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バスプローブデータの可視化と除雪作業が交通に与える影響の解析	
 
Visualization and Analysis of Probe Car Data for Effectiveness Measurement of Snow Removal

遠藤隆浩 1 ,猪村元 2 ,田中譲
1

3

2

Takahiro Endo , Hajime Imura , Yuzuru Tanaka
1,2,3
1,2,3	
 

3

	
  北海道大学	
  知識メディア・ラボラトリー	
 

Meme	
 Media	
 Laboratory,	
 Hokkaido	
 University	
 

	
 

1.はじめに	
 

2.2	
 除雪車両の位置情報システム

	
  本研究ではスマートフォンを用いて車両の位置情報をリアル

	
  除雪車両の位置情報システムに関しては,道内では寒地

タイムで収集,
蓄積するシステムを構築し,
冬期間に除雪車両と路

土木研究所において研究され,北海道開発局が運用してい

線バスのプローブデータを収集する実験を行った。
本論文では,
収

るシステムがある 8)。また北見市や岩見沢市などの自治体では

集したプローブデータを3次元可視化することで渋滞状況の把握

市民向けに除雪作業情報がインターネットで提供されている。
本州

を容易にする手法を提案する。
また拡幅除雪作業が路線バスの運行

では青森市や上越市などで同様のシステムがあり,
アメリカではシ

に与えた影響について解析を行った結果を報告する。	
 

カゴやニューヨークといった大都市で情報が提供されている。
これ

	
 

らのシステムは市民向けの情報提供というだけでなく,
除雪車両の

2.	
 関連研究	
 

適正配置や作業の効率化など道路管理者が利用することを目的と

2.1	
 プローブデータの活用	
 

して運用されている 9)。	
 

	
  通信機能を持つカーナビゲーション・システムでは個々

の車両の走行データをセンターに集約して一元的に管理し,

2.3	
 プローブデータの可視化	
 

渋滞状況を把握することで経路選択に利用する機能が一般

	
  地理的データは地図上に表現する事で人間が状況を把握

化している。
一台一台の車両をセンサーとして利用する事でVICS

し易くなる。このような情報の可視化には地理空間情報シ

が収集するデータよりも広範なエリアで情報を得る事が可能にな

ステム(GIS	
 :	
 Geographic	
 Information	
 System)が一般に用

る。
本田技研工業株式会社はそのような走行車両の情報を様々に活

いられる 10)	
 。GIS では静的な情報を地図として表現することが主

用しており,東日本大震災の際には自動車通行実績情報マップ 1)が

であり,
動的に変化する情報を表現するには不向きである。
動的に

作成され被災地での活動に役立てた。
さらに急ブレーキの多発地点

変化する,例えばGPS 測位などで収集した位置情報の時間変

2)

を集約して作成されたSafety	
 Map を提供しており道路の改修に役

化(移動軌跡)などを表示するソフトウェアにはカシミー

立てている。	
 

ル 3D や Google	
 Earth などがあり,ユーザーが表示内容を

また乗用車などのデータを利用するだけでなく,タク

インタラクティブに操作する事が出来る。また地理情報は2

シーあるいは路線バスなど商用車のプローブデータを活用

次元平面上に色分けなどで表現されることが主であるが,
3次元表

	
 

する事で交通状況を把握する研究も行われている

3)	
 4)	
 5)

。さ

らに位置情報以外にも加速度センサーのデータを活用して

現により高さ方向に速度などの情報を持たせる事で複雑なデータ
を把握し易くする手法が提案されている 11)	
 	
 

路面のすべり抵抗を計測したり 6),橋梁のたわみを計測,
蓄積したりして劣化診断にも利用されている 7)。	
 

3.	
 システム構成

プローブデータに代表される各種のセンサーデータを大

	
  実験のシステム構成を図1に示す。実験では GPS 機能を

量に収集し分析,利活用する事で,交通状況の把握や道路

持つスマートフォンを除雪車両に10 台,
路線バスに20 台それぞれ

管理などにおいて質的に向上した情報を得て,
フィードバックす

搭載した。スマートフォン上では新たに開発した Android	
 OS で動

る事が可能になる。	
 

作するアプリケーションによりGPSで測位したデータやセンサーの

	
 

データをサーバーに送信し,データベース内に蓄積する。	
 

	
 

