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国際環境政策論
• 総復習
国際環境政策論復習資料 1
エコロジカルフットプリント
EFP=
年間消費量
年間生産量
食料、エネルギー、廃棄物処理について計算
国際環境政策論復習資料 2
フットプリントの縮小
• 人類のいない地球は存在させる意味があるの
か?
• 仮に、人類と今の地球の両方を守ろうとすると
何ができるか
国際環境政策論復習資料 3
対策(案)
• 人口抑制
• 人類の小型化
• マトリックス的世界:肉体と精神の分離
• シンギュラリティスカイ:人間のデータ化
• 地球の生産力を上げる
• 本物食 → 代替食:ソイレント、ミドリムシ
• 肉食 → 昆虫食
• バイオマスによるエネルギー生産
• 消費の抑制
• 機器の効率改善
国際環境政策論復習資料 4
自然の権利を認める根拠
自然権(アニミズム的発想)
•自然はそれ自体権利がある。
•すべての生き物は平等である。
•人間は生きるために自然を破壊せざるを
得ないが、自然の権利も同時に尊重すべ
きであるから、自然を守るのである。
国際環境政策論復習資料 5
自然の権利を認める根拠
人間中心主義
•自然が人間の生存のために必
要であれば、守らなければな
らない。
国際環境政策論復習資料 6
自然の権利を認める根拠
自然の管理人
•自然は人間のものではない。生きるため
にそれを預かっているだけである。
•善良な管理人として認められる範囲であ
ればどの様な利用も認められるが、自然
を破壊尽くすことはみとめられない。
国際環境政策論復習資料 7
環境保護の手法:実力行使
•アース・ファーストは伐採されそうな自然
林にくぎを打ち込んだり、体を鎖で巻き付
けたりして妨害
•アースシェパードが日本の捕鯨船に体当た
り
•沖縄の辺野古では、ジュゴン等の生息地を
カヤックで船の通行を不可能に
自然の権利を代理行使国際環境政策論復習資料 8
公害
汚染源が特定可能で
周辺に被害が及ぶ
地球環境問題
汚染源が特定困難で地
球全体に被害が及ぶ
汚染物質・経路が複
雑化
被害が広範囲化
環境問題
国際環境政策論復習資料 9
公害
•特定の企業および特定
の有害物質に起因し、
問題が発生する製品・
地域も限定されている
パイプエンド型管理が一般的
国際環境政策論復習資料 10
典型7公害
大気汚染→大気汚染防止法
水質汚濁→水質汚濁防止法
土壌汚染→土壌汚染対策法
騒音→騒音規制法
振動→振動規制法
悪臭→悪臭防止法
地盤沈下→工業用水法、ビル用水法
国際環境政策論復習資料 11
(地球)環境問題
• 時間的・空間的広がりを持つ
• 環境影響が地球規模
• 影響が次世代まで及ぶ
• 起こってみないとわからない部分が多い
国際環境政策論復習資料 12
国際的な環境問題
• 各国共通の問題
• ごみ問題
• 食糧問題
• 水問題
• 森林の消失
• 砂漠化
• 越境汚染
• 国際河川の汚染
• 大気汚染(PM2.5)
• 国際環境問題
• 砂漠化
• 熱帯林の消失
• オゾン層の破壊
• 気候変動問題
国際環境政策論復習資料 13
公害関係の法律
• 公害防止協定·公害防止条例 (昭和 20 年代後半)
• 公害対策基本法 (昭和 42 年; 1967 年)
• 公害国会(昭和 45 年; 1970年)
• 環境庁の設置(昭和 46 年 7 月 1 日; 1971 年)
• 公害健康被害補償法 (昭和 49 年)
• 環境基本法(平成 5 年; 1993 年)
• 環境アセスメント法(平成9年; 1997 年)
• 循環型社会国会、循環型社会形成推進基本法(平成
12 年; 2000 年)
• 環境省設置(平成 13 年; 2001 年)
国際環境政策論復習資料 14
世界の環境対策の歴史
•マルサス:人口論 (1793 年)
•宇宙船地球号(1966 年)
•アースデイ (1971 年4月 22 日)
•日本では 1990 年からイベント。
•ガイア仮説(1970 年代)
•人間環境宣言(1972 年)
国際環境政策論復習資料 15
世界の環境対策の歴史(2)
•成長の限界(1972 年) ローマクラブ
•汚染者負担原則(1972 年) OECD で
採択。
•環境アセスメントの勧告 (1974 年)
•持続可能な発展(1987 年)
•モントリオール議定書 (1987 年)
国際環境政策論復習資料 16
世界の環境対策の歴史(3)
• 地球サミット (1992 年)
• 7条:共通だが差異ある責任
• 15条:予防原則
• 気候変動枠組条約 (1992 年)
• 京都議定書 (1997 年)
• ヨハネスブルグサミット (2002 年) 環境と開発に関する世界首
脳会議。
• 国連持続可能な開発会議(リオ+20、2012年)
• SDGs
国際環境政策論復習資料 17
トリレンマ:世界の直面する課題
経済
環境資源
国際環境政策論復習資料 18
持続可能な発展(開発)
Sustainable Development
未来の世代を犠牲にするこ
となく現在の要求を満たす
開発
国際環境政策論復習資料 19
歴史
• 1972年:国連人間環境会議(ストックホルム会議)。
人間環境宣言が採択。
• 1987年: 「Our Common Future(ブルントラント
報告)」(環境と開発に関する世界委員会報告書)
• 1992年:地球サミット。リオ宣言採択、アジェンダ
