SlideShare a Scribd company logo
2017/02/17 卒論発表会
観光学部観光経営学科(大浦ゼミ) 笠原大志
【テーマ】「冒険遊び場」の展開と課題
【目的・問題意識】
戦後の高度経済成長の過程で都市化、工業化が急速に進んだことにより、かつての子供
たちの遊び場であった道路にはアスファルトが敷き詰められ、河川もコンクリートで埋
められていった。それ以前の時代に比べ、自然の中で自然と触れ合いながら遊ぶ環境は大
幅に減少したと言える。こうした環境下において、子供たちの身近な遊び場といえば、「公
園」であるが、その供給が基本的に公的サービスとして行われたために、全国各地で同じ
ような施設が整備されることとなり、また概して大人の視点から整備されたお仕着せの
遊び場で、遊び心をかきたてる素材や場の雰囲気に欠け、遊びのヒントを与えるような大
人の姿も不在であるとして批判されている〔1〕
。また公園の管理不足に伴う犯罪の不安の
増大や事故の不安から遊具の撤去、過剰な禁止事項、さらには子供たちの遊ぶ声が騒音に
なるとして近隣住民に嫌がられるようになったという社会環境の変化もあり、ますます
子供たちが外で遊ぶことが難しくなっている。加えて、1980 年代からのテレビゲームの
普及は、子供たちをより家の中にとどまらせている。
そのような状況が子供時代の様々な体験を阻んでしまうことを危惧し、打開したいと
考えた保護者たちの取り組みから「冒険遊び場」(プレーパーク)が誕生した。世界最初
のプレーパークは第二次世界大戦さなかの 1943 年に、デンマークの造園家ソーレンセン
教授によってコペンハーゲン市郊外につくられた「エンドラップ廃材遊び場」であるとい
われている。1945 年にはエンドラップを訪れたイギリスの造園家アレン卿夫人がソーレ
ンセンの思想に深く感銘を受け、帰国後にロンドンの爆撃地に冒険遊び場を作ると同時
に世論を喚起して「冒険遊び場」を隆盛させた。こうしてイギリスで力強い大きな流れと
なった冒険遊び場運動は、1950 年代にはスイスやイギリスに,1960 年代には西ドイツに
拡がっていき、やがて日本にも拡がることとなった〔2〕
。
日本においてプレーパークは、前述のような環境変化が顕在化した。1970 年代に初め
て常設され、現在では全国に 270 箇所以上のプレーパークが設置されている。都市部は
もちろん都市近郊の里山にも存在し、子供たち自身が遊びたくなる場、「やってみたい」
という興味を引き起こされる場づくりをモットーに取り組まれてきた。近年、運動能力や
コミュニケーション能力の低下、いじめ、意欲・向上心の低下など、成育環境の悪化が子
供たちに様々な問題を生じさせているといわれている。元来、子供たちは異年齢集団の人
間関係の中で社会力を育み、仲間と遊ぶうちにルールを守ること、我慢することなどを学
ぶとともに運動能力のような力を身に付けていく。こうした学びの積み重ねが社会力の
基礎となり、子供たちは社会の中の存在として自覚し、心身の成長を遂げる。プレーパー
クのような場において、子供たち自身が工夫して滑り台を作ったり、木の実や落ち葉を並
べて遊んだりという自主的な遊びを促すことは、子供たちの心身の成長に重要な働きを
発揮することが期待され、近年ますます注目されている〔3〕
。
そこでプレーパークが誕生して 40 年以上経った現在、地域にどのような影響をプレー
パークが与えているのか、またどのような問題を抱えているのかを都市部とその近郊の
里山とでそれぞれ明らかにし、今後の可能性を探りたい。
【研究課題】
第1章では「冒険遊び場」の歴史とその経緯について述べる。第2章では海外における「冒
険遊び場」の展開と日本における「冒険遊び場」が実際にどういう展開をしてきたのか、
現在までの動向を述べる。第3章では、都市部での事例、里山での事例をそれぞれ調査し、
「冒険遊び場」の現状と課題を明らかにする。第4章では、調査結果を分析し、「冒険遊
び場」の可能性を考察する。
【章節構成】
はじめに
第 1 章 「冒険遊び場」の展開
第 1 節 「冒険遊び場」歴史、経緯
第 2 節 日本における「冒険遊び場」の展開
第 2 章 「冒険遊び場」の現状-都市部と里山の比較
第1節 調査の概要
第 2 節 「冒険遊び場」(都市部)
1.成立過程および活動の概要
2.聞き取り結果
第3節 「冒険遊び場」(里山)
1.成立過程および活動の概要
2.聞き取り結果
第4節 聞き取り結果の分析
第 3 章 総括
おわりに
【調査対象地】
・羽曳野プレーパーク
・貝塚プレーパーク
・ひと山まるごとプレーパーク
【研究方法】
・文献研究
・現地でのヒアリング調査
【参考文献】
〔1〕地域振興詩 碧い風 №5 大村璋子
〈http://bouken-asobiba.org/info/2011/oomurasyouko.pdf〉(2017/2/16)
〔2〕冒険遊び場づくりホームページ
〈http://bouken-asobiba.org/〉(2017/2/16)
〔3〕「外遊び」の力を次の世代に(提言書)
〈http://bouken-asobiba.org/modules/play/index.php?content_id=9〉(2017/2/9)
〔4〕大村璋子(2009)『遊びの力-遊びの環境づくり 30 年の歩みとこれから』萌文社 206p
〔5〕アレン・オブ・ハートウッド卿夫人(2009)『都市の遊び場』(大村虔一、大村璋子訳)
鹿島出版会
はじめに
第 1 章 「冒険遊び場」の展開
第 1 節 「冒険遊び場」歴史、経緯
・第二次世界大戦のさなか、デンマークのソーレンセン教授によって世界初の「冒険遊
び場」である「エンドラップ廃材遊び場」が作られる
・ソーレンセン教授の影響を受けた造園家アレン卿夫人がイギリスで「冒険遊び場」を
隆盛させる。
・1950 年代にはスイスやイギリスに,1960 年代には西ドイツに拡がっていき、やがて
日本にも拡がる。
第 2 節 日本における「冒険遊び場」の展開
・大村虔一・璋子夫婦が「わが子に自然の中での遊びの世界を体験させてあげたい」と
いう想いから「冒険遊び場」作りに尽力する。
・1973 年に大村夫妻は『PLANNING FOR PLAY』という本を翻訳し、実際に本で紹
介されていたスウェーデン、イギリス、デンマーク、スイス、オランダの遊び場を訪
ねる。
・1979 年、帰国した大村夫妻によって日本で初の常設の冒険遊び場「羽根木プレーパ
ーク」が誕生
・以来、全国で草の根的に広がり、1990 年代後半からは飛躍的に活動団体が増える。
1943 ソーレンセン教授により、エンドラップ廃材遊び場誕生
1946 アレン卿夫人がエンドラップを訪問 イギリスに伝える
1966 第一回都市公園整備促進全国婦人大会
1969 障害児のための冒険遊び場「チェルシー遊び場」
1979 羽根木プレーパーク誕生
1995 震災被災地にてプレーパーク活動を実施
1999 第一回「遊育プログラム」プレーリーダー育成
(注:大村璋子 遊びの力-遊びの環境づくり 30 年の歩みとこれから 参考に筆者が作成)
第 2 章 「冒険遊び場」の現状-都市部と里山の比較
第 1 節 調査内容
人口集中地区とされている羽曳野市にある「はびきのプレーパーク」を都市部にある
定期的に開催する事例として、また貝塚プレーパークを不定期に開催される事例とし
て取り上げる。里山ではひと山まるごとプレーパークを里山にある定期的に開催する
事例として、(不定期未定)取り上げる。実際に現地に行ってヒアリング調査を行うこ
とで、現状を知り、利点や問題点を明らかにし、比較、分析を行う。
第 2 節 「冒険遊び場」(都市部)
1. 羽曳野プレーパークの成立過程および活動の概要
団体名 * ぷちパーク/はびきのプレーパーク
URL http://habikino-play-park.blogspot.jp/
活 動 場
所 *
大阪府羽曳野市 羽曳が丘西中公園・羽曳が丘西3丁目バス亭すぐ
活動日 毎週火曜日午前
会発足 1998 年 3 月
登録日 2015/4/7 19:39
・1998 年から大阪府羽曳野市で活動開始
・その後、場所の移転や時間の変更を行う
・春、夏の長期休暇の開催以外に、ぷちパーク、夕方パークを開催するようになる
2.聞き取り調査
第 3 節 「冒険遊び場」(里山)
1. 成立過程および活動の概要
2. 聞き取り調査
第 4 節 聞き取り結果の分析
第 3 章 総括
おわりに

