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- 2. 2 脱メール の夢は「Slack」で本当にかなうのか?
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■ チャットツールの導入状況
企業規模によって、よく導入されているチャットツールは異なる。今回の調査結果によると、大
規模な企業では Microsoft Teams や Skype for Business、小規模な企業では Slack の採用
が多い。MicrosoftはSkype for BusinessからMicrosoft Teamsへの移行を推進している。こ
うした取り組みは、Microsoft Teams のターゲット層拡大や導入増加につながる可能性が高い
と、ツァイ氏は語る。
Google Hangouts は企業向け機能が比較的充実している割に、導入率がそれほど高くない。
調査会社 Frost & Sullivan のロバート・アーノルド氏は、Google は技術的な観点から市場の動
向を追っていないと指摘し、ビジネス向け分野に対する Google のコミットメントには「一貫性が
なかった」と主張する。ただし持続的にコミットメントをするようになれば「Google がこの市場
で破壊的な変革を起こす可能性は大いにある」とアーノルド氏は語る。
Workplace by Facebook は今回の調査結果で、最も導入企業が少なかった。調査会社
Nemertes Research のアナリスト、アーウィン・ラザー氏によると、Workplace by Facebook
は企業向け機能を強化しているものの、多くの IT 担当者にとっては依然として、企業内ポータル
や企業内ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)というイメージがあるという。
大規模な企業は、導入済みのユニファイドコミュニケーション(UC)製品と同じベンダーが提
供するチャットツールを採用する傾向がある。その方が相互に連携しやすく、一般的には追加コ
ストがかからないからだ。小規模な企業は特定のニーズを満たすチャットツールを選び、機能を評
価して採用を決める傾向がある。
■ メール vs. チャットツール
チャットツールはコラボレーション機能をますます充実させており、メールの後継ツールの観を
呈している。スレッド(一連のやりとり)が無秩序になりがちなメールと比べて、コンテキスト(状
況)に応じたコミュニケーションを取りやすいことが、チャットツールの大きな強みだ。「チャット
ツールがコミュニケーションの中心になってきており、メールに取って代わりつつある。当社は、
チャットツールを導入してから社内メールを使わなくなった」とラザー氏は言う。
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社内コミュニケーションではチャットツールの利用が拡大しているが、外部とのコミュニケー
ションでは依然としてメールが主流だ。今回の調査結果では、チャットツールがメールに取って代
わると考える IT 担当者は少なかった。チャットツールの方がメールより安価だと回答した IT 担当
者は 30%で、Spiceworks が 2016 年に調査した際の 39%から減少した。チャットツールのセ
キュリティに不安を抱く IT 担当者は少なくない。例えばチャットツールで情報を共有する場合に、
法規制の順守(コンプライアンス)が可能かどうかが懸念点となる。
■ セキュリティに関する懸念
メールとの比較において IT 担当者の間には、チャットツールのセキュリティ、特に暗号化レベ
ルに関する不安がある。一般的なチャットツールは、伝送中のデータと保管時のデータの暗号化
が可能だ。ただし送信者と受信者の端末だけでデータを復号する「エンドツーエンド暗号化」を
提供しているのは、Skype や「WhatsApp」など一部のチャットツールに限られる。
従業員が会社や IT 部門の許可なく、IT 製品/サービスを持ち込んで利用する「シャドー IT」
の心配もある。未承認のコミュニケーションツールを従業員が使えば、データ共有の集中管理が
できなくなる。今回の調査では、未承認のチャットツールを従業員が使用していると回答した IT
担当者は 25%で、2016 年の 36%から減少した。