21採択
• 1993年:持続可能な開発委員会(CSD)が設置。
• 2000年:国連ミレニアム・サミットにて国連ミレニ
アム宣言が採択。→ MDGsを策定
• 2012年:国連持続可能な開発会議(通称:リオ+
20)が開催。
国際環境政策論復習資料 20
リオデジャネイロ宣言
アジェンダ21
• 1992年地球サミット
• 国際社会において、重要な一歩
• 2つの重要な概念を提唱
• 持続可能な発展
• 共通だが差異ある責任
国際環境政策論復習資料 21
共通だが差異ある責任
•地球環境問題に対する先進国
と途上国の役割
•両者に共通責任があるが、各
国の責任回避への寄与度と能
力とは異なっているという考
え方
出所: 「EICネット[環境用語集:「共通だが差異ある責任」]」、
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=628
国際環境政策論復習資料 22
国連ミレニアム目標
(MDGs)
• ミレニアム宣言に従って策定
• 8つの目標
• 21のターゲット、60の指標
• 2015年が目標年
貧困撲滅のための環境対策
国際環境政策論復習資料 23
国連ミレニアム目標(MDGs)
• 極度の貧困と飢餓の撲滅
• 普遍的な初等教育の達成
• ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
• 幼児死亡率の引き下げ
• 妊産婦の健康状態の改善
• HIV/エイズ、マラリア、その他の疫病の蔓
延防止
• 環境の持続可能性の確保
• 開発のためのグローバル・パートナーシッ
プの構築
出所:国連広報センター国際環境政策論復習資料 24
持続可能な開発目標(SDGs)
• リオ+20(2012)で採択
• 2015年以降の枠組み
• 2030年を目標
• 国連の資料
(http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_develop
ment/sustainable_development/2030agenda/)
国際環境政策論復習資料 25
国際環境政策論復習資料 26
技術進歩とエネルギー使用
国際環境政策論復習資料 27
国際環境政策論復習資料 28
負荷を評価:IPAT+αモデル
• I 環境負荷
• P 人口
• A 人間の活動
• T 技術
I=α×P×A×T
• α 環境変化への感受
性
国際環境政策論復習資料 29
社会を持続可能にするために、何が必要
なのか
資本
資源 資源 資源 資源 資源
空気
水
食料 木材
原油
天然
ガス
鉱物
人間社会
国際環境政策論復習資料 30
資源と資本
• 資本 自然資本と人工資本からなる
定期的に資源を生み出す
資本はストックである
資本そのものを資源として使用する場合もある
• 資源 人間がその活動のために使用できる財やサービスのこと
資本から生み出される
資源はフローである
余剰資源が資本となる場合もある
国際環境政策論復習資料 31
資源生産性と原単位
資源生産性 =
環境負荷
生産量
GDPあたりCO2=
CO2
GDP
一人あたりごみ排出量=
ごみ排出量
人口
国際環境政策論復習資料 32
一人あたり二酸化炭素排出量
国別排出量 一人あたり排出量
中国 28.4 6.8
アメリカ 15.4 15.8
日本 3.5 9.0
アフリカ合計 3.5 0.98
国別排出量比は世界全体の排出量に対する比で単位は[%]
排出量の単位は[トン/人-エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)]
国際環境政策論復習資料 33
環境クズネッツ曲線
所得
汚染
デカップリング
所得の向上と汚染の増加がリンクしない
国際環境政策論復習資料 34
1.枯渇性資源
• いったん採掘して使用すると資源量が回復しないもの
• 数百年以内に回復しないもの
• 化石燃料や鉱物資源が含まれる
• 可採年数
• 現在のペースで採掘を続けるとき、あと何年採掘できるか
• 年間採掘量が変化
• 資源賦存量が変化
• 資源の賦存量は「経済的な手段で採掘が可能な量」
• C.f. 確認埋蔵量
国際環境政策論復習資料 35
2度のオイルショック
• 第1次:1973年 第4次中東戦争
• OPEC(原油取引機構) 1バレル3.01ドル→5.12ドル
• 第2次:1976年 イラン革命
• 価格を14.5%上昇と発表
国際環境政策論復習資料 36
産油国の物語:ナイジェリア
• 1956年 ロイヤル・ダッチシェル 油田を発見
• 水路を運河へと改修
→ 飲料水、漁業資源の壊滅
• 石油が村の水路に流れ込む、ガスの煙が健康を害する
• 住民 3分の2がその日暮らし、健康被害への補償はない
• 電気も当初なかった
国際環境政策論復習資料 37
再生可能資源
•生物資源で、短期間に資源量が増加する
資源。
•資源量が一定以下になると復活しない。
国際環境政策論復習資料 38
y=-x+a
x
資源量
Y:成長量、漁獲量
0 操業停止点
最大漁獲量
利益最大化
漁獲量
オープン
アクセス
国際環境政策論復習資料 39
x
資源量
Y:成長量、漁獲量
0
A
国際環境政策論復習資料
B
C
D
E
m
n
l
40
投入量規制
技術的規
制
産出量規
制
漁獲隻数の制
限
漁具の仕様の
制限
漁獲可能量
漁獲努力可能
量
禁漁区・禁漁
