先日の勉強会ではALife人工生命をやりました。生命とはなにか？考えさせられるいい学びにもなりました。

1. 作って動かす ALife
使用したコードは全部ここです→ https://github.com/alifelab/alife_book_src

2. 自己紹介🌷
名前：
所属：
出身：
興味：
すき：
いま：

3. 本題です！

4. これを読んでいきます
×

5. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

6. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

7. “生命とは何か？”
人間がコンピュータの力を借りながら
生命の挙動をシミュレーションすることによって、
この根源的な問いを探究する分野
人工生命 (Artificial Life)

8. 前提
今日、生命についてテクノロジーを使って考えることは、
どんな意味がある？
コンピュータの歴史は、生命を 計算 」
「 しようとした
科学者たちの軌跡でもある

9. Alan Mathison Turing (1912-1954)
John von Neumann (1903-1957)
コンピュータの概念を成立させる最も根本的な
「計算可能性」の理論を打ち立てた
現代のすべてのコンピュータの基本構造として、
入出力デバイスと、記憶（メモリ）・制御装置・計算論理
の3つのユニットを持つシステムを設計した
「反応拡散系」という化学反応の数式によって
生命的なパターンが生成される論文*を発表（1952）
「自己増殖」という生命の最も根源的な特徴を数学的に
記述する論文**を発表（1966）
*“The Chemical Basis of Morphogenesis” （形態形成の化学的基礎）
**”Theory of Self Reproducing Automata”（自己増殖オートマトンの理論）
*1
*2

10. ALifeのアプローチ法
仮説生命 1 仮説生命 2 仮説生命 3 仮説生命 n
すでに存在する生命体
×
→人工的なシステムを作る
○
life-as-we-know-it life-as-it-could-be

11. ・Artificial Intelligence ; AI
・Artificial Life ; ALife
人間の認知限界を超える量の情報を処理して、その中からパターン
を識別することで、作業の自動化や効率化をもたらす技術
AIとALife
「新たな自然を作り出す」という特徴を基に、人間の知性を補完したり
増幅したりするために活用でき、多種多様な創造的行為を支援することが
できる技術

12. 生命の“ゆるさ”
・感覚運動カップリング
センサー（感覚器）からの情報をうまく精査して、身体の運動へと繋げていく
という、生命が行うベーシックな計算のひとつ。
感覚運動カップリングに必要な計算をコンピュータのアルゴリズムで書いても、
適応的にならない。
(∵ 未知の状況をすべて条件分岐で書くことには限界がある。)
生命的な計算システムでは、適応的な行動を可能にする内面の生成を行動原理とする
必要がある。
環境の変化に対して柔軟に適応し、前もって作り込んでおかないようなシステム設計が
必要。

13. ALifeの主な方法論 ALife
ソフトALife ハードALife ウェットALife
・ソフトALife
コンピュータ上のソフトウェアを
使う手法
・ハードALife
ロボットなどの物理的な機械
を使う手法
・ウェットALife
化学や遺伝工学を使う手法
今日はこれ！
アプローチがどうであれ、生命らしく振る舞うシステムを人間の手で構築することが
ALife研究の目標
*3
*4

14. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

15. 自己組織化する生命のパターン
実世界の生命は、多様なパターンを織りなしながら機能している。
綿密な設計図を作らずとも、構造が時間とともに成長し、
整合性が生み出されるという“自己組織化”の動きに沿っている。
ロマネスコ
*5 *6 *7

16. チューリングパターン
Alan Mathison Turing
一番最初に、自然界に存在するさまざまなパターンを
「化学反応と拡散過程」という自己組織的なロジック
で作れることを示した。（チューリングパターン）
空間内に化学物質が一様に分布すると、状態は不安定化し、
自発的にいろいろなパターンが生み出される。
そのパターンが化学反応の中で自己組織化していく。
= 生命的な計算

