SlideShare a Scribd company logo
1 of 19
研究を主導する次世代のリーダーを探る
-JST論文データベースからわかること-
TeranoLab
周 劼亮
THAWIWORADILOK, Chaiwat
原田 泰輔
背景
2
研究成果は金だけでは得られない!!
しかし、競争的資金の獲得は研究者に
とっても重要!!
• これまでの我々の研究:
– 論文共著関係のネットワーク分析(アドベンチャー杯2014)
– ネットワークの「中心」にいる研究者はリーダーである(専門
家からのインタビュー)
疑問:
リーダーの研究資金獲得状況はどうか?
リーダーが時間的にどう変化するか?
目的
3
学術界のリーダーと研究資金の関係は?
次世代の研究を主導するはずのリーダーの活動を
JSTの研究者データから調べよう!?
※ 次世代のリーダーとは:未来にネットワークの中心にいるであろう研究者
• 著者データ
• 論文データ
論文著者,発行年,JST分類,
発行国,著者所属機関データ
を使用 .
(論文データは共著関係データのみを使用)
使用データ
4
• 特別推進研究
• 新学術領域研究
• 基盤研究(S)(A)(B)
上記科研費研究種目の代表者
データを使用
分析の流れ
5
相関分析
クラスタリング
順位 所属
リーダーは科研費を獲得しているか?
研究者のグループ分け
特徴抽出
分野
若き研究リーダーの特徴を調べる
科研費と共著者ネットワーク(手法)
1. 各論文をその発行年をもとに第1期(2003-2006)から第8期(2010-2013)の8
つの期間に分け,各期間での論文の著者データから,共著者間全てにリンクを張
る.
2. 上の情報をもとに,重みなし無向グラフを作成する.
6
共著者ネットワークの作成
中心性指標による順位付け
1. 全期間の全著者に対し次数,媒介,近接中心性の値による順位付けを行う.
共著者ネットワークの例
7
[ネットワーク分析の中心性指標]
[次数中心性]
直接リンクの数.
[媒介値中心性]
その点を通る経路が多いほど
中心性が高いという指標.
[近接中心性]
他の点と距離が近いほど
中心性が高いという指標.
[共著者ネットワーク]
科研費と共著者ネットワーク(結果)
• 科研費の取得率と中心性指標での順位に強い相関がある.
• 過去の獲得率と最近の科研費取得率にも強い相関がある. 8
科研費の取得率(基盤B以上)と共著者ネットワークの中心性指標に
よる順位との相関関係の調査.
研究者のクラスタリング(検証)
• 第2期と第5期の順位でク
ラスタリングを行い各クラ
スタのその後の順位を調査
. (混合分布モデル,クラスタ
数8)
• D4は現リーダーと言える.
• 次世代のリーダーはD3か
ら出る.
9
どのクラスタから次世代のリーダーが輩出されるのか?
D3
D6
D4
D5+D2
研究者のクラスタリング
10
 第1期と第7期の媒介中心性順位を用い,研究者のクラスタリングを
行った.(混合分布モデル,クラスタ数9)
研究者のクラスタリング
4つのクラスタを比較し特徴の抽出を行う 11
 第1期と第7期の媒介中心性順位を用い,研究者のクラスタリングを
行った.(混合分布モデル,クラスタ数9)
検証結果から現リーダーは[リーダー],次世代のリーダーは[成長].
研究者グループの特徴抽出-順位-
12
次世代のリーダーはある期間に急激に順位を伸ばす
第1期から第7期までの媒介中心性での順位変化のうち,最
大のものを調査.
研究者の特徴要因
13
共著者ネットワーク上での位置に影響の大きい以下の
二つの要素についての特徴の抽出を行う.
所属機関
研究成果の結果として,所属機関の変更が起こる.
研究分野
研究分野の変化は共著者の変化となる.
研究者グループの特徴抽出-所属機関-
次世代リーダーは所属変更直後に順位を大きくを伸ばす.
14
所属機関の変更前後での媒介中心性順位の変化を調査.
① 共起回数により分野をクラスタリング(階層的・ウォード法).
① 主分野による比較
・主分野,副分野の特定.
・各研究者の主分野の割合を比較.
研究者グループの特徴抽出-研究分野-
15
① 共起回数により分野をクラスタリング(階層的・ウォード法).
① 主分野による比較
・主分野,副分野の特定.
・各研究者の主分野の割合を比較.
研究者グループの特徴抽出-研究分野-
16
研究者グループの特徴抽出-研究分野 (結果①)-
リーダーは副分野の割合が大きい 17
各クラスタの主分野,副分野の占める割合の推移.
成長リーダー
没落 底辺
研究者グループの特徴抽出-研究分野 (結果②)-
リーダーは主分野の変更が少ない
18
各クラスタの主分野変更者の割合.(第1期〜第7期の合計)
まとめ
研究資金と研究者ネットワーク上での優位性との
相関が確認できた.
19
リーダーの特徴は:
1. 主要分野をもつ
2. 副分野の割合も大
次世代のリーダーの特徴は:
1. 急激に飛躍する期間がある
2. 所属変更に成功している
提言:
• 海外論文データ,論文引用データの充実.
• JSTの論文データベースと競争資金獲得情報データベースの
統合による「研究成果と研究投資効果」の分析.
• JSTの業務としてこの分析を行う.