期間
若齢魚の漁獲
制限
国際環境政策論復習資料 41
漁業資源の規制方法
許可 権利を割り
当てる
既得権益化
TAC 総量を規制 過剰投資の傾向
IQ 船別に漁獲
量を割当
初期割当、小型魚
の投棄
ITQ 割当量を取
引可能
初期割当
国際環境政策論復習資料 42
漁獲規制の実施状況
• サクラエビ(静岡県駿河湾):水揚げ金額
の共有と配分
• シロエビ(冨山県富山湾)、スケトウダラ
(北海道):漁場利用の輪番制
• ケガニ(北海道の一部)、ホッコクアカエ
ビ(新潟県佐渡周辺):漁船別・経営体別
の漁獲枠
• サバ(全国):団体単位の季節ごとの漁獲
枠の設定
• スケトウダラ(日本海北部、沖合底びき
漁):団体単位の年間漁獲枠の設定
国際環境政策論復習資料 43
再生可能資源の保護
•漁獲量の制限
•証明のあるもののみ取引
•漁場の保護
•天然資源から養殖へ
•天然資源から代替原料へ
国際環境政策論復習資料 44
世界のごみ処理政策
•有害廃棄物の越境移動及びその処分の
規制に関するバーゼル条約
•1989年採択、1992年発効
•日本は1993年に加入、バーゼル法
制定
国際環境政策論復習資料 45
循環型社会形成基本法
• 2000年
• 排出者責任
廃棄物を出すものが処理・リサイクルの
責任を負う
• 拡大生産者責任
汚染者負担の原則に加えて、廃棄された
あとの処理まで責任を負う
汚染者負担の原則:生産者は製品設計に
おいて環境に対する配慮を組み入れる
国際環境政策論復習資料 46
ごみの排出・処理状況
2017年
度
2016年
度
減少
ごみ総排出量 4,317 万
t
4,398 万
t
1.8
%
(1人1日当たり) 925 g 939 g 1.5
%
最終処分量 398 万t 417 万t 4.6%
減量処理率 99.0 % 98.9 %
総資源化量 879 万t 900 万t 2.3
%
リサイクル率 20.3 % 20.4 %
国際環境政策論復習資料
47
国際環境政策論復習資料 48
中国の禁輸
• 世界のプラスチックの生産量
• 1950年:200万トン→2015年:4億700万ト
ン
• プラごみ量 2015年:3億200万トン
• 中国が1992年から2016年までの廃プラの全世
界輸入量の45%
• 国内のプラ需要をまかなうため
• ヨーロッパ、アメリカ、日本など中国に輸出
• 年間約1000万トン
• 2017年7月:廃プラの輸入を禁止国際環境政策論復習資料 49
水の現状:越境汚染
• 西欧の経済発展と人口増加に伴って、ライン川の水質は悪化し
てきた。
• 45年半ば以降には溶存酸素量の低下が深刻になり、大量の魚が
水面に浮かび上がることが日常的にみられた。また、重金属や
有機化合物のような微量汚染物質の排出量も増大し、とりわけ
飲料水への影響が懸念されるようになった。
(出所:「環境白書」、https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/s62/6234.html )国際環境政策論復習資料 50
条約の成立
• 51年:ライン化学条約、ライン川の塩化物による汚染防止条約
• 61年スイスのバーゼル郊外
• 薬品倉庫で火災が発生
• 消火作業中に水銀等の有害物質が大量にライン川に流出
• 水道会社3社が9日間にわたりライン川からの取水を停止
• 漁業が一時停止されるなど社会的影響
国際環境政策論復習資料 51
水の現状:水ストレス
• 1人当たり年間使用可能水量が1700トンを下回り、
日常生活に不便を感じる状態
• 181カ国の37%が水ストレスが非常に高いと
されている。
http://www.wri.org/blog/2013/12/world%E2%80%99s-36-most-water-
気候変動による「水ストレス」が世界を脅かす 世界有数の水輸入大国・日本も高
リスク
https://www.huffingtonpost.jp/2013/12/14/water-stress_n_4446648.html )国際環境政策論復習資料 52
水の現状:日本の水ストレス
• 平均スコアは3.1。農業は2.9、国内使用分は3.3、工業は3.2で
ある。これは、WRIの分類によると高リスク(40〜80%)
• 日本の年平均降水量は1718mm(1971年から2000年にかけて
の平均値)。(世界平均(880mm)の約2倍)
• ただし、日本は世界有数の「水輸入国」である。
http://www.wri.org/blog/2013/12/world%E2%80%99s-36-most-water-
stressed-countries
気候変動による「水ストレス」が世界を脅かす 世界有数の水輸入大国・日本も高リスク
https://www.huffingtonpost.jp/2013/12/14/water-stress_n_4446648.html )
国際環境政策論復習資料 53
原因:公共財
•排除不可能性と非競合性を持った
財
•排除不可能性
利用者を限定できない
•非競合性
利用者が増えても一人あたりの消
費量が変わらない
みんなで消費することが可能な財国際環境政策論復習資料 54
公共財の分類
• 準公共財:公共財の特徴を一部だけ備えた財
排除不可能 排除可能
非競合性 純粋公共財 クラブ財
競合性 共有資源 私的財
国際環境政策論復習資料 55
川の水は公共財か、私的財か?
