Cfe12 climate
- 29. 温室5-2-8 カーボンオフセット
(出所) 環境省 http://www.env.gO.jp/earth/Ondanka/meChanism/CarbOn_Offset.html
排出量
排出権
クレジット
オフセット(相殺)図 カーボンオフセットの概要
把握
• 家庭やオフィス、移動(自動車・飛行機)での、温室効果ガス排出量を把握
する。
削減努力
• 省エネ活動や環境負荷の少ない交通手段の選択など、温室効果ガスの削
減努力を行う。
埋め合わせ
• 削減が困難な排出量を把握し、他の場所で実現したクレジットの購入また
は他の場所での排出削減活動を実施により埋め合わせ(相殺)する。
- 31. 地球温暖化対策のための税
2012年より導入
種別 税額 消費量 世帯あたりの負担
ガソリン 0.76円/L 448L 1227円/年
(102円/月)灯油 0.76円/L 208L
電気 0.11円/kWh 4748kWh
都市ガス 0.647円/Nm3 214Nm3
LPG 0.78円/kg 89kg
年あたり
Editor's Notes
- もう一つの方法:
- 温室効果ガス(GHG)には二酸化炭素(CO2)のほか、メタン(CH4)やフロン類(CFC、HCFC、HFCなど)、一酸化二窒素(N2O)、オゾン(O3)などがあります。
しかしこれらのGHGの温室効果の程度はそれぞれ異なります。そこで温室効果の大きさを比較するためには、同じ体積でどれだけ温室効果を引き起こすかを示す指標が必要になります。そこでCO2の温室効果を1として、その何倍の温室効果があるかを、地球温暖化係数*1(GWP)として表しています (図1)。図からCH4はCO2の28倍、 N2Oは265倍、フロン類は物質により異なりますが、HFC-23は12400倍、フロン類似物質のSF6は23500倍と、微量であっても大きな温室効果を持っています。
各ガスが地球温暖化に及ぼす影響の程度(寄与度)については、大気中濃度で示されるGHGの存在量に、各GHGのこのGWPをかけて地球温暖化の寄与度が示されます。図2からCO2が約76%と大部分を占めていることから、CO2排出量削減が地球温暖化対策においてもっとも重要視される理由になっています。
一方温室効果全体で見た場合、全体の約20%を占めるCO2に対して、水蒸気は約50%とCO2の温室効果よりも大きくなっています。しかし大気中の水蒸気量は主に気温によって決まるため、温暖化の寄与の対象には入っていません。ただ水蒸気は、気温が上昇すると飽和水蒸気量が増え、その増加した水蒸気の温室効果によってさらに気温上昇が起こるといった、温暖化を増幅させる働きがあります。つまり強い温室効果を持つ水蒸気量の抑制には、気温上昇を引き起こしているGHGの削減が必要だということになります(2013年版 8-7参照) 。
*1 GHGの寿命はそれぞれ異なっているため、GWPの値も、温室効果を見積もる期間によって変化します。図1は100年値を載せています。
- 日本の対策は、1990年の「地球温暖化防止行動計画」が最初で、一人あたり二酸化炭素(CO2)排出量を2000年以降1990年レベルで安定化などとしましたが、原発建設や企業の自主的取組に依存したため未達成に終わりました。
1997年の京都議定書合意を受けて策定された「地球温暖化対策推進大綱」で、日本の第1約束期間(2008~12年)の90年比6%削減のうち国内排出削減はわずか0.6%でした。2005年には、京都議定書の発効を受け「京都議定書目標達成計画」が策定されましたが、内容はこれまで通りの原発拡大、企業の自主的取組重視で、1997年には90年比で8%も増加しました。
2005年から第2約束期間の交渉が始まり*1、2009年麻生内閣は中期目標を2005年比15%削減(90年比8%削減)を発表、その後鳩山内閣は、90年比25%削減を国際公約しましたが、「地球温暖化対策基本法案」は成立しませんでした。
2011年の福島第一原発事故後、政府は2030年代に原発ゼロという革新的エネルギー環境戦略を発表しましたが、温暖化対策は2030年に約2割削減に後退し、さらに政権交代後は、2020年3.1%増加の「暫定目標」となり、加えて石炭火発規制緩和政策で、1990年の排出量の10%に相当する2000万kW以上の石炭火力発電の増設も促進しました。
2015年には、2030年に2013年比26%削減(90年比18%削減)を発表しました。さらに電力に占める原発の割合が20~22%と福島第一原発事故以前に戻すような想定になっています。今回の目標は、事故の原因も解明されていない原発を推進するという問題だけでなく、省エネや再生可能エネルギーの普及が抑制されるという懸念もあります。
*1 日本政府は京都議定書第2約束期間(2013~20年)に加わらず、計画自体は後退したものになっています。
