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4 会社経営者の相続を考える
- 4. 会社経営者の相続を考える • 経営承継円滑化法が生まれた背景？ P-03 ○○税務署 事業承継 僕は会社の経営には興味 ない、妻は賃貸住宅を 相続すればと言っている 弟 嫁 姉 婿 私は専業主婦でいいけど 夫は土地を相続すればと 言っている 母 私は今のおうちで静かに 暮らしたい。 それと生活費が必要ね。 財産の承継
Editor's Notes
- 今回は事業承継について考えていきます。 事業承継が難しいのは・・・単に「財産」の承継にとどまらず・・・「事業」そのものも承継しなければならないところです 経営者が亡くなりました・・・はいそれでは、サラリーマンをしている息子さん「あなたが次の社長ですよ！」・・・というわけにはいきませんよね。 そのために経営者は、自分の事業引き継いでくれる「後継者」を育てなければなりません・・・一番難しいところですね。 今回の話では・・・これから育てよう・・・これから引き継ごうという「後継者」にとって・・・「何が問題か？」 そしてその解決策のヒントとして経営承継円滑化方のお話をいたします。
- 経営承継円滑化法の話に入る前に・・・経営者に万一のことが起こった場合どのように相続税を支払うのかを考えて見ましょう。 タイトルは・・・「金庫株を活用した納税資金準備」・・・「金庫株」・・・聞きなれない言葉ですね！ それではまず会社と経営者に登場願いましょう・・・ちょっと社長の具合が悪そうですね・・・やはり・・・ ここで後継者は、自社株を相続により取得します こんどはその自社株の一部を自分の会社に売却します・・・そしてその売却代金を受け取ります 《ポイント》 このとき会社が保有することになる自社株を「金庫株」といいます・・・この「金庫株」いつまで持っててもいいのか？といいますと・・・いいんです！ もちろん議決権や配当を受けることはできませんが・・・ さて・・・資金ができたところで・・・納税というわけです 《ワンポイントアドバイス》 とここで、ひとつ考えなければなりません・・・何を？・・・株を買取る資金を会社に作る方法です！ もちろん、流動資金をふんだんに準備している会社であれば・・・これくらい大丈夫！となるかも知れませんが・・・どうです？ なかなか大きな資金の準備は大変ですよね・・・しかも自社株を買取れるのは、剰余金の分配可能額の範囲・・・要するに配当できる金額の範囲ということですね。 どうですか・・・いつでも配当可能額を相当な額用意できていますか？ 実はそんなとき・・・先代経営者が「生命保険」に入っていたら・・・保険の使い途は節税ばかりにあらずです・・・自社株の買取資金が用意できるかもしれませんね。 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：自社株の評価と対策 単元：自社株の買取
- もう一つの相続税の納税方法を見てみましょう。 自社株を会社に買取らせると、経営権の問題が生じてこまるなどというケースも考えられます。 そこでもう一つの方法として・・・「死亡退職金」を考えて見ます・・・社長を何度も死なせてしまって申し訳ないのですが・・・ 経営者がお亡くなりになって・・・死亡退職金を支払います・・・ 《ポイント》 死亡退職金について少しお話しておきますが・・・会社に従業員の退職金規定がある場合・・・たいていは死亡退職金の支払い順位が決まっています。 配偶者、子、親・・・というような書き方だったり・・・労働基準法の第42条ないし第45条に従う・・・などと書かれていたりします。 ここでの話は経営者の死亡退職金です・・・この場合は・・・役員退職金規定に定められている場合もありますが・・・取締役会で誰にいくら払うかを決定することができます。 そこで・・・ここでは後継者に死亡退職金を支払うものします。 そして、後継者はこの死亡退職金を活用して、相続税を納付することになります。 と・・・ここでまた先ほど同じ問題が生じてきます・・・資金の問題ですね。 ここでもまた活躍するのは生命保険です・・・まあ、もっとも保険本来の使い方ですね。 【学習のヒント】 出題分野：相続 単元グループ：相続の基本的仕組み 単元：相続財産 出題分野：相続 単元グループ：相続の基本的仕組み 単元：みなし相続財産 出題分野：事業 単元グループ：事業承継 単元：同族会社と相続
