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ヘレン・カルディコット博士京都講演会の報告
                「放射線被曝と福島原発事故」

 講演会は 2012 年 11 月 25 日 6 時 30 分より    京都ひと・まち交流館で開かれた。その 1
時間前まで医師など専門家向けの講義がおこなわれた。以下は通訳を含めて 2 時間あまり
の一般向けの講演部分の紹介である。さらに、医師向けの講義を聴講された大和田さんか
ら補足していただいた。Helen Caldicott さんは Nuclear Policy Research Institute NPRI、
                                                               (
核政策研究所)理事長。オーストラリアの小児科医、反核活動家である。
チェルノ ブイリ より多 い放出 放射能
 福島で放出された放射能はチェルノブイリ事故で放出された放射能より多い。風が西風
で海に出た。カリフォルニアでヨウ素が検出されている。日本政府発表の汚染図はセシウ
ムのみで正確さもわからない。3 つの原子炉は今でも放射性物質を放出している。チェルノ
ブイリ事故ではヨーロッパ各地が汚染された。トルコにも放射性物質が広がり、トルコ茶
も汚染し、それらを全てロシアに輸出した。ヨーロッパの汚染は 300 年続く。
日本の半 分が汚 染され た
 福島事故で日本の半分はセシウムで汚染されてしまった。スウェーデンでは被曝した胎
児の知能指数 IQ が低い。放射線被曝で脳の発達が影響されるようである。がんの 3 割は自
然界の放射線によるが、子どもは大人に比べ 10 から 20 倍、感受性が高い。女児の方が男
児より2倍感受性が高い。胎児は何千倍も高くなる。ところが原子力産業は 25 歳白人男子
を被曝の基準にしている。
動植物に よる放 射性物 質の濃 縮
 遺伝子に起因する病気は 2600 もあり、1 マイクログラムでもガンを引き起こす。日本は
70トンのプルトニウムを持ち、2 週間くらいで原爆を作れる。オーストラリアのウランの
輸出は麻薬のヒロインの輸出よりも悪いことである。植物はセシウムを濃縮する。ミルク
や肉では幾百倍にも濃縮される。海藻や魚などでも放射性物質が幾百倍にも濃縮される。
魚は全て検査すべきである。ヨウ素 131 は半減期が 8 日間で 100 日くらい影響が残る。福
島の子ども 9 万 7 千人の甲状腺の超音波検査で 40%に結節、のう胞が見られた。異常で心
配である。チェルノルノブイリでは 16000 人の甲状腺がん死があった。
放射性セ シウム の臓器 への蓄 積の危 険性
 セシウムはカリウムと同様に身体に入る。セシウムは臓器に取り込まれ、排出されにく
く、いっそう危険である。セシウムは脳のがん、筋肉のがんを引き起こす。心臓の筋肉に
も集中するので突然死が増え、膵臓にもあつまり糖尿病を起こす。セシウムを取り入れる
ほど、どんどん蓄積されていく。なかなか排出されない。体内被曝の話を政府はなかなか
しない。外部被曝の話ばかり。ストロンチウム 90 は 300 年間残る。骨に吸収され、カルシ
ウムと似た動きをするため骨にたまり、骨髄癌、白血病を起こす。妊婦、幼児、胎児は絶
対に汚染地にいてはいけない。
福島・東 京など 汚染地 域に住 むべき ではな い
 福島、東京も含めて住むべきではない。政府は住民を避難させるべきである。政府は税
金で東電を救っているのは不当である。土壌の除染は無理であり、できない。40 年でも廃
炉に出来ないだろう。
 4 号機の燃料プールは 30m の高さにあり、チェルノブイリの 10 倍の 100 トンの燃料が
