平成30年8月26日(日) 高尾山古墳から邪馬台国が見える 講師：中島郁夫　資料

18. 高尾山古墳から邪馬台国が見える
平成30年8月26日
はじめに
今回取扱う時代（年表参照）
・弥生時代後期（西暦50年ごろ）から古墳時代前期300年ごろ
。主に弥生時代末（180年ごろ）から古墳時代初頭(250年ごろ）
・当時の中国情勢（三国時代）と絡めて
1、静岡県の弥生時代後期（資料1，資料2）
西日本と東日本の堺は天竜川
･弥生時代には、地域ごとに地域色の強い土器が分布
･弥生時代後期では、天竜川を境にして西側には伊勢湾沿岸（関西系）の土器が分布、
東側には関東系の土器が分布。
･銅鐸祭祀は天竜川より以西の地域(近畿地方と同じ)｡天竜川以東の地域は銅鐸祭祀が無い。
2，初期古墳の発生（古墳時代の始まり資料3∼7）
（1）弥生時代の地域色消滅（土器の変化、銅鐸祭祀の消滅）
･伊勢湾沿岸部の土器に入れ替わる
・銅鐸祭祀の消滅
(2)初期古墳の出現と特色(資料3∼6i
・西国では前方後円形の墳墓の出現
･東国では前方後方形の墳墓出現
･静岡県内は東国と同じ変化
・鏡、剣、錐等の副葬品を持った墳墓の出現
・定説では上記のような墳墓を「墳丘墓」と呼ぶ
（3）初期古墳発生の年代（資料7）
・出土した中国製の鏡（浮彫式鏡など）の年代(200年前後ごろ）
・三角縁神獣鏡（魏鏡）は出土していない（初期古墳の発生年代は240年以前？）
3，初期古墳と邪馬台国（年表・史料）
魏志倭人伝（邪馬台国）と初期古墳
・108年移行後漢の衰退。倭国大乱。
・180年ごろ卑弥呼の共立（倭国大乱終結。邪馬台国連合の成立)。
・189年漢帝国滅亡。中国本土の混乱

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･204年公孫氏帯方郡を設置(倭､韓朝貢｡公孫氏から浮彫式鏡など入手？初期古墳発生？)。
･220年∼中国本土は本格的な魏・呉・蜀三国時代。
･234年五丈原の戦い（蜀諸葛孔明の死)。238年魏が公孫氏滅ぼし楽浪・帯方接収。
･239年卑弥呼、魏に朝貢。240年魏帯方郡を介して下賜（三角縁神獣鏡等入手）
･240年∼247年卑弥呼魏へ複数回の朝貢
．248年邪馬台国と狗奴国の戦争、卑弥呼死亡｡大きな塚を作る（箸墓古墳？三角繍
葬？→前期古墳)。男子王を立てるが国中従わず。宗女台与を擁立。国中治まる。
(箸墓古墳？三角縁神獣鏡副
4，纏向遺跡と邪馬台国（資料8）
邪馬台国とする根拠
・2世紀末∼4世紀に栄えた遺跡（初期古墳の発生と邪馬台国の誕生は時期が重なる）
･初期古墳の時期（初期遺跡）に東西約1km、南北約0.9km、
･前期古墳の時期（前期遺跡）に東西約2km、南北約1.5km・都市的な景観
･初期遺跡の周辺に初期古墳が分布し、前期遺跡の周辺に前期古墳が分布する。
･巨大な高床式建物19.2m×12.4m(宮殿？）が存在する
。集落跡、初期古墳等の様子はこの時期の他の遺跡では見られない
･縄向遺跡からは外来の土器が出土する。特に伊勢湾沿岸の土器が多い
･封泥または金印が出土すれば邪馬台国の可能性が高まる。
5，初期古墳から前期古墳へ（資料9）
古墳の定型化(前期古墳）
・大型化し､主体部に竪穴式石室を構築し鋤ｹ形木棺を埋納した古墳の出現
・定説では定型化した墳墓を「古墳」と呼び、古墳の出現をもって「古墳時代」と呼ぶ
・大型前方後円墳が畿内を中心に全国へ分布
・多量副葬品と共に三角縁神獣鏡を副葬する（前期古墳に伴う鏡）
･同萢の三角縁神獣鏡が畿内を中心に分布する（畿内から各地に配布）
･魏年号鏡【青龍3年（235年)、景初3年（239年)、景初4年（240年)、・親年号鏡【青龍3年（235年)、景初3年（239年)、景初4年（240年)、正始元年（240年)】
前期古墳の出現は235年又は239年以降？ （魏志倭人伝記載の鏡百面）
・卑弥呼の死後（248年）から前期古墳？
大型前方後円墳、竪穴式石室、割竹形木棺、魏年号を持つ三角縁神獣鏡を副葬する
最古の古墳は箸墓古墳か？→箸墓古墳は卑弥呼の墓か？
古事記､日本書紀では箸墓古墳の被葬者を｢倭迩迩日百襲姫(ヤマト トトヒモモソヒメ)」
･鏡伝世すれば前期古墳の出現年代は遅れる。箸墓古墳が台与の墓である可能性もある

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〃
6、静岡県内の三角繊神獣鏡（資料10）
分布と同萢鏡
・9面出土（遠江8面。西駿河1面。東駿河では未発見）
・7面が同萢鏡（畿内の古墳が中心。畿内政権から配布された鏡）
7、遠江・駿河・伊豆の前期古墳（資料11∼15）
・遠江に比べ数が少ない（資料14）
数では遠江→西駿河→東駿河・伊豆
・遠江に比べ規模が小さい
規模では遠江→西駿河→東駿河・伊豆
・駿河地域は三角縁神獣鏡等、舶載鏡が少ない
・県内で初期古墳発見は東駿河のみ（初期古墳から前期古墳へ連続する地域は少ない）
8，前期古墳と邪馬台国（年表・史料）
邪馬台国は大和政権
・265年晋建国、魏滅ぼす
・ 266年倭国晋に朝貢（台与が朝貢？）
（以降、中国の記録から倭国消える）
・280年晋呉滅ぼし中国統一【晋の年号鏡原康●年（291年∼299年）出土】
・316年晋滅亡
、
まとめ
（1） 邪馬台国誕生まで天竜川以西の地域は近畿地方と同じ銅鐸祭祀をしていた。
（2） 邪馬台国の初期、伊勢湾沿岸の土器群が関東地域に広まった
（3） 初期古墳の発生と邪馬台国の誕生には関係がある
（4） 初期古墳のうち、前方後方形の初期古墳が東海・関東地域に広まり、前方｛（4） 初期古墳のうち、前方後方形の初期古墳が東海・関東地域に広まり、前方後円形の初期
古墳が近畿から瀬戸内地域に広まった。
（5） 初期古墳から出土する中国製の鏡は、遼東半島の公孫氏から下賜された可能性がある
（6） 前方後方形の初期古墳も前方後円形の初期古墳も関係が深い
（7） 纏向遺跡からは外来の土器が出土する。特に伊勢湾沿岸の土器が多い
（8） 邪馬台国と東海・関東地域は関係が深い（敵対関係ではない）
（9） 東海、関東地域（前方後円形の初期古墳分布地域）は「狗奴国」ではない
（白石太一郎氏、赤塚次郎氏は伊勢湾沿岸以東を狗奴国と考えている）
(10)伊勢湾沿岸地域は東海、関東地域へ向けた邪馬台国文物の発信地
(11）伊勢湾沿岸の何処かに邪馬台国の出先機関がある（東の「一大率｣）
中国の制度に倣う （帯方郡、楽浪郡の設圃○東夷の国々の窓口）