More Related Content

Viewers also liked

Pagina 7 9 van od1702
Pagina 7 9 van od1702Pagina 7 9 van od1702
Pagina 7 9 van od1702
Jacques Duivenvoorden
 
Curriculum Vitae
Curriculum VitaeCurriculum Vitae
Curriculum Vitae
Kelly Taylor Mitchell
 
Neglecting a child presentation
Neglecting a child presentationNeglecting a child presentation
Neglecting a child presentation
Himanshu Swarnkar
 
Legal issues
Legal issuesLegal issues
Legal issues
Himanshu Swarnkar
 
La mujer en la historia
La mujer en la historiaLa mujer en la historia
La mujer en la historia
Licet Durán Suárez
 
BSW Salem State Project
BSW Salem State ProjectBSW Salem State Project
BSW Salem State Project
Ariel. Christopher, BSW
 
Ana cerrón impress_práctica1
Ana cerrón impress_práctica1Ana cerrón impress_práctica1
Ana cerrón impress_práctica1
Anne Cerron
 
Interesting talk conflict handouts
Interesting talk   conflict handoutsInteresting talk   conflict handouts
Interesting talk conflict handouts
Matt Kendall
 
La mujer en la historia
La mujer en la historiaLa mujer en la historia
La mujer en la historia
Licet Rocio Duràn Suàrez
 
The David Lawrence Collection
The David Lawrence CollectionThe David Lawrence Collection
The David Lawrence Collection
artopianyc
 

Viewers also liked (10)

Pagina 7 9 van od1702
Pagina 7 9 van od1702Pagina 7 9 van od1702
Pagina 7 9 van od1702
 
Curriculum Vitae
Curriculum VitaeCurriculum Vitae
Curriculum Vitae
 
Neglecting a child presentation
Neglecting a child presentationNeglecting a child presentation
Neglecting a child presentation
 
Legal issues
Legal issuesLegal issues
Legal issues
 
La mujer en la historia
La mujer en la historiaLa mujer en la historia
La mujer en la historia
 
BSW Salem State Project
BSW Salem State ProjectBSW Salem State Project
BSW Salem State Project
 
Ana cerrón impress_práctica1
Ana cerrón impress_práctica1Ana cerrón impress_práctica1
Ana cerrón impress_práctica1
 
Interesting talk conflict handouts
Interesting talk   conflict handoutsInteresting talk   conflict handouts
Interesting talk conflict handouts
 
La mujer en la historia
La mujer en la historiaLa mujer en la historia
La mujer en la historia
 
The David Lawrence Collection
The David Lawrence CollectionThe David Lawrence Collection
The David Lawrence Collection
 

卒論に向けて⑥