マンションで耐震診断を行なうので意見を述べました。

1. 平成２５年定期総会
第３号議案 耐震診断実施についての意見書
平成２５年 ７月２６日
コーポラス幡ヶ谷 ８０１ 藤原紀章
1

2. 意見の要約
【主張】
第３号議案 耐震診断実施の件は、以下の理由により数年後に見送るべきである。
【理由】
１）本議案は実施の明確な根拠が示されておらず計画性がない計画性がない計画性がない計画性がない。耐震調査は長期修繕計画を見なおして
から実施すべきである。
２）本議案は耐震調査のみ提案されており、調査を受けた耐震補強の想定工事が示されていないため、
具体的効果が不明具体的効果が不明具体的効果が不明具体的効果が不明である。
３）当マンションは、国土交通省・耐震診断実施義務対象外で、東京都の地震倒壊予測で安全とされ、最も
耐震性の高い「鉄骨鉄筋コンクリート構造」であるから、自主的に耐震診断を行なう蓋然性がない蓋然性がない蓋然性がない蓋然性がない。
４）耐震診断は、実際の地震をリアルなシミレーションをするのはなく建物の強度から地震の圧力のみで評
価するため信憑性に欠ける信憑性に欠ける信憑性に欠ける信憑性に欠ける。
５）修繕積立金は区分所有者にとって貴重な資金であり、建物・設備の経年劣化が懸念される当マンション
においては、感傷に浸るのではなく、経済的に修繕を行なうべき感傷に浸るのではなく、経済的に修繕を行なうべき感傷に浸るのではなく、経済的に修繕を行なうべき感傷に浸るのではなく、経済的に修繕を行なうべきである。具体的には給水設備、エレベー
ター、汚水配管、電灯配線等、毎日の生活の品質に直結する修繕を優先すべきである。
【結論】
本議案に反対する。 2

3. はじめに
当マンションは、竣工より３０数年経過している。そのため、建物及び設備について経年による劣化が起
こっていると考える。それにより、建物が脆弱になり自然災害や建物自らの重みで破損すること、設備が故
障することが想定される。これは生活に支障をきたすことになるので、建物の劣化、設備の故障を予測の
上、計画的に修繕していくことが重要である。そして、長期修繕計画において具体化される。
本総会に上程された「第３号議案 耐震評価実施について」は、確かに地震に対する建物の体制と脆弱
性を知ることは重要である。また、２０１１年の東日本大震災の記憶新しい居住者におかれては地震災害
の恐ろしさを身を持って体験されておられるため多大なご懸念をお持ちであると推察される。また、私個人
としては１９９５年の阪神大震災に被災し多くの倒壊した集合住宅を目の当たりにしているため、建物の耐
震性については以前より重大な関心を持っていた。
その上で、本議案について以下の５つの観点よりその実施是非を検討した。
１）耐震調査の計画性 ・・・ 耐震調査は長期修繕計画に則っているか
２）実施効果の具体性 ・・・ 耐震調査によって具体的な便益が示されているか
３）地震被災の蓋然性 ・・・ 地震による建物の被災が必ず想定されるか
４）耐震診断の信憑性 ・・・ 耐震診断は信頼における結果が得られるか
５）建物維持の経済性 ・・・ 他の修繕項目を実施するより大きな便益が得られるか
検討した結果をこれより説明する。
結論は、検討結果を総合すると、長期修繕計画を改定し、計画の総会承認後に実施すべきである。結論は、検討結果を総合すると、長期修繕計画を改定し、計画の総会承認後に実施すべきである。結論は、検討結果を総合すると、長期修繕計画を改定し、計画の総会承認後に実施すべきである。結論は、検討結果を総合すると、長期修繕計画を改定し、計画の総会承認後に実施すべきである。
ゆえに、本議案に反対する。ゆえに、本議案に反対する。ゆえに、本議案に反対する。ゆえに、本議案に反対する。 3

