無効となるリスクが否定できない(私見) 69
  • 67. 不当条項規制(548条の2第2項) storialaw.jp All rights reserved. ▼免責規定を検討する視点 グレーゾーンまで踏み込んだ免責規定を定めるかは、 ▼「一切責任を負わない」と利用規約に書くことで請求を 諦める利用者もいるかもしれない、と考えるか? ▼法的に無効な規定を定めることのレピュテーションリスク ▼適格消費者団体による訴訟リスク などを勘案して検討していたところ、民法改正後は ▼民法548の2第2項はBtoBでも適用される ▼その効果は「合意しなかったものとみなす 」である (一部のみが無効となって残存部分は有効となる可能性が減少?) ▼ユーザの権利意識の高まりとレピュテーションリスク を踏まえて、グレーゾーンを攻める免責規定については これまで以上に慎重に検討するべき(BtoBの重過失免責条項) ▼免責規定に加えてSLA、「特別サービス」としての補償対応 70
  • 68. ▼免責規定・SLA・SLAを超えた補償の関係 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. 免責規定 (利用規約) SLA (サービスレベルアグリーメント) SLAを 超えた補償 <サービスの品質水準について合意する契約> <民法のデフォルトルールを制限するための規定> <契約で約束した以上の「サービス」としての補償> ※SLA(義務規定)と異なる規定として SLO(努力目標)も存在する 71
  • 70. 内容の表示義務(548条の3) storialaw.jp All rights reserved. 第548条の3 1 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取 引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求 があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容 を示さなければならない。 ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載 した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供してい たときは、この限りでない。 2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒ん だときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障 害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでな い。 74
  • 71. 内容の表示義務(548条の3) storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款の内容の開示義務 ①合意前または合意の後相当の期間内に ②ユーザーから請求があってから ③遅滞なく、相当な方法で開示すれば足りる ※相当な方法=利用規約のURLを伝えるなど ※合意前に開示していることは、定型取引成立の要件ではない ※「相当の期間内」…消滅時効期間を踏まえれば、 最終取引時から5年程度(実務Q&AQ47) 75
  • 72. 内容の表示義務(548条の3) storialaw.jp All rights reserved. ▼定型約款の内容の開示義務 ただしユーザーに対して、定型約款を記載した書面や 電磁的記録(PDF等)をメール送信等の方法により 提供していたときは、開示義務を負わない (548条の3第1項但書) ⇒開示対応義務を負わないためにも、契約成立時にタイム スタンプ付の利用規約PDFをDLさせたり、利用規約を 直接交付したうえでサインを得る運用が望ましい ▼合意前に不当に開示を拒絶した場合は、 みなし合意の規定(548条の2)は適用されない ⇔合意後に開示を拒絶した場合は、 債務不履行が問題となるのみ 重要 76
  • 74. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. 第548条の4(定型約款の変更) 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変 更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意 をすることなく契約の内容を変更することができる。 一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。 二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更 後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨 の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なもの であるとき。 2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効 力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容 並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周 知しなければならない。 3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来す るまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。 4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更に ついては、適用しない。 78