遠藤隆浩(北海道大学 知識メディア・ラボラトリー)
〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目	
  phone: 011-706-7250	
  e-mail: endo@meme.hokudai.ac.jp
収集したデータは時刻,緯度,経度,測位誤差円,速度,方位,

	
  この簡易バス・ロケーション・システムはJavaScript とGoogle	
 

測位衛星数,加速度である。サンプリングは除雪車両では5秒毎,

Maps	
  を用いて構築した。
API
このシステムでは停留所の座標データ

路線バスは1秒毎に行い,1分毎にまとめてサーバーに送信する。

とバスの現在位置を比較し,
停留所を通過した時刻を計算する機能

実験エリアは比較的高い建物が少ない住宅街のため測位精度は概

も有しており,
通過時刻と運行予定時刻の差を計算して各バスの遅

ね良好であった。
なお今回の実験は準備の都合により,
除雪車両は

延時間を割り出し,
遅れの大きいバスに対してアラートを表示する

2月〜3月,
路線バスは3月〜4月の期間にプローブデータ収集を

事が出来る。	
 

行った。	
 
	
  また,データベースに格納されている位置情報データは

4.2	
 移動軌跡のアニメーション表示	
 

HTTP を用いてWeb サーバー経由でJSON あるいはKML といっ

	
  位置情報をリアルタイムで表示するだけでなく,
データベースに

たデータ形式で取り出すことが出来る。	
 

蓄積されたデータを様々な条件で比較するためのシステムも構築
した。	
 

スマートフォン

	
  地理空間情報を XML 形式で表現する KML には時間を指定

Android OS

する方法がいくつかある。その一つに<Track>要素があり,

JSON

その子要素として<when>要素と<coord>要素を対応付けて

Web サーバー
HTTP

並べる事によりGoogle	
  arthにおいて時間軸に沿ったアニ
E

データベース
Mongo DB

JSON

メーション表示が可能となる。そこでデータベースに格納
されている位置情報を CGI で KML に変換し出力する事によ
りGoogle	
  arth上で移動軌跡のアニメーション表示を可能
E

KML

Web ブラウザ

にした。	
 
	
  時間情報を含む KML を読み込んだ時 Google	
  arth には時
E

Google Earth

Google Maps API

間を操作するスライダーが表示されるので,任意の時間を
指定して表示させたり,アニメーション表示させたりする

	
 

図	
 1.実験システム構成	
 

ことが出来る。図 3 は除雪車両の移動軌跡を表示させたも
ので車両毎に軌跡の色分けをしたものである。これにより

4.	
 プローブデータの可視化

どの車両が何時にどこで作業を行ったか,どのような経路

4.1	
 ロケーション・システム	
 

で移動したかを画面上で確認できる。	
 

	
  除雪車両や路線バスで収集されるデータを随時確認する
ためロケーション・システムを構築した。スマートフォン
からはほぼリアルタイムでデータがサーバーに送信される。
データベースに格納された最新の位置情報を用いて各車両
の位置は図 2 のように Web ブラウザ上で確認する事が出来る。	
 
	
 

	
 
図	
 3.除雪車両の移動軌跡	
 
	
  また,Google	
  arth は複数の KML データを重ねて表示す
E
る事ができ,図 4 は同一発車時刻のバスの移動軌跡を異な
る日付で重ねて比較表示させたものである。それぞれの日

	
 
図	
 2.簡易バス・ロケーション・システム	
 

は降雪の有無など天候条件が異なっており,同じ便であっ
ても道路状況によって運行に差が出ている事が読み取れる。
あるいはそれ以外の道路上で停止したのかどうか,どの程
度の時間停止していたかが視覚的に把握出来る。
	
  図 6 では日毎に異なる色で軌跡を表示している。日に
よって交差点での信号停止の有無,停留所での停止または
通過,といった違いが表現されている。
	
  また円の特徴から走行パターンを推測することも出来る。
例えば,一つの大きな円がある地点は信号待ちの停止時間
が長くなりやすい交差点などであり,小さな円が複数個隣
接して並んでいる地点は渋滞により停止と発進を繰り返し
ている地点と考えられる。

	
 