ある。4 号炉の燃料プールが崩れたら、北半球全体が汚染する。
チェルノ ブイリで 100 万人が 死亡
 チェルノブイリ事故では 100 万人が死亡した。日本は人口密度が高いのでもっと大きな
被害になるだろう。のう胞はあまり心配しなくてもよいが、6 ヶ月ごとに検査し、白内障、
糖尿病など他の病気も合わせて検査すべきである。現在、魚も海藻も汚染されており、そ
れらを食べるべきではない。
被曝の危 険性の 真実の 総合的 な報告
 講演時間が通訳のために短く、結論が次々に列挙されるという講演であった。しかも、
非常に重大な結論であり、いつまでも質問が絶えなかった。日ごろ、安心させるようなテ
レビの解説よりも長年の研究と深い経験に基づく警告はやっぱりそうかと納得できるもの
であった。細かいデータも時には必要であるが、カルディコットさんのお話は被曝の全体
像を捉えた総合的な真実を語るものであり、その一貫性、統一的理解が印象的であった。
講演ではデータまで示す時間はなかったが講義では示されたものと思う。         (山田耕作)


            「医師・専門家向けセミナー」の報告

 京都府中小企業会館で9時 30 分から 15 時 30 分まで昼食を挟んでおこなわれた。午前は
カルディコット博士のセミナー、午後は参加者の質問(医師優先)に博士が答える形でお
こなわれた。ここでは夜の一般向け講演で報告されなかった点について記す。
 博士は「橋下大阪市長がおこなおうとしている汚染瓦礫処理は内部被曝を拡大する以外
の何ものでもない。医師のみなさんは白衣を着て橋本病を市民に知らせる行動をとるべき
だ。皆さんは社会的信用が高いのでメディアを使って放射線被曝の脅威を訴えて欲しい」
と医師達の役割を熱く語った。セミナーで博士はまた、放射線による障害についての医学
的記述は、推進派が書いているため外部被曝による損傷しか書かれていない。内部被曝に
よる研究は全く未知の研究領域である。フクシマは史上最大の事故。謙虚に患者と向き合
い診断、治療、予防の研究に取り組むよう若き日本の医師達を励ました。情報交換のため
の医師のネットワークを作り、健康被害の事実を交換・集積して誰も経験したことのない
事実に真摯に取り組んで欲しいと激励した。
 1)   放射能に ついて:原発事故で放出される放射性核種は約 200 種類ある。生体への
影響が判っているのは4種類くらいで残りのほとんどは判っていない。
 放射性トリチウム(半減期は 12 年、なくなるのに 120 年)は通常運転の原発から絶えず
蒸気として大気へ、冷却水を介して海や川へ。水分子に取り込まれるので飲料水から人に
取り込まれるし、また皮膚から直接入るので危険である。
2) 甲 状 腺異 常 : 子どもの甲状腺がんは稀ながんである。福島では2例報告されている。
5 ミリより小さい結節でも悪性細胞がまじっている場合もある。福島の子どもの嚢胞保有率
が 43%をどう思うかの質問に、博士は日本にくる前にヨーロッパに立ち寄り甲状腺の世界
的権威に確認したところ、やはり異常だと答えた。福島から避難すべきだ。
  チェリノブイリの甲状腺がんの解析から、放射線による甲状腺がんに特異的な遺伝子マ
カーがドイツのグループにより発見された。これを使えば甲状腺がんが放射線によるもの
かどうか判る可能性が出て来た。
  ジュリア ・ヘス 他 ( 20 11) 『若 年患者 の甲状 線 乳頭癌の 染色体 バンド 7q 11 の 増加
  は低 線 量放 射線 被 曝と 関 連が あ る』 米国科学アカデミー会報 (PNAS                                      June 7, 2011
  vol. 108, 9559-9600).