1.川の水はどんどん流れてきて、多少汲み上げ
ても減らない
→ 非競合性
2.川から水を汲む人を妨げるのは困難
→ 排除不可能性
水は公共財である
国際環境政策論復習資料 56
共有資源(コモンズ)の悲劇
•少量の使用では競合が起きないが、一定
以上の利用で、競合
→混雑現象
•それでも、排除が不可能なため、過剰利
用が行われる
→共有資源の劣化、絶滅
国際環境政策論復習資料 57
水問題
• 水は川を流れており、多少汲み上げても減らない
→どんどん汲み上げよう
→(下流で)あれ?川の水がないぞ!
コモンズの悲劇の発生!
いわゆる混雑現象
国際環境政策論復習資料 58
調整システム
• 共有資源には費用負担と利用量の調整システムが必要
• 地域の共有資源は実はその機能を持っていた
• しかし、国際的な共有資源など、資源量が多いものにはそのシ
ステムがなかった
国際環境政策論復習資料 59
ヴァーチャルウォーター
• 食料や畜産物を輸入する消費国が、自国でそれらを生産すると
仮定した時に必要となる水の量を推定したもの
• 輸出している国:アメリカ合衆国や中国、インド、ブラジル、
アルゼンチン
• 輸入している国:アメリカ合衆国や日本、ドイツ、中国、イタ
リア
国際環境政策論復習資料 60
日本の例(環境省)
1kgのトウモロコシを生産するために必要な灌漑用水は
1,800リットル。
牛はトウモロコシなどの穀物を大量に消費して育つため、
牛肉1kgを生産するにはその約20,000倍の水が必要
2005年には、日本は海外からバーチャル・ウォーターを
約800億m3輸入
(日本の水資源賦存量は4200億m3、使用量は800
億m3)
国際環境政策論復習資料 61
完全情報
•市場メカニズムの前提
•すべての生産者、消費者は財に対する情報をす
べてもっており、両者に差異はない
国際環境政策論復習資料 62
情報の非対称性
•私的情報:生産者または消費者しか知ら
ない情報
•財に私的情報が存在すること
•→意思決定が歪められる
国際環境政策論復習資料 63
非対称性の影響
•逆淘汰:そんなに疑われたら商売やっ
てられへん!
• 悪貨は良貨を駆逐する
• メルカリはどうなんだろう?
•モラルハザード:客やから何やっても
いいでしょ?
• 飲み放題→ほとんど飲まずにグラス交換
• バイキング→大量の食べ残し
国際環境政策論復習資料 64
逆淘汰
財に私的情報がある場合、買い手は
売りに出された商品に隠された問題
があるかもしれないと疑うので、そ
の価格は低下し、最良の商品は市場
には出回らなくなってしまう。
国際環境政策論復習資料 65
逆淘汰の克服:スクリーニング
• 確認できる情報を利用して私的情報を推測する
• 中古車
• 走行距離
• 部品の交換履歴
• 修復歴
• など?
国際環境政策論復習資料 66
逆淘汰の克服:シグナリング
•私的情報を伝える行動
•Webサイトなどを活用して説明
する
•評判情報を提示する
•第3者認証を利用する
国際環境政策論復習資料 67
モラルハザード:定義
注意や努力の欠如を原因として発生
する費用を他人が負担するばあいに、
意図的に注意、努力を怠った行動を
すること。
国際環境政策論復習資料 68
モラルハザード
•自分の行動について、他人よりも多
くの情報を持っているとき。=私的
情報の存在
•注意や努力の欠如を原因として発生
する費用を他人が負担する場合、注
意したり努力したりするインセン
ティブが歪められる。
国際環境政策論復習資料 69
克服
• 私的情報を持つものが結果に責任をもつようにす
る
• 財の提供に条件を設け、自らの状態に応じて選択
するようにする
• バイト
• 歩合制の導入
• 罰金の導入
• 自動車、スマホ
• 免責額の設定
• 等級の変化
国際環境政策論復習資料 70
貿易による非対称性
• 生産者の状況がよく見えない
• 介在する業者が多数存在するため、生産者を特定しにくい
• 国による規制の違い
• 広告にお金を支払える企業の方が良さそうに見える
国際環境政策論復習資料 71
非対称性の克服
• 国際的な取り決め
国連での条約、国家間の協定
• 企業への義務付け
• 情報の提供努力
• 倫理的消費者
国際環境政策論復習資料 72
不利な立場の生産者
• 低い交渉能力←低い教育水準
• 市場アクセスの不在
• 天候不順リスク
• 代替手段の不在
→低い購入価格
国際環境政策論復習資料 73
逆淘汰と貿易
•低価格ではないものを販売した
い
•低価格の商品との違いが見た目
ではわからない
•値段を下げないと売れない
•倒産
国際環境政策論復習資料 74
倫理的消費者
•商品の製造段階における倫理的な取り組
みを商品選択時に考慮する消費者
•購入動機の5%程度との研究もある
適切にシグナリングを!