IT 担当者は「従業員が必要とし、使いたがるようなツールを提供すべきだ」と、アーノルド氏
は主張する。同氏によると、シャドー IT の問題はますます重要になっており、IT 担当者は未承認
ツールの使用にまつわる GRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)の問題を減らそうと苦
心している。一方でラザー氏によると、自社のセキュリティ管理ポリシーに準拠していることを条
件に、部署ごとに好きなツールを使うことを認めている企業は 3 分の 2 にも上るという。
脱メール依存 に本気なら「チームコラボレーションツール」を検討しよう
従業員や顧客、パートナーなど各者間のコミュニケーションを合理化し、コラボレーションを促
進する手段として「チームコラボレーションツール」を採用している企業は少なくない。最近の
チームコラボレーションツールは、グループメッセージングからコンテンツ共有、相手と 1 対 1 で
向き合うミーティングに至るまで、幅広い分野の機能を備える。生産性の向上やプロジェクトの
追跡など、数多くのメリットをもたらす。
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■ 組織の規模は問わない
かつてコミュニケーション手段といえば、ボイスメール(留守番電話)サービス付きの音声電
話といった標準的な手段ならともかく、高度な機能を持つシステムを導入するのは大規模なユー
ザー企業に限られていた。オンプレミス向けの複雑なユニファイドコミュニケーション(UC)製
品の場合、その購入、配備、管理に当たって費用が参入障壁となっていた。
クラウドコンピューティングの普及によって、ユーザー企業間の競争の土台が平準化された。今
はごく小規模な企業でも、大企業が使っているものと全く同じチームコラボレーションツールを利
用できる。
大規模企業向けチームコラボレーションツールは一般的に、複数組織の間でシームレスなコ
ミュニケーションを可能にするメッセージング機能を備える。小規模な新興企業であっても、大企
業の顧客と同一のチームコラボレーションツールを使用して、一貫した方法でコミュニケーション
ができる時代になった。規模の異なる企業間で関係を確立したり、コミュニケーションを強化し
たりする際に、チームコラボレーションツールは非常に大きな役割を果たす。
■ チームコラボレーションツールとメールとの違い
従来のコミュニケーション手段と比較した場合に、チームコラボレーションツールの利点が特に
目立つ場面がある。例えば複数のチームメンバーが長期的なプロジェクトを受け持っているビジネ
スユニットにおいて、チームコラボレーションツールのメッセージング機能と、従来のメールを比
較するとしよう。
チームコラボレーションツールのメッセージング機能を使うと、プロジェクトチームのメンバー
をいつでもチャットグループに追加したり削除したりできる。グループに追加したメンバーは、そ
のメンバーの参加前に共有されていた以前のメッセージやリンク、コンテンツなどにアクセスでき
る。メンバーやグループへの参加時期に関係なく、全員が確実にプロジェクトのコンテンツへアク
セスできるようになる。
チームコラボレーションツールのほとんどは、コンテキスト検索機能を備えている。この機能が
あると、グループチャットの履歴に含まれているコンテンツを探しやすくなる。
これまでプロジェクト内での情報共有手段として使われてきたメールでは、2 者間の会話に新し
い受信者を追加すると、メールスレッドが混乱する場合がある。特定の情報を検索する際に、重
複の山の中から探し出さなければならなかったり、逆に探しているコンテンツが欠落していたりす
ることもある。
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添付ファイルについては、以前送信されたメールには含まれていない可能性がある。そうすると
送信者にファイルの再送を要求せざるを得ず、さらなる混乱を招く場合がある。グループメンバー
に対してメールを送信する場合、チームメンバーの誰かが「全員に返信」のつもりで 1 人のメン
バーへの「返信」をクリックすると、そのスレッドの輪から、不本意ながら他のメンバーの誰かが
外れてしまうこともある。
複数のチームメンバーとプロジェクト情報をやりとりする場面では、1 つ 1 つの出来事はささい
なものでも、こうした要因が組み合わさると大きな障害となる。
■ チームコラボレーションアプリはコンプライアンスの要件もカバーする