4. １．耐震調査の計画性
集合住宅は、複数の区分所有者所有され、複数の居住者が生活している。そのため、建物および設備に
ついては、共同で責任を負う。具体的には、修繕を計画し、費用を負担する義務である。共同で立案された
修繕計画と費用負担は長期修繕計画に示され、総会にて審議し、区分所有者の合意のもと実行される。
故に、長期修繕計画は区分所有者の合意を具体化したものであり、本議案で上程された耐震診断は費
用が多額であり、長期修繕計画の履行に影響をあたえるものである。であるから、単独で上程される議案
ではなく、長期修繕計画を再度見直し、その結果と共に総会に諮る必要があると考える。なぜならば、長期
修繕計画は区分所有者の合意のもとに成立している。ならば、もう一度管理規約に従った合意を得る必要
がある。その意味で、計画性に乏しい議案といえよう。
では、なぜ長期修繕計画は遵守されなければならいのであろう。単に管理規約に規定があるからという
形式的な理由のみならず、居住者、区分所有者の建物・設備修繕とその費用負担について、利害が相反
する事があるからである。居住者の生活様式の違いにより、建物・設備の修繕について各々優先する修繕
箇所が違ってくる。また、居住している区分所有者と居住していない区分所有者では費用負担について考
え方が異なることもある。そして、居住者のライフステージによる世代間利益相反も発生する。
これらによって利害が相反する事があるが、その際重要なのは合意に基づく計画の履行である。また、区
分所有者は物件の売買等により頻繁に変遷するが、建物・設備の修繕自体の必要性は変わらない。また
管理組合の役員も公平な責任分担の意味で任期により入れ替わる。だが、長期的な観点で立案された合
意に基づく計画を遵守することは、役員の入れ替わりによる恣意的な修繕を牽制する。
その意味で、長期修繕計画と共に示されていない本調査は計画性に乏しいので、見送るべきである。
4

5. ２．実施効果の具体性
一般的に調査はそれ自体に意味があるものではなく、調査によって判明したことから適切な対策を示すこ
とに価値がある。反対に調査してになければわからないという調査は、調査をする価値がないと言って良い。
価値ある調査とはいくつかの選択肢があり、どの選択肢が適切か判断するために行なう調査である。
耐震補強の方法は明確であり、当マンションの特性からして、どの方法が適切かを予測し、耐震強度が
非常に弱い想定で耐震補強工事の概算を算出する。その上で、実際に耐震診断を行い、耐震強度に応じ
た耐震補強を行なうという流れで考えなければならない。しかるに、本議案にはただ単に調査をするとしか
示されておらず、想定される耐震補強工事の想定がなされていないため、具体的な実施効果が不明である。
ただ単に心配だから調査をするという説明はあまりに稚拙である。
また、耐震補強自体の実施した効果は検証することが出来ない。耐震補強の効果は、①地震予測、②建
物被災シミレーション、③被災予測の３つの精度が十分であることが検証を可能にする条件である。地震
予測は実験研究段階で工学技術とはいえない理学的な研究の域を出ない。建物被災シミレーションは計
算機工学の進歩とともに精度を上げている。被災予測は大規模地震災害が発生することでその精度を上
げている。これはシミレーション技術は上がっても、想定する大規模地震災害において毎回想定外の建物
被災を起こすため、被災予測は常に大規模震災が起こって検証されることを意味する。
しかしながらシミレーション技術を駆使しあらゆる被害に耐えられる堅固な耐震修繕は考えられる。だが、
このアプローチは公共性の高い施設（交通機関、役所、原子力発電所等）に必要であるが、一私有財産で
ある集合住宅においては、被災時の倒壊可能性を重視すべきと考える。修復可能性、再居住性などより堅
固な耐震評価も概念として存在するが実効性は疑問である。
5

6. ３．地震被災の蓋然性
地震発生時の被災について、東日本大震災を受けて東京都が地震防災マップを作成していている。
これは東京都を５０平米のグリッドにわけ、以下の想定のもと倒壊建物のグリット内の割合を算出している。
当マンションの属するグリットでは0%以上～3%未満の建物が倒壊するとの試算を得ている。
・東京都の想定地震
【想定地震】東京湾北部を震源とする地震（フィリピン海プレート上面に沿うプレート境界型地震）
【地震の規模】モーメントマグニチュード７．３
【地震動予測】基盤地震動伝播過程を等価震源距離を用いて求め、さらに表層深さ３０ｍまでの
地盤平均地震波電波速度（Ｓ波速度）との関係を用いて算出。
また、国土交通省の耐震対策緊急促進事業の対象にもなっていない。
上記が意味するところは、当マンションの倒壊可能性は極めて低いということである。
そして、興味深いことに東京都の地震防災マップでは周囲の中で当マンションが属するグリットの
倒壊確立が低くなっていることである。これは、当マンションの構造が鉄骨鉄筋コンクリート構造
で有るため耐震性が高く評価されていると思料される。
実際、都市型震災である阪神大震災でも鉄筋鉄骨コンクリート構造の建物は倒壊率が他の工法と
比べて低かった。しかし、実際に起こる地震は予測できない。そして、予測できない地震に対して
耐震診断も、耐震修繕も無力ではないだろうか。 6

