SlideShare a Scribd company logo
1 of 23
Download to read offline
チームNo.113「あいであまん」


「男性にこそ知ってほしい乳がん
 ピンクリボンキャンペーン」
 小泉拓、三瓶美寿穂、高嶋允瑛
要約

私達はプロモーションの対象として、日本のピンクリボン運動を選びまし
た。ピンクリボン運動の抱える課題は、「ピンクリボン運動の認知度の高さ
が、乳がん検診受診率の向上にあまりつながっていないこと」ということで
す。
その課題の解決策として「男性が乳がんの正しい知識を持ち、検診の受診を
女性に勧めること」を提示いたします。それは、自分の為にはなかなか病院
へ行かないような人も、大切な人の為になら病院へ足を運ぶだろうと考えた
からです。
具体的なプロモーションとしては、片方の乳房が乳がんである女性のおっぱ
い模型を街頭に設置し、実際に模型に触れるというリアルな体験や、スマー
トフォンを利用したAR技術を用いて、感覚的・視覚的に、乳がんという病
気の恐ろしさと早期発見の大切さについて男性に訴えかけます。
ピンクリボン運動の目的

ピンクリボン運動とは、乳がんの正しい知識を広め、乳がんの早期発見・早
期受診・早期治療の大切さを伝えること等を目的として行われる世界規模の
啓発キャンペーンです。
現在、日本国内においても様々な団体(NPO法人や自治体、企業、任意団
体等)が、乳がん撲滅のためにピンクリボン運動を展開しています。
乳がんの深刻さ

乳がんとは、乳房組織に発生する悪性腫瘍であり、生涯に乳がんを患う日本
人女性は、16人に1人と言われています。
しかし、早期乳がんの症状は基本的に無症状なので乳がんの発見が遅れるこ
とが多くあり、通院や手術、乳房再建、放射線や薬物療法に多くの時間と費
用がかかります。
また、乳がんによる死亡者数は12837名にものぼり、同じ年に交通事故で
の死亡者数である6644名の約二倍となっています。
乳がんの検診による早期発見の重要性

乳がんが末期に進行するまで発見できずに治療が遅れた場合、その生存率は
約30%です。一方で、乳がんを早期発見することができ、早期治療を行え
た場合、その生存率は約90%以上です。
こうしたことから、乳がんによる深刻な状況を回避または軽減するには、な
によりも検診による早期発見が重要であることがわかります。
乳がん罹患者が顕著に多いのは30・40代の女性で、乳がんの早期発見のた
めには20代から検診を受けることが推奨されています。
ピンクリボン運動の具体的な活動例

日本国内ではピンクリボン運動の一環として、東京タワーやスカイツリーを
ピンク色にライトアップをしたり、日本を代表するポータルサイト等で大々
的特集が組まれたりと様々なキャンペーンが展開されています。
また、検診のきっかけを提供することや、経済的ハードルを下げることを目
的に、無料で乳がん検診を受診できるクーポンの配布を行っている地方自治
体なども増えています。
伸び悩む検診受診率

こうした活動により、女性のピンクリボン運動への認知度は2011年6月の
調査で約85%に達しています。
しかし、乳がん検診の2010年度の受診率は24.3%に留まるなど、ピンク
リボン運動の認知度と検診受診率の間にはギャップが存在します。
ピンクリボン運動の抱える課題

ピンクリボン運動の解決すべき課題は
「ピンクリボン運動の認知度の高さが、乳がん検診受診率の向上にあまりつ
ながっていないこと」
だと考えられます。
ピンクリボン運動の課題が生まれた原因

なぜ、女性はピンクリボン運動について知っているにも関わらず、乳がん検
診を受診しないのか?
その理由は、
「多くの女性が乳がんを全くの他人事だと考えている、または乳がん検診に
行くこと自体を面倒に思っているから」だと考えられます。
課題の解決策

ピンクリボン運動の認知度の高さが、乳がん検診受診率の向上にあまりつな
がっていないことの解決策を
「男性が、乳がんの正しい知識やその恐ろしさを理解して、身近な女性へ乳
がん検診の受診を促すような環境をつくりあげること」
だと、私たちは考えました。
なぜ男性なのか①