これまで医療、金融機関、政府機関など一部の業種では、データに関する各業界向けの法制
度に準拠していないため、チームコラボレーションツールを採用できない状況が発生していた。幸
いなことに、大企業向けのチームコラボレーションツールのベンダーは、データ処理関連の特殊
な法制度や仕様への準拠が求められる業種でも、問題なく利用可能にするための取り組みを始め
ている。
従来のチームコラボレーションツールは、エンドツーエンドのメッセージ暗号化やデータの可視
化、レポート作成、オンプレミスの専用サーバを使った暗号 管理など、幾つかの機能が不足し
ていた。現在は、こうした高度なコンプライアンス機能を提供するチームコラボレーションツール
が幾つか販売されており、幅広い業種で安心して使用できるようになりつつある。
■ 別拠点のチームメンバーとのコミュニケーションに伴う課題もクラウドで軽減
本社以外の広範囲に拠点が分散し、従業員が複数のタイムゾーンにまたがって勤務している企
業は、クラウドベースのチームコラボレーションツールが有効であることに気付いている。クラウ
ドベースのチームコラボレーションツールは、モバイルデバイスからの利用を中心に据えており、多
くの従業員が別拠点に常駐している企業やグローバル企業に適している。
トラブル対応コールセンターを 24 時間年中無休で運営している企業を想定しよう。この企業
では「フォローザサン」(Follow the Sun)というモデルを採用しているとする。これは 24 時間
体勢で運用するコールセンターを 1 カ所だけ配置するのではなく、複数のコールセンターを世界
各地に点在させ、各コールセンターは通常の勤務時間で、次々と別拠点に引き継ぐことだ。ある
拠点の稼働時間が終了した際には、インフライト(仕掛かり中)の障害チケットを次の拠点へと
引き継ぐ。
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クラウドベースのチームコラボレーションツールがあれば、障害の情報を受け付けたコールセン
ターの従業員が、次のシフトの勤務を開始しようとしている拠点のスタッフに、その障害チケット
に関する情報を引き継ぐことができる。障害チケットに関する情報は、地理的に分散したチーム
間で共有できる。
■ 単一ツールで真のUCを実現
UC の最終的な目標は、あらゆるコミュニケーションニーズを満たす単一のシステムを組織全体
で使用することだ。チームコラボレーションツールは前述の通り、メッセージング、電話会議、ビ
デオ会議、ソーシャルネットワークなど、幅広い機能を含む。ユーザー企業としては、自社で必
要とするコミュニケーション手段を全て包含した製品を見つけることを目標にすべきだ。
全エンドユーザーが使うチームコラボレーションツールを 1 種類に絞り込むと、組織は次の 2
つの主要な効果を実感できる。1 つは、会社や IT 部門の許可なく IT 製品/サービスを業務利用
する「シャドー IT」が、コラボレーションに与える影響を軽減できる点だ。基本機能を無料で利
用可能にしているチームコラボレーションツールが少なくないことから、各部署が IT 部門からの
情報提供や支援を受けずに、独自の決定に従ってチームコラボレーションツールを使用する例も
ある。この傾向は、重要なデータの損失を防ぐのが困難になるという、セキュリティ上の課題に
つながる。こうしたシャドー IT を統制できる見通しが立たない場合、機密情報や知的財産を紛失
したり盗まれたりする可能性が高まる。
もう 1 つの利点は、全員が同じツールを使用することで、チームコラボレーションツールの効
果がますます増大するという事実だ。コミュニケーション手段の統一により、部門間の縦割り志向
(サイロ化)を打破し、社内の全員で情報を交換できるようになる。裏を返せば、各部門が独自
のチームコラボレーションツールを使用すると、コミュニケーションが分断されたり、データセキュ
リティの問題が即座に発生したりする可能性がある。企業は最終的に、単一のチームコラボレー
ションツールが大多数の従業員のニーズを満たすことを保証する必要がある。
どのような規模の企業であっても、チームコラボレーションツールの購入を正当化する方法は
複数存在する。大企業向けツールの場合は一般的に、幅広い要件を満たすために微調整用のオ
プションを用意している。とはいえ競合よりも圧倒的に優れたチームコラボレーションツールは現
時点では存在しないので、今後の選択肢の充実に期待が集まる。