3)白内障:
     「医師と専門家のセミナー」で手渡された資料の編集・翻訳者の平沼百合氏は、
被曝の程度の指標として従来の「染色体検査」ではなく「水晶体混濁の斑点の数」が被曝
量と相関関係」にあることから欧米では後者がより多く使用されている旨を話された。ま
た、チェリノブイリ事故後に生まれた子どもに網膜剥離が認められた。これはこれまで前
歴が無い。子どもの白内障はセシウム 137 の体内蓄積量と相関するというバンダジェフス
キー博士の発見が国際的に認められたことを物語っている。厚労省も、フクシマ事故処理
作業者の累積放射線量が 50 ミリシーベルトを超えたら白内障検査費用を保証することを決
定している。
4)染 色体異 常:放射線による染色体異常の検出はこれまで血液細胞を用いておこなわれ
てきが、頬粘膜外皮細胞の方がより簡便で定量性があることが判った。化学物質、放射線
それぞれ単独で被曝しても検出されるが、化学物質と放射線の両方で相乗効果が見られる。
複合汚染の検出にも適している。
5)生態 系の変 化:福島での立ち入り禁止区域で鳥,昆虫などの動物に個体数の減少に加
え奇形が見られた。白いカラス、脳の小さい鳥。また複数の子どもトマトを持つトマトな
ども見つかった。


  この講演を補足する報告として次の文献を参照されたい。わが国国会議員団の報告資料
である。
Dr. Olha V. Horishna 著『チェルノブイリの長い影                       チェルノブイリ核事故の健康被害                      <
研究結果の要約:2006 年最新版>』
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/cherno10.pdf/$File/cherno10.pdf


「チェルノブイリの長い影                           チェルノブイリ核事故の健康被害」の紹介
この報告の最初に、ユーリ・バンダジェフスキー博士の先駆的で犠牲的なヒバク研究に
感謝している。
 バンダジェフスキー博士が発見したセシウムが体内に取り込まれ蓄積することによって、
血液循環系、生殖系、免疫系などが障害を受けること。脳や心臓に蓄積し、急性死や精神
活動を乱すこと。特に妊婦は胎盤にセシウムが蓄積するので胎児が被曝し,その影響が本
人の将来の健康のみならず、遺伝的にも継続し、人類の将来にとってきわめて重大な問題
となっていることが警告されている。白内障など老化が進みそれに関連したさまざまな病
気が発生することが示されている。放射線の与える影響として、放射線によって生じた活
性酸素が細胞脂質を酸化し、破壊し生体の機能を低下させる機構の解明など研究が進んで
いることが報告されている。
 注目すべきは、長期的に少量の放射線量に曝露した母親から生まれた子どもには、幼少
時に骨組織の構造機能状態が崩壊し、骨軟化症や骨減少症が現れて来る。小児科医達は、
被曝地域の子どもに骨や筋肉疾患が著しく増加していることを指摘している。非汚染地域
の子どもの5倍骨折が頻発し、また筋力や運動能力障害は非汚染地域地の 3.3 倍にもなる。
 全体として放射性物質による汚染による被害が、がんというだけではなくさまざまな病
気や健康破壊を引き起こし、それが将来の世代にまで強められて継続するという恐ろしい
真実が現実の観測に基づいて示されている。国家的危機という認識である。わが国も後を
より深刻に追うだろう。      (大和田幸嗣)


追記
 以上の報告は福島原発事故の被害を心配された橋本真佐男さんの励ましとお薦めによる
ものである。昨年末から新春にかけ、病床にありながら、東日本震災からの復興を願い以
下を東京新聞に投稿された。その帰結も待たず、1 月 11 日逝去された。長年のご活動、ご
指導、ご友情に感謝します。
心よりご冥福をお祈りします。


          生態学に基づく東北の真の復興を訴える
                                     橋本真佐男
 保全生態学者鷲谷いずみ氏は、東北地方の復興について、次の様な提案をしている。「東