- https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html
- 輸送、灌漑、エネルギー、情報通信技術などのインフラへの投資は、多くの国々で持続可能な開発を達成し、コミュニティーのエンパワーメントを図るうえで欠かせません。生産性と所得の向上や、健康と教育成果の改善にインフラへの投資が必要なことは、以前から認識されています。
包摂的で持続可能な産業開発は、主要な所得創出源であり、すべての人の生活水準の急速かつ持続的な向上を可能にするとともに、環境上健全な産業化に向けた技術的解決策も提供します。
技術的進歩は、資源効率の改善や省エネなどの環境関連の目的達成に向けた取り組みの基盤となります。技術やイノベーションがなければ産業化は起こりえず、産業化がなければ開発は起こりえないからです。
- 国立環境研究所の脱温暖化2050プロジェクトは、日本を対象に、2050年に想定されるサービス需要を満足しながら、主要な温室効果ガスであるCO2を1990年に比べて70%削減する技術的な可能性について検討したものです。一定の経済成長を維持し、生活水準を低下させずに、省エネなどのエネルギー需要削減で40%、エネルギー供給の低炭素化で30%削減することが可能との結論になっています。
脱温暖化2050プロジェクトでは、どの時期に、どのような手順で、どのような技術を導入し、社会システム変革をすればよいのか、それを支援する政策にはどのようなものがあるのかを、以下の12の方策としてまとめています(図)。
1.快適さを逃さない住まいとオフィス
2.トップランナー機器をレンタルする暮らし
3.安心でおいしい旬産旬消型農業
4.森林と共生できる暮らし
5.人と地球に責任をもつ産業・ビジネス
6.滑らかで無駄のないロジスティクス
7.歩いて暮らせる街づくり
8.カーボンミニマム系統電力
9.太陽と風の地産地消
10.次世代エネルギー供給
11.見える化で賢い選択
12.低炭素社会の担い手づくり
- 緩和に関する総コストの推計結果には広い幅があり、シナリオごとで想定している技術の種類や緩和のタイミングの違いに加えてモデルの構造や前提条件に強く影響を受けます。
第5次評価報告書(AR5)では様々な想定下における緩和コストを推計しています。ただし気候変動が緩和された際の便益や緩和の副次的効果(2-4-10参照)については考慮していません。例えば温室効果ガス(GHG)排出量が450ppmに緩和するシナリオでは、費用効率よく緩和が行われた場合の消費ロス*1は、21世紀中に3~9倍に消費が拡大するとしたベースラインシナリオ*2と比べて、2030年に1.7%、2050年に3.4%、2100年に4.8%の損失が生じるとしています。これを消費拡大の割合でみると、年率1.6~3%で拡大とするベースラインシナリオと比べ、今世紀中に0.06ポイントの減少になるとしています。
また費用効率よく緩和策が行われたとしても、図にあるように、利用できる技術が制約された場合には、制限されなかった場合に比べてコストが増加します。例えばCCSの導入が制約された場合のコストは、制限なしの場合に比べ138%増加(青囲み)、つまり制限なしの場合に比べて2.38倍ものコスト増加になります。一方で原子力のフェーズアウトでは7%(赤囲み)と、わずかな増加で、原子力がない場合でも対策コストはほとんど変わらないことがわかります。
さらに2030年のGHG排出量が55Gt以上で、2030年まで緩和が遅れた場合は遅れなかった場合に比べ44%増加(緑囲み)、つまりコストは1.44倍になります。
このことから対策コストは、技術が制限された場合も、対策が遅れた場合もコスト増加につながることがわかります。
*1 消費者が財・サービスの購入に費やすことができる額の減少をさします。
*2 排出抑制に向けた追加的な対策を行わないシナリオをさします。
- 緩和に関する総コストの推計結果には広い幅があり、シナリオごとで想定している技術の種類や緩和のタイミングの違いに加えてモデルの構造や前提条件に強く影響を受けます。
第5次評価報告書(AR5)では様々な想定下における緩和コストを推計しています。ただし気候変動が緩和された際の便益や緩和の副次的効果(2-4-10参照)については考慮していません。例えば温室効果ガス(GHG)排出量が450ppmに緩和するシナリオでは、費用効率よく緩和が行われた場合の消費ロス*1は、21世紀中に3~9倍に消費が拡大するとしたベースラインシナリオ*2と比べて、2030年に1.7%、2050年に3.4%、2100年に4.8%の損失が生じるとしています。これを消費拡大の割合でみると、年率1.6~3%で拡大とするベースラインシナリオと比べ、今世紀中に0.06ポイントの減少になるとしています。