図	
 4.異なる日での同一便の運行比較	
 
4.3	
 移動軌跡の3次元表示	
 
	
  プローブデータに含まれる速度情報の可視化方法として
は,移動軌跡の線を速度毎に色分けして表現する方法がま

図	
 6.交差点や停留所での停止状況	
 

ず考えられる。しかし色分けする方法では比較のために複
数の軌跡を重ねて表現することは難しい。そこで速度を標

	
  図 7 は図 4 と同様に,同一便のバスの軌跡を異なる日付

高値として表現する事により3次元で軌跡を表示した。こ

の同一時刻で比較表示させたものである。図の右上は到着

の表示例を図 5 に示す。軌跡の色はバスの便毎に異なる色

地点の札幌駅である。
赤い軌跡の日は特に停止円が大きく,

を割り当てている。この表示方法ではどの車両の速度が遅

さらに円の数も多く渋滞が発生していることが推察される。

くなっているか,どの道路区間で渋滞が起きていたか,な

また図の左下,北34条の札幌新道との交差点の手前には

どが把握しやすくなる。また同一の便で異なる日時の軌跡

停止円が多く,渋滞しやすくなっていたことが示されてい

を重ねて表示する事で,走行速度の速い日と遅い日を比較

る。	
 

する事が出来る。	
 

図	
 5.移動軌跡の3次元表示	
 
	
  さらに,この速度を標高に置き換えた表現に加えて,速
	
 

度がゼロの地点に円を表示した。円の半径は停止している
時間を表している。この表示手法により,交差点や停留所

図	
 7.異なる日での同一時刻での位置比較
5.プローブデータの解析	
 

	
  しかしながら,3 月 8 日夜から翌 9 日にかけてそれぞれ

5.1	
 バス運行状況	
 

10cm,15cm の降雪があるものの,9 日と 10 日のバスの遅延

	
  路線バスは運行ダイヤに基づいて定時に,かつ主に幹線

時間は小さい。
また 20 日と 21 日には 13cm,
10cm の降雪が

道路を含む特定の経路を移動している。逆に一般車両やタ

あったが,遅延は特に増加していない。これは曜日が土日

クシーは走行する日時や経路は不特定で,渋滞時には裏道

曜日で交通量が少なくなっているなどの天候以外の要因が

などの代替経路に回避してしまうため幹線道路のデータ収

影響していると考えられる。	
 

集には問題も多い。そのため,バスのプローブデータを蓄

	
 

積してその速度や予定時刻に対する遅延を解析することは,

5.2 除雪作業の影響

幹線道路の交通状況の把握や毎日の変動の比較に適してい

	
  図 8 を見ると分かるように 13 日前後は 3 月中で最も大き

ると言える。	
 

な遅延が発生していた期間となっている。このときの気象

	
  そこで実験で得られたプローブデータから積雪期の交通

データは表1のようになっており,13 日は 18 時〜22 時に

状況の解析を行った。解析対象としたのは期間が 3 月 6 日

5cm の降雪があり,また 14 日には降雪は無いが真冬日と

〜3 月 31 日の午前中に屯田から麻生を経由して札幌駅へ向

なっていた。	
 

かう路線とした。	
 

表	
 1.	
 札幌の気象データ	
 
日付	
 

	
  図 8 は毎日のバスの便毎に遅延時間をグラフにしたもの
である。背景がピンク色に塗られた部分は休祝日である。

積雪量
[cm]	
 

最高気温
[℃]	
 

6	
 
--	
 
5	
 
--	
 
--	
 

131	
 
125	
 
117	
 
114	
 
110	
 

0.0	
 
6.5	
 
6.0	
 
-1.2	
 
5.7	
 

3/11(月)
	
 
3/12(火)
	
 
3/13(水)
	
 
3/14(木)
	
 
3/15(金)
	
 

また図 9 は3月の札幌の降雪量(青)と積雪量(赤)であ
る。比較的遅延時間が多くなっているのは 3 月 6 日および
11〜13 日など,
降雪と積雪が多い 3 月の前半に集中してい
ることが読み取れる。	
 

降雪量
[cm]	
 

	
 
	
  除雪車両のプローブデータからは 3 月 13 日夜と 14 日夜
に西5丁目樽川通り周辺で拡幅除雪作業が行われているこ
とが確認できた。そこで前述のバス運行状況に対して除雪
作業がどの程度の影響を及ぼしたかを明らかにするため,
除雪作業前の 3 月 13 日から作業後の 3 月 15 日までのデー
タの解析を行った。	
 