日本大震災からの復興に当たって必要なのは、昨今の土地利用と防災の常識から脱却した、
生態系の視点を取り入れた方針と計画である。津波などの災害に対して、防波堤など大規
模な構造物で守らなければならないような脆弱性の高い土地には新たな構造物を作らず、
『災害への緩衝空間』とし、多様な生態系サービスを享受するための、生態系・生物多様
性を生かし・活かす空間として利用する」。この提案の基礎にある概念とは、生態系サービ
スは人間のよき暮らしを支えること、そしてこれと生物多様性が密接に関連しているとい
うことである。ぜひ鷲谷氏の提案を取り入れ、目の前の私欲にとらわれず、子々孫々に至
るまで真に人間らしい暮らしを実現してほしいというのが私の切なる願いである。

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  • 1. ヘレン・カルディコット博士京都講演会の報告 「放射線被曝と福島原発事故」 講演会は 2012 年 11 月 25 日 6 時 30 分より 京都ひと・まち交流館で開かれた。その 1 時間前まで医師など専門家向けの講義がおこなわれた。以下は通訳を含めて 2 時間あまり の一般向けの講演部分の紹介である。さらに、医師向けの講義を聴講された大和田さんか ら補足していただいた。Helen Caldicott さんは Nuclear Policy Research Institute NPRI、 ( 核政策研究所)理事長。オーストラリアの小児科医、反核活動家である。 チェルノ ブイリ より多 い放出 放射能 福島で放出された放射能はチェルノブイリ事故で放出された放射能より多い。風が西風 で海に出た。カリフォルニアでヨウ素が検出されている。日本政府発表の汚染図はセシウ ムのみで正確さもわからない。3 つの原子炉は今でも放射性物質を放出している。チェルノ ブイリ事故ではヨーロッパ各地が汚染された。トルコにも放射性物質が広がり、トルコ茶 も汚染し、それらを全てロシアに輸出した。ヨーロッパの汚染は 300 年続く。 日本の半 分が汚 染され た 福島事故で日本の半分はセシウムで汚染されてしまった。スウェーデンでは被曝した胎 児の知能指数 IQ が低い。放射線被曝で脳の発達が影響されるようである。がんの 3 割は自 然界の放射線によるが、子どもは大人に比べ 10 から 20 倍、感受性が高い。女児の方が男 児より2倍感受性が高い。胎児は何千倍も高くなる。ところが原子力産業は 25 歳白人男子 を被曝の基準にしている。 動植物に よる放 射性物 質の濃 縮 遺伝子に起因する病気は 2600 もあり、1 マイクログラムでもガンを引き起こす。日本は 70トンのプルトニウムを持ち、2 週間くらいで原爆を作れる。オーストラリアのウランの 輸出は麻薬のヒロインの輸出よりも悪いことである。植物はセシウムを濃縮する。ミルク や肉では幾百倍にも濃縮される。海藻や魚などでも放射性物質が幾百倍にも濃縮される。 魚は全て検査すべきである。ヨウ素 131 は半減期が 8 日間で 100 日くらい影響が残る。福 島の子ども 9 万 7 千人の甲状腺の超音波検査で 40%に結節、のう胞が見られた。異常で心 配である。チェルノルノブイリでは 16000 人の甲状腺がん死があった。 放射性セ シウム の臓器 への蓄 積の危 険性 セシウムはカリウムと同様に身体に入る。セシウムは臓器に取り込まれ、排出されにく く、いっそう危険である。セシウムは脳のがん、筋肉のがんを引き起こす。心臓の筋肉に も集中するので突然死が増え、膵臓にもあつまり糖尿病を起こす。セシウムを取り入れる ほど、どんどん蓄積されていく。なかなか排出されない。体内被曝の話を政府はなかなか しない。外部被曝の話ばかり。ストロンチウム 90 は 300 年間残る。骨に吸収され、カルシ ウムと似た動きをするため骨にたまり、骨髄癌、白血病を起こす。妊婦、幼児、胎児は絶 対に汚染地にいてはいけない。