また費用効率よく緩和策が行われたとしても、図にあるように、利用できる技術が制約された場合には、制限されなかった場合に比べてコストが増加します。例えばCCSの導入が制約された場合のコストは、制限なしの場合に比べ138%増加(青囲み)、つまり制限なしの場合に比べて2.38倍ものコスト増加になります。一方で原子力のフェーズアウトでは7%(赤囲み)と、わずかな増加で、原子力がない場合でも対策コストはほとんど変わらないことがわかります。
さらに2030年のGHG排出量が55Gt以上で、2030年まで緩和が遅れた場合は遅れなかった場合に比べ44%増加(緑囲み)、つまりコストは1.44倍になります。
このことから対策コストは、技術が制限された場合も、対策が遅れた場合もコスト増加につながることがわかります。
*1 消費者が財・サービスの購入に費やすことができる額の減少をさします。
*2 排出抑制に向けた追加的な対策を行わないシナリオをさします。
- 省エネルギー(省エネ)は、エネルギー効率を高めエネルギー消費量を減らす取組です。工場の省エネには、主に以下の5つが考えられます。
①設備・機器本体のエネルギー効率向上(設備更新・改修)
②用途にあった出力制御(設備更新・改修)
③排熱利用、熱の再利用(設備更新・改修)
④設備・機器の最適運用
⑤照明・空調の高効率設備への更新(設備更新・改修)と運用
また、オフィス、家庭・車などは主に以下の2つが考えられます。
①家電製品や自動車など製品の省エネ化、建物の断熱化
②機器の最適運用
旧型の設備のままで社員に冷暖房停止など我慢を強いても長続きしません。設備の更新・改修でエネルギー消費が5~8割削減になる例もあり、そうすると我慢せずに続けることができます。
つまり設備更新・改修、あるいは新築の際には、より省エネ効率の高い製品を選択することが重要です。逆に新築の際に断熱の悪い建築、効率の悪い機器を導入すると、エネルギーおよび経費の浪費が続くことになり、まさに「安物買いの銭失い」ということになります。今後は、全ての工場、全てのオフィスビルにおいて、機械や建物の更新改修の際には最高効率に変えていくことが求められます。
図は、工場等で利用可能な最良の技術を導入した場合に可能な省エネです。日本ではエネルギーの3分の2をロスしていますが(4-2-6参照)、省エネの導入により最終エネルギーは3割以上削減可能になり、コ-ジェネレーション(5-1-7参照)や再生可能エネルギー(8章参照)などの発電ロスが小さいか、ほとんど出ない発電方法を選択すれば半減の可能性があることを示しています。技術的には最終エネルギー消費量を現在の4分の1にできる可能性もあります。
- カーボンオフセットとは、別の場所で削減・吸収された削減量や吸収量(クレジット)を買いとり、温室効果ガス(GHG)排出量を削減したとみなすものです。
欧州では、航空機の利用や電気・ガス・自動車の使用にともなうGHG排出量を、個人がインターネットを介して、削減量や吸収量のクレジットを購入して、容易にオフセットできるようになっています。その他に、企業等の自社ビルのGHG排出量のオフセット、会議やイベント開催の際に排出される分を、主催者や参加者が負担し、削減量などのクレジットを購入してオフセットします。京都議定書における「クリーン開発メカニズム(CDM)」もオフセットのひとつです。
カーボンオフセットの効果としては、私たちがGHGの排出がコストであるという認識を持つこと、私たちの活動によるGHG排出の「見える化」、地球温暖化問題を「自分のこと」として捉える機会などです。二酸化炭素(CO2)排出が実質ゼロのカーボンニュートラル、 排出より多く相殺するカーボンポジティブ(日本の場合はカーボンマイナス)へと進めることも可能です。
しかし課題もあります。第一に、オフセットされる活動の排出量や相殺に使われる削減・吸収クレジットの算定が正しく行われていない場合、オフセットは実際にGHG排出削減につながりません。またオフセットさえすれば、自社では削減努力をしなくてもよいという考えが広まる懸念もあります。国や自治体でオフセット製品をつくっても、企業本体の削減義務がないため、購入者が少ないということもあります。今後カーボンオフセットを普及するためには、排出削減促進政策や、自社削減を優先するしっかりとした制度作りが必要です。
- 環境省資料
https://www.env.go.jp/council/01chuo/y010-24b/mat03_3_2.pdf
- 日本における適応策は、残念ながら他の先進国に比べて取り組みは遅れていると言われています。ただ一方で適応策に先進的に取り組む地方自治体も出てきています*1。このような現状の中、2015年夏をめどに日本でも国レベルでの「適応計画」が発表される予定になっています。