7. ４．耐震診断の信憑性①
耐震診断は、以下の方法にて一般的に行われる。
7
【指摘】
①本議案では２次診断が提案されて
いるが、２次診断が適切な理由また
は予備調査の結果が記載されていな
い。
②当マンションは壁が多い。一次診
断は壁が多い建築物に適していると
ガイドラインに記載れているが、２
次診断が必要な理由が不明である。
また、コンクリートの中性化はコン
クリートの亀裂に炭酸ガスが入り込
む事によって発生する。
前回の大規模修繕にて塗装や養生に
より外壁コンクリートを修繕した。
よって中性化診断が必要な理由が不
明である。
国土交通省「耐震診断ガイドライン」より

8. 8
４．耐震診断の信憑性②
耐震診断の判定式を以下に示す。
Is値≧0.6
Is値とはSeismic Index of Structure：耐震指標の略称である。
Is= Eo x SD x T
Eo:保有性能基本指標(建物が保有している基本的な耐震性能を表す指標) =C (強度の指標) × F
(粘り強さの指標)
SD:形状指標(平面・立面形状の非整形性を考慮する指標) 1.0 を基準として、建物形状や耐震壁の
配置バランスが悪いほど数値 が小さくなる
T:経年指標(経年劣化を考慮する指標)
この式は力学的な強度を診断するのみであり、実際の地震では、振動による共振運動や、波動に
よる波の増幅がもたらす影響まで診断することが出来ない。なので、本議案の耐震診断は地震のリ
アルな被災まで知ることが出来ない。

9. ５．建物維持の経済性
建物は様々な材料、形状の部材を組み上げ、様々な設備が実装されている人工物である。人工物である
が故に、経年劣化と自然災害には抗うことが本質的には出来ない。だが、出来る限りの修繕と養生を行な
うことにより、一定の健全な状態を維持することが可能である。
では、なぜ、健全な状態を維持する必要があるかというと、快適な毎日の生活を送り、突然障害
が起こり、生活に不便を来さないためである。そして、維持するためには修繕が必要であり、その
費用は無限ではない。ゆえに、建物・設備修繕は、最小の費用で最大の効果を生む、経済性の良い
修繕でなければならない。
それでは「最大の効果」とは何であろうか。言うまでもなく全居住者の毎日の生活の快適と安全
に直結する修繕である。具体的には、建物から出ない居住者はいないであろう。それならば、安全
で乗り心地のよいエレベータは必要であろう。部屋で水を使わない居住者はいないであろう。それ
ならば衛生状態の良い水道設備は必要であろう。トイレ、シャワ、キッチンを使わない居住者はい
ないであろう。それならば、突然の破断が起こらず、悪臭が逆流しない汚水設備は必要であろう。
夜暗い建物を歩くのは危険である。それならばエネルギー効率のよい外灯によって安全な帰り道を
確保することは必要であろう。また、防犯、防火は万全であろうか。今一度考えるに値する事案で
ある。
たしかに大規模地震は安全を脅かす。だが、大規模地震に対する備えは耐震診断と耐震補強だけ
ではない。被災時の避難、ライフラインが回復するまでのバックアップ等も大規模地震に対する重
要な対策である。これらは毎日の快適で安全な集合住宅であるほど、その対策の実現は容易ではな
いだろうか。 9

10. 結論
以上、５つの観点より検討を行った。
長期修繕計画との計画性は認められず、具体的な効果も不明である。耐震については倒壊可能性
を当面の判断材料とするのが妥当で、倒壊可能性は東京都の被災想定では極めて低い。
議案で提案されている耐震診断は実際の大規模地震に対して有効な診断かというと、東京都の被
災想定より有効であることは不明であるという意味で信憑性に欠ける。
人工物の複雑な集合である集合住宅はすべての居住者の毎日の生活により多くの便益を与える
経済性を重視すべきである。
故に、本議案に反対する。
10

11. 付帯意見：長期修繕計画の精緻化
今回の計画性に乏しい議案が提案された一因として、長期修繕計画が充分に機能していないとも考える。
そこで、現在の当マンションの長期修繕計画と国土交通省が示している「長期修繕計画ガイドライン」に
従っていない。これは改善する必要がある。また、管理規約上の「専門委員会」を設置し、改定することを提
案する。
11