17. Gray-Scott model
化学反応によって、要素を変化させる「反応拡散系モデル」のひとつ。
チューリングパターンの不安定性を示す。
chap02 gray_scott.py

18. Gray-Scott model の反応概念図
物質Uを一定の補充率(feed rate)
で追加
反応：2つの物質Vがエサとして
物質Uを使い、物質Vを作る
物質Vは一定の減量率(kill rate)で
除かれる

19. Gray-Scott model の拡散概念図
物質U 物質V
物質Uと物質Vの拡散係数は大きく異なる。
物質Uは物質Vよりもすばやく拡散する。

20. Gray-Scott model の反応拡散方程式

21. Du∇2u (Dv∇2v) は、
定数(あらかじめ決まっていてシミュレーションを通して変化しない値)であるDu(Dv)に比例して、
u,vがどのくらい増加するかを示す
拡散は、濃度や密度の分布を一様に保つ効果を持つ。
(ラプラスの演算子)

22. 先程見た、「U + 2V -> 3V」というルールの反応が、uv2 の速度で起こることを示す。
第1式では -uv2、第2式では +uv2 であることから、
物質Uが物質Vに変化したことによるvの増加量は、当然、uの減少量に等しくなる。

23. ・F(1-u) : 補充項(feed項)
・-(F+k)v : 減量項(kill項)
反応において、物質Uを使って物質Vを生成するので、補充する方法がないと最終的にすべての物質Uが
使い果たされてしまう。
補充される量は、1から現在の濃度uを引いた量に比例して(比例定数をFとする)、uが増加する。
この減量項がないとVが無限に増加してしまう。
減量の比例定数をkとすると、現在の濃度vと、Fとkの合計に比例して減少する。

24. 補充率(feed rate)と減量率(kill rate)の値を
変えてみよう！
chap02 gray_scott.py

25. ・ストライプ
・スポット
Discus fish
White spotted puffer
# f, k = 0.035, 0.065
# spots
# f, k = 0.022, 0.051
# stripe
*8
*9

26. ・波
・泡
Thornback cowfish
Flowerhorn fish
# f, k = 0.025, 0.05
# waves
# f, k = 0.012, 0.05
# wandering bubbles
*10
*11

27. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

28. 個の創発
「個」を規定するプロセスは何か？
“化学的に”細胞を外部環境と隔てる膜
= “物理的に”内と外を隔てながらも透過性を持つ動的なインターフェース
“開きつつ閉じる”ことが必要。
*12

29. Auto Poiesis
Auto Poiesis…
自らを生成し、維持できる「最小単位の生命」の機構を持つシステム
→最も簡単な例であるSCL model を見ていきます！
Poiesis …An act or process of creation
個の創発は、Auto Poiesis の基本問題。

30. SCL model (Substrate Catalyst Link model)

31. Chap03 scl.py
これらの分子間には、以下の3つの化学反応が
適用される。
1)
2)
3)
・リンクしていない膜分子のみ移動できる。
・膜分子は、結合しているか否かに関わらず、
ランダムに分解が起こる。
→これらの単純な分子とルールのセットのみ
から、個の生成と自己維持が可能

32. ・個の生成の様子
・自己維持される様子
触媒分子●が、その近隣に膜分子□を生成し
はじめ、結合してリンクを形成し、
触媒分子●を囲い込んで膜が生成される。
膜を周りに作ることで、まさに細胞のような
「個」という単位を作りはじめる。
基質分子●はリンクを通過できるので、膜の
内外を行き来する。膜の中の基質分子●が
触媒分子●により膜分子□に変換されると、
リンクが膜の内部で作られる。
→膜を作っているリンクが分解して穴が
できても、膜内のリンクが穴を埋め、壊れた
膜を修復する。

33. SCL model の分子の反応や結合は、実装上では以下の6つの動きで表現できる
・production - 2つの基質分子●が触媒分子●に触れて膜分子□になる(第1式)
・bonding - 膜分子□と膜分子□が結合する(第2式)
・disintegration - 膜分子□が2つの基質分子●に戻る(第3式)
・bond decay – 膜分子同士の結合□ー□が崩壊する
・absorption – 膜分子□が基質分子●を吸収する
・emission – 膜分子□が基質分子●を放出する

34. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

35. 創発現象
個体が生まれて自己複製ができるようになると、その集団は群れを形成する。
そして、今度は群れそのものがひとつの個体のように振る舞うようになる。
自律的に動く個体間の協同現象の結果、自己組織的にパターンや構造が
現れる現象
・創発現象
Ex) 鳥や昆虫の群れ
→エポックメイキングな創発現象モデルであるBoids model を見ていきます！

36. Boids model ※Boids = bird-oid (鳥っぽいもの)を意味する造語
Boids model におけるそれぞれの個体は、
位置と向きを持っており、以下の3つのルールに従って動く。
・「分離」(SEPARATION)
周りの個体とぶつからないように離れる。
・「整列」(ALIGNMENT)
周りの個体と同じ方向に飛ぶように合わせる。
・「結合」(COHESION)
周りの個体の中心方向へ向かうように向きを
そろえる。
chap04 boids.py

37. これら3つのルールのそれぞれには、
・力の強さ
・力の働く距離（相互作用する相手までの距離）
・力の働く角度
を決定するパラメータがある。
また、速度に上限/下限を設けることで、
際限なく加速したり、１か所に吸収されるのを
防ぐ。

38. 以上で見てきた基本的なBoids modelは、ローカルな相互作用のみから、群れという
マクロなパターンを創発させる。
But... いったん出来上がった群れは維持されるとは限らず、生成と消滅を繰り返す。
群れを保つためには、
“目的” を持たせれば良い。

39. えさやり
生物には、集団となることで生まれる「集合知」なる
知性が見られることがある。
Boids model は、純粋に運動力学モデルであるため、
集合知という概念はない。
そこで、Boids model に「エサ」という目的を導入する
ことで群れに飛んでいく方向の目標を与える。
chap04 boids_prey.py

40. 基本のBoids model との違い
・エサに向かう力
・定期的にエサの位置を更新するインターバルの
時間の定数
・エサの位置を保存する変数

41. Boidsの数を増やしたら…
スーパーコンピュータを使って、Boidsの数を
1千、1万、10万、50万と密度を一定にしたまま
シミュレーションした。
数千を超えたあたりから、丸い塊の群れと、ヘビの
ようにうねった細い群れが現れ、新しい運動が始まる。
それらがお互いに相互作用しながら空間に分布していく。
個体の数をとても増やすと、ミクロな相互作用が群れ
を創発するだけでなく、群れがミクロの相互作用を
変化させる。
Takashi Ikegami; Yoh-ichi Mototake; Shintaro Kobori; Mizuki Oka; Yasuhiro Hashimoto,
Life as an emergent phenomenon: studies from a leargr-scale boid simulation and web data

42. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

43. Agent (個体) model
Agent model の内部には、ニューラルネットワークが
装備されている。
エサである化学物質が黄緑色で、濃度を持って
青い環境に分布している。
赤い丸がAgentである。
Agentが動いた場所は、エサが吸収されるので、
青い軌跡として表示される。
←まずはランダムな遺伝子ver
chap06_07 ant_nn.py

44. Agentのニューラルネットワーク
入力層を9つ、出力層を4つのニューロンで
構成する。
・入力層
環境の化学物質を収集する7つのセンサーを
受け取る7つのニューロン
2つのコンテキストニューロン
・出力層
Agantの速度と角速度の値を出力する2つの
ニューロン
2つのコンテキストニューロン
コンテキストニューロン…1ステップ前の情報を
記憶し、その影響を入力に反映させるための
ニューロン

45. ・7つのセンサー入力と2つの出力は、Agentの
身体と関係するので不変
・コンテキストニューロンと隠れ層のニュー
ロンの数は任意に設定できる
・重みは、入力信号の重要度をコントロール
するパラメータとして機能
・バイアスは、発火のしやすさを調節する
パラメータとして機能

46. ニューラルネットワークの重みの数を「遺伝子数(gene_length)」
とする。
50個のAgent集合の遺伝子を初期化
50個のAgent各々を実際にシミュレーションして評価
評価の最も高かった(エサを最も集めた)Agentの遺伝子を保存
その遺伝子を親としてまたまわす
Agentを進化させる
↓
↓
↓

