research content. by Jun Kiura (Seikei university)

1. 行動ファイナンスと
アノマリー
木浦 純

2. 目次
1. 本スライドの目的
2. 行動ファイナンス
3. アノマリー
4. 特定のアノマリーに対する考察

3. 1. 本スライドの目的
• 証券市場における価格形成に関する中心
的な理論体系は、伝統的ファイナンス理論。
• 代表的な理論はCAPM。
• CAPMは、ベータと呼ばれる市場リスクに応じ
てすべての証券の期待リターンが形成される
という非常に単純明快なモデル。
• 実際の証券市場では、CAPMを中心とする
伝統的ファイナンス理論では十分に説明でき
ないアノマリーと呼ばれる現象が存在する。
• この現象の発生原因と考えられる投資家の
合理性の限界を検討するために新たに登場
したのが、行動ファイナンス。
• こうした背景を踏まえて、本スライドでは、行
動ファイナンスとこの研究領域のメインテーマ
であるアノマリーの紹介、特定のアノマリー
に対する考察を行うことを目的とする。

4. 2. 行動ファイナンス
2.1. 誕生と発展
• 行動ファイナンスは、あらゆる選択肢を対象
に最適な選択を行うことは現実的に困難と
するサイモンの指摘が出発点であり、1970
年代にカーネマンらが発表したプロスペクト
理論が基礎となっている。
2.2. 伝統的ファイナンス理論との違い
• 従来の伝統的ファイナンス理論では、投資
家がきわめて合理的であることを前提として
おり、価格はある時点で利用可能なすべて
の情報を正しく反映して形成されると考えて
いる。
• 一方、行動ファイナンスでは、投資家の認
識・判断能力には限界があり、感情的要因
にも左右されることを前提としており、これらが
原因となり価格形成に歪みが発生すると仮
定している。
期待効用理論
von Neumann &
Morgenstern[1944]
ポートフォリオ理論
Markowitz[1952]
CAPM
Sharpe[1964],Lintner[1965],
Black[1972]
限定合理性
Simon[1955]
プロスペクト理論
Kahneman & Tversky[1979]

5. 2. 行動ファイナンス
2.3. プロスペクト理論
• プロスペクト理論は、不確実性を伴う選択問
題に直面した場合に、人々がどうのような意
思決定を行っているのかをモデル化した理論
である。
① 効用は、利益と損失によって決まるのであっ
て、富の最終水準では決まらない。
② 利益よりも損失の方が重く感じられる。
③ 価値関数は利益領域では凹、損失領域
では凸の形状をしている。
④ 確率はウェイト関数で変換される。

6. 3. アノマリー
3.1. 概要
• アノマリーとは、投資家の合理性(市場の効
率性)を前提とした伝統的ファイナンス理論
では説明できない現象のことである。
• 証券市場においては、よく当たるかもしれな
いとされる経験則として知られてきた。
• 発生原因としては、以下の3つが考えられる。
① 制度的要因
② モデルの不完全性
③ 意思決定主体の非合理性
• アノマリーには、投資家の合理性と整合的で
ないものがある。
• 子会社に対する親会社の持ち分の価値が
親会社自身の時価総額を超える親子逆転
現象。
• 5月に株式を売却して、10月下旬に買い戻
すと、そのまま株式を1年間保有し続けるより
も高いリターンが得られやすいセル・イン・メイ
効果。
• 1月のリターンが他の月より低くなりやすい1
月効果。
3.2. アノマリーの類型Ⅰ

7. 3. アノマリー
3.3. アノマリーの類型Ⅱ
• アノマリーには、CAPMと整合的でないもの
がある。
• PERやPBRが低い株式ほどリターンが高くな
りやすいバリュー株効果。
• 時価総額が小さい株式ほどリターンが高くな
りやすい小型株効果。
3.4. アノマリーの類型Ⅲ
• 投資家以外にも証券市場で活動している
主体は存在するので、アノマリーには、企業
の行動が原因のものもある。
• 企業の資金調達に関しては、新規株式公
開(IPO)の初日に株価が高騰しやすいアン
ダープライジング。
• 企業の投資活動に関しては、企業買収
(M&A)が発表されると買収の対象企業の
株価が大幅に上昇するアノマリー。

8. 4. 特定のアノマリーに対する考察
• 今回は、アンダープライジングについて考察する。IPOの際に初値収益率が概ね
高くなるアンダープライジングには、公開価格が意図的に低く設定されているという
仮説と、投資家が過度に楽観的な期待を抱いているという仮説がある。
• そこで、本レポートでは、ロックアップによる一時的な供給不足によって、高値が
形成されるという新仮説を提示する。
Ex) ロックアップ：非公開時点での株主等が、IPO後の一定期間、株式の売却等を行わない旨を確約する制度。
 IPO時
D
SS’
高値
適正株価
 一定期間後
適正株価
D
S