	
  図10はバスの出発時刻毎に目的地到着時点での3日間の
遅延時間を比較したものである。 日の遅延が最も小さく
15
なっており,13 日夜と 14 日夜の拡幅除雪により,交通渋
滞が改善されたものと考えられる。	
 

図	
 8.便毎の遅延時間	
 

図	
 10.	
 除雪前後の遅延時間変化	
 

図	
 9.札幌の降雪と積雪量(3月)
7. まとめと今後の予定

6)	
 Taisto	
 Haavasoja	
 and	
 Yrjö	
 Pilli-Sihvola:	
 Friction	
 as	
 a	
 

	
  本実験は5ヶ年計画のプロジェクトの初年度に実施され

Measure	
 of	
 Slippery	
 Road	
 Surfaces,	
 Proceedings	
 of	
 15th	
 SIRWEC	
 

たもので,当初の目標はシステムの構築と不具合の洗い出

Conference,	
 2010	
 

しなどであった。
スマートフォンの GPS による測位は機種

http://www.sirwec.org/Papers/quebec/11.pdf	
 

の違いにより速度の値などに精度の差があったが計算処理

7)株式会社構造計画研究所:路線バスを利用した中小橋梁

の工夫で吸収出来る程度のものであった。
また GPS を常に

の簡易健康診断,	
 

利用しているとバッテリー消費が大きくなるため外部バッ

http://www.value-press.com/pressrelease/94686	
 	
 

テリーを使う必要があり,
運用の手間が増える点があった。

8)小宮山一重 除雪機械マネジメントシステム活用事例の紹介,
:
北

現在アプリケーションの使い勝手等を含めて改善を行って

海道開発局	
  平成23 年度機械技術検討会,2011	
 

いる。

9)牧野正敏,	
  宮山一重:除雪機械の位置情報を用いた除雪作業運
小

	
  今回の実験で蓄積したデータは全てのバス運行データを

用支援技術の開発と活用,第29 回日本道路会議,2011	
 

収集したものではなく,量が少なく欠損している部分もあ

10)橋本雄一,
加賀屋誠一,
萩原亨 GlS を援用した凍結防止剤散布
:

る。それぞれの収集期間にずれもあったため除雪作業とバ

後の路面管理と運転行動に関する統合データベース構築,
北海道地

スの運行状況との相関を解析するには十分とは言えない。

理学会	
 地理学論集	
 No.83,	
 2008	
 

2年目となる今冬はスマートフォンの台数を追加し,より

11) 深田 秀実,奥野 祐介,大津 晶,橋本 雄一:観光歩行データ
に対するGIS を用いた3次元可視化手法の提案,観光情報学会誌
「観光と情報」,Vol.8,No.1,2012
	
 

長い期間のデータを収集して更にプローブデータを蓄積す
る予定である。
	
  収集したプローブデータに関しては第1段階としてまず
可視化による状況把握を重点的に行った。データの処理や
可視化については一定の手順を確立できたため,処理を自
動化しインタラクティブに操作するビジネス・インテリ
ジェンス・ツールのような意思決定支援ツールを構築し,
道路管理や運行管理に利用することが考えられる。
	
  第2段階ではプローブデータの統計的な解析を行い,実
験エリアにおける道路リンク毎に速度の分散値,平均値お
よび交差点ノードの通過時間などを計算し,交通障害の原
因となる地点を出来るだけ局所的に,数値的に求めること
を考えている。
	
  その他にも実際の道路状態の情報を収集するため,レー
ザーレンジスキャナーによる道路脇の堆雪に対する有効幅
員の測定や路面凹凸の計測,放射温度計による路面温度の
計測などのシステムの実験を計画している。
	
 
	
 
参考文献	
 
1)東日本大震災	
  自動車通行実績情報マップ,	
 
http://www.google.com/intl/ja/crisisresponse/japanqu
ake2011_traffic.html	
 
2)みんなでつくる安全マップ,	
 http://safetymap.jp	
 
3)宗広一徳 冬期道路交通評価へのタクシープローブデータの活用	
 
:
~札幌市における事例~,北海道土木研究所月報,No.632,	
 2006	
 
4)白石哲也,
中辻隆 プローブカーデータを用いた冬期道路ネット
:
ワークのサービスレベル評価,土木学会	
 土木計画学研究講演
集,Vol.46,	
 2012	
 