国際環境政策論復習資料 75
フェアトレードの基準
経済的基準 社会的基準 環境的基準
▶フェアトレード最
低価格の保証
▶フェアトレード・
プレミアムの支払い
▶長期的な安定した
取引
▶前払い
▶安全な労働環境
▶民主的な運営
▶労働者の人権
▶地域の社会発展プ
ロジェクト
▶児童労働・強制労
働の禁止
▶農薬・薬品の使用
に関する規定
▶土壌・水源の管理
▶環境に優しい農業
▶有機栽培の奨励
▶遺伝子組み換え
(GMO)の禁止
国際環境政策論復習資料 76
コーヒーの場合
通常 フェアトレード
交渉能力 買い手市場 FT団体が購入・販
売
教育 考慮できず FT参加の条件
生態系 考慮できず 有機栽培が条件
災害リス
ク
生産者が負う 固定価格を一部前
払い国際環境政策論復習資料 77
フェアトレードと不完全情報
• フェアトレード商品は、生産者と生態系に配慮している=「良
い商品」
• 一般的な商品との差別化ができないため、ビジネスが成り立ち
にくい=逆淘汰
• 「フェアトレード」を伝えることで、倫理的消費者に選択して
もらう=シグナリング
国際環境政策論復習資料 78
6-2-3 IPCCと条約・議定書交渉
年 国際的な取り組み
1988 IPCC設立
1990 第1次評価報告書
1992 気候変動枠組条約採択
1995 第2次評価報告書
1997 京都議定書採択(COP3)
2001 第3次評価報告書/京都議定書の運用ルールに合意(COP7)
2005 京都議定書発効
2007 第4次評価報告書/ノーベル平和賞受賞/条約特別作業部会(AWG-LCA)を設置
(COP13)
2013-2014 第5次評価報告書
2015 COP21 パリ協定合意
2016 パリ協定発効
2017 COP23(ボン会議)
(出所) CASA作成
国際環境政策論復習資料 79
6-4-4 適応策
(出所) CASA作成
温室効
果ガス
排出の
増加
気候の変化
(気温上昇、降水量
の変化、異常気象、
海面上昇など)
影響
生命、生計、健康、
生態系、経済、社
会、文化、サービ
ス、インフラへの
影響
すでに排出された温室効果ガスにより温暖化は進行しつつある
緩和:温室効
果ガス排出の
削減
適応:現れつつ
ある温暖化の影
響への対処
ロス&ダメージ
(損失と損害)
適応の
限界
国際環境政策論復習資料 80
COP21におけるパリ協定
2度未満 世界の平均気温上昇を産業革命前と比較
して2度未満に抑える
長期目標 今世紀後半に、世界全体の温室効果ガス
排出量を、生態系が吸収できる範囲に収
める
すべての国が目標を持つ 5年ごとに目標を更新して提出する
市場メカニズムの活用 二国間クレジット制度を含む市場メカニ
ズムの活用
損失と被害への救済 気候変動の影響に、適応しきれずに「損
失と被害」が発生した国々への救済を行
う国際的仕組みを整えていく
評価体制 5年ごとに世界全体の進捗状況を評価す
る(グローバルストックテイク)
国際環境政策論復習資料 81
限界排出削減費用
二酸化酸素を一単位削減するために必
要な費用
植林:成長すれば木材供給などさまざまなメリット
自然エネルギー:エネルギー源を購入しなくてよい
省エネ家電:買い替えのタイミング
国際環境政策論復習資料 82
2-4-1 緩和とは
エネルギー供給部分 エネルギー需要部分 植物の役割
CO2の吸収・排出・固定
図 温室効果ガス(GHG)排出抑制と植物の役割
✂
✂
✂
✂
(出所) 環境省「STOP THE 温暖化 2012」より作成
国際環境政策論復習資料 83
5-2-10 経済成長と排出抑制(デカップリ
ング)
(出所) 気候変動枠組条約への各国通報及びOECDGDP統計より作成
ドイツ 日本
図 ドイツと日本におけるGDP及びGHG排出量の推移
国際環境政策論復習資料 84
環境十全性
•ある環境問題を解決するために、
別の問題を発生させないよう、
配慮しなければならない
国際環境政策論復習資料 85
4-2-5 排出原単位
指標の種類 内容
排出総量 各部門における温室効果ガ
スの排出総量
活動量 各部門における活動の大き
さを表す量
(生産量など)
排出原単位 活動量あたりの排出量で、
広義の「効率」にあたる。
(出所) CASA作成
一人あたり、面積あ
たり、エネルギー
1kWあたりなど
国際環境政策論復習資料 86
原単位の例:
九州電力における電
力の二酸化炭素排出
原単位の推移
http://www.kyuden.co.jp/environment_notice国際環境政策論復習資料 87
5-3-1 家庭でのエネルギー消費
(出所) 温室効果ガスインベントリオフィスより作成
エネルギー源別
消費量
53GJ/世帯
(2013年度)
図 世帯あたりのエネルギー源別消費量の割合
国際環境政策論復習資料 88
代替エネルギー
•二酸化炭素を出さないエネル
ギーに転換する
•化石燃料→原子力、太陽エネル
ギー、バイオマス
国際環境政策論復習資料 89
再生可能エネルギーの固定価格買取制度
•いわゆるFIT制度
•再生可能エネルギーで発電した電気を、電
力会社が一定価格で買い取ることを国が約
束する制度
•電力会社が買い取る費用は利用者から賦課
金という形で集める
•2012年7月1日にスタート
国際環境政策論復習資料 90
国際環境政策論復習資料 91
市民協働発電
市民が出資しあって発電所を作る
電気=地域で消費
収入=出資者で分配
国際環境政策論復習資料 92
生態系サービス
環境省「価値ある自然」
「自然」すなわち「生態系」
がもたらす恩恵
国際環境政策論復習資料 93
森林保護にお金払う?