More Related Content

Viewers also liked

機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks
機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks
機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks
Yuya Unno
 
Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)
Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)
Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)
Shintaro Fukushima
 

Viewers also liked (20)

医学論文数から見る、政策誘導と研究動向~「褥瘡」から見える動き~
医学論文数から見る、政策誘導と研究動向~「褥瘡」から見える動き~医学論文数から見る、政策誘導と研究動向~「褥瘡」から見える動き~
医学論文数から見る、政策誘導と研究動向~「褥瘡」から見える動き~
 
雑誌・新聞・JSTデータから見る「よりよい企業選択へのヒント」
雑誌・新聞・JSTデータから見る「よりよい企業選択へのヒント」雑誌・新聞・JSTデータから見る「よりよい企業選択へのヒント」
雑誌・新聞・JSTデータから見る「よりよい企業選択へのヒント」
 
大学や研究所の研究活動がひと目で分る研究活動マップ生成~だれが,どこで,どんな活動をしてるの?~
大学や研究所の研究活動がひと目で分る研究活動マップ生成~だれが,どこで,どんな活動をしてるの?~大学や研究所の研究活動がひと目で分る研究活動マップ生成~だれが,どこで,どんな活動をしてるの?~
大学や研究所の研究活動がひと目で分る研究活動マップ生成~だれが,どこで,どんな活動をしてるの?~
 
専門家を探せ!ー社内に眠る人材を活用しようー
専門家を探せ!ー社内に眠る人材を活用しようー専門家を探せ!ー社内に眠る人材を活用しようー
専門家を探せ!ー社内に眠る人材を活用しようー
 
JST科学技術文献データのネットワーク分析-シソーラス、組織、分野の分析を通じて
JST科学技術文献データのネットワーク分析-シソーラス、組織、分野の分析を通じてJST科学技術文献データのネットワーク分析-シソーラス、組織、分野の分析を通じて
JST科学技術文献データのネットワーク分析-シソーラス、組織、分野の分析を通じて
 
企業に着目した共同研究ネットワーク構造の解析と非連続的成長の予測 技術動向観測隊
企業に着目した共同研究ネットワーク構造の解析と非連続的成長の予測 技術動向観測隊企業に着目した共同研究ネットワーク構造の解析と非連続的成長の予測 技術動向観測隊
企業に着目した共同研究ネットワーク構造の解析と非連続的成長の予測 技術動向観測隊
 
「生物多様性を探るために」~トンボの統計解析からわかったノシメトンボと生物多様性について~ 北海道札幌旭丘高等学校 生物部Asahigaokahs a...
 「生物多様性を探るために」~トンボの統計解析からわかったノシメトンボと生物多様性について~  北海道札幌旭丘高等学校 生物部Asahigaokahs a... 「生物多様性を探るために」~トンボの統計解析からわかったノシメトンボと生物多様性について~  北海道札幌旭丘高等学校 生物部Asahigaokahs a...
「生物多様性を探るために」~トンボの統計解析からわかったノシメトンボと生物多様性について~ 北海道札幌旭丘高等学校 生物部Asahigaokahs a...
 
未来のデータサイエンティストを探せ! ~研究分野遷移から見た人材マッチング~ UNAGI
未来のデータサイエンティストを探せ! ~研究分野遷移から見た人材マッチング~ UNAGI未来のデータサイエンティストを探せ! ~研究分野遷移から見た人材マッチング~ UNAGI
未来のデータサイエンティストを探せ! ~研究分野遷移から見た人材マッチング~ UNAGI
 
研究活動の年次推移および人々の生活実感への影響に関する分析 健マネ
研究活動の年次推移および人々の生活実感への影響に関する分析 健マネ研究活動の年次推移および人々の生活実感への影響に関する分析 健マネ
研究活動の年次推移および人々の生活実感への影響に関する分析 健マネ
 
