研究・技術計画学会 発表資料 2013_pub
- 3. 1. 本日のテーマ
• 国内携帯電話メーカーが国内においても、「シェアを失った要因」について、推察すること。
• 携帯電話の進化はサービスの進化と連動しているとの観察から、サービスの進化過程における
メーカーの対応や役割に注目をした分析を試みる。
日本のモバイルインターネットサービス: 音楽サービス
日本の端末プレーヤーに
サービスプラットフォーム:
どのようなサービスか?
何が起こったのか
バリューネットワークプレーヤー
バリューネットワークプレーヤー
バリューネットワークプレーヤー
音楽サービス
プラットフォーム
A
インターネットに依存しない
音楽サービスプ
ラットフォーム
AA+B
インターネット
音楽サービス
プラットフォーム
AAA+BB+C
インターネット
サービスイノベーション
テクノロジーイノベーション
3
- 11. 3. 事例
携帯電話向け音楽サービス
A)メーカー主導による 音楽機能の進化
-1996
1. 最初の携帯電話向け音楽サービス誕生のきっかけ
• 着信音 : 単音ブザー
• プリセット着信音 (ユーザーによる追加はできない)
• 競争基準 : 実装されたヒット曲の数
• 最新楽曲の実装は不可能: 開発-生産のリードタイム (6か月以上)
デンソーによるイノベーション
• 着信音の作曲機能 : 1996
• メーカー主導によるテクノロジー イノベーションが発生
• 他の産業を刺激 >>>> 音楽が携帯電話サービスとなった
• 出版産業
• 広告産業
• 音楽産業
IDO D319 by Denso/1996
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(C)JDP/GOOD DESIGN AWARD/ http://www.g-mark.org
- 12. 3. 事例
携帯電話向け音楽サービス
A) i-mode開始以前の 音楽サービス
1996-
2. 出版物による 着信音 データの配布
• 最初の音楽サービスは通信による配信ではなく、紙(雑誌)媒体だった
• 技術仕様が統一されていなかったので、楽曲の入力方法はバラバラ
• 出版社がメーカーに働きかけ、いくつかのグループ仕様の統一がされていった
• サービスイノベーションがテクノロジー イノベーションを誘因
• 産業間の協働 : 端末メーカーと雑誌の出版社
• ユーザーからのフィードバックを活用しサービスの品質と使い勝手を向上
図2: 着信音 の入力方法が提供された雑誌と入力方法の例
IDO D319 by Denso/1996
12
(C)JDP/GOOD DESIGN AWARD/ http://www.g-mark.org
- 13. 3. 事例
携帯電話向け音楽サービス
A) i-mode開始以前の 音楽サービス
1996-
1996年~ 紙媒体による音楽サービスの分析結果
有形資産の交換
無形資産の交換
• 出版社が中心となり音楽サービスが
形成されていた。
• 「着メロ」は楽譜データのため、著作
件団体への著作権料の支払いで完
結していた。音楽業界のコントロール
は薄い。誰でもサービスの提供が可
能であった。
• メーカーの独自開発を制限するサー
ビス仕様など、通信事業者によるコ
ントロールはなかった。
図4. 1996年~ 紙媒体による音楽サービスの分析結果
13
- 14. 3. 事例
携帯電話向け音楽サービス
B) i-modeによる合成音楽(録音ではない)データサービス 1999• i-modeによる音楽サービスの分析結果
有形資産の交換
無形資産の交換
• NTTドコモが中心となり音楽サービスが形成
されていた。
• メーカーの独自開発を制限するサービス仕様
が制定され、通信事業者が端末メーカーの
技術進化に影響を与え、「モジュール化」を
促進させ、端末の「コモディティー化」が進んだ。
• 端末メーカーは自発的なイノベーションを起こ
すための企業内体制が失われていった。
• フェイス社による、音楽再生品質の均一化を
狙った、コンテンツの最適化ツール
• 1楽曲あたり、最適化のため
最大100種類のデータが提供された
14
図5. 1999年~ i-modeによる音楽サービスの分析結果
- 15. 3. 事例
携帯電話向け音楽サービス
B) i-modeによる合成音楽(録音ではない)データサービス 1999フェイス社が確立した音楽再生品質均一化の工程
オリジナル
音楽楽譜
ファイルフォー
マット
音楽
キーボード
PC SW ツー
ル
着信音への
変換
SMF
デジタル化
ドコモ 着信音
ツール
ドコモ独自形式のMfi ファイル
同時発音数の違い x チップの違い x 端末の違い
4
16
32
64
128
ローム
ヤマハ
Yamaha
フュートレック
他
図7. Music 着信音 Data Creation Process
合計
100以上
の端末別の
ファイル
テスト と
最適化調整
テスト用端末
x
深化熟成した
調整技術
最終パッケージ
メタデータ、
著作権情報、
著作権保護技術の
追加
15
- 16. 3. 事例
携帯電話向け音楽サービス
C) インターネット経由による録音音楽サービス
2008-
• インターネット経由による音楽サービスの分析結果
有形資産の交換
無形資産の交換
• 携帯電話向けとPC向けのサービスが融合
(レコチョク、Music.jp、アップルのiTunes)
• スマートフォンの普及拡大につれ、ドコモ(のみ
ならず他の事業者も)の音楽サービスに対す
る端末とサービス仕様の主導力は弱化
• 外部ネットワークである音楽産業による携帯
電話向け音楽サービスプラットフォームに対す
る影響力が拡大
• 音楽サービス/機能が再び端末メーカー間の
差別化競争力を発揮する場となる
図6. 2008年~ インターネット経由による音楽サービスの分析結果
• 日本のメーカーは、マーケティングやセールス
の現場と製品開発サイクルを有機的に結合
16
する組織体制の確立が進んでいない。
- 19. 5. 研究の制限と今後の研究課題
検証事例の制限
• 音楽サービスの変遷にのみ注目したものである。このことから推察結果に対する立証が不十分である。
• ゲーム、ビデオ、書籍など、同様に技術やサービスの提供方法の世代による変遷をたどった検証も可能であると
考える。
成功事例の検証
同じメーカーが携帯電話とは異なる製品分野では国内、海外においても競争力を維持している成功事例の検証に
よって、今回の事例と異なる点の発見があるかもしれない。電気製品以外の海外における成功事例の検証も対象と
なりえる。カメラ、自動車、バイクなど。
•
海外メーカー/サービスの日本市場における成功の分析
•
市場からの情報の活用方法、市場への参画手法、リーダーシップなどの視点での分析は興味深い。
イノベーションロスの定量的な測定
•
•
コモディティー化の意図的な促進により、イノベーションを起こす力がどの程度の損失を受けたのか
特許件数や社外技術発表活動の変化などで測定が可能かもしれない。
サービスプラットフォームによるタイムマシン効果の事例
• 参画するバリューネットワークによる技術開発投資メリットが異なる事例の収集と分析
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