More Related Content
Similar to 21220626 edt furusawa
Similar to 21220626 edt furusawa (15)
21220626 edt furusawa
- 1. リオ地球サミット20年を再出発の契機に
~自然・人間・社会経済の再構築へ~
古沢広祐(環境・持続社会研究センター)
(1)時代変化のとらえ方
(2)気候変動・生物多様性の危機
(3) システム変革、持続可能な発展、文明の在り方
(4)ローカルからグローバルへの戦略・展望
- 2. • 現代社会と世界経済の動向をどう見るか
金融危機とその後の世界状況に対する現状認識、
調整過程のとらえ方について
• グリーン・ニューディール、グリーン・エコノミー、
グリーン・ジョブと成長戦略の課題
・・・・・・ 導入的な問題提起など
- 3. 国際状況(ODA・環境社会配慮)の変遷
1980年代 1992年 2002年 (2012)
オイルショック(1973) 湾岸戦争(1991) 同時多発テロと
アフガン攻撃(2001)
ODA批判 ★地球サミット開催
理念の模索 ***理念のゆらぎ ***?
理念の提示
★ヨハネスブルク・サミット
「人道主義」 ODA大綱(1992) * 国連MDGs目標
「相互依存関係の認識」
環境案件の浮上
GEFへの拠出(1994) ODA中期政策(1999)
→ 冷戦構造の終焉★ 制度の改善 GEFへの拠出(1998)
JICA開発調査環境ガイドライン(1994)
OECFガイドライン改定(1995)
JBICガイドライン策定(2002)
★グローバル市場経済の拡大へ → 情報公開法の施行(2001)
外務省定期協議開始(1996)
MoF定期協議開始(1997)
JICA定期協議開始(1998)
3
JBIC定期協議開始(2001)
- 5. 地球サミット(1992)
気候変動枠組み条約、生物多様性条約、
リオ宣言、アジェンダ21、森林原則声明
など国際環境レジーム(体制)を形成
双子の条約
の意義
★ 従来の発展様式(化石燃料型文明)が、気候条約
によって終止符、転換を迫られている。
★ 人間中心(単線系モノカルチャー型文明)から、
多様性と循環に基づく生命文明の再構築へ。
5
- 7. 自然・生命系の推移 ⇔ 制約要因:天敵、食料・資源、環境
経済・産業系の推移 ⇔ 市場経済: 価格、収益
・・・・景気循環、バブル・恐慌、金融政策、税・財政介入
- 8. 生物多様性条約に内在する潜在的可能性
モノカルチャー型文明
<価値の画一化・標準化・序列化>
による自然支配・管理の拡大・膨張
劣ったもの・後れたもの・捨て去るべき無価値な存在
( = 絶滅危惧種 )
追いやられたきた存在に新たな価値の光があたる動き
先住民の権利、小農民の権利の復権、伝統・文化の再発見
文化多様性というもう
文化多様性条約
一つの領域との融合 (UNESCO, 2007~)
- 11. 歴史的転機としての2001~11年
• 2001.9.11同時多発テロ事件:世界の揺らぎ
• 08年前半深刻化した世界食糧危機・資源高騰
• 世界全体で都市人口が農村人口を上回る年となった(2009)
• 京都議定書の実施約束期間が2008年からスタート
★100年に1度規模の未曾有の世界経済危機に突入 2008~
(サブプラム危機から信用・金融システム崩壊、国家破綻危機の進行)
• G8からG20へ(世界覇権国家の揺らぎ、欧米からアジア?)
• 深刻な時代認識下で、米国でオバマ新政権の動向(2008~
• 「グリーン・ニューディール」政策から「グリーン・エコノミー」へ? (構造改革・変革
が、どのように起きるのか?・・・2012:リオ+20?)
・・・2011.3.11 東日本大震災・福島原発事故の発生・・・
- 12. グローバル金融資本主義の破綻?