男性が女性に検診の受診を促すようなプロモーションを考えた理由は、自分
の為にはなかなか病院へ行かない人も、大切な人の為になら病院へ行くだろ
うと考えたからです。
例えば風邪を引いたとき、市販薬で済ませようとして病院に行かないことが
あります。
しかし、大切な人に「心配だから病院に行ってほしい」と言われたら、その
気持ちに応えたいと思い、病院に行きます。


このような「大切な人からの思いやりに応えたい」という人間が本来持って
いるであろう感情に訴えかけることが効果的だと考え、男性に焦点をあてる
ことにしました。
なぜ男性なのか②

乳がんを全く他人事だと考えている、または乳がん検診に行くこと自体を面
倒だと思っている女性に、「検診に行こう」と思わせる為にはどうしたら良
いのか。


風邪の例を挙げたように、男性が女性の健康を気遣った上で乳がん検診を受
けに行くことを促し、女性が身近な男性から自分が大切に思われているとい
うことを自覚することが必要です。
どうしたら男性が女性に検診を勧めるか

男性が身近な女性に乳がんの検診を勧める状況をつくりだすには、まず男性
に乳がんの恐ろしさ、乳がんは早期の検診によって深刻な状況を回避または
軽減することができるという事実を知らせなければなりません。


それを知った男性は、純粋にその女性を大切に思う気持ちや、乳がんにより
その女性を失うことへの恐怖が身近な女性へ乳がんの検診を勧める動機とな
るはずです。
プロモーションの概要①

シリコンを加工し女性の胸を模した「おっぱい模型」を都市部の駅コンコー
スや大型のショッピングセンター(例、銀座駅コンコース、東京ミッドタウ
ンなど)の壁面に10体と、「男性にこそ知ってほしい乳がん ピンクリボン
キャンペーン」といったような旨の掲示物を設置します。
模型には「どちらかの乳房が乳がんです。どちらが乳がんかわかります
か?」という問いを付します。
道行く男性に実際におっぱい模型を触ってもらい、どちらの胸が乳がんであ
るかを、その肌の引きつりやしこりから判別してもらいます。
参考図①
参考図②
プロモーションの概要②

おっぱい模型の傍にスマートフォンを設置します。ユーザーがスマートフォ
ンのカメラを通しておっぱい模型を見ると、AR技術によりレントゲンが模
型に重なるように表示され、どちらの胸のどこに腫瘍があるのかを知ること
ができます。その後、乳がんのがん細胞が他の部位にも転移していき段階を
たどって末期まで進行する様子が表示されます。(参考図③)
ブースに並ぶ10体分の模型をスマートフォンの画面上に表示し、そのうち
の3体が実際に死に至るということを表現します。(参考図④)
プロモーションの最後として、「乳がんは早期の検診によって深刻な状況を
回避、または軽減することができます。あなたの大切な人は検診を受けてい
ますか?」というメッセージをユーザーに投げかけます。
参考図③
参考図④
プロモーションに参加するハードルを下げるには

人前で女性の胸を模したおっぱい模型を揉むことに対し、羞恥心を感じて抵
抗をおぼえる人がいるかも知れません。
そういった人がなるべく抵抗を感じなくて済むように、このプロモーション
がピンクリボン運動であることを周囲の人が一目見て分かるようなボードや
装飾を施し、男性が人前でおっぱい模型に触れることのハードルを下げま
す。
またブースも、銀座駅のコンコースや、六本木ミットタウンなど、利用者の
世代・属性的に乳がんなどに関心の高い人が集まっているだろうと考えられ
る場所に設置することを想定しています。
「デジタル」×「リアルな体験」

このプロモーションにおいて、ユーザーはおっぱい模型を触った後、模型の
胸部のどこに乳がんの腫瘍が施されているかをAR技術で把握し、改めて模
型を触って腫瘍を確認します。リアルな体験とデジタルの世界を行き来させ
ることで、ユーザーに通常のCMや掲示物などを見た場合に比べ、はるかに
強烈な印象を与えることが出来ます。
これこそが、私達が「デジタル」 「リアルな体験」に注目し、このプロ
モーションを立案した最大の理由です。
論理展開