ニュース記事と特許を利用した科学技術の重要性の評価 広島市立大学
ニュース記事と特許を利用した科学技術の重要性の評価  広島市立大学ニュース記事と特許を利用した科学技術の重要性の評価  広島市立大学
ニュース記事と特許を利用した科学技術の重要性の評価 広島市立大学
 
大学のそこんところ ~おカネと人と論文と~ 埼玉県立熊谷女子高等学校
大学のそこんところ ~おカネと人と論文と~  埼玉県立熊谷女子高等学校大学のそこんところ ~おカネと人と論文と~  埼玉県立熊谷女子高等学校
大学のそこんところ ~おカネと人と論文と~ 埼玉県立熊谷女子高等学校
 
論文の共著関係ネットワークの中心性分析 Terano Lab.
論文の共著関係ネットワークの中心性分析 Terano Lab.論文の共著関係ネットワークの中心性分析 Terano Lab.
論文の共著関係ネットワークの中心性分析 Terano Lab.
 
機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks
機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks
機械学習チュートリアル@Jubatus Casual Talks
 
Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)
Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)
Rにおける大規模データ解析(第10回TokyoWebMining)
 
Neo4j の「データ操作プログラミング」から 「ビジュアライズ」まで
Neo4j の「データ操作プログラミング」から 「ビジュアライズ」までNeo4j の「データ操作プログラミング」から 「ビジュアライズ」まで
Neo4j の「データ操作プログラミング」から 「ビジュアライズ」まで
 
データサイエンティストのつくり方
データサイエンティストのつくり方データサイエンティストのつくり方
データサイエンティストのつくり方
 
AWSマネージドサービスをフル活用したヘルスケアIoTプラットフォーム
AWSマネージドサービスをフル活用したヘルスケアIoTプラットフォームAWSマネージドサービスをフル活用したヘルスケアIoTプラットフォーム
AWSマネージドサービスをフル活用したヘルスケアIoTプラットフォーム
 
スマートファクトリーを支えるIoTインフラをつくった話
スマートファクトリーを支えるIoTインフラをつくった話スマートファクトリーを支えるIoTインフラをつくった話
スマートファクトリーを支えるIoTインフラをつくった話
 
500’s Demo Day Batch 17 >> TraceAir
500’s Demo Day Batch 17 >> TraceAir500’s Demo Day Batch 17 >> TraceAir
500’s Demo Day Batch 17 >> TraceAir
 
PythonによるWebスクレイピング入門
PythonによるWebスクレイピング入門PythonによるWebスクレイピング入門
PythonによるWebスクレイピング入門
 

Similar to 研究を主導する次世代のリーダーを探る

研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて
研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて
研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて
Masahito Nose
 

Similar to 研究を主導する次世代のリーダーを探る (9)

データ共有基盤の構築に向けて
データ共有基盤の構築に向けてデータ共有基盤の構築に向けて
データ共有基盤の構築に向けて
 
SciREX「ナショナルイノベーションシステムに係る定量データとその分析手法」WSシリーズ第4回 サイエンスリンケージデータベースの使い方
SciREX「ナショナルイノベーションシステムに係る定量データとその分析手法」WSシリーズ第4回サイエンスリンケージデータベースの使い方SciREX「ナショナルイノベーションシステムに係る定量データとその分析手法」WSシリーズ第4回サイエンスリンケージデータベースの使い方
SciREX「ナショナルイノベーションシステムに係る定量データとその分析手法」WSシリーズ第4回 サイエンスリンケージデータベースの使い方
 
論文に関する基礎知識2016
 論文に関する基礎知識2016 論文に関する基礎知識2016
論文に関する基礎知識2016
 
論文に関する基礎知識2015
論文に関する基礎知識2015論文に関する基礎知識2015
論文に関する基礎知識2015
 
知的財産リテラシー講座
知的財産リテラシー講座知的財産リテラシー講座
知的財産リテラシー講座
 
【Mission & Passion】学術的・社会的に熱意のこもった研究づくり
【Mission & Passion】学術的・社会的に熱意のこもった研究づくり【Mission & Passion】学術的・社会的に熱意のこもった研究づくり
【Mission & Passion】学術的・社会的に熱意のこもった研究づくり
 
研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて
研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて
研究活動の新たな常識としてのデータ出版・データ引用の実現に向けて
 
Survey of Scientific Publication Analysis by NLP and CV
Survey of Scientific Publication Analysis by NLP and CVSurvey of Scientific Publication Analysis by NLP and CV
Survey of Scientific Publication Analysis by NLP and CV
 
研究データ利活用に関する国内活動及び国際動向について
研究データ利活用に関する国内活動及び国際動向について研究データ利活用に関する国内活動及び国際動向について
研究データ利活用に関する国内活動及び国際動向について
 

研究を主導する次世代のリーダーを探る