5)高橋尚人,
徳永ロベルト,
宗広一徳,
竹澤謙一:札幌都市圏にお
ける冬期道路プローブの活用について,	
 土木計画学研究・講演集,
Vol.39,	
 2009	
 

	
  本研究は文部科学省の平成 24 年度国家課題対応型研究
開発推進事業,
次世代 IT 基盤構築のための研究開発
「社会
システム サービスの最適化のための IT 統合システムの構
・
築」プロジェクトの一環として実施された。北海道大学で
は「札幌市における除排雪の最適化への適用」をテーマと
して研究を進めている。

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第29回寒地技術シンポジウム

  • 1. バスプローブデータの可視化と除雪作業が交通に与える影響の解析 Visualization and Analysis of Probe Car Data for Effectiveness Measurement of Snow Removal 遠藤隆浩 1 ,猪村元 2 ,田中譲 1 3 2 Takahiro Endo , Hajime Imura , Yuzuru Tanaka 1,2,3 1,2,3 3 北海道大学 知識メディア・ラボラトリー Meme Media Laboratory, Hokkaido University 1.はじめに 2.2 除雪車両の位置情報システム 本研究ではスマートフォンを用いて車両の位置情報をリアル 除雪車両の位置情報システムに関しては,道内では寒地 タイムで収集, 蓄積するシステムを構築し, 冬期間に除雪車両と路 土木研究所において研究され,北海道開発局が運用してい 線バスのプローブデータを収集する実験を行った。 本論文では, 収 るシステムがある 8)。また北見市や岩見沢市などの自治体では 集したプローブデータを3次元可視化することで渋滞状況の把握 市民向けに除雪作業情報がインターネットで提供されている。 本州 を容易にする手法を提案する。 また拡幅除雪作業が路線バスの運行 では青森市や上越市などで同様のシステムがあり, アメリカではシ に与えた影響について解析を行った結果を報告する。 カゴやニューヨークといった大都市で情報が提供されている。 これ らのシステムは市民向けの情報提供というだけでなく, 除雪車両の 2. 関連研究 適正配置や作業の効率化など道路管理者が利用することを目的と 2.1 プローブデータの活用 して運用されている 9)。 通信機能を持つカーナビゲーション・システムでは個々 の車両の走行データをセンターに集約して一元的に管理し, 2.3 プローブデータの可視化 渋滞状況を把握することで経路選択に利用する機能が一般 地理的データは地図上に表現する事で人間が状況を把握 化している。 一台一台の車両をセンサーとして利用する事でVICS し易くなる。このような情報の可視化には地理空間情報シ が収集するデータよりも広範なエリアで情報を得る事が可能にな ステム(GIS : Geographic Information System)が一般に用 る。 本田技研工業株式会社はそのような走行車両の情報を様々に活 いられる 10) 。GIS では静的な情報を地図として表現することが主 用しており,東日本大震災の際には自動車通行実績情報マップ 1)が であり, 動的に変化する情報を表現するには不向きである。 動的に 作成され被災地での活動に役立てた。 さらに急ブレーキの多発地点 変化する,例えばGPS 測位などで収集した位置情報の時間変 2) を集約して作成されたSafety Map を提供しており道路の改修に役 化(移動軌跡)などを表示するソフトウェアにはカシミー 立てている。 ル 3D や Google Earth などがあり,ユーザーが表示内容を また乗用車などのデータを利用するだけでなく,タク インタラクティブに操作する事が出来る。また地理情報は2 シーあるいは路線バスなど商用車のプローブデータを活用 次元平面上に色分けなどで表現されることが主であるが, 3次元表 する事で交通状況を把握する研究も行われている 3) 4) 5) 。さ らに位置情報以外にも加速度センサーのデータを活用して 現により高さ方向に速度などの情報を持たせる事で複雑なデータ を把握し易くする手法が提案されている 11) 路面のすべり抵抗を計測したり 6),橋梁のたわみを計測, 蓄積したりして劣化診断にも利用されている 7)。 