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20120203東大ものづくりセンター発表
- 3. 温暖化効果ガスの削減
• 90年比で25%削減するには・・・
– 9基の原子力発電所の新設。稼働率は81%に
向上(1.05億t)。
– 太陽光発電を20倍(1,600万t)
– 新世代自動車の普及(2,100万t)
– その他の省エネ対策(8,400万t)
– これでやっと90年比8%減
– 残りは排出権の購入 (金子, 2010)
• しかも、もはや原子力発電に頼ることは
できない。
- 4. 長期エネルギー見通し
(2009年時点)
資料:資源エネルギー庁「長期エネルギー見通し(再計算)」2009年8月において
最大導入ケースとして想定されている目標数値
- 6. 好景気で急落する付加価値率
24 5.5
% %
付加価値率 5
23
4.5
22
4
21
3.5
20
3
19
2.5
売上高営業利益率
18
2
17 1.5
16 1
全ての製造企業を含む
出所:法人企業統計より筆者作
成
- 7. 経済への影響
• 火力発電の増大によって2011年度だけで1.7
腸炎の追加燃料費が必要という試算(火力発
電10.2円/kwhに対して、原発は7.2円
/kwh)。電気料金の値上げ。
• 温暖化効果ガスの削減義務が課されれば、排
出権の購入によって多大な富が海外に流出す
る。
• ただでさえ円高で厳しい日本企業に対するダ
メージは大きい。活動の拠点を日本から移さ
ざるをえなくなる。
- 8. 矛盾を含む複雑な方程式
経済発展
矛盾を解決する新たな
産業の発展可能性の探
索
新産業において日本企
業の競争力を確保する
ための方策の探索
温室効果ガス
原発に依存しない
の削減
エネルギー供給
:90年比25%削減
- 10. 経営学者の心配ごとと役割
• 大量の税金を使って、環境問題とエネルギー
問題を解決したとして、新たなグリーン産業
の拡大は、本当に長期的な日本経済の発展に
つながるのか。
• 短期的な市場拡大による恩恵はわかる。
• しかし新たな産業において日本企業(産業)
が国際競争力をもち、長期的に日本経済を牽
引できなければならない。
• 「ミクロの視点の必要性」:ここに経営学者
の役割がある。
- 13. エコポイントの経済効果
• 経済産業省は、予算額の7倍におよぶ5兆円の経
済効果をもたらし、のべ32万人の雇用を創出し
たと発表(2011年6月)
– 産業連関表を使った計算のマジック
• 確かに国内市場は拡大した(エコポイント期間に
4,000万台の販売)。消費者油状は確かに増え
た。
• 雇用も増えたかもしれない。しかし合理的な企業
が、エコポイント終了後の影響を考えたとき、固
定的な人材を雇うだろうか。
• しかし、TV産業における日本企業の競争力に貢
献したとはいえない。長期的な効果には疑問符。
- 14. テレビ国内出荷台数に占める輸入
120.00%
台数の割合
100.00%
80.00%
60.00%
40.00%
エコポイント終了
20.00%
エコポイント開始
0.00%
注:国内出荷台数はJEITAの自主統計から、輸入台数は貿易統計のデータを使用しており、後者
の方がカバーする範囲が広いため、実際の割合よりも高い値がでていると思われる。
- 16. なぜなら・・・
薄型テレビにおける事業モデル(2009)
TPV
Amtran
LCD 台湾 Compal
汎用部材 パネル ODM企業 Wistron
Proview
Samsung 世界シェア20%強
分業型 LG Display
AUO
CMO
CPT
Sharp
専用TV-IC
TV-IC 標準TV- (ASIC),内製
ブランド企業
製造 IC設計 LCDパネルなど内
部開発・内製部材
MediaTek
TSMC等
Trident
半導体
ファンダリ
MStar 統合型
ST(Genesis)
Zoran 専用部材
- 19. 期待される太陽光発電
• 2009年11月から住宅用余剰電力買い取り制度:
当初は48円/kwh、2011年度は42円/kwhで買い取
り。
• 2012年度には全量固定価格買い取り制度のス
タート。事業用設備に対して適用される可能性が
高い。
• ドイツ、スペインの例からして、十分に事業採算
が成り立つレベルに買い取り価格が設定されれ
ば、普及は加速化する。→エネルギー・環境対策
としては良いこと。
• 太陽光の普及によってGDPが減尐しないという
試算も(ただし全量日本で生産するという前提)
- 20. 長期的な経済性向上の可能性
• 手厚い補助は太陽光がまだ技術的に未成熟である(コ
ストが高い)という前提。普及にともなう量産効果で
急速にコスト低下が起きるという前提
– 2020年に14円/kwh、2030年に7円/kwh(NEDO)。現状で
も金利費用を除けば30円/kwh程度。
• パネルのしての量産効果はでにくい。結晶シリコン型
の場合、70%以上がシリコン材料にかかる変動費。
現状の技術を前提にすると大幅なコストダウンは難し
い。
• 結晶シリコン型のエネルギー変換効率の理論値は
29%程度。すでに研究室レベルでは25%まで達成。
– 未成熟なのか?枯れた技術なのか?