- そてここまで、経営者に相続が発生して・・・後継者が相続税を納税するにはどうすればよいのか？・・・をみてきましたが・・・ それほど事は簡単に運ばないの事業承継の難しいところですね。 ここでは今回のメインテーマである「経営承継円滑化法」が生まれた背景を考えて見ます。 事業承継は「経営承継」の問題だけではなく、「財産の承継」の問題も当然同時に起こってきます・・・ここがやっかいなところです。 すこしそのあたりを見ていきましょう・・・また社長には申し訳ありませんが、お隠れいただきます・・・ すると「事業の承継」が起こります・・・まず「自社株」を相続し・・・そして「会社の経営」を承継します。 しかし、それだけでは終わりません・・・亡くなった社長の個人財産の承継も行うことになります。 となると・・・そこに相続人が現れることになりますね・・・夫を亡くしたお母さん・・・ちょっと気の強そうなお姉さん・・・そしてちょっとちゃらい弟・・・ お母さんは・・・こんなことを思っています・・・今までのように静かにくらしたい・・・そうですよね！ 《ポイント》 じゃ姉や弟は・・・姉だけを考えればよいかというと・・・だんなさんが出てきたりもしますね・・・このだんなは土地が欲しいなあ・・・などと言ってます。 弟はというと・・・これがしっかり者の嫁がいて・・・自分は経営なんて興味ないけど嫁が賃貸住宅を相続すればいいなあなどど言ってます。 さらに忘れてはいけません・・・相続税だって発生してくるわけです・・・さてこれをうまくまとめていくことはできるのでしょうか？ こんな事態にどのように備えておいたらよいのか・・・次で考えていきましょう。 【学習のヒント】 出題分野：相続 単元グループ：相続の基本的仕組み 単元：相続財産 出題分野：相続 単元グループ：相続の基本的仕組み 単元：みなし相続財産 出題分野：事業 単元グループ：事業承継 単元：同族会社と相続
- 事業承継って本当に大変ですね！ ひとつづつみていって見ましょう・・・まずは事業承継の前提となる自社株から考えましょう。 この会社には優れた後継者がいたおかげで・・・会社はどんどん成長していきました・・・そんなある日社長さんが亡くなりました・・・ 新社長の誕生です！ ところが・・・新社長・・・とても大変そうです・・・会社は大きくなったものの・・・相続税も大きくなってしまっていました！ そんなことになってしまうかもしれませんよね・・・そこで社長は一計を案じました・・・「そうだ自社株を生前贈与しておこう！」 自社株をいまのうちにどんどん後継者に贈与していきます・・・さてその続きはどうなったでしょう・・・ 《ポイント》 またまた兄妹が登場しました・・・姉の旦那さんは「自社株の生前贈与は特別受益というらいいよ！」・・・ 弟の嫁は・・・「特別受益は相続財産に金額を戻して分割を考えるんだって・・・」・・・どういうことでしょう！ しかも・・・調べてみると・・・「特別受益は何年まえでもさかのぼる」とあります・・・ また・・・相続財産に持ち戻すときは相続時の価格で計算するとあります・・・困りましたね！ 一方では・・・「相続税」が増大し・・・また一方では「特別受益と遺留分」という問題が起こることになります。 遺留分というのは、生前贈与や遺言による遺産分割があった場合に、最低限守られる相続人の取り分のことです。 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：遺留分に関する民法の特例 単元：遺留分の民法特例の必要性
- 今起こった問題をもう一度整理してみましょう！ 「生前贈与の何が問題なのか？」・・・まず自社株の生前贈与は・・・特別受益とみなされる！ 「特別受益」は相続財産へ持ち戻される・・・というのは家や土地、現金預金、賃貸建物といった財産の承継に「自社株」の金額を加えて考えるということです。 これが・・・「持ち戻し」ということです。 で、さらにこの株価が後継者の努力で・・・自社株の価値が増大すると・・・当然贈与税も増大することになります・・・ ここであらたに贈与税の問題もでてきました・・・ さらに・・・持ち戻した自社株の価格は・・・贈与時点では1千万円だったのですが・・・相続時は1億円 この1億円が持ち戻しの対象となる金額になってしまうのです！ こうなると・・・他の相続人は・・・「遺留分減殺請求」しますってことになってしまうかもしれませんね！ ちょっと大きなこまったが出てきました！ とうとう亡くなった先代社長まで現れてしまいました・・・「何か打つ手はなにのかね？」 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：遺留分に関する民法の特例 単元：遺留分の民法特例の必要性