47. Agentを進化させる
1世代 10世代
50世代 70世代
chap06_07 sampledata/gen0001(0010,0050,0070)_best.npy

48. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

49. 計算する生命 第4章 より
“2018年夏、お台場で開かれたALife国際会議の3日目、ブルックスはALife研究のパイオニアの一人
として基調講演をした。
ここで彼は、哲学者も物理学者も、人工知能や人工生命の研究者もみな、「メタファの犠牲者」
なのではないか、という挑発的な問題提起をした。
いつの時代も人は、未知の事物を、手許にある概念に喩えて理解しようとしてきた。
現代の人工知能や人工生命研究者は、「計算」という概念を頼りに、計算機のメタファで、
知能や生命の謎に迫ろうとしている。
だが、これは本当に正しいメタファなのかと、ブルックスはあらためて問うのだ。
計算概念が、知能や生命を理解するための適切な隠喩だという保証はどこにもない
のだ。”

50. ALife研究のパイオニアであるブルックスが「計算」という方法に頼りきることへの警鐘を
鳴らしている。
本質的な突破口と言える方法論はまだなく、「本当に生命を作ろうとするなら、計算と生命の
間に横たわる厳然とした溝を直視する必要がある。」と彼は述べている。
Rodney Allen Brooks (1954-)
サブサンプション・アーキテクチャの提案者。
iRobotやリシンク・ロボティクスの創業で知られる。
ルンバやパックボットにはサブサンプション・アーキテクチャ
が実装された。
サブサンプション・アーキテクチャ…
振る舞いに基づくロボット工学を起源とする人工知能の概念
*13

51. もくじ
1. ALifeとは
2. 生命のパターンを作る
3. 個と自己複製
4. 生命としての群れ
5. ALifeの進化モデル
6. 計算する生命
7. 最後に

52. 最後に
ALifeは我々の社会にどのようなインパクトを与えうるか？
進んだ技術は、生命的に、つまり仕組みは一見わからないけれども自律的に
動くようになる。
ALifeは、「ありえたかもしれない生命」を出現させることで、現実の世界にすで
に存在しているよりも多くの生命の形を作り出し、社会の多様性を増幅させる。
計算的生命という、人間と異なる生命の在り方を認めることで、人が結べる関係
性の範囲を広げることができる。これは多様性という概念を拡張することにつな
がる。

53. 余談
発生学とALife
男女の性は、受精によって決定するわけではない。
受精によってつくられた「胎児原基」は、どちらの性にも発育できる特徴を持っている。
男女の性が決定するには、性染色体の遺伝子に始まり、思春期あるいは青年期まで続く性分化
の過程がある。
個体の性はいくつかの段階で決まっていく。
染色体による性（遺伝的性）
性腺による性
表現型の性
多くの場合これらのすべてが一致するが，一致しない場合もある。
http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/3/animsci/text_id/Sex%20Determination.html
sex-as-it-could-be???

54. 参考・引用資料
・作って動かすALife (岡瑞起,青木竜太,丸山典宏,池上高志,ドミニク・チェン著 オライリー・ジャパン)
・計算する生命 (森田真生著 新潮社)
*1 https://wired.jp/membership/2020/05/25/living-in-alan-turings-future/
*2 https://en.wikipedia.org/wiki/John_von_Neumann
*3 https://www.orchestrastory.com/id/Jika-Anda-ditendang-keluar-dari-robot-konduktor%2C/
*4 http://kodamaforest.blog112.fc2.com/blog-entry-69.html
*5 https://marine-aquarium.online/pomacanthidae-l/
*6 https://fugufuku.com/romanesco/
*7 https://bohemegalante.com/2020/04/09/princesse-adore-insectes/
*8 https://ameblo.jp/japandiscus/
*9 https://en.wikipedia.org/wiki/White-spotted_puffer
*10 http://www.kazkian.com/guest/manboon/2016/10/28282.html
*11 https://www.youtube.com/watch?v=pbHt34o2hUw
*12 https://pixy.org/155898/
*13 https://en.wikipedia.org/wiki/Rodney_Brooks