  • 2. 福島・東 京など 汚染地 域に住 むべき ではな い 福島、東京も含めて住むべきではない。政府は住民を避難させるべきである。政府は税 金で東電を救っているのは不当である。土壌の除染は無理であり、できない。40 年でも廃 炉に出来ないだろう。 4 号機の燃料プールは 30m の高さにあり、チェルノブイリの 10 倍の 100 トンの燃料が ある。4 号炉の燃料プールが崩れたら、北半球全体が汚染する。 チェルノ ブイリで 100 万人が 死亡 チェルノブイリ事故では 100 万人が死亡した。日本は人口密度が高いのでもっと大きな 被害になるだろう。のう胞はあまり心配しなくてもよいが、6 ヶ月ごとに検査し、白内障、 糖尿病など他の病気も合わせて検査すべきである。現在、魚も海藻も汚染されており、そ れらを食べるべきではない。 被曝の危 険性の 真実の 総合的 な報告 講演時間が通訳のために短く、結論が次々に列挙されるという講演であった。しかも、 非常に重大な結論であり、いつまでも質問が絶えなかった。日ごろ、安心させるようなテ レビの解説よりも長年の研究と深い経験に基づく警告はやっぱりそうかと納得できるもの であった。細かいデータも時には必要であるが、カルディコットさんのお話は被曝の全体 像を捉えた総合的な真実を語るものであり、その一貫性、統一的理解が印象的であった。 講演ではデータまで示す時間はなかったが講義では示されたものと思う。 (山田耕作) 「医師・専門家向けセミナー」の報告 京都府中小企業会館で9時 30 分から 15 時 30 分まで昼食を挟んでおこなわれた。午前は カルディコット博士のセミナー、午後は参加者の質問(医師優先)に博士が答える形でお こなわれた。ここでは夜の一般向け講演で報告されなかった点について記す。 博士は「橋下大阪市長がおこなおうとしている汚染瓦礫処理は内部被曝を拡大する以外 の何ものでもない。医師のみなさんは白衣を着て橋本病を市民に知らせる行動をとるべき だ。皆さんは社会的信用が高いのでメディアを使って放射線被曝の脅威を訴えて欲しい」 と医師達の役割を熱く語った。セミナーで博士はまた、放射線による障害についての医学 的記述は、推進派が書いているため外部被曝による損傷しか書かれていない。内部被曝に よる研究は全く未知の研究領域である。フクシマは史上最大の事故。謙虚に患者と向き合 い診断、治療、予防の研究に取り組むよう若き日本の医師達を励ました。情報交換のため の医師のネットワークを作り、健康被害の事実を交換・集積して誰も経験したことのない 事実に真摯に取り組んで欲しいと激励した。 1) 放射能に ついて:原発事故で放出される放射性核種は約 200 種類ある。生体への 影響が判っているのは4種類くらいで残りのほとんどは判っていない。 放射性トリチウム(半減期は 12 年、なくなるのに 120 年)は通常運転の原発から絶えず
  • 3. 蒸気として大気へ、冷却水を介して海や川へ。水分子に取り込まれるので飲料水から人に 取り込まれるし、また皮膚から直接入るので危険である。 2) 甲 状 腺異 常 : 子どもの甲状腺がんは稀ながんである。福島では2例報告されている。 5 ミリより小さい結節でも悪性細胞がまじっている場合もある。福島の子どもの嚢胞保有率 が 43%をどう思うかの質問に、博士は日本にくる前にヨーロッパに立ち寄り甲状腺の世界 的権威に確認したところ、やはり異常だと答えた。福島から避難すべきだ。 チェリノブイリの甲状腺がんの解析から、放射線による甲状腺がんに特異的な遺伝子マ カーがドイツのグループにより発見された。これを使えば甲状腺がんが放射線によるもの かどうか判る可能性が出て来た。 ジュリア ・ヘス 他 ( 20 11) 『若 年患者 の甲状 線 乳頭癌の 染色体 バンド 7q 11 の 増加 は低 線 量放 射線 被 曝と 関 連が あ る』 米国科学アカデミー会報 (PNAS June 7, 2011 vol. 108, 9559-9600). 3)白内障: 「医師と専門家のセミナー」で手渡された資料の編集・翻訳者の平沼百合氏は、 被曝の程度の指標として従来の「染色体検査」ではなく「水晶体混濁の斑点の数」が被曝 量と相関関係」にあることから欧米では後者がより多く使用されている旨を話された。ま た、チェリノブイリ事故後に生まれた子どもに網膜剥離が認められた。