我が町百年史・常盤町

1. ～沼津・常盤町百年なりたち～
沼津市の狩野川と千本浜に挟まれた長い町域である常盤町という町名がいつ生まれたかは定か
でないが、永久不変を意味するところから、町の発展に願いを込めて付けられた、当時の別荘主が
自宅存在町名を挙げたともいわれる、何故一般的な「常磐」でなくて「常盤」なのかも不明である。
常盤町が今のような住宅地として整ってきたのはそんなに古いことでなく、極めて近年である。
江戸時代の沼津は、城下と三枚橋、上土、本町の三町からなる宿場町だった。町並みは、東海道
沿いとその裏町及び狩野川べりに舟運の発達によってできた仲町、宮町、下河原町などで以南は低
地の水田または湿地で人が住む処ではなかった。宿場町から観音さんに至る一本の道があるだけで
沿道には人家が見当たらない。千本松原も幕府御林として一般が入ることが許されない淋しいとこ
ろであった。
明治二十二年新制度による沼津町が誕生し、城内の四区と三十六町に区分され、大正二年編纂と
考えられる「駿東郡沼津町誌付録」の「沼津盛衰調査ノ部」には、「明治四十年町ノ経営ヲ以テ海
岸ノ一帯老松○○セル千本松原ヲ公園トシ、同年十二月開園ス。四民ノ杖ヲ曳クモノ日ニ倍多シ」
とあり、さらに「冬暖ク夏涼シキ千本松原ニ別荘ヲ建築スルモノ多ク人口大ニ増殖ス、同四十二年
ノ調査ニ因レバ、新タニ常盤町緑町ノ二ケ町ヲ加ヘ四区三十九ケ町」とあり、千本浜道に沿った別
荘地が「常盤町」といわれるのは明治四十年ごろと思われる。
これを基に考察して誕生以来百年が経過していることから勝手ながら「常盤町百年」を掲げる。
同資料巻末に折り込まれている地図、並びに明治二十四年発行の「駿河國駿東郡沼津町略図」には
「常盤町」の記載はないが、観音さんから南に向かう浜側の道が画かれている。
また、「下河原妙海寺」の由緒となる「如来堂」、「妙見橋」の名由来であろう「妙見塚」という
歴史を語る遺産が示されている。
「沼津町全図」（明治四十年十二月発行）には、緑町の記載があるが、常盤町及び南に向かう浜
側の道はない。町制時代の最後の様子を示す大正十一年十二月発行の「沼津町全図」（耕文社製）
には、観音前辺りに「緑町」、現在の千本浜道らしき道の南に「常盤町」の表示記載がある。
大正十四年九月発行の「沼津市全図」にも表示がなされているが、昭和初期発行の「沼津市全図」
には何故か緑町と常盤町の表示が見当たらないのは何故か。
千本松原付近や観音川に沿って港に至る地域は、大正末から始められた大規模な「千本耕地整理
事業」によって一挙に住宅地化し、昭和五年に第二小学校が新設されて住宅も次第に増え、事業の
完了とともに昭和十二年に地番改正が行われた。
これにより「千本緑町一丁目」「同二丁目」「同三丁目」が成立し、すぐ南側地域の「二反田」「三
反深」に同年「常盤町一丁目」「同二丁目」「同三丁目」が、その西側の常盤町といわれていた地域
に千本常盤町が、千本松原と常盤にあやかって付けられ成立したとされている。
追記：現の常盤町三丁目１５の知人資料によれば、昭和九年六月作製土地売買契約書に「本字三反深一０八八
ノ五」の記載がある。