3. システム構成 プローブデータに代表される各種のセンサーデータを大 実験のシステム構成を図1に示す。実験では GPS 機能を 量に収集し分析,利活用する事で,交通状況の把握や道路 持つスマートフォンを除雪車両に10 台, 路線バスに20 台それぞれ 管理などにおいて質的に向上した情報を得て, フィードバックす 搭載した。スマートフォン上では新たに開発した Android OS で動 る事が可能になる。 作するアプリケーションによりGPSで測位したデータやセンサーの データをサーバーに送信し,データベース内に蓄積する。 遠藤隆浩(北海道大学 知識メディア・ラボラトリー) 〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目 phone: 011-706-7250 e-mail: endo@meme.hokudai.ac.jp
  • 2. 収集したデータは時刻,緯度,経度,測位誤差円,速度,方位, この簡易バス・ロケーション・システムはJavaScript とGoogle 測位衛星数,加速度である。サンプリングは除雪車両では5秒毎, Maps を用いて構築した。 API このシステムでは停留所の座標データ 路線バスは1秒毎に行い,1分毎にまとめてサーバーに送信する。 とバスの現在位置を比較し, 停留所を通過した時刻を計算する機能 実験エリアは比較的高い建物が少ない住宅街のため測位精度は概 も有しており, 通過時刻と運行予定時刻の差を計算して各バスの遅 ね良好であった。 なお今回の実験は準備の都合により, 除雪車両は 延時間を割り出し, 遅れの大きいバスに対してアラートを表示する 2月〜3月, 路線バスは3月〜4月の期間にプローブデータ収集を 事が出来る。 行った。 また,データベースに格納されている位置情報データは 4.2 移動軌跡のアニメーション表示 HTTP を用いてWeb サーバー経由でJSON あるいはKML といっ 位置情報をリアルタイムで表示するだけでなく, データベースに たデータ形式で取り出すことが出来る。 蓄積されたデータを様々な条件で比較するためのシステムも構築 した。 スマートフォン 地理空間情報を XML 形式で表現する KML には時間を指定 Android OS する方法がいくつかある。その一つに<Track>要素があり, JSON その子要素として<when>要素と<coord>要素を対応付けて Web サーバー HTTP 並べる事によりGoogle arthにおいて時間軸に沿ったアニ E データベース Mongo DB JSON メーション表示が可能となる。そこでデータベースに格納 されている位置情報を CGI で KML に変換し出力する事によ りGoogle arth上で移動軌跡のアニメーション表示を可能 E KML Web ブラウザ にした。 時間情報を含む KML を読み込んだ時 Google arth には時 E Google Earth Google Maps API 間を操作するスライダーが表示されるので,任意の時間を 指定して表示させたり,アニメーション表示させたりする 図 1.実験システム構成 ことが出来る。図 3 は除雪車両の移動軌跡を表示させたも ので車両毎に軌跡の色分けをしたものである。これにより 4. プローブデータの可視化 どの車両が何時にどこで作業を行ったか,どのような経路 4.1 ロケーション・システム で移動したかを画面上で確認できる。 除雪車両や路線バスで収集されるデータを随時確認する ためロケーション・システムを構築した。スマートフォン からはほぼリアルタイムでデータがサーバーに送信される。 データベースに格納された最新の位置情報を用いて各車両 の位置は図 2 のように Web ブラウザ上で確認する事が出来る。 図 3.除雪車両の移動軌跡 また,Google arth は複数の KML データを重ねて表示す E る事ができ,図 4 は同一発車時刻のバスの移動軌跡を異な る日付で重ねて比較表示させたものである。それぞれの日 図 2.簡易バス・ロケーション・システム は降雪の有無など天候条件が異なっており,同じ便であっ ても道路状況によって運行に差が出ている事が読み取れる。