払わない 少しなら払う 払う
税金 32.5 60.0 7.5
利用料 29.0 33.8 37.2
募金 35.5 50.3 14.2
抱き合わせ 31.3 57.6 11.1
坂田によるアンケート調査(2013)国際環境政策論復習資料 94
結合生産
森林管理
木材
副産物
公益性
一つのプロセス
2億円の赤字を
どうする?
コスト 7億円
収入 5億円
2億円の赤字
国際環境政策論復習資料 95
PES(生態系サービスに対する支払
い)
•日本:森林環境税
•県民一人当たり500円程度の
支払い
•2024年度から国全体の制度
として導入予定
•年間620億円程度の税収
(出所: 「森林環境税、前倒しで配分=19年度から地方要望受け-政府・与党:
時事ドットコム」、
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017120800632&g=eco)
国際環境政策論復習資料 96

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国際環境政策論2019全体復習

Editor's Notes

  1. 発生源ではなく、生産活動の最後の部分で規制
  2. http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/global_action/mdgs/ 極度の貧困に苦しむ人々の割合は、1990年には世界人口の約36%(約19億人) →は 約 12 % (約8.4億人) と、当初の3 分 の 1 現在でも、サブサハラ・アフリカ地域を見ると、人口の41%が依然として極度の貧困状態 2000年から2014年までに世界の新規HIV感染者数は約35%減少しました。また、 対策の進展によって、マラリアについては2000年から2015年までに全世界で約620万人以上の命が、結核については2000年から2013年までに約3,700万人の命が救われたと推定されています。 初等教育の完全普及の達成が掲げられていましたが、1990年に80%だった開発途上地域の就学率は、2015年には91%
  3. 世界のリーダーが2015年9月の歴史的な国連サミットで採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた17の「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2016年1月1日に正式に発効しました。今後15年間、すべての人に普遍的に適用されるこれら新たな目標に基づき、各国はその力を結集し、あらゆる形態の貧困に終止符を打ち、不平等と闘い、気候変動に対処しながら、誰も置き去りにしないことを確保するための取り組みを進めてゆきます。 SDGsは、ミレニアム開発目標(MDGs)の成果をさらに一歩進め、あらゆる形態の貧困に終止符を打つことをねらいとしています。新たな目標の独自性は、貧しい国も、豊かな国も、中所得国も、すべての国々に対して、豊かさを追求しながら、地球を守ることを呼びかけている点にあります。そして、貧困に終止符を打つため、経済成長を促し、教育、健康、社会的保護、雇用機会を含む幅広い社会的ニーズを充足しながら、気候変動と環境保護に取り組む戦略も必要であることを認識しています。
  4. 産業革命時: 10億人 1950年: 25億人 1998年: 60億人 2011年: 70億人 http://tokyo.unfpa.org/ja/resources/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%EF%BC%89 出所:
  5. 環境負荷は人口の増大や経済活動によって増加する一方、環境負荷を低減するような技術の導入により環境負荷が下がっていく
  6. 1.費用は資源量に比例して減少 ※ オープンアクセス:規制がない状態での漁獲量 資源量がYoa以下になると、漁獲費用が漁獲量を超えるので、操業しない→資源量が緩やかに回復 Yoa以上:儲かるのでたくさんとるから、資源量がじわじわと減少
  7. 1.費用は資源量に比例して減少 ※ オープンアクセス:規制がない状態での漁獲量 資源量がYoa以下になると、漁獲費用が漁獲量を超えるので、操業しない→資源量が緩やかに回復 Yoa以上:儲かるのでたくさんとるから、資源量がじわじわと減少
  8. 水産白書
  9. http://www.mlit.go.jp/common/001212089.pdf
  10. http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/000015.html
