曹丕と曹植、王位をめぐり骨肉の争い
- 2. 第 55 集 立嗣之争(曹操の長男・曹丕、三男・曹植と争い 相続権を確保)8.18 更新
―「3 時間で~」では省略、第 56 話の一部に重複部あり
チャプター① 街中を馬車に乗った曹植(曹操の三男)が通る~
チャプター② 曹丕(同長男)のもと、家来が「お父上があなた様と曹植様をお呼びです」と伝える~
チャプター③ 曹操、曹植を呼び「漢中に進軍して劉備と戦う気はあるか?」と尋ねる~
チャプター④ 「曹丕の屋敷にあやしい動きはない」との報告を受けた曹操、曹植の側近・楊修が讒
言したと思い込み、楊修を叱り飛ばす~
チャプター⑤ 解説「曹丕は曹植との骨肉の争いを制し、魏王の太子となった」~
~漢中・瓦口関。張飛の酔いどれ作戦に騙された魏の張郃、
「打って出るぞ」と意気
込む。
“一合酥”事件……楊修は中国版「一休さん」?!……
本第 55 集は、曹操の跡継ぎがどのようにして決定されたかを描く。
曹操は元々、三男の曹植を可愛がっていたが、
詩作の才能にあふれ、父・曹操に可愛がられる三男・
曹植
長男を跡継ぎにするべきだという家臣の声を封じ切れなかった。また曹植の側近・楊修が、曹植のみ
ならず曹操をも上回る頭脳の持ち主で、いつも曹操の心中を読み取ってしまう。
頭脳明晰な曹植の参謀・楊修
- 3. 曹操はそれに腹を立て、「坊主憎くけりゃ袈裟まで憎い」式に曹植までも疎ましく思うようになる。
そして、多くの家臣の思惑通り、長男・曹丕が太子として立つ。
ここでは楊修がいかに頭がよいかを示す象徴的な例として、“一合酥”事件を取り上げてみる。
ところで“酥”とは一体どういうものかご存知だろうか? 日本に無いお菓子なので説明しにくいが、
一言で表現すると「パイ状の砂糖菓子」もしくは「紙のように薄くて、サクサクした落雁(らくがん)」
みたいなもの。
曹操はこの“酥”が好きで、ある時送られてきた一箱の“酥”を少し賞味した後、残りはそのままに
して蓋を閉め、蓋の上に“一合酥(一箱の酥)”と書き、置いておいた。そこへ楊修が通りかかり、そ
の文字を見るなり蓋を開けて食べ、残りを曹植やもう一人の側近にやってしまう。その後、曹操が戻
って来て、それを見咎めると、楊修はのうのうと「曹操殿のご命令に従い、有り難く頂戴いたしまし
た」と言う。曹操が「わしの命令?」と問いただすと、楊修「曹操殿が直筆で『一人、一口』とお書
きになっておられましたので、頂いたのです」と答える。
実は、この“一合酥”の“合”をバラバラにして読めば“人”
“一”
“口”である。この 3 文字を真ん
中に入れて全部を読むと、すなわち“一人一口酥(一人、一口、酥を(食べよ)”と言う意味になる。
「一合酥」の「合」の字をばらす
と、「一人一口酥」と読めると説
明する楊修
これはまさしく一休さんのとんち問答ではないか。
曹操はもちろん最初からそれを意図して書いたのだから、楊修のこの解答は百点満点であり、ほめて
しかるべきである。が、楊修にとって不幸なことに、彼の頭脳は危険視され、殺意さえ抱かれるよう
になる。「出る杭は打たれる」と言ったところか。