  • 3. あるいはそれ以外の道路上で停止したのかどうか,どの程 度の時間停止していたかが視覚的に把握出来る。 図 6 では日毎に異なる色で軌跡を表示している。日に よって交差点での信号停止の有無,停留所での停止または 通過,といった違いが表現されている。 また円の特徴から走行パターンを推測することも出来る。 例えば,一つの大きな円がある地点は信号待ちの停止時間 が長くなりやすい交差点などであり,小さな円が複数個隣 接して並んでいる地点は渋滞により停止と発進を繰り返し ている地点と考えられる。 図 4.異なる日での同一便の運行比較 4.3 移動軌跡の3次元表示 プローブデータに含まれる速度情報の可視化方法として は,移動軌跡の線を速度毎に色分けして表現する方法がま 図 6.交差点や停留所での停止状況 ず考えられる。しかし色分けする方法では比較のために複 数の軌跡を重ねて表現することは難しい。そこで速度を標 図 7 は図 4 と同様に,同一便のバスの軌跡を異なる日付 高値として表現する事により3次元で軌跡を表示した。こ の同一時刻で比較表示させたものである。図の右上は到着 の表示例を図 5 に示す。軌跡の色はバスの便毎に異なる色 地点の札幌駅である。 赤い軌跡の日は特に停止円が大きく, を割り当てている。この表示方法ではどの車両の速度が遅 さらに円の数も多く渋滞が発生していることが推察される。 くなっているか,どの道路区間で渋滞が起きていたか,な また図の左下,北34条の札幌新道との交差点の手前には どが把握しやすくなる。また同一の便で異なる日時の軌跡 停止円が多く,渋滞しやすくなっていたことが示されてい を重ねて表示する事で,走行速度の速い日と遅い日を比較 る。 する事が出来る。 図 5.移動軌跡の3次元表示 さらに,この速度を標高に置き換えた表現に加えて,速 度がゼロの地点に円を表示した。円の半径は停止している 時間を表している。この表示手法により,交差点や停留所 図 7.異なる日での同一時刻での位置比較
  • 4. 5.プローブデータの解析 しかしながら,3 月 8 日夜から翌 9 日にかけてそれぞれ 5.1 バス運行状況 10cm,15cm の降雪があるものの,9 日と 10 日のバスの遅延 路線バスは運行ダイヤに基づいて定時に,かつ主に幹線 時間は小さい。 また 20 日と 21 日には 13cm, 10cm の降雪が 道路を含む特定の経路を移動している。逆に一般車両やタ あったが,遅延は特に増加していない。これは曜日が土日 クシーは走行する日時や経路は不特定で,渋滞時には裏道 曜日で交通量が少なくなっているなどの天候以外の要因が などの代替経路に回避してしまうため幹線道路のデータ収 影響していると考えられる。 集には問題も多い。そのため,バスのプローブデータを蓄 積してその速度や予定時刻に対する遅延を解析することは, 5.2 除雪作業の影響 幹線道路の交通状況の把握や毎日の変動の比較に適してい 図 8 を見ると分かるように 13 日前後は 3 月中で最も大き ると言える。 な遅延が発生していた期間となっている。このときの気象 そこで実験で得られたプローブデータから積雪期の交通 データは表1のようになっており,13 日は 18 時〜22 時に 状況の解析を行った。解析対象としたのは期間が 3 月 6 日 5cm の降雪があり,また 14 日には降雪は無いが真冬日と 〜3 月 31 日の午前中に屯田から麻生を経由して札幌駅へ向 なっていた。 かう路線とした。 表 1. 札幌の気象データ 日付 図 8 は毎日のバスの便毎に遅延時間をグラフにしたもの である。背景がピンク色に塗られた部分は休祝日である。 積雪量 [cm] 最高気温 [℃] 6 -- 5 -- -- 131 125 117 114 110 0.0 6.5 6.0 -1.2 5.7 3/11(月) 3/12(火) 3/13(水) 3/14(木) 3/15(金) また図 9 は3月の札幌の降雪量(青)と積雪量(赤)であ る。比較的遅延時間が多くなっているのは 3 月 6 日および 11〜13 日など, 降雪と積雪が多い 3 月の前半に集中してい ることが読み取れる。 降雪量 [cm] 除雪車両のプローブデータからは 3 月 13 日夜と 14 日夜 に西5丁目樽川通り周辺で拡幅除雪作業が行われているこ とが確認できた。そこで前述のバス運行状況に対して除雪 作業がどの程度の影響を及ぼしたかを明らかにするため, 除雪作業前の 3 月 13 日から作業後の 3 月 15 日までのデー タの解析を行った。 図10はバスの出発時刻毎に目的地到着時点での3日間の 遅延時間を比較したものである。 日の遅延が最も小さく 15 なっており,13 日夜と 14 日夜の拡幅除雪により,交通渋 滞が改善されたものと考えられる。 図 8.便毎の遅延時間 図 10. 除雪前後の遅延時間変化 図 9.札幌の降雪と積雪量(3月)