商業資本主義 → 産業資本主義 → 金融資本主義(マネー、情報)
*世界の金融資産規模(証券・債権・公債・銀行預金の総計)は、
2006年に総額167兆ドル(実体経済の約3.5倍、1990年は約2倍)
*その成長率は年平均9.1%(1996-2006)で、同期間の実体経済
の名目GDP成長率(年平均)5.7%を大きく上回った。
*世界のデリバティブ(金融派生商品)
の市場規模は、12兆ドル(2006年、 2000年の約3倍に拡大)。
その想定元本は、516兆ドルに達した (実体経済の約10倍)。
(数字は「通商白書2008」より)
・・・・金融バブルの崩壊と実体経済の動向は・・・・
(資本主義経済を、どうコントロールするか・・・)
- 13. 現代のグローバル経済の
歴史的な展開とその発展過程
自給的経済 → 拡大と交流( 「ローカル」から「グローバル」へ )
(自然資本依存) 資本主義的・拡大膨張経済
(成長経済システム)
商業資本主義 膨張・破綻・再調整(ニューディール型ケインズ政策?)
↓ (従来型枠組みでの需要拡大・成長の強制)
産業資本主義 ↓ ↓
環境産業形成による再調整(グリーンニューディール)
↓
<実体経済からマネー経済へ>
↓
金融資本主義
(マネー・信用膨張) ( サステイナブル・ウエルフェア社会への構造変革 ? )
↓ 環境的適正(有限性)と社会的公正の両立
<定常型・環境福祉社会の実現>
<?>
- 19. 4つのシナリオにおける抗争
①市場優先シナリオ
③安全(既得権)優先シナリオ
・・・・ 市場優先・格差社会から転換?
現実のグローバル経済の実態は?
②政策優先シナリオ
経済成長を重視するが、政府は環境保護と福祉に向けた強力な政
策を展開する。
④持続可能性優先シナリオ
持続可能性を最優先にする、より公平な価値や制度に基づいて新し
い環境と開発のパラダイムを目指す。環境保護と福祉の実現のため
に政府、市民社会、民間企業が対等に協力し合う。
- 20. 国内経済・政治 国内枠組み
政策展開
国際枠組み
国際経済・政治 国際展開
さまざまなレジーム(体制・制度・勢力枠組み)
の全体像を把握する(対立、抗争、調整、協調)
*貿易(WTO体制)、経済・金融体制・・・
*軍事・平和、人権、援助・開発協力・・・
*環境(気候変動、生物多様性、海洋、廃棄物・化学物質)・・・
*NGO・国際機関・・・
・・・・
- 22. 低炭素世界形成のプロセス
• 当面は、グリーン・ニューディール政策の推進。(どちらかと言え
ば限定的かつ対処療法的な対応の展開)
• 問題を幅広くとらえ、経済や社会の歪みの是正を組み入れた政
策展開の方向性が重要。
その際、経済・社会の歪みのとらえ方と改善策で幅が出てくる。
当面は既存の国際機関や国際政治の枠組みの延長線上で、踏
み込んだ戦略的構造改革の内容がどこまで打ち出せるか、どう変
革の道筋をつけていけるかが鍵。
• 方向性としては、長期的かつ本質的な変革の可能性について、
脱成長の視点から「持続可能な環境・福祉社会」の道筋を検討す
ることが重要。
- 25. 大規模な再生可能エネルギーへの移行
• 化石燃料型社会インフラの建設に100年間かかってお
り、再構築には最低でも30~40年間かかるだろう。
• 風力、ソーラー、進歩した地熱など再生可能エネルギー源を、
世界のエネルギー問題に対する長期的な解決策と見込む。
• しかし、新たな太陽電池材料とプロセス、新たな地熱や潮力
発電技術などと同じく、新たなエネルギー貯蔵技術についても
更なる研究が必要。
• エネルギー収支比、環境影響、規模拡大の可能性、資源必要
量を含めた規準を用いた、代替エネルギー源の相対比較評価
を基本ベースとする。
- 27. 交通システムの改造(公共交通、近隣系)
• 高速道路の建設と拡張を中止し、電化され非モータ
ー化された交通インフラやサービスのために、連邦
の交通資金を振り向ける。
• 当面、バスと鉄道といった公共交通、あるいは自転
車や歩行などのモーターなしの代替案、次第に電化
された高速の鉄道が主要都市間を結び、一番安価
な手段となっていく。
(全国高速鉄道ネットワークはその揺籃期にある)
• 今のところ、現存する私有自動車のストックは、カ
ープーリング、カーシェアリング、ライドシェアリング
の(連邦政策と資金で支援された)地域ネットワーク
を通じて、より効率的に用いられなければならない。
- 28. 電力システム(電力網の再建)