これはこれまで前 歴が無い。子どもの白内障はセシウム 137 の体内蓄積量と相関するというバンダジェフス キー博士の発見が国際的に認められたことを物語っている。厚労省も、フクシマ事故処理 作業者の累積放射線量が 50 ミリシーベルトを超えたら白内障検査費用を保証することを決 定している。 4)染 色体異 常:放射線による染色体異常の検出はこれまで血液細胞を用いておこなわれ てきが、頬粘膜外皮細胞の方がより簡便で定量性があることが判った。化学物質、放射線 それぞれ単独で被曝しても検出されるが、化学物質と放射線の両方で相乗効果が見られる。 複合汚染の検出にも適している。 5)生態 系の変 化:福島での立ち入り禁止区域で鳥,昆虫などの動物に個体数の減少に加 え奇形が見られた。白いカラス、脳の小さい鳥。また複数の子どもトマトを持つトマトな ども見つかった。 この講演を補足する報告として次の文献を参照されたい。わが国国会議員団の報告資料 である。 Dr. Olha V. Horishna 著『チェルノブイリの長い影 チェルノブイリ核事故の健康被害 < 研究結果の要約:2006 年最新版>』 http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/cherno10.pdf/$File/cherno10.pdf 「チェルノブイリの長い影 チェルノブイリ核事故の健康被害」の紹介
  • 4. この報告の最初に、ユーリ・バンダジェフスキー博士の先駆的で犠牲的なヒバク研究に 感謝している。 バンダジェフスキー博士が発見したセシウムが体内に取り込まれ蓄積することによって、 血液循環系、生殖系、免疫系などが障害を受けること。脳や心臓に蓄積し、急性死や精神 活動を乱すこと。特に妊婦は胎盤にセシウムが蓄積するので胎児が被曝し,その影響が本 人の将来の健康のみならず、遺伝的にも継続し、人類の将来にとってきわめて重大な問題 となっていることが警告されている。白内障など老化が進みそれに関連したさまざまな病 気が発生することが示されている。放射線の与える影響として、放射線によって生じた活 性酸素が細胞脂質を酸化し、破壊し生体の機能を低下させる機構の解明など研究が進んで いることが報告されている。 注目すべきは、長期的に少量の放射線量に曝露した母親から生まれた子どもには、幼少 時に骨組織の構造機能状態が崩壊し、骨軟化症や骨減少症が現れて来る。小児科医達は、 被曝地域の子どもに骨や筋肉疾患が著しく増加していることを指摘している。非汚染地域 の子どもの5倍骨折が頻発し、また筋力や運動能力障害は非汚染地域地の 3.3 倍にもなる。 全体として放射性物質による汚染による被害が、がんというだけではなくさまざまな病 気や健康破壊を引き起こし、それが将来の世代にまで強められて継続するという恐ろしい 真実が現実の観測に基づいて示されている。国家的危機という認識である。わが国も後を より深刻に追うだろう。 (大和田幸嗣) 追記 以上の報告は福島原発事故の被害を心配された橋本真佐男さんの励ましとお薦めによる ものである。昨年末から新春にかけ、病床にありながら、東日本震災からの復興を願い以 下を東京新聞に投稿された。その帰結も待たず、1 月 11 日逝去された。長年のご活動、ご 指導、ご友情に感謝します。 心よりご冥福をお祈りします。 生態学に基づく東北の真の復興を訴える 橋本真佐男 保全生態学者鷲谷いずみ氏は、東北地方の復興について、次の様な提案をしている。「東 日本大震災からの復興に当たって必要なのは、昨今の土地利用と防災の常識から脱却した、 生態系の視点を取り入れた方針と計画である。津波などの災害に対して、防波堤など大規 模な構造物で守らなければならないような脆弱性の高い土地には新たな構造物を作らず、 『災害への緩衝空間』とし、多様な生態系サービスを享受するための、生態系・生物多様 性を生かし・活かす空間として利用する」。この提案の基礎にある概念とは、生態系サービ スは人間のよき暮らしを支えること、そしてこれと生物多様性が密接に関連しているとい うことである。ぜひ鷲谷氏の提案を取り入れ、目の前の私欲にとらわれず、子々孫々に至