General AI Challenge 中間報告会

1. General AI Challenge 中間報告会
東京大学教育学研究科修士２年 黒宮寛之

2. ヒトの技能学習と転移

3. Intro
技能学習の転移
“たとえばスケートができるとスキーが早く上達する場合が多い .逆に水道のレバーを下げるのに慣れると ,上
げる方式にとまどう.このようにある学習を行うと,その他の学習を促進したり ,逆に遅らせたりする.このような
ときに学習または訓練の 転移があるという.（中略）特殊な転移としては ,一方の手や足で学習した技能が他
方の手や足に転移する両側性転移がある .たとえば鏡映描写を右手で練習すると ,一度も練習しなかった左
手に転移する.”（鹿取・杉本・鳥居『心理学 第 4版』, 2011）

4. General AI Challenge GOAL
“Your agent should demonstrate gradual
learning—the ability to use previously learned
skills to more readily learn new skills (and in
this case, to answer questions generated by the
environment).”
次々に出される課題に対して，前に
学習した結果を忘れずに次の学習
に活かすという意味で，ヒトの脳の
ような転移学習能力を備えている必
要がある

5. 転移学習に関する実証的な考察
● ヒトは以前に学習した課題と 似ているが異な
る課題に対して，どの程度事前に獲得したス
キルを使えるのだろうか
● 逆に現在学習している課題に適応すること
によって以前に学んだスキルは少し上書きさ
れてしまうわけだが、以前の学習結果は ど
の程度保たれているのだろうか
(2006)
プレスリリース（http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_181009_j.html）
「野崎 転移」で検索（4番目くらいに出てきます）

6. 実験内容
被験者には左手だけに右方向への人工
的な力場がかかった平面でのリーチング
課題を行ってもらう．
学習が進むにつれて，ターゲット（赤丸）
に最短経路でリーチするために被験者は
力場とは反対向き（左向き）に力をかける
ことを学ぶ．つまり左腕から発揮される左
向きの力の大きさを被験者の課題に対す
る学習量として定義できる．
そこで，片腕のみで学習を行った後に両
腕で課題を行い，片腕課題で学習した左
腕の力場への適応的な動き（左向きの
力）がどの程度保たれているかを調べ
る．
右向きの力場の例（動画は右手での試行）
左手のみのリーチング課題
（右手は動かさない）
両腕を使ったリーチング課題
（右手も一緒に動かす）
スタート地点
ターゲット
どちらも左手の動きは変わらない
緑の点から赤の点ま
で真っ直ぐ動かそうと
するが・・・
アームに右向きの力がはたらいているので、軌
道は若干右にそらされる

7. 実験結果
● 片腕運動で獲得したスキル（右向
きの力場の中でまっすぐターゲット
にリーチする能力）は両腕運動中
の左腕に７割程度活かされる
● 反対に両腕運動中に獲得した左
腕のスキルも片腕運動時には７割
程度しか活かされない（課題とし
ては一見簡単になっただけのよう
にも見えるが・・・）
● 片腕課題で左手に力場への適応
を学習させた後，力場がかかって
いない状態で両腕でリーチングを
行う．すると獲得した左腕のスキ
ルは学習前の状態に戻ったように
見えるが，その状態で左腕だけで
リーチングをさせると依然として学
習した左方向のずれが残っている
ことが分かる．→新しい課題に適
応しても大体半分〜三分の一くら
いは学習効果が上書きされずに
残っている.
（ｄ）片腕課題→両腕課題
（ｆ）両腕課題→片腕課題
縦軸は力場を切った時の最短経路から右方向
へのズレ(cm)．今まで被験者は右向きの力を受
けていたので，力場を切った時は軌道が左にず
れてしまう．
（c）両腕ウォシュレット→片腕ウォシュレット
（d）片腕ウォシュレット→両腕ウォシュレット
力場への適応を学習した後に力場をかけない状態で課題を何回も行い．学習した力場へ
の適応を忘れさせる（ウォッシュアウト試行）．

8. この研究が示唆するもの
ヒトは片腕運動用，両腕運動用のリソースを別々に持っ
ている。ただし両者のリソースには重なりあうところがあ
るので，そこで学習の転移が起きる。
一方で両者は完全に重なっているわけではないので，そ
の転移は部分的なものであり，これによって後続課題の
学習による先行課題の忘却も部分的なものにとどまる。

9. 今回のチャレンジに生かすとしたら
Task1 Task2 Task3 Task4 Task5
リソースA リソースB リソースC リソースD リソースE
(Pan&Yang, 2009, IEEE)
概念抽出しなくても、リソースをオーバラッピングさせることができれば転移学習が実装できるのでは