  11. IPCCは、これまで1990年、1995年、2001年、2007年、2013~14年の計5回にわたって評価報告書を発表してきました。これら評価報告書で示される地球温暖化に関する最新の科学的知見は、温暖化問題についての理解を進めるとともに、条約・議定書交渉に大きな影響を与えてきました。1996年のCOP2では、IPCCの評価報告書に懐疑的な意見も出されましたが、最近ではIPCCに対する懐疑的な意見は基本的に出されなくなりました。 1992年の気候変動枠組条約の合意から、2014年のリマ合意まで、条約・議定書交渉が一進一退を繰り返しながらも、着実に前に進んで来たのはIPCCに代表される科学と市民の関心の高さによるものです。 最新の第5次評価報告書(AR5)で、条約・議定書交渉との関係で注目されるのは、以下の点です。 ① CO2の累積総排出量と平均気温の上昇は比例関係にある。工業化以前からの平均気温の上昇を2℃未満に抑えるための累積総排出量は約2兆9000億トンで、すでに約1兆9000億トンを排出しており、このままでは30年足らずで2℃を超す可能性がある(第1作業部会、2-2-11、2-2-12参照)。 ② 2℃未満に抑えられる可能性が高い削減シナリオは、2100年に大気中のCO2換算濃度が約450 ppmとなるもので、そのためには2010年と比べて2050年には40~70%を削減し、2100年にはほぼゼロ又はマイナスにしなければならない(第3作業部会、2-4-6参照)。 ③ 2030年まで温室効果ガスの削減の取り組みを遅延させると、2℃未満に抑え続けるための選択肢の幅が狭まる(第3作業部会、2-4-8参照)。 こうしたAR5の知見からすれば、現在各国が準備を整えつつある2020年以降の削減目標が決定的に重要であることが分かります。世界の政策決定者はIPCCの最新の知見を真摯に受け止め、2015年合意(6-4-10、6-4-15参照)に反映させることが求められています。
  12. 80
  13.  2015年11月末からフランスのパリで開催されるCOP21で、すべての国が参加する、2020年以降の新たな枠組みが合意されることになっています。この合意は、「2015年合意」と呼ばれています。  IPCCの第5次評価報告書(AR5)は、「平均気温を2℃未満に抑制するためには、2030~50年に大幅な削減が必要で、現行水準以上の緩和努力が2030年まで実施されなければ、長期的に低排出水準へ移行する困難さは大幅に増し、産業革命以前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための選択肢の幅を狭める」としています。 これが、COP21で採択される「2015年合意」の削減目標が決定的に重要な理由です。2015年7月15日現在、47ヵ国から2020年以降の削減・抑制目標が条約事務局に提出されています。 日本政府も、7月17日、「2030年度に2013年度比26.0%削減(2005年度比25.4%削減)」の国別目標案(INDC、6-2-15参照)を提出しました。この目標は、「国際的にも遜色のない野心的な水準」だとされています。表は、その根拠として日本政府が示したもので、政府の説明によれば、2013年比では、日本の削減目標はアメリカやEUなどより、数字が大きいというのです。これを1990年比で比較すると、日本の目標の18%はEUの40%削減に比べると、大きく見劣りしています。アメリカの目標年は2025年ですから、アメリカと比べても見劣りしていることは明らかです。 こうした違いは、日本が1990年以降、温室効果ガス(GHG)の削減を怠ってきたのに対し、EUは削減に成功し、アメリカでも削減に向かっていることにあります。 日本は世界5番目の排出国であるにもかかわらず、2020年以降の削減目標でも大きく立ち後れ、温暖化対策にもっとも消極的な国と評価されてもしかたがない状況です(6-4-11参照)。  COP21までに日本政府がより野心的な削減目標を掲げるよう働きかけることが、私たち日本の市民の、日本と世界の将来世代に対する責務だと思います。
  14.  緩和とは、地球温暖化の原因である温室効果ガス(GHG)排出を抑制し、吸収源を拡大するための人為的な介入とされています。  GHG排出削減については図にあるように、主な排出源であるエネルギー供給部門とエネルギー需要部門の削減に加えて、エネルギー起源以外の農林業や土地利用からの削減があります。  エネルギー供給部門は、主に石油や石炭、天然ガスなどを使って電気にかえる発電所などのエネルギー転換部門からの排出で、ここでの削減は重要な緩和策です。エネルギー需要部門とは、産業部門、建築部門、輸送部門などで、各部門から直接排出されるGHGと、エネルギー供給部門の電気や熱などを使用することによる間接排出分とがあり(4-1-4参照)、両方での削減対策があります。さらに農林業や土地利用からの排出もGHG全排出量の約4分の1を占めていることからこの部分での対策も重要です。  吸収については、植林などを行うことで光合成によるCO2吸収量の増加が考えられます。しかし一方で森林破壊や森林の劣化がCO2排出源ともなり得ることから、森林の保全や管理も重要です。  第5次評価報告書(AR5) では2100年時点のGHG濃度を基準に、緩和シナリオ(経路)を分類しています(2-4-7参照)。それぞれのシナリオにおいて21世紀中にいくつかの温度レベル(1.5℃、2℃、3℃、4℃)に対して、それを超えない経路を示しています。