        乳がんの治療には早期発見が重要である
                  ↓
ピンクリボン運動の認知度の高さが、乳がん検診受診率の向上にあまりつな
             がっていない(課題)
                  ↓
         自分の為にはなかなか検診に行かない
                  ↓
           大事な人の為になら検診に行く
                  ↓
   男性が女性に乳がんの検診を勧めればよい(ソリューション)
                  ↓
       男性が女性の乳がんの現実について知ればよい
                  ↓
街頭で乳がんの恐ろしさをリアルな体験やスマートフォンを利用したキャン
         ペーンを展開する(プロモーション)
                  ↓
 話題になる可能性も高く、ピンクリボン運動の告知としても有益である
参考文献
厚生労働省
 人口動態統計月報年計(概数)の概況
 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai11/toukei06.html
 平成22年人口動態統計確定数
 http://www.mmjp.or.jp/kawakami-clinic/data/h22suii-new.htm
 性・年齢階級別がん検診受診率の推移
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001igt0-att/2r9852000001iguh.pdf

KOMIKA MINOLTA 乳がんの早期発見・早期検診「ピンクリボン運動」
http://www.konicaminolta.jp/pinkribbon/index.html

公益財団法人 がん研究会
http://www.jfcr.or.jp/cancer/type/breast.html

公益財団法人 日本対がん協会
http://www.jcancer.jp/about_cancer/handbook/2nyugan/2igi.html

NPO法人 J.POSH日本乳がんピンクリボン運動ホームページ
http://www.j-posh.com

認定NPO法人 乳房健康研究会
http://www.breastcare.jp/breast.html

G-Search side B -乳がん検診に行かない理由
http://db.g-search.or.jp/sideb/column/20090226.html

マイライフ@手帳ニュース
http://www.mylifenote.net/014/11092850.html

More Related Content

Similar to 【N0.113】あいであまん

CNJ Speakers 季刊誌 2014年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2014年SummerCNJ Speakers 季刊誌 2014年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2014年Summercancerchannel
 
CNJ Speakers 季刊誌 2014年Autumn
CNJ Speakers 季刊誌 2014年AutumnCNJ Speakers 季刊誌 2014年Autumn
CNJ Speakers 季刊誌 2014年Autumncancerchannel
 
もっと知ってほしい大切な人ががんになったとき
もっと知ってほしい大切な人ががんになったときもっと知ってほしい大切な人ががんになったとき
もっと知ってほしい大切な人ががんになったときcancerchannel
 
オンコロ冊子Vol.6
オンコロ冊子Vol.6オンコロ冊子Vol.6
オンコロ冊子Vol.6oncolo
 
11 Cannet 分科会C
11 Cannet 分科会C11 Cannet 分科会C
11 Cannet 分科会Ccrfactory
 
CNJ Speakers 季刊誌 2018年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2018年SummerCNJ Speakers 季刊誌 2018年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2018年Summercancerchannel
 
W caregiver w1906secom
W caregiver w1906secomW caregiver w1906secom
W caregiver w1906secomcancerchannel
 
チームガイアステーション
チームガイアステーションチームガイアステーション
チームガイアステーションmedizine
 

Similar to 【N0.113】あいであまん (9)

CNJ Speakers 季刊誌 2014年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2014年SummerCNJ Speakers 季刊誌 2014年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2014年Summer
 
CNJ Speakers 季刊誌 2014年Autumn
CNJ Speakers 季刊誌 2014年AutumnCNJ Speakers 季刊誌 2014年Autumn
CNJ Speakers 季刊誌 2014年Autumn
 
もっと知ってほしい大切な人ががんになったとき
もっと知ってほしい大切な人ががんになったときもっと知ってほしい大切な人ががんになったとき
もっと知ってほしい大切な人ががんになったとき
 
オンコロ冊子Vol.6
オンコロ冊子Vol.6オンコロ冊子Vol.6
オンコロ冊子Vol.6
 
11 Cannet 分科会C
11 Cannet 分科会C11 Cannet 分科会C
11 Cannet 分科会C
 
CNJ Speakers 季刊誌 2018年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2018年SummerCNJ Speakers 季刊誌 2018年Summer
CNJ Speakers 季刊誌 2018年Summer
 
W caregiver w1906secom
W caregiver w1906secomW caregiver w1906secom
W caregiver w1906secom
 
W caregiver w_nol
W caregiver w_nolW caregiver w_nol
W caregiver w_nol
 
チームガイアステーション
チームガイアステーションチームガイアステーション
チームガイアステーション
 

【N0.113】あいであまん