図は適応策を進める上での基本的な考え方を示したものです。図にあるように適応策には3つのタイプと3つのレベルが考えられます。まずタイプとは適応策における目指す水準になります。タイプ1では命を守るという必要最低限の水準から、生活水準や農業を守る水準、さらには文化を守る水準と次第に守るべき水準が広まっています。これに対してレベルは災害の程度で、適応のあり方を決める指針になります。
例えばタイプ1の豪雨などから人命を守るための場合を考えた場合、レベル1では中小の水・土砂災害が起こることが想定されるため、堤防を高くするといった既存の適応策の強化が考えられます。さらにレベル2で堤防などのハード面で人命を守れなくなった場合は避難の実施といった順応型の適応策が求められます。さらに将来において大災害が予測されるような場合には、居住地の移転などといった地域構造そのものを変える根本的な改善を含む適応策の検討が必要になってきます。
そして適応策の実施については、行政分野間、国と地方間、行政と民間・市民間における合意と役割分担、さらには相互の連携が非常に重要です。
*1 東京都、埼玉県、長野県、滋賀県などが先行して適応策を進めています。
- これまでは、経済成長すれば、エネルギー消費、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(GHG)排出は増加すると考えられていました。しかし、世界の国の中には経済成長をしながら、GHG排出量を削減している国が沢山あります。
このように経済成長とGHG排出量のように互いが連動(カップリング)していたものが、連動しなくなる現象をデカップリングといいます。
図は、ドイツと日本の1990年以降のGDPとGHG排出量の推移です。ドイツは日本より高い経済成長をしながらGHGを25%減らしています。他にも、EU全体、フランス、イギリス、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、ルクセンブルク、チェコ、ポーランドなど欧州十数ヶ国で日本以上の経済規模拡大をしながらGHG排出を削減しています。
これらの国でデカップリングが可能になった理由のひとつは、産業構造転換、サービス化の進展です。先進国ではGDPあたりエネルギー消費量、CO2排出量は減少傾向にあります。
次に、対策の効果とそれによる産業育成・雇用創出です。これらの国は政策導入によって、省エネや再生可能エネルギー投資が促進され、投資を受注する企業の需要増や雇用増も起きています(5-2-11参照)。ドイツでは再生可能エネルギー産業だけで38万人の雇用を得ています。温暖化対策でCO2を減らすと同時に、GDPや雇用も増やします。
日本は経済成長するとエネルギー消費もCO2排出量も増える経済構造ですが、対策強化により経済発展とCO2削減の切り離しが可能です(10-8参照)。国の経済発展は、省エネ・低炭素化で可能なことは多くの先進国で示されています。そしてこのことは、先進国が新興国や途上国に対して示すべき姿であるといえます。
- 図は日本の2010年度における二酸化炭素(CO2)排出量、業種ごとのGDP分担率、雇用割合、輸出割合を示したものです。
図から日本のCO2排出量の約60%は、火力発電、高炉製鉄、セメント製造、化学素材(ソーダ工業と有機化学工業製品製造)、紙パルプ、石油精製の6業種から排出されています。こうした排出の大きさとは対照的に、これら6業種はGDPの約1%、雇用の約0.3%、輸出は約10%しか占めていません。一方、その他製造業(機械産業など)では、排出量は約5%に過ぎないのに対し、GDPの約15%、雇用の約20%、輸出の約90%を占めています。
産業界は「温暖化対策強化は製造業に悪影響を及ぼす」と主張していますが、生産額に占める光熱費は、大半の製造業で1~2%で、その変動は日々の為替変動に埋没します。エネルギー価格変動で悪影響を受ける可能性があるのはエネルギー多消費6業種に限られると考えられます。
逆に温暖化対策の経済へのプラスの影響も考えられます。例えばエネルギー多消費6業種などに排出量取引制度を導入して厳しい削減義務を課した場合には、大規模な対策設備投資が行われると考えられます。その際機械産業やプラント産業などに需要の増加がもたらされ、雇用も増えます。さらに買取補償制度で再生可能エネルギー電力建設が急増すれば関連産業の大きな需要増にもつながります。
ドイツでは2012年段階で、再生可能エネルギーの普及による雇用が38万人と発表されています。世界全体では、再生可能エネルギー産業の雇用が、2014年に767万人以上と推定されています。日本でも再生可能エネルギー産業の雇用が2014年に21.8万人と推定されており、さらに対策による雇用創出が200万人を超える予想が出され、この値はエネルギー多消費6業種の雇用合計の10倍に相当します。