• しかし固定価格買い取りが進めば当面は現状で最も経
済性の高い技術の普及が急速に進むだろう。
- 21. 日本企業は競争力をもちえるか
• 主流の結晶シリコン型ではセル、モジュール
生産の過半は中国企業が支配。
• 製造装置も欧米のTKS企業が支配
• カバーガラス、バックシート、封止材で日本
企業が強いが、そもそも中間部材が尐ない製
品。
• 現状の結晶シリコン型を普及させることは日
本企業の国際競争力の低下を助長するように
みえる。
• 技術革新の余地の高い、a-Si薄膜、化合物型
(CIGSなど)、有機薄膜、色素増感などの新技
術の開発の足かせにはならないか?
- 22. 図表5:太陽電池製造装置市場シェア
(2008年)
Manz Automation AG Von Ardenne
(独) Anlagentechnik(独)
5% 3%
アルバック
6% AppliedMaterials(米
国)
19%
Roth & Rau AG(独)
9%
Oerlikon Solar (スイ
Meyer Burger(スイス) ス)
9% 13%
Centrotherm
Photovoltaics AG(独) GT Solar International
12% (米国)
12%
Gebr. Schmid (独)
12%
出所:VLSI Research
- 23. 図表4:太陽電池セル製造の世界シェア
(2010年)
京セラ
6%
Motech(台 Suntech (中国)
湾) 15%
7%
シャープ
7%
Ja Solar(中国)
GIntech(台湾) 14%
7%
Q Cells(独)
9% First Solar(米国)
13%
Trina Solar(中国)
11%
Yinli(中国)
11%
出所:Wikipedia
- 24. 例えば、地熱発電の可能性
• 高い潜在性
– >2,347万KWe 以上の地熱資源(世界第3位)
– まだ一部しか開発されていない(53.5万KW).
– カーボンフリーの技術
• 高い経済性の可能性
– 燃料費はいらない
• まだ標準化された技術ではない
– 発電所の重要技術を日本企業が握っている
– ドライスチームで70%以上, フラッシュで80%以上のシェ
ア
• 関連インフラ産業の誘発
• にも関わらず、長い間軽視されてきた
• 2003年には補助金の打ち切り、10年以上新設なし、
新エネルギーからの除外・・・。
- 25. 発電単価の比較
(2006-2010年平均)
12
10.2
10
8.9
8
7.2
6
4
2
0
火力 原子力 地熱等
単位:円/kwh
出所:日本エネルギー経済研究所(2011)をもとに筆者作成
- 26. 地熱発電タービンのシェア
(2010年、単位MW)
1,100
10.3% 550
5.1%
2,630
24.6% 三菱重工
1,138 東芝
10.7% 富士電機
Ansaldo / Tosi
ORMAT
2,525 GE / NP
2,146 23.6% Alstom
20.1% AEI
Kaluga
BTH
Other (13)
出所:レイキャビクエナジー資料
- 29. アイスランドの例
• オイルショックを契機に地熱開発を加速化
(原発に向かった日本と対照的)
• 年間4,600Gwhの電力を創出。総電力量の
25%程度をまかなう(残りは水力)。
• コストはおそらく3-5円/kwh程度と思われ
る。
• ただしタービンは一部の小型・旧型を除いて
全て日本製。
• 経済性を確立する上での鍵は「合わせ技」
– 暖房用途にインフラを確立して、その上に、発電
所を重ねる。
- 33. 地熱発電普及の鍵は・・・
• 恩恵のバランス
– 環境、コミュニティ、エネルギー、安全、経
済
• 範囲の経済
– 直接利用と間接利用
– コジェネレーション
• 事業モデル
– 市場拡大を企業の付加価値増大につなげる
(Ormatの例)
- 34. 他にも得意分野はあるはず
• たとえば、地中熱利用
– 地中熱ヒートポンプは世界的には急速に成長して
いるのに日本ではほとんど普及していない。
– 四季のある日本に効果的な技術
– ヒートポンプ技術の強み
– 国内インフラ産業の発展
• 電力創出だけではなく、電力としての利用を
減らすという、トータルな考えかたをもち、
しかも日本企業が新たな産業で優位にたてる
可能性を考慮することの必要性。
- 35. 環境、エネルギー政策の危うさ
• 同床異夢の罠
– 同床異夢は両刃の刃。強い目標意識が欠けると単
なるもたれ合いになる。
• 「エネルギー」「環境」というマジックワー
ドの力
– 同床異夢の戦略にマジックワードの力が加わる
と、企業競争力の向上を通じた長期的な経済発展
のシナリオがおざなりになる危険性
• 「普及=経済発展」という幻想
– グローバリゼーション、技術の汎用化が進む世界
では、国内市場の拡大政策は必ずしも長期的な富
をもたらさない。