• 単なる既存のシステムの強化ではないシステム再編。
新たな発電容量は、再生可能エネルギー源から来るべ
きであり、その多くは中規模の容量で、既存の電力網か
ら離れた地域において建設される。
• 送電システムは、頑健な双方向のコミュニケーションや
進化したセンサー、送電システムの効率や信頼性、安
全性向上のための分散コンピュータ、と同じく分散型発
電を支援しなければならない。
• 地域の発電会社は、再生可能エネルギーと「スマートグ
リッド」への更新に集中的に投資をおこなう。
- 29. 建物ストック改造(省エネ、創エネ)
• 新旧の建物のエネルギー効率を向上させる技術は
すでに存在している。(ドイツは冷暖房に必要なエネ
ルギーを劇的に減らすための先駆的な「パッシブハ
ウス」基準を採用している)
• アメリカ国中で、数百万軒の建物をスーパー断熱に
し、代替熱源を用いることが可能である。住宅と公
共ビルを改造するため、知識と経験をそなえた労働
者と投資が必要である。ここにも、数百万人分の雇
用創出の可能性がある。資金、新たな規制、教育が
必要である。
- 30. 食料システム(脱炭素化とローカル化)
• 工業的食料システムは、人力を激減させ安価で豊富な
食料生産を実現した。それはトラクター燃料や肥料、殺
虫剤、除草剤と各種の輸送・加工の面で、多大な化石燃
料に依存している。
• 現在の食料システムは、米国の場合、人為活動による温
室効果ガス排出量の20%以上となっている。
↓
• 新たな農業技術(有機・環境保全型)、新たな農民、生産
と消費に関わるローカル化への全面的展開。
そのための、土地政策、新たな農民像と消費者教育、財
政支援、地域の食料加工、流通、ローカル市場の形成。
- 32. グリーンジョブに関する最近のニュースより
( http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100210/)
210万ドル支援、雇用わずか70人
「グリーンジョブ」中国の低賃金に苦慮
2010.2.10 05:00
オバマ米大統領は210万ドル(約1億8800万円)を費やし、中国の太陽電池メー
カー大手、サンテック・パワー・ホールディングスの太陽電池パネル工場の米アリゾ
ナ州への建設を支援する。同工場では、現地で米国人70人を雇用し、本国で中国
人従業員1万1000人が製造した部品の組み立てを行う計画だ。
2国間でのこのような差は、「グリーンジョブ」と呼ばれる環境関連の雇用創出にお
いてオバマ大統領が直面する困難を象徴している。
米国の工場がクリーン・エネルギー分野での需要と労働費の安さでアジアに押され
るなか、世界の風力・太陽光発電装置の5割以上を製造するアジア地域は、勢力を
増しつつある。
薄膜太陽電池メーカー世界最大手の米ファーストソーラーは、同社オハイオ工場で
200件の雇用を創出するため1630万ドルの補助金を獲得した。しかし同社は、今
後新たに建設する生産拠点の71%をマレーシアに置く計画にしている。同社は全世
界で4500人を雇用している。
- 39. 70%削減の可能性・コスト・分野
・ CO2 排出量70%削減は、エネルギー需要の40%削減とエネルギー供給の低
炭素化で可能。
• 2050 年CO2 排出量70%削減に関わる技術の直接費用は、年間約7 兆円~9
兆9千億円である。これは想定される2050 年のGDP の約1%程度。
• 需要側のエネルギー削減は、人口減や合理的なエネルギー利用によるエネル
ギー需要減、需要側でのエネルギー効率改善で可能。
各部門でのエネルギー需要量削減率(2000 年比)
• 産業部門:構造転換と省エネルギー技術導入などで30~40%
• 運輸旅客部門:適切な国土利用、エネルギー効率、炭素強度改善などで80%
• 運輸貨物部門:物流の高度管理、自動車エネルギー効率改善などで50%
• 家庭部門:建て替えにあわせた高断熱住宅の普及と省エネ機器利用などで40
~50%
• 業務部門:高断熱ビルへの作り替え・建て直しと省エネ機器導入などで40%
- 40. 基本的な留意点
• 世界経済が抱える時限爆弾的な矛盾構造:膨大な財政投入と
負債の急増、マネー経済の動向(国家破綻リスクの回避)
• グローバル経済としてみた場合、途上国への製造業の移転な
どは、先進諸国の資源・エネルギー多消費構造の外部への置
き換え現象が起きているのではないか?