  15.  これまでは、経済成長すれば、エネルギー消費、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(GHG)排出は増加すると考えられていました。しかし、世界の国の中には経済成長をしながら、GHG排出量を削減している国が沢山あります。  このように経済成長とGHG排出量のように互いが連動(カップリング)していたものが、連動しなくなる現象をデカップリングといいます。  図は、ドイツと日本の1990年以降のGDPとGHG排出量の推移です。ドイツは日本より高い経済成長をしながらGHGを25%減らしています。他にも、EU全体、フランス、イギリス、ベルギー、デンマーク、スウェーデン、ルクセンブルク、チェコ、ポーランドなど欧州十数ヶ国で日本以上の経済規模拡大をしながらGHG排出を削減しています。  これらの国でデカップリングが可能になった理由のひとつは、産業構造転換、サービス化の進展です。先進国ではGDPあたりエネルギー消費量、CO2排出量は減少傾向にあります。  次に、対策の効果とそれによる産業育成・雇用創出です。これらの国は政策導入によって、省エネや再生可能エネルギー投資が促進され、投資を受注する企業の需要増や雇用増も起きています(5-2-11参照)。ドイツでは再生可能エネルギー産業だけで38万人の雇用を得ています。温暖化対策でCO2を減らすと同時に、GDPや雇用も増やします。  日本は経済成長するとエネルギー消費もCO2排出量も増える経済構造ですが、対策強化により経済発展とCO2削減の切り離しが可能です(10-8参照)。国の経済発展は、省エネ・低炭素化で可能なことは多くの先進国で示されています。そしてこのことは、先進国が新興国や途上国に対して示すべき姿であるといえます。
  16.  二酸化炭素(CO2)排出の指標には、総排出量のほかに排出原単位があります(図1)。排出原単位とは、活動量(生産量など)あたりのCO2排出量をいい、値が小さいほど効率がよく、大きいと効率が悪いことになります。  活動量はその部門の活動の大きさを表す指標(図2)で、製造業では原則として生産量*1、発電では発電量あるいは使用電力量*2、運輸旅客では旅客輸送量(人・キロ)、運輸貨物では貨物輸送量(トン・キロ)を使います。業務部門では原則として床面積を、家庭部門では世帯数を使います。  総排出量の増減は、CO2排出原単位の変化が主因なのか、あるいは活動量の増減が主因なのかを調べることが必要です。また削減対策の前後で、排出原単位を比べることで、それが効果的な対策なのか、あるいは逆行する対策なのかの判断ができます。さらに部門内あるいは業種内で原単位を比較することで、その事業所の業種内の位置がわかります。  ただCO2排出原単位の推移は、できる限りその条件や範囲を揃えて評価をする必要があります。工場の排出原単位が改善されたと言われる場合でも、例えば排出量の大きい工程・部品を外注化した場合や、あるいは逆に合併した隣接工場の生産量を加えて算出したという場合には、対策の正しい評価ができなくなってしまいます。 *1 機械産業のように多種多様なものをつくる工場、業種では生産指数を使ったり、さらに便宜的に生産高を使うことがあります。ただし生産高は、単価の高いものをつくると排出原単位があたかも小さくなったように見えるので注意が必要です。 *2 工場やオフィス、家庭などでの使用量で、送配電ロスを除いたものをいいます。
  17.  2013年度に家庭と家庭用自家用車で一世帯あたりで消費されたエネルギー量は、およそ53GJ*1です。これを原油に換算すると約1350リットルに相当します。これは毎日およそ原油3.7リットルに相当するエネルギーを使いながら生活していることになります。世帯あたりのエネルギー消費量は1990年代まで増加し、その後は減少しています。  エネルギー源別では、電気とガソリンがそれぞれ約3分の1を占めます。都市部では、都市ガスが多く用いられ、灯油を使わない家庭も多くあります。灯油は寒冷地での主要な暖房のエネルギー源となっているほか、お風呂の給湯にも用いられています。  図は全国平均ですが、寒冷地(北海道、東北、北陸)では暖房用の灯油の多さなどから、車の燃料を除く世帯あたりの消費量は、関東以西の1.4~1.6倍のエネルギーを消費しています。 *1 1GJ(ギガジュール)=1×109J(ジュール)
  18. でも、木材が使われなくなってきた。
  19. https://www.jiji.com/jc/article?k=2017120800632&g=eco  政府・与党は8日、2024年度に創設する市町村の森林整備の財源に充てる新税「森林環境税」について、19年度から前倒しで地方に配分する方針を決めた。早期導入を求める地方自治体に配慮し、年数百億円を地方譲与税として配る。19年度は200億円程度となる見通しだ。(出所: 「森林環境税、前倒しで配分=19年度から地方要望受け-政府・与党:時事ドットコム」、https://www.jiji.com/jc/article?k=2017120800632&g=eco)