- そこで作られた制度・・・それが経営承継円滑化法なんですね！ それではまず・・・「税金」の問題からみていきましょう。 業績が向上すると・・・株価が上昇し・・・結果として贈与を行うと・・・贈与税も増大します！ それでは贈与は行わないまま・・・相続が発生すると・・・今度は高額の「相続税」が発生することになります！ 《ポイント》 新社長も困ってしまいますよね・・・そこで登場するのがこの経営承継円滑化法なんです。 贈与税に関しては・・・「贈与税の納税猶予」が用意されました・・・さらに相続税に関しても・・・「相続税の納税猶予」が用意されたんです。 それでは「どれくらいの税金が猶予されるのか？」といいますと・・・贈与税は・・・「全額猶予」されます。 そして相続税は・・・こちらは「８０％が猶予」されるんです。 それぞれ、議決権のある発行済株式の3分の２までの株式にかかる税金についてですが・・・ 《ワンポイントアドバイス》 議決権のある発行済株式の3分の２を保有すれば・・・たいていの決議は可能ですよね！ さらに・・・この制度・・・贈与税の納税猶予を受けた後に・・・相続が発生したら・・・相続税の納税猶予を引き続き受けられるのです。 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：経営承継円滑化法 単元：納税猶予の適用 出題分野：事業 単元グループ：円滑化法による贈与税の納税猶予 単元：贈与税の納税猶予の活用と効果 出題分野：事業 単元グループ：円滑化法による相続税の納税猶予 単元：相続税の納税猶予の活用と効果
- それでは・・・そんな納税猶予がこれまであまり利用されてこなかった・・・のは何故か？・・・を考えて見ましょう。 たしかに・・・多くの経営者に話をうかがうと・・・納税猶予は条件が厳しいから・・・という声をききます。 たとえば・・・贈与税の場合だと・・・贈与する時には・・・『役員』を退かなければいけない・・・とか『お給料がもらえなくなる』・・・これは厳しいですね。 後継者の場合・・・信頼できる番頭さんに経営を譲ってこの制度を活用したくても・・・後継者は親族のみ・・・というわけです。 一方・・・相続税の方はどうでしょう・・・経営者に万一のことがあった場合・・・なんと・・・存命中にこの制度の活用が可能なことを『確認』しておかないとダメ・・・なんですね。 さらに・・・新社長にとっては・・・納税猶予が受けられたとしても・・・事業承継から5年の間は・・・相続が発生した時の従業員の人数に対して 毎年・・・8割を維持しなければならないんです・・・この条件ってかなり厳しいですよね。 さらに・・・贈与の場合とどうよう・・・この制度が適用できる後継者は・・・親族に限られるんですね。 《ポイント》 じつはそこで・・・今年・・・これらの条件に関して・・・大きな規制緩和が行われたんです！ まず・・・贈与では・・・役員を退任から・・・代表を降りることとなったんです・・・すなわち役員に残ることができる訳です。 さらに・・・「無給」でなければならなかったのが・・・なんと有給でもOKになったんです・・・これなら生前贈与も安心ですよね。 また後継者に関しては・・・これまで親族のみだったのが・・・「親族外」にも認められることとなったんです。 相続税の方は・・・といいますと・・・存命中の確認は・・・『廃止』になりました。 廃止は平成25年でしたので・・・すでのご存知の方もいるかも知れませんが・・・しらなかったとしたらそれだけ他の制限が厳しかったということですよね。 また・・・雇用の確保に関しては・・・これまでの毎年8割確保しないとならなかったのが・・・5年間の平均で80%確保というように緩和されました。 さらに・・・贈与の場合と同様・・・これまで親族のみだったのが・・・「親族外」にも認められることとなりました。 《ワンポイントアドバイス》 ただし・・・これまでの制約もそのまま継続されています・・・まず生前贈与は・・・一括で贈与しなければなりません。 また贈与を受ける後継者は・・・『ひとり』と定められており・・・『20歳以上』で・・・役員を3年以上務めていなければなりません。 そして・・・最後に中小企業なんでもかんでも適用になるのかといいますと・・・そうではありません。 医療法人はだめですし・・・土地の保有だったり、株を保有して運用するの目的の会社や・・・風俗関係の会社もこの制度は適用になりません。 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：経営承継円滑化法 単元：納税猶予の適用 出題分野：事業 単元グループ：経営承継円滑化法 単元：納税猶予の適用から免除まで 出題分野：事業 単元グループ：円滑化法による贈与税の納税猶予 単元：贈与税の納税猶予の適用と手続き 出題分野：事業 単元グループ：円滑化法による相続税の納税猶予 単元：相続税の納税猶予の適用と手続き
