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V を R 上有限次元の線形空間とする. f : V → V を線形写像とし,n 個の f を合
成した写像 𝑓 𝑛
によるV の像を𝑓 𝑛
(V)とする.
(1) 全てのn ∈ N に対して, 𝑓 𝑛+1(V ) は 𝑓 𝑛(V ) の部分空間であることを示せ.
証明 ある元v∈𝑓 𝑛+1
(V ) が𝑓 𝑛
(V ) の元でなかったとする。
しかしv∈𝑓 𝑛(𝑓(𝑉))⊂ 𝑓 𝑛(V )であるから矛盾する。
(2) ある n0 ∈N があり,n≥n0 ならば 𝑓 𝑛
(V ) = 𝑓 𝑛0(V ) となることを示せ.
証明 (1)の結果から、Imfが定義域より次元が上がることはない。
つまりrank(Im𝑓 𝑛
)≧ rank(Im𝑓 𝑛+1
)
またrank(Im𝑓 𝑛)= rank(Im𝑓 𝑛+1) ならば(1)からIm𝑓 𝑛=Im𝑓 𝑛+1
そしてこの時、𝑓 𝑛+2
(V)=f(𝑓 𝑛+1
(V))= f(𝑓 𝑛
(V))= 𝑓 𝑛+1
(V)=𝑓 𝑛
(V)となる
(3) (2)のn0について,W=fn0(V)とおく.fのWへの制限f|W はWからWへ の同型写像
であることを示せ.
証明 全単射であることを示せばよい。全写性は(2)から明らか。
f(v)=f(v’)だったとすると、v-v’∈kerf よって定義域の基底をkerfの基底とその他
の基底から(v1,,,,vn)をとると、f(W)の基底は(f(v1),,,,f(vn))となるが、これだと
次元が足りなくなり、全写性に矛盾する。

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