  • 75. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼変更規定が定められた趣旨 ▼不特定多数の相手方と画一的な取引を行う定型取引において は、サービスに変更が生じた際も、画一的に変更手続きを行 う必要性が高い (個別に同意を得ることは現実的でない場合も多い) ⇒そこで相手方と個別に合意することなく変更できる 場合を定めた ▼もっとも一方的な変更を無限定に認めると、ユーザ保護に反 する。そこで変更が認められる要件を限定し、かつ周知を しなければならないものとした ▼ユーザにとって利益となる変更(利益変更)と そうでない変更(不利益変更)とで 異なる要件を定めた 79
  • 76. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼利益変更の要件(548の4Ⅰ①) ⇒「相手方の一般の利益に適合するとき」は一方的な変更が可能 (具体例) ・利用料を減額する場合 ・利用料を変更せずにサービスを拡充する場合 ※相手方の全員にとって有利になる場合を指し、 一部の顧客に不利益を及ぼす場合は「相手方の一般の利益に 適合するとき」 に含まれないとされている (一問一答Q57) 80
  • 77. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼不利益変更の要件(548の4Ⅰ②) 一方的な不利益変更の要件は厳しい ①契約をした目的に反しないこと ②ア 変更の必要性 イ 変更後の内容の相当性 ウ 変更条項の有無とその内容 エ その他の変更に係る事情 に照らして変更が合理的なものであること ▼変更条項の定め(ウ)がなくても変更は可能な場合があり、逆に 変更条項があるからといって常に一方的な変更が認められるわけでもない ▼変更の対象や要件を具体的に定めていることは有利な事情となる ×「当利用規約は、予告なく変更することがあります」 ⇒不当条項(548の2Ⅱ)と判断される可能性もあり ▼変更後の条項の適用を望まないユーザに対して解除権を付与していること ▼変更周知から適用されるまでに十分な猶予期間を設けること ⇒いずれも「エ その他の変更に係る事情」を満たす方向に働く 81
  • 78. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. (裁判例)約款の一方的変更が争われた事例 銀行が、預金規定に暴力団排除条項を追加するための 約款の変更を一方的に行い、変更後の約款に基づいて 顧客との預金契約を解除した事例 ①預金契約については、定型の約款により契約関係を 規律する必要性が高い ②必要に応じて合理的な範囲において変更されることも 契約上当然に予定されている ③暴排条項を既存の契約にも適用しなければ その目的達成は困難 ④不利益は限定的で、預金者は暴力団等から脱退すれば 不利益を回避できる ⇒顧客の同意のない約款変更の有効性を認めた (福岡高判H29.10.4) ⇒改正法の施行後も、不利益変更の要件(548の4Ⅰ②)は満たすと考えられる 82
  • 79. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと する条項の有効性 実務上、利用規約の変更をユーザーに通知し、 変更後もユーザーが異議なく利用継続する場合は、 変更後の利用規約に同意したものとみなす定めをおいている 場合がある。→ このような規定は改正民法施行後も有効か? 条項例)ユーザーは、利用規約の変更後も本サービスの利用を継続 する場合、変更後の利用規約に同意したものとみなします。 ▼経産省「準則」では、有効となる可能性を示しているが・・ 「利用者による明示的な変更への同意がなくとも、事業者が利用規約の 変更について利用者に十分に告知した上で、変更の告知後も利用者が 異議なくサイトの利用を継続していた場合は、黙示的にサイト利用規約 の変更への同意があったと認定すべき場合があると考えられる」 (準則(平成30年7月)Ⅰ-2-1、P26③) 83
  • 80. 定型約款該当性(548条の2第1項) storialaw.jp All rights reserved. 利用規約の変更後もユーザーが利用継続したことに よって黙示的な同意が常に得られるとすれば、 変更規定(548条の4)の要件を守らずとも 一方的に変更ができてしまうことになるのでは・・ 果たしてそれでよいのか? 84
  • 81. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと する条項の有効性 ▼実務Q&A Q65 「顧客と明示的に合意をすることなく、定型約款の内容を変 更したうえで、『特段の申し出がない限り、変更後の約款 の内容に同意したものとみなします。』などと一方的に通 知することがあり得ますが、このような事情のみでは、顧 客との間で変更の合意が成立したと認定することはできな いといわざるを得ないものと考えられます。」 ▼実務Q&A Q64 「定型約款中に所定のルールと異なる取扱いをする旨の条項 が置かれていたとしても、その効力がそのまま認められる ことはないと考えられます。」 ⇒前ページの条項例のような「単純な利用継続のみにより変更後の 規約に同意したものとみなす条項」は、改正法の施行後は有効と ならない可能性が高いと考えておくべき 85
  • 82. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと する条項の有効性 ▼「準則」も、利用継続による黙示を無限定に認めるわけではな く、一定の要件の下で黙示的な同意を認めるとしている ①変更が一般の利用者に合理的に予測可能な範囲内であるか否か ②変更が一般の利用者に影響を及ぼす程度 ③法令の変更への対応、悪意の利用者による不正やトラブルへの 対応、条項・文言の整理など、一般の利用者であれば当然同意 するであろう内容であるか否か ④変更がサービスの改良や新サービスの提供など利用者にもメ リットのあるものであるか否か といった点は考慮される可能性があるとしている (「準則」P27) 86