- もうひとつ・・・経営者の相続を考えるときにどうしても出てくるのが・・・特別受益と遺留分の問題です。 経営承継円滑化法の大きな役割のもう一つが・・・この生前贈与が特別受益となることで起こる問題を解決することなんです。 さきほで出てきた生前贈与を思い出してください・・・後継者が決まり自社株の生前贈与を行ったところ・・・ こんな問題が出てきましたね・・・自社株の生前贈与は特別受益というらしいよ・・・さらに・・・ 特別受益は相続財産に金額を戻して分割を考えるんだって・・・もっと詳しくみると・・・ 特別受益は過去、何年でもさかのぼり・・・しかも相続財産にもどすときの価格は相続時の価格で計算するんでしたね。 このことを・・・特別受益・・・そして贈与や遺言による相続があったときの・・・相続人最低保障される取り分が・・・遺留分でしたね。 《ポイント》 この特別利益になってしまう自社株が特別利益にならかったら？・・・それは助かりますよね・・・ そこで登場するのが・・・自社株を遺留分の算定財産から除外してしまう制度・・・言い換えると、持ち戻すときに自社株は戻さなくてもいいよ・・・という制度です。 《ワンポイントアドバイス》 このためには・・・後継者である相続人・・・この制度は相続人だけに適用される制度です・・・納税猶予は相続人以外も適用されましたが・・・これは相続人だけ！ なぜなら・・・遺留分があるのは相続人・・・それも兄妹を除く相続人ですよね！・・・ですので相続人といっても・・・兄妹が相続人の場合には適用されません。 もともと遺留分がないのですから・・・文句のいいようがないということです。 さて・・・話をもどしますが・・・自社株を遺留分の算定基礎から除外してもいいよ・・・という『合意』を相続人全員から取り付けなければならないのですから・・・ なにも見返りなし・・・という訳にはいかないかも知れませんよね・・・そこで、この制度を活用する場合には『合意』の際に・・・付帯事項として・・・ 例えば・・・「相続人Cは、」会社経営者を被保険者とする生命保険○○千万円の受取人とする・・・などとして合意を取り付けることになります。 《ワンポイントアドバイス》 この場合・・・合意を取り付けてしまえば・・・あとは後継者が一人で家庭裁判所に許可を申請することができます。 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：遺留分に関する民法特例 単元：遺留分に関する民法特例の効果 出題分野：事業 単元グループ：遺留分に関する民法特例 単元：遺留分に関する民法特例の適用
- そしてもう一つ・・・遺留分の算定から除外することには合意できない・・・という場合。 特別受益である自社株の価値を相続財産に持ち戻すことになりますね・・・ こんな状況でなにが起きるのか・・・思い出してみましょう。 財産の承継を行うときに・・・生前贈与を受けていた自社株の価値を持ち戻し・・・そして遺留分を計算することになります。 そこで・・・どうしたらこの問題を解決できるのか・・・考えて見ましょう。 しかし・・・贈与を受けた時点でもし・・・こんな取り決めできていたら・・・ようするに自社株を譲り受けたときの価値を保障してくれればいいよ・・・ と後継者以外の相続人が合意してくれたらどうでしょう・・・あとは新社長の努力次第ね！・・・というわけです。 《ポイント》 その後・・・後継者の努力によって・・・株価は10倍に・・・なったとしても・・・ 遺留分の算定は・・・合意したときの価格でいいということになります。 まとめますと・・・遺留分を計算する場合の自社株持戻し金額を・・・合意した時点の価額に据置く合意ができるということです。 【学習のヒント】 出題分野：事業 単元グループ：遺留分に関する民法特例 単元：遺留分に関する民法特例の効果 出題分野：事業 単元グループ：遺留分に関する民法特例 単元：遺留分に関する民法特例の適用