• 経済発展と環境負荷の相関性を脱却するプロセスとは、個別技
術(省エネ等)や産業構造の転換のみならず、個々人の消費ス
タイルや社会編成の在り方や、各国の経済的基盤がグローバ
ルに組み込まれている重層構造を改革する必要がある。
<“グローバル・エコノミー展開の構造改革”の視点が必要>
• 持続可能な発展をベースに、各国での経済・社会の低炭素型
発展パターンのモデル化と適用可能性の検討をすすめる。
<トータルな地球経済の着地点を探る:地球的共存社会モデル構想>
- 42. 持続可能な社会の形成へ (ミクロレベルからマクロレベルまで)
① 個人・家庭レベル: エコライフの普及、環境改善・環境家計簿づくりの動き。
②製品・商品レベル: 製品の設計(エコデザイン)、環境効率、エコラベル、環境
影響評価(LCA)など、各種エコプロダクト(環境調和型製品)の開発の促進。
③ 企業・自治体・事業者レベル: 事業評価、環境マネジメント、環境管理計画、
環境監査、環境会計の導入の動き。 異業種エコロジー産業体の形成
(ゼロ・エミッションの取り組み等)。環境調和型の地域・街づくり、地域計画
(エコシティ、エコタウン、サステイナブル・コミュニティ等)。
⑤ 広域(地域・自治体以上の領域)・国家規模の動き : 水源・水系・流域全体
の保全管理などの「バイオリージョナル」(生命地域主義)的な取り組み。
広域事業での環境影響評価(アセスメント)の徹底、国民経済計算に
環境影響評価を組み込む動き(グリーンGDP、経済環境統合勘定)、
環境基本法と環境基本計画の制定、各種法規制・政策の整備と拡充。
⑥ 国際・世界規模での動き: 国際環境条約、二国間・多国間協定の締結、
持続可能な発展を枠組みとした国際機関、援助・開発協力の推進。
- 43. 低炭素世界形成のプロセス(中短期的視点)
• 当面は、グリーン・ニューディール政策の推進。
(限定的かつ対処療法的な対応)
• 問題を幅広くとらえ、経済や社会の歪みの是正を組み入れた
政策展開の方向性が重要。
→経済・社会の歪みのとらえ方や改善策に幅が出てくる。
当面は既存の国際機関や国際政治の枠組みの延長線上だが、
踏み込んだ戦略的構造改革の内容がどこまで練り上げられるか
どう変革の道筋をつけていけるかが鍵。
• 基本的方向性は、より長期的かつ本質的な変革の可能性につ
いて、「持続可能な発展」の道筋を検討することが重要。
- 44. 基本的な視点
• グローバル経済として見ると、途上国への産業移転などは、先進諸
国の資源・エネルギー多消費構造の外部への置き換え現象が起き
ている
• 経済発展と環境負荷の相関性を脱却するプロセスとは、産業技術
(省エネ等)や産業構造の転換のみならず、個々人の消費スタイル
や社会編成の在り方や、各国の経済的基盤をグローバルにどう組
み立てるか、入り組んだ構造を調整する必要がある
<“グローバル・エコノミー展開の構造改革”との相互調整>
持続可能な発展をベースに、各国・地域での「グリーン・
エコノミー」のモデル形成と普及
トータルな地球経済の着地点を探る: 「地球共存社会」の形成へ