  • 83. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼変更後の利用継続により黙示的な同意を得たと する条項の有効性 ▼単純な利用継続のみで黙示的な同意を得ようとするのではなく、 あくまで変更要件(548の4第1項)を満たす内容に変更する。 ▼定型約款の変更要件を満たさない可能性がある変更を行う場合 は、変更後の利用規約への同意クリックを要求するなど、明示 の同意を得る構成とする(※この場合は548の4第1項に基づく変更で はなく、従前の約款理論に基づく変更となる) ※実務Q&AQ65も「事後的に、個別に顧客と合意をして定型約款を利用 した契約の条項を変更することも否定はされていません」とする ▼利用規約の変更は、改正法の施行前に可能な限り行っておく ▼変更要件(548条の4)は、合意成立時の不当条項規制 (548の2Ⅱ)よりも厳格なので、定型約款作成時からできるだ け事後の変更が生じないよう、入念に作成しておく 87
  • 84. ▼自動更新後の契約は、約款の変更か? 新たな定型約款の組入合意か? (自動更新条項の例)※年間契約など期間の定めがある契約の場合 ユーザーは、本規約に基づく利用契約を、有効期間を更新せずに 終了させることを希望する場合には、有効期間満了日の1ヶ月前 までに、申し出ることとします。 この申し出がなされない場合は、有効期間満了日における本サー ビス利用規約の内容にて、自動的に有効期間が1年間延長のうえ 更新されるものとし、以後も同様とします。 ▼自動更新後も同一の契約と考える場合 →変更に該当し、厳格な変更要件を満たす必要がある ▼新たな定型約款により、契約を締結しなおすと考える場合 →548条の2の要件のみで足りる(=変更要件よりも緩やか。 信義則に反する条項がなければ有効) ⇒新たな契約の締結と構成することが可能かは解釈が待たれる 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. 88
  • 85. 定型約款の変更(548条の4) storialaw.jp All rights reserved. ▼変更の手続要件 ①定型約款を変更する旨 ②変更後の内容 ③効力発生時期 をインターネットその他の適切な方法により周知する ▼周知の方法は、ウェブサイト上の掲載や メール送付が考えられる ▼不利益変更は、効力発生時期までに周知しなけれ ば変更の効力が生じない 89
  • 87. 定型約款に関する経過規定(附則33条) storialaw.jp All rights reserved. ▼経過規定 ▼定型約款に関する規定は、 改正民法の施行日(2020年4月1日)以前に締結された 定型取引についても適用される(附則第33条1項) →施行日前の利用規約を改正法施行後に変更する場合、 変更要件を満たす必要がある ▼ただし ①契約又は法律により解除権を現に行使することが できない当事者の一方から、施行日前に ②反対の意思表示がされた場合は 定型約款に関する定めは適用されない(附則第33条2項3項) ※反対の意思表示をした場合は、改正民法の施行後も改正前民法が適用される ※改正前民法が適用される顧客が混在すると管理が煩雑になるため、 改正前から、顧客に解約権を認める条項を入れておく対応が考えられる 91
  • 88. 定型約款に関する経過規定(附則33条) storialaw.jp All rights reserved. ▼経過規定 ▼法務省「定型約款に関する規定の適用に対する 『反対の意思表示』について」 http://www.moj.go.jp/content/001242840.pdf 92
  • 90. ▼改正民法施行前後のスケジュール 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. 現在の利用規約 2020年4月1日 変更する際は定型約款の規定が適用される ①一方的な変更は548条の4の要件 を満たす必要あり ②548条の4の要件を満たさない 変更は個別に同意を得て行う 必要な変更は改正前 に行っておく ①548条の2の要件(みなし合意)で 締結できる ②不当条項規制あり(548条の2Ⅱ) ※toBサービスでも適用される ③一方的な変更は548条の4の要件 を満たす必要あり ④548条の4の要件を満たさない 変更は個別に同意を得て行う 利用規約の一方的な変更が許される要件は、 改正後は厳格になると考えられる。 そのため ①今後予定している変更があれば、改正前に 前倒しで行っておく ②新たに利用規約の作成を予定している場合 は、できるだけ後で変更が生じないよう 入念に作成しておく ③不当条項がないかチェックしておく (ただし改正前に締結された定型約款に基づく契約に、 不当条項規制(548条の4Ⅱ)は適用されない) ⇒改正法が施行 利用規約に基づき新たに契約締結 94
  • 91. 定型約款の概要 storialaw.jp All rights reserved. ▼改正民法の施行前に行っておくべきこと ①今後利用規約の変更を予定している場合は、 改正前に前倒しで行っておく ※現行法では一方的な変更が許される要件は不明確であるが、 「変更後の利用継続による黙示的な同意」が認められる 余地があるとされる(経産省「準則」P26) ⇒しかしこのような同意条項の有効性は、改正後は疑問が残る ⇒自社の利用規約に「黙示の同意条項」があれば、 改正前のうちに最大限活用するべき ②変更する場合、改正法を見据えた内容にする ▼不当条項を含んでいないかどうかなど ③ウェブサービス利用規約以外の規約のチェック ▼定型約款に該当するかの確認(ソフトウェアライセンス規約など) ▼該当する場合には不当条項や変更規定のチェック 95
  • 93. ご質問・お問い合わせ等は下記まで STORIA法律事務所東京オフィス 弁護士 杉浦 健二 Mail k-sugiura@storialaw.jp URL https://storialaw.jp kenjisugiura01 sugiurakenji slack/chatwork/zoom対応 Tel 03-6711-5160 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル6階 (地下鉄大手町駅直結) 97
  • 94. 98