  • 5. 7. まとめと今後の予定 6) Taisto Haavasoja and Yrjö Pilli-Sihvola: Friction as a 本実験は5ヶ年計画のプロジェクトの初年度に実施され Measure of Slippery Road Surfaces, Proceedings of 15th SIRWEC たもので,当初の目標はシステムの構築と不具合の洗い出 Conference, 2010 しなどであった。 スマートフォンの GPS による測位は機種 http://www.sirwec.org/Papers/quebec/11.pdf の違いにより速度の値などに精度の差があったが計算処理 7)株式会社構造計画研究所:路線バスを利用した中小橋梁 の工夫で吸収出来る程度のものであった。 また GPS を常に の簡易健康診断, 利用しているとバッテリー消費が大きくなるため外部バッ http://www.value-press.com/pressrelease/94686 テリーを使う必要があり, 運用の手間が増える点があった。 8)小宮山一重 除雪機械マネジメントシステム活用事例の紹介, : 北 現在アプリケーションの使い勝手等を含めて改善を行って 海道開発局 平成23 年度機械技術検討会,2011 いる。 9)牧野正敏, 宮山一重:除雪機械の位置情報を用いた除雪作業運 小 今回の実験で蓄積したデータは全てのバス運行データを 用支援技術の開発と活用,第29 回日本道路会議,2011 収集したものではなく,量が少なく欠損している部分もあ 10)橋本雄一, 加賀屋誠一, 萩原亨 GlS を援用した凍結防止剤散布 : る。それぞれの収集期間にずれもあったため除雪作業とバ 後の路面管理と運転行動に関する統合データベース構築, 北海道地 スの運行状況との相関を解析するには十分とは言えない。 理学会 地理学論集 No.83, 2008 2年目となる今冬はスマートフォンの台数を追加し,より 11) 深田 秀実,奥野 祐介,大津 晶,橋本 雄一:観光歩行データ に対するGIS を用いた3次元可視化手法の提案,観光情報学会誌 「観光と情報」,Vol.8,No.1,2012 長い期間のデータを収集して更にプローブデータを蓄積す る予定である。 収集したプローブデータに関しては第1段階としてまず 可視化による状況把握を重点的に行った。データの処理や 可視化については一定の手順を確立できたため,処理を自 動化しインタラクティブに操作するビジネス・インテリ ジェンス・ツールのような意思決定支援ツールを構築し, 道路管理や運行管理に利用することが考えられる。 第2段階ではプローブデータの統計的な解析を行い,実 験エリアにおける道路リンク毎に速度の分散値,平均値お よび交差点ノードの通過時間などを計算し,交通障害の原 因となる地点を出来るだけ局所的に,数値的に求めること を考えている。 その他にも実際の道路状態の情報を収集するため,レー ザーレンジスキャナーによる道路脇の堆雪に対する有効幅 員の測定や路面凹凸の計測,放射温度計による路面温度の 計測などのシステムの実験を計画している。 参考文献 1)東日本大震災 自動車通行実績情報マップ, http://www.google.com/intl/ja/crisisresponse/japanqu ake2011_traffic.html 2)みんなでつくる安全マップ, http://safetymap.jp 3)宗広一徳 冬期道路交通評価へのタクシープローブデータの活用 : ~札幌市における事例~,北海道土木研究所月報,No.632, 2006 4)白石哲也, 中辻隆 プローブカーデータを用いた冬期道路ネット : ワークのサービスレベル評価,土木学会 土木計画学研究講演 集,Vol.46, 2012 5)高橋尚人, 徳永ロベルト, 宗広一徳, 竹澤謙一:札幌都市圏にお ける冬期道路プローブの活用について, 土木計画学研究・講演集, Vol.39, 2009 本研究は文部科学省の平成 24 年度国家課題対応型研究 開発推進事業, 次世代 IT 基盤構築のための研究開発 「社会 システム サービスの最適化のための IT 統合システムの構 ・ 築」プロジェクトの一環として実施された。北海道大学で は「札幌市における除排雪の最適化